「Different World's Inhabitants YUKI～ゲツヨウビ(その三)～」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら

「Different World's Inhabitants YUKI～ゲツヨウビ(その三)～」(2020/03/13 (金) 01:26:10) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p> </p>
<p> </p>
<p>
「いい？ストーリーのおおまかな流れはこうよ！今から、１８００年くらい前の三国時代の中国に、ある男がタイムスリップするの。その男は、現代では全く仕事をしないダメダメな男なんだけど、実はＩＱ２００の天才で、戦術をたてるのがめちゃくちゃ上手いの！そして、あっという間に領土を広げていって、４つ目の国を自らの手で作って、時代は四国時代に・・・・・・」</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">おいおい、どんどん違う道へ脱線している気がするぞ・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ちょっと待て。それじゃあ、歴史小説とは言えねぇだろ？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「いいじゃない、面白かったら。大体、あんたの頭じゃまともな歴史小説なんてね、書けやしないのよ！だから、私が代わりに考えてあげてんじゃないの！何？あんたは、そんな私の優しさを踏みにじる気？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
へいへい、分かりましたよ。しかし、そんなに自信満々で話せるストーリーがあるんなら、もっと早く教えてくれてもいいんじゃねぇのか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
俺は、笑怒顔(命名、俺)でいかにも楽しそうに、イラストをつけてまでストーリーを説明しているハルヒに逆らうことが出来ず、また、逆らうつもりも途中でなくなった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
まあ、何だ、こいつが考えたストーリーだ。これなら、仕上げて早々、没なんて事はないだろうしな。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
｢・・・・・・・最後は、中国を統一したけど、実はそれは夢でした、ってわけ。ま、ざっとこんな感じね。じゃあ、これを元に書きなさい。｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
ハルヒは、イラスト付きのあらすじを俺に手渡すと、そのまま俺の背後にパイプ椅子を移動させて陣取った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">｢・・・・・・｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">｢・・・・・・どうしたの？早く書きなさいよ。｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">いや、とりあえず、そこから立ち退いてもらえますか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">やりにくいったら、ありゃしない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
｢いいじゃない。こうでもしないと、あんた書かないでしょ。いいから、早く始めなさい！｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ピーチクパーチクわめくハルヒを背後に置いて、俺は嫌々、キーボードに手を付けた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">う～ん、文章というものは、書き出しが難しいんだよな、書き出しが・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
｢・・・ま、あんたの力じゃ、所詮こんなもんね。いいわ、あとは、クライマックスだけね。もう遅いし、今日はこれくらいにしましょう。｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ふう・・・疲れた・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
あれから、ハルヒの｢ちょっと、それ、もっといい表現できないの！？｣とか、｢それじゃあ、全く臨場感ってもんがないじゃない！迫力が足りないのよ、迫力が！｣とかいった、ダメ出しを何発も受け、瀕死寸前になりつつも、何とか俺の原稿が８割方完成した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>残りは、主人公の男が軍を引き連れて、蜀の都、成都に攻め込み、蜀の軍師、諸葛亮孔明と頭脳戦を繰り広げるシーンを書くだけだ。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">全く、俺は一体何を書いているんだろうね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">帰り道の下り坂。辺りは、もうだいぶ薄暗くなっている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">１番前には、ハルヒと朝比奈さんがいて、何やら談笑している。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">その後ろでは、長門がとぼとぼと歩いている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">鞄がやけにふくれているのは、ノートパソコンが入っているからだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうやら、家で原稿の続きを書くらしい。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>そして、１番後ろを俺は、フラフラと歩いている。</p>
<p> </p>
<p>谷口なら、「全く、今日はいつもみてる番組があるのによ～！」とか言って、真っ先に帰ってしまった。</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
さあ、今日の晩飯は何だろうな。出来れば軽いモンがいい。さっきから、激しい頭痛に襲われているからな。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そんなどうでもいいことを考えていると、そのうち光陽園駅前に辿り着いた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ここで、みんなとはお別れだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>｢じゃ、明日も気合入れて書くのよ！もう、明日中に仕上げちゃいたいからね。｣</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と、ハルヒ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">｢じゃあね、キョン君。お疲れ様。｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と、朝比奈さん。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">｢・・・・・・｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">は、長門の沈黙だ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">さっきから長門は、気のせいか、ぼーっとしているような気がする。