「Different World's Inhabitants YUKI～カヨウビ(その三)～」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら

「Different World's Inhabitants YUKI～カヨウビ(その三)～」(2020/03/13 (金) 01:25:48) の最新版変更点

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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p> </p>
<p> </p>
<p>終わった・・・・・・。</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、出来上がった原稿を上書き保存すると、パソコンの電源を切った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そして、目を閉じる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">瞼の奥では、様々な思いが交差する。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">苦・哀・憎・痛・羨</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">漢字１文字で表していくと、こんなものだろうか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私はその全ての思いの、一つ一つに言い聞かせる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう、終わったの。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この小説が終わったみたいに。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう、こんな思いはする必要がない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">したとしても、後には何も残らないのだから。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">目を開ける。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">疲れた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ずっと、パソコンに向かいっぱなしだったからだろう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">横になる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">体から、疲労感と共に、心の中に溜まった汚いものが出ていくような感じがした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">無心になる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">体が軽くなって宙に浮いているような、そんな捉えどころのないような感覚に陥る。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">これで私も出来たのだろうか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">美樹が恭平への想いを断ち切ったように。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私も『彼』のことを・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">　ぴん、ぽーんー</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">我に返る。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">インターホンのベルが鳴った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">誰だろう？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「あ、長門さんですか？みくるです。あ、あの・・・涼宮さんに様子を見てきてって言われたから来たんですけど・・・・・・上がってもいいですか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">朝比奈みくる？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、思いもよらぬ人物の来訪に驚き、しばらく言葉を発することが出来なかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「・・・・・・長門さん？や、やっぱり、お邪魔でしたかね？でしたら、私、帰りますけど・・・・・・」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">遠慮がちの震えた声が、インターホンのパネルごしに聞こえてくる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
私は、正直、今は上がってもらいたくなかったのだが、せっかく来てもらったのに追い返すのは失礼だと思い</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・邪魔ではない。入って。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と、ドアを開けるスイッチを押し、彼女を通した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「こ、こんにちは・・・・・体調はどうですか・・・？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
玄関のドアを開けると、そこには、まるで中学生のように小柄な朝比奈みくるが、もじもじしながら立っていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">顔は笑っているものの、俯いていて、私とはっきり顔を合わそうとしない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">若干、不愉快に感じつつも、私は、家の中に通すことにした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「おじゃまします・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">都会に迷い込んだ小動物のようにびくびくと足を踏み入れる、朝比奈みくる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何？何がそんなに気になるの？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">部屋に入っても、彼女は何かを話すわけではない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
ただ、私の出したお茶を啜り、コホンと咳き込んでは、慌てたように湯飲みを置き、また黙り込んでしまう。それだけだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
私が、対処に困っていると、ずっと俯いていた彼女は上目がちに私の顔を覗き込み、そして、唖然とした表情になった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・長門さん？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・何？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・あの・・・どうしたんですか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・何が？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「いや・・・えっと・・・その・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
しばらく驚きの表情で私の顔を見つめていた彼女は、それから急に堰を切ったように話し出した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「あの・・・この世界はどうですか？楽しいですか？あと・・・向こうの世界の私はどうですか？やっぱり、あの、何というか・・・こう、もじもじしたりしていますか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt" align="right"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">朝比奈みくるは私の正体を知っているようだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">まあ、彼が私の事を彼女に教えていても、不自然ではない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">１度にいくつもの事を問われ、若干困惑しつつも、私は質問に１つずつ答えた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「この世界は、私の世界と大して変わりがない。だから、楽しいかどうかは分からない。あと、向こうの世界のあなたは・・・・・・少なくともそんなにびくびくはしていない。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
私の世界の朝比奈みくるは、あの集まりの中では、唯一同じ学校の人ということで、よく私に話しかけてくる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">涼宮ハルヒがたてた計画を伝えてくれたり、集合場所を教えてくれたり。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もっとも、彼女はあまり涼宮ハルヒのことを好んではいないようだが・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そうですか・・・。すごいなぁ・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">よく分からない感想を述べた後、彼女は立ち上がり、</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あの・・・もう帰りますね。あまり長い間いても、お邪魔でしょうし。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と、玄関に向けて歩き出したが、すぐに立ち止まり、</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「あ、忘れてました・・・・・・。あの、原稿、出来上がってます？涼宮さんが今日中に全部印刷しちゃいたいって言ってたんで・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「終わって・・・ないんですか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・終わった。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、この原稿を機関誌に載せることを、一瞬、躊躇した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうしよう。彼に見られてしまう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">でも、そう思ったのは、本当に一瞬だった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は彼の事を、もう想っていないんだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">悩む必要もないだろう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この家には、プリンタがないので、ノートパソコンごと持っていってもらうことにした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「お邪魔しました。明日は学校、来てくださいね。みんな、待ってますから。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
この家に入ってくる前とは、まるで別人のようにはきはきとした口調になった、朝比奈みくるは、頭を下げ、そのまま玄関から出ようとして、ノートパソコン入りの袋を持っていないことに気が付き、慌てて取りに帰った後、また、上の台詞を繰り返して、頭を下げ、去っていった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">・・・・・・ユニーク。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">え、私の一人称もあるんですか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">良かった～。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何か、今回、私だけ台詞少ないですしね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">こんにちは。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">SOS団のマスコットキャラこと、朝比奈みくるです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうぞ、みくるちゃんとお呼びください。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">え、自己紹介はいいから、早く物語を進めろって？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">し、失礼しました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">こういうの、慣れていないので・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">では、始めます。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
私が長門さんの家に向かっているとき、最初は、いつもとは違う長門さんに会えるということで、ワクワクドキドキ、スキップでもしたい気分でしたが、家に近づくにつれて、その気分は、塩をかけられたナメクジさんのように萎んでしまいました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">癖みたいなものですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私の緊張は、インターホンで部屋番号を押すときがピークでした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">いつもは、キョンくんが押してくれますけど、今日は私１人です。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">部屋番号を２回ほど間違えて怒られた後、私は、長門さんにドアを開けてもらいました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・どうぞ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そういって、家の中へ私を招き入れる長門さんは、いつもと変わらない気がします。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">キョンくん、まさか、嘘ついてないでしょうね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">長門さんがお茶を用意してくれている間も、もじもじしっぱなしの私。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">長門さんの顔もまともに見れません。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">沈黙。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">気まずい空気が流れます。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">・・・こんなんじゃダメだ！ファイト、みくる！</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
思い切って何か話しかけようと、上目で長門さんの顔を窺うと、困ったような表情をしています。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ああ、やっぱりこの人は、あの長門さんではないんですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">あの、長門さんならこんな表情はしませんもんね・・・・・・って、え？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この時、私はおそらく、飛びっきりおかしな顔をしたでしょうね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何でですかって？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">それは・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">涙。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">涙ですよ！長門さんの顔に、涙が流れた跡があったんです！</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">びっくりです！</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">世○仰天ニュースより、仰天です！</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
いてもたってもいられなくなった私は長門さんに話しかける、という難題をあっという間にクリアしてしまいました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・長門さん？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・何？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・あの・・・どうしたんですか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・何が？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「いや・・・えっと・・・その・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">会話になってないとか言わないでください。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>私にとっては、大きな成果なんです。</p>
<p> </p>
<p>えっと、長門さん本人は、泣いていることに気が付いてないみたいですね・・・・・・。</p>
<p>でも、本当にどうしたんでしょう？</p>
<p>泣きたくなるくらい、悲しいことでもあったんでしょうか？</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">とはいえ、このまま考えていてもまた気まずくなるので、私は話を続けました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「あの・・・この世界はどうですか？楽しいですか？あと・・・向こうの世界の私はどうですか？やっぱり、あの、何というか・・・こう、もじもじしたりしていますか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この質問はここに来る前に、聞こうと思っていたものです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">向こうの世界の私はどんな人なんだろう？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">会ってみたいな・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「この世界は、私の世界と大して変わりがない。だから、楽しいかどうかは分からない。あと、向こうの世界のあなたは、そんなにびくびくはしていない。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そうですか・・・。すごいなぁ・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">これは本音です。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">だって、すごいじゃないですか。長門さんの前できちんとしていられるなんて。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">え、あなたがおかしいんだって？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そうですかね・・・・・・？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">長門さんとお話するのは、とっても難しいと思いますけど・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">あ、そろそろ帰らないと。涼宮さんにおつかいも頼まれてましたしね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">えっと・・・メロンパンでしたっけ？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
長門さんから、原稿代わりのノートパソコンを受け取ると、私は急いで長門さんの家を出ました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">辺りはもう薄暗くなってます。急がないと。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
私は、心の中では女子マラソンの世界記録保持者並みのスピードで、周りから見たらたぶん歩くのとたいして変わらないくらいのスピードで、パン屋へ向かって走りました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「ちょっと、みくるちゃん！？私が頼んだのはカレーパンでしょ！？あなたにはこれがカレーパンに見えるの！？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>あんぱんを買って帰ってきた私は、涼宮さんに怒られます。</p>
<p>そうでした・・・確かに頼まれたのはカレーパンでしたね・・・・・・。</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">みくる、反省です・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「おいおい、お前の為に朝比奈さんはわざわざ買ってきたんだぞ？そんなに文句言うんだったら、お前が自分で買ってくれば良かったじゃねぇか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">キョンくんがドジな私をかばってくれます。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、感謝の念をこめて彼に微笑みかけました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼は、でれっとした表情を一瞬見せましたが、慌てて真面目な顔を作ります。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ふふふ、可愛い・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「・・・まあ、いいわ。だいぶドジッ娘っぽくなったしね。で、有希はどうだったの？大丈夫だった？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「はい、元気そうでしたよ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「そう、それはよかった。あとは・・・そうそう、有希の原稿は？まさか、それまで忘れたとか言わないでしょうね？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ああ、それなら貰ってきましたぁ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
やや得意げに私はノートパソコンを取り出しましたが、涼宮さんはそれを見て溜息をつき、</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「あのねぇ・・・それじゃ、どんな原稿か分からないでしょ！ほら、そこのプリンタに繋いで、早く印刷しなさい！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「は、はい！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、不機嫌な王様から命令を受けた家来さんのように慌てて作業に取り掛かります。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「さあ、キョンもぼーっとしてないで、早く終わらせなさい！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「へいへい。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
そう言って、キョンくんのすぐ後ろに置かれたパイプ椅子に腰掛ける涼宮さんと、キーボートに手を置くキョン君。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">もう、本当に仲がいいんだから。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
少しもやもやした気分になりましたが、いつものことなので大して気にも留めず、私は長門さんの家から持ってきたパソコンを起動させます。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
そして、涼宮さんに拘束されているキョンくんを無理やり助け出し、印刷の仕方を教えてもらいます。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">涼宮さんが何やらブツブツ言っていますが気にしません。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">とりあえず１部だけ印刷して、それを涼宮さんに渡します。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
涼宮さんはしばらく難しい顔で、その原稿を読んでいましたが、全て読み終わると、何故か慌てたような声で、</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「ふ、ふ～ん、有希もちゃんとした恋愛小説を書けるのね。うん、これは決定ね。後はキョンだけよ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と言うと、すぐにその原稿を鞄にしまおうとしました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「おい。俺にも見せてくれよ。長門が書くちゃんとした恋愛小説ってどんなんだ？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「う、うるさい！あんたには関係ないでしょ？それはいいから、続けなさい！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「な、何だよ・・・。俺が見ちゃいけないわけでもあんのか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あんたはまだ終わってないでしょ！？そんなことしている暇はないの！」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>まだブツブツ言いながらも引き下がるキョンくん。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何だろう？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">キョンくんが見ちゃいけないことでも書いてあるのかな？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、涼宮さんの鞄の上に置かれた原稿をこっそりと読んでみることにしました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">えっと、この美樹って娘が主人公でいいのかな・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>最後まで読み通した私は、涼宮さんがなぜキョンくんにこの原稿を読ませなかったのか、そして長門さんがなぜ泣いていたのかが分かりました。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">だって、これって・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ちょっとみくるちゃん？ぼーっとしてないで、お茶、早く汲みなさないよ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「は、はい。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">いけないいけない。私はSOS団専属のメイド。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そのメイドが仕事を忘れるなんて、あってはならないことです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私が目指すのは、格好だけじゃない本物のメイドなんですから！</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">いかがでしたか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私、こんなことしたことないから、少し読みにくかったかもしれませんが・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">え、終わったんなら早くかわれ？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">す、すいません。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">じゃあ、ここからはキョンくんにバトンタッチします・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">はい、バトン、確かに受け取りましたよ、朝比奈さん。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「やっと、終わったわね。もし終わらなかったら、家に帰らせなかったところよ。残業手当はもちろんなしでね。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">終わった・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">真っ白に燃え尽きたぜ・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
どこかのボクシング漫画の主人公のようにたたずむ俺を尻目に、ハルヒは出来たてホヤホヤの俺の原稿と、何故か読ませてくれない長門の原稿を持って部屋を出て行った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何でだ？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
長門の書くちゃんとした恋愛小説というのは、こんな一団員では目にすることすら出来ない貴重なものなのか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
俺が、小説の内容について想像を巡らせていると、メイド衣装ではない朝比奈さんがお茶を持ってきた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">たまには制服もいいかもな・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">先にいっとくが俺は、制服フェチではない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この方が着たものは、何でもブランド品並みの輝きを放つんだよ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あの・・・キョンくん。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「は、はい？何でしょう？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">急に話しかけられた俺は、にやけ気味になりつつある顔を無理やり引き締めた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あの、明後日の事なんですけど・・・・・・。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">明後日？明後日といったら・・・ああ、あれの事か。あれがどうしたというのだろう？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「あれの事ですか？それなら、もう準備は万端ですから、朝比奈さんは待っていてくれるだけいいですけど。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「私はいいんです。ただ・・・・・・」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>何やら言いたいようだがうまく言葉に出来ない、そんな素振りを見せる朝比奈さん。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうした？私はいい？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">俺としては、あなたに１番楽しみにしていてもらいたいのですが・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「・・・長門さん・・・あの長門さんが一生忘れないような・・・そんなものにしてください。お願いします。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">長門？まあ、あいつにとっては初めてのことかもしれないからな。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「分かりました。任せてください。古泉と協力して、最高のものにしますから。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そうですか。ありがとうございます。私も楽しみにしておきますね。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そういって天使の微笑み。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ああ、やっぱり俺は、あなたの一生の思い出を作りたいんですが・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">明後日に何があるかって？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">な～に、大したことじゃねぇよ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">一部の幸せな男子にしか関係のないイベントさ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">明後日はホワイトデー。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
明らかに日本産のこのイベントは、今年もハルヒの手によって、俺と古泉の中では、ビックイベントになっていた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>今年のバレンタインの日も、えらく独創的なアイディアで俺達を驚かしてくれたハルヒは、ホワイトデーをとても楽しみにしているようだ。</p>
<p>俺が今回、「原稿、原稿！」とやけに急かされたのも、この日までに機関誌作りを終わらせておきたかったかららしい。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>全く、ハルヒのせいで俺達男性陣は、いらぬ苦労を強いられているわけで・・・・・・</p>
<p>いや、せい、でもないし、いらぬ、でもないな。</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">世の中にはこの日が、ただの平日と化す男もいるんだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">その分、俺は幸せなんだと思っておこう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
その後、ハルヒによる軟禁から解放された俺は、家に帰り、夕食、入浴と、普通の人間と変わらない生活を送った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">さすがに三日連続で異時空騒ぎはごめんだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんな俺は、油断していたのかもしれない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
 夜、布団の中で、明後日の長門の反応を妄想しつつ、うつらうつらしていた俺は忘れていたのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">古泉からの連絡がないってことを。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
あいつは昨日、「明日には帰れます」と言っていたから、今日、この世界に帰ってくるはずだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そして、帰ってきたら、おそらく電話をかけてくるだろう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「結果報告です」とか何とか言ってな。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかし、、この夜、俺の携帯が鳴ることはなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>そして、明日、俺はこの事を激しく後悔することになろうとは、夢にも思っていなかった。</p>
<p> 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　</p>
</div>
<p>　　　～<a title="Different World's Inhabitants YUKI～スイヨウビ(その一)～ (30s)" href=
"http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3801.html">Different World's
Inhabitants YUKI～スイヨウビ(その一)～</a> へ続く～</p>

<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p> </p>
<p> </p>
<p>終わった・・・・・・。</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、出来上がった原稿を上書き保存すると、パソコンの電源を切った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、目を閉じる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">瞼の奥では、様々な思いが交差する。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">苦・哀・憎・痛・羨</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">漢字１文字で表していくと、こんなものだろうか。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私はその全ての思いの、一つ一つに言い聞かせる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">もう、終わったの。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">この小説が終わったみたいに。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">もう、こんな思いはする必要がない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">したとしても、後には何も残らないのだから。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">目を開ける。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">疲れた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ずっと、パソコンに向かいっぱなしだったからだろう。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">横になる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">体から、疲労感と共に、心の中に溜まった汚いものが出ていくような感じがした。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">無心になる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">体が軽くなって宙に浮いているような、そんな捉えどころのないような感覚に陥る。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">これで私も出来たのだろうか。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">美樹が恭平への想いを断ち切ったように。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私も『彼』のことを・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">　ぴん、ぽーんー</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">我に返る。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">インターホンのベルが鳴った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">誰だろう？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「あ、長門さんですか？みくるです。あ、あの・・・涼宮さんに様子を見てきてって言われたから来たんですけど・・・・・・上がってもいいですか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">朝比奈みくる？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、思いもよらぬ人物の来訪に驚き、しばらく言葉を発することが出来なかった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「・・・・・・長門さん？や、やっぱり、お邪魔でしたかね？でしたら、私、帰りますけど・・・・・・」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">遠慮がちの震えた声が、インターホンのパネルごしに聞こえてくる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
私は、正直、今は上がってもらいたくなかったのだが、せっかく来てもらったのに追い返すのは失礼だと思い</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・邪魔ではない。入って。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、ドアを開けるスイッチを押し、彼女を通した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「こ、こんにちは・・・・・体調はどうですか・・・？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
玄関のドアを開けると、そこには、まるで中学生のように小柄な朝比奈みくるが、もじもじしながら立っていた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔は笑っているものの、俯いていて、私とはっきり顔を合わそうとしない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">若干、不愉快に感じつつも、私は、家の中に通すことにした。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「おじゃまします・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">都会に迷い込んだ小動物のようにびくびくと足を踏み入れる、朝比奈みくる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何？何がそんなに気になるの？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋に入っても、彼女は何かを話すわけではない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
ただ、私の出したお茶を啜り、コホンと咳き込んでは、慌てたように湯飲みを置き、また黙り込んでしまう。それだけだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
私が、対処に困っていると、ずっと俯いていた彼女は上目がちに私の顔を覗き込み、そして、唖然とした表情になった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・長門さん？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・何？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・あの・・・どうしたんですか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・何が？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「いや・・・えっと・・・その・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
しばらく驚きの表情で私の顔を見つめていた彼女は、それから急に堰を切ったように話し出した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「あの・・・この世界はどうですか？楽しいですか？あと・・・向こうの世界の私はどうですか？やっぱり、あの、何というか・・・こう、もじもじしたりしていますか？」</div>
<div align="right" style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">朝比奈みくるは私の正体を知っているようだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">まあ、彼が私の事を彼女に教えていても、不自然ではない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">１度にいくつもの事を問われ、若干困惑しつつも、私は質問に１つずつ答えた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「この世界は、私の世界と大して変わりがない。だから、楽しいかどうかは分からない。あと、向こうの世界のあなたは・・・・・・少なくともそんなにびくびくはしていない。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
私の世界の朝比奈みくるは、あの集まりの中では、唯一同じ学校の人ということで、よく私に話しかけてくる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">涼宮ハルヒがたてた計画を伝えてくれたり、集合場所を教えてくれたり。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">もっとも、彼女はあまり涼宮ハルヒのことを好んではいないようだが・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうですか・・・。すごいなぁ・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">よく分からない感想を述べた後、彼女は立ち上がり、</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あの・・・もう帰りますね。あまり長い間いても、お邪魔でしょうし。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、玄関に向けて歩き出したが、すぐに立ち止まり、</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「あ、忘れてました・・・・・・。あの、原稿、出来上がってます？涼宮さんが今日中に全部印刷しちゃいたいって言ってたんで・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「終わって・・・ないんですか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・終わった。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、この原稿を機関誌に載せることを、一瞬、躊躇した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうしよう。彼に見られてしまう。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">でも、そう思ったのは、本当に一瞬だった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は彼の事を、もう想っていないんだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">悩む必要もないだろう。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">この家には、プリンタがないので、ノートパソコンごと持っていってもらうことにした。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「お邪魔しました。明日は学校、来てくださいね。みんな、待ってますから。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
この家に入ってくる前とは、まるで別人のようにはきはきとした口調になった、朝比奈みくるは、頭を下げ、そのまま玄関から出ようとして、ノートパソコン入りの袋を持っていないことに気が付き、慌てて取りに帰った後、また、上の台詞を繰り返して、頭を下げ、去っていった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">・・・・・・ユニーク。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">え、私の一人称もあるんですか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">良かった～。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何か、今回、私だけ台詞少ないですしね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">こんにちは。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">SOS団のマスコットキャラこと、朝比奈みくるです。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうぞ、みくるちゃんとお呼びください。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">え、自己紹介はいいから、早く物語を進めろって？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">し、失礼しました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">こういうの、慣れていないので・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">では、始めます。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
私が長門さんの家に向かっているとき、最初は、いつもとは違う長門さんに会えるということで、ワクワクドキドキ、スキップでもしたい気分でしたが、家に近づくにつれて、その気分は、塩をかけられたナメクジさんのように萎んでしまいました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">癖みたいなものですね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私の緊張は、インターホンで部屋番号を押すときがピークでした。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">いつもは、キョンくんが押してくれますけど、今日は私１人です。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋番号を２回ほど間違えて怒られた後、私は、長門さんにドアを開けてもらいました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・どうぞ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そういって、家の中へ私を招き入れる長門さんは、いつもと変わらない気がします。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">キョンくん、まさか、嘘ついてないでしょうね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">長門さんがお茶を用意してくれている間も、もじもじしっぱなしの私。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">長門さんの顔もまともに見れません。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">沈黙。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">気まずい空気が流れます。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">・・・こんなんじゃダメだ！ファイト、みくる！</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
思い切って何か話しかけようと、上目で長門さんの顔を窺うと、困ったような表情をしています。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ああ、やっぱりこの人は、あの長門さんではないんですね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">あの、長門さんならこんな表情はしませんもんね・・・・・・って、え？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">この時、私はおそらく、飛びっきりおかしな顔をしたでしょうね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何でですかって？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それは・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">涙。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">涙ですよ！長門さんの顔に、涙が流れた跡があったんです！</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">びっくりです！</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">世○仰天ニュースより、仰天です！</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
いてもたってもいられなくなった私は長門さんに話しかける、という難題をあっという間にクリアしてしまいました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・長門さん？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・何？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・あの・・・どうしたんですか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・何が？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「いや・・・えっと・・・その・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">会話になってないとか言わないでください。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>私にとっては、大きな成果なんです。</p>
<p> </p>
<p>えっと、長門さん本人は、泣いていることに気が付いてないみたいですね・・・・・・。</p>
<p>でも、本当にどうしたんでしょう？</p>
<p>泣きたくなるくらい、悲しいことでもあったんでしょうか？</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">とはいえ、このまま考えていてもまた気まずくなるので、私は話を続けました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「あの・・・この世界はどうですか？楽しいですか？あと・・・向こうの世界の私はどうですか？やっぱり、あの、何というか・・・こう、もじもじしたりしていますか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">この質問はここに来る前に、聞こうと思っていたものです。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">向こうの世界の私はどんな人なんだろう？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">会ってみたいな・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「この世界は、私の世界と大して変わりがない。だから、楽しいかどうかは分からない。あと、向こうの世界のあなたは、そんなにびくびくはしていない。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうですか・・・。すごいなぁ・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">これは本音です。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">だって、すごいじゃないですか。長門さんの前できちんとしていられるなんて。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">え、あなたがおかしいんだって？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そうですかね・・・・・・？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">長門さんとお話するのは、とっても難しいと思いますけど・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">あ、そろそろ帰らないと。涼宮さんにおつかいも頼まれてましたしね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">えっと・・・メロンパンでしたっけ？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
長門さんから、原稿代わりのノートパソコンを受け取ると、私は急いで長門さんの家を出ました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">辺りはもう薄暗くなってます。急がないと。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
私は、心の中では女子マラソンの世界記録保持者並みのスピードで、周りから見たらたぶん歩くのとたいして変わらないくらいのスピードで、パン屋へ向かって走りました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「ちょっと、みくるちゃん！？私が頼んだのはカレーパンでしょ！？あなたにはこれがカレーパンに見えるの！？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>あんぱんを買って帰ってきた私は、涼宮さんに怒られます。</p>
<p>そうでした・・・確かに頼まれたのはカレーパンでしたね・・・・・・。</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">みくる、反省です・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「おいおい、お前の為に朝比奈さんはわざわざ買ってきたんだぞ？そんなに文句言うんだったら、お前が自分で買ってくれば良かったじゃねぇか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">キョンくんがドジな私をかばってくれます。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、感謝の念をこめて彼に微笑みかけました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼は、でれっとした表情を一瞬見せましたが、慌てて真面目な顔を作ります。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ふふふ、可愛い・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「・・・まあ、いいわ。だいぶドジッ娘っぽくなったしね。で、有希はどうだったの？大丈夫だった？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「はい、元気そうでしたよ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「そう、それはよかった。あとは・・・そうそう、有希の原稿は？まさか、それまで忘れたとか言わないでしょうね？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ああ、それなら貰ってきましたぁ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
やや得意げに私はノートパソコンを取り出しましたが、涼宮さんはそれを見て溜息をつき、</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「あのねぇ・・・それじゃ、どんな原稿か分からないでしょ！ほら、そこのプリンタに繋いで、早く印刷しなさい！」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「は、はい！」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、不機嫌な王様から命令を受けた家来さんのように慌てて作業に取り掛かります。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「さあ、キョンもぼーっとしてないで、早く終わらせなさい！」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「へいへい。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
そう言って、キョンくんのすぐ後ろに置かれたパイプ椅子に腰掛ける涼宮さんと、キーボートに手を置くキョン君。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">もう、本当に仲がいいんだから。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
少しもやもやした気分になりましたが、いつものことなので大して気にも留めず、私は長門さんの家から持ってきたパソコンを起動させます。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
そして、涼宮さんに拘束されているキョンくんを無理やり助け出し、印刷の仕方を教えてもらいます。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">涼宮さんが何やらブツブツ言っていますが気にしません。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">とりあえず１部だけ印刷して、それを涼宮さんに渡します。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
涼宮さんはしばらく難しい顔で、その原稿を読んでいましたが、全て読み終わると、何故か慌てたような声で、</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「ふ、ふ～ん、有希もちゃんとした恋愛小説を書けるのね。うん、これは決定ね。後はキョンだけよ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と言うと、すぐにその原稿を鞄にしまおうとしました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「おい。俺にも見せてくれよ。長門が書くちゃんとした恋愛小説ってどんなんだ？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「う、うるさい！あんたには関係ないでしょ？それはいいから、続けなさい！」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「な、何だよ・・・。俺が見ちゃいけないわけでもあんのか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あんたはまだ終わってないでしょ！？そんなことしている暇はないの！」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>まだブツブツ言いながらも引き下がるキョンくん。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何だろう？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">キョンくんが見ちゃいけないことでも書いてあるのかな？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、涼宮さんの鞄の上に置かれた原稿をこっそりと読んでみることにしました。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">えっと、この美樹って娘が主人公でいいのかな・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>最後まで読み通した私は、涼宮さんがなぜキョンくんにこの原稿を読ませなかったのか、そして長門さんがなぜ泣いていたのかが分かりました。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">だって、これって・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ちょっとみくるちゃん？ぼーっとしてないで、お茶、早く汲みなさないよ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「は、はい。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">いけないいけない。私はSOS団専属のメイド。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そのメイドが仕事を忘れるなんて、あってはならないことです。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私が目指すのは、格好だけじゃない本物のメイドなんですから！</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">いかがでしたか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私、こんなことしたことないから、少し読みにくかったかもしれませんが・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">え、終わったんなら早くかわれ？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">す、すいません。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">じゃあ、ここからはキョンくんにバトンタッチします・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">はい、バトン、確かに受け取りましたよ、朝比奈さん。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「やっと、終わったわね。もし終わらなかったら、家に帰らせなかったところよ。残業手当はもちろんなしでね。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">終わった・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">真っ白に燃え尽きたぜ・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
どこかのボクシング漫画の主人公のようにたたずむ俺を尻目に、ハルヒは出来たてホヤホヤの俺の原稿と、何故か読ませてくれない長門の原稿を持って部屋を出て行った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何でだ？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
長門の書くちゃんとした恋愛小説というのは、こんな一団員では目にすることすら出来ない貴重なものなのか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
俺が、小説の内容について想像を巡らせていると、メイド衣装ではない朝比奈さんがお茶を持ってきた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">たまには制服もいいかもな・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">先にいっとくが俺は、制服フェチではない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">この方が着たものは、何でもブランド品並みの輝きを放つんだよ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あの・・・キョンくん。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「は、はい？何でしょう？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">急に話しかけられた俺は、にやけ気味になりつつある顔を無理やり引き締めた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あの、明後日の事なんですけど・・・・・・。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">明後日？明後日といったら・・・ああ、あれの事か。あれがどうしたというのだろう？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「あれの事ですか？それなら、もう準備は万端ですから、朝比奈さんは待っていてくれるだけいいですけど。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「私はいいんです。ただ・・・・・・」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>何やら言いたいようだがうまく言葉に出来ない、そんな素振りを見せる朝比奈さん。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうした？私はいい？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">俺としては、あなたに１番楽しみにしていてもらいたいのですが・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「・・・長門さん・・・あの長門さんが一生忘れないような・・・そんなものにしてください。お願いします。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">長門？まあ、あいつにとっては初めてのことかもしれないからな。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「分かりました。任せてください。古泉と協力して、最高のものにしますから。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうですか。ありがとうございます。私も楽しみにしておきますね。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そういって天使の微笑み。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ああ、やっぱり俺は、あなたの一生の思い出を作りたいんですが・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">明後日に何があるかって？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">な～に、大したことじゃねぇよ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">一部の幸せな男子にしか関係のないイベントさ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">明後日はホワイトデー。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
明らかに日本産のこのイベントは、今年もハルヒの手によって、俺と古泉の中では、ビックイベントになっていた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>今年のバレンタインの日も、えらく独創的なアイディアで俺達を驚かしてくれたハルヒは、ホワイトデーをとても楽しみにしているようだ。</p>
<p>俺が今回、「原稿、原稿！」とやけに急かされたのも、この日までに機関誌作りを終わらせておきたかったかららしい。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>全く、ハルヒのせいで俺達男性陣は、いらぬ苦労を強いられているわけで・・・・・・</p>
<p>いや、せい、でもないし、いらぬ、でもないな。</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">世の中にはこの日が、ただの平日と化す男もいるんだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その分、俺は幸せなんだと思っておこう。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
その後、ハルヒによる軟禁から解放された俺は、家に帰り、夕食、入浴と、普通の人間と変わらない生活を送った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">さすがに三日連続で異時空騒ぎはごめんだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そんな俺は、油断していたのかもしれない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
 夜、布団の中で、明後日の長門の反応を妄想しつつ、うつらうつらしていた俺は忘れていたのだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">古泉からの連絡がないってことを。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
あいつは昨日、「明日には帰れます」と言っていたから、今日、この世界に帰ってくるはずだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、帰ってきたら、おそらく電話をかけてくるだろう。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結果報告です」とか何とか言ってな。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しかし、、この夜、俺の携帯が鳴ることはなかった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>そして、明日、俺はこの事を激しく後悔することになろうとは、夢にも思っていなかった。</p>
<p> 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　</p>
</div>
<p>　　　～<a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3801.html" title="Different World's Inhabitants YUKI～スイヨウビ(その一)～ (30s)">Different World's
Inhabitants YUKI～スイヨウビ(その一)～</a>へ続く～</p>