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">というか、小さな表情の変化すら全く見られない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうした？いつの間にか、元の長門に戻ったか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">｢どうした、長門？何か、気になることでもあったか？｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">俺の声に長門は一瞬ビクッとしたが、それでも表情は変えずに、</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">｢・・・何でもない。｣</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と、呟いた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そうか、それならいいんだが・・・・・・」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
俺の言葉に沈黙で応答した長門は、そのまま逃げるようにマンションの方へと向かっていった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">う～ん、何なんだ？気になるな・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「少しお願いしたいことが御座いましてね。電話させていただきました。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">疑問をお土産に帰宅した俺のもとに、古泉からの電話がかかってきた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">お前のお願いは、大体厄介事ばかりなんだがな・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「まあ、そう仰らずに。今回のは、簡単な頼み事ですよ。あなたの先ほどの話を『機関』に報告したところ、我々は新たに『異時空間内閉鎖空間対策本部』というものを設置することになりました。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
異時空間内閉鎖空間対策本部？何だ、その無駄に長くて、分かりにくい上に、意味もそのまんまという、読者に不親切な名前は？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そうですか？僕としては重要機関みたいな感じで少し気に入っているのですが。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
電話越しにでも顔が想像できそうな声で、いかにも疑問げにこう言った古泉は、いくらか声のトーンを抑えて、さらにこう続けた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「もう、お察しかもしれませんが、その本部の部長に僕が任命されました。臨時の部なのでそれほど名誉なことではありませんが。我々は、何らかの方法でその別時空に向かい、閉鎖空間内へと侵入するつもりです。そこに神人が例え存在していないのだとしてもね。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そうかそうか、それはご苦労なこった。まあ、せいぜい死なない程度に頑張ってくれ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「ずいぶん冷たい言い方をなされますが、今回の任務はあなたが大きな鍵を握っているんですよ？あなたは昨日、こちらの世界に一時的に来ていた『長門有希』とコンタクトを取っています。となれば、長門さんがどうやって別の時空に戻ったのかご存知のはずです。違いますか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">なるほど。俺が方法を教えてやらないと、お前らは何も出来ないってことだな？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そういうことです。どうです？何か知っていることでも？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>
俺は、昨日、長門の部屋で見た、何やらよく分からないカラフルな空間『パラレルゲート』のことと、その向こうにあった、あまりにもミスマッチな襖のことを話した。</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">あの襖の向こうに長門は消えていった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ってことは、あの向こうがおそらく別世界へとつながっているんだろう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「だが、長門はあのゲートは変な力を持った奴は通れないとか言ってたぞ。お前らみたいな超能力者は大丈夫なのか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「ああ、その点でしたらご心配なく。我々は、普段は何の力も持たない普通の一般人ですからね。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
完璧に執事やメイドや、気が付いたら警官にさえなっているような人々が、果たして普通の一般人と言えるのだろうか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「まあ、そうかもしれませんが、おそらくゲートに拒絶されるような力を持っているとは、認識されないでしょう。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
俺は、「突然お尋ねしたら、ひょっとしたら入れてくれないかもしれませんからね。」という、古泉の無駄な心配のせいで、長門の家まで同伴することになった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何だ？俺が着いていっても同じことじゃないのか？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
とりあえず、長門に電話してから行こうと思ったが、誰も出なかったので、そのまま向かうことにした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ふう・・・まさか、２日連続行くはめになろうとはね・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ＰＵＬＬＬＬＬＬＬＬＬＬ</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">部屋の電話が鳴る。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかし、私はそれに出なかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">と、いうより気が付いていなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>頭の中で、今日の部室の中での、彼と涼宮ハルヒの様子を思い浮かべる。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何でだろう？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">この事を思うと、胸が締め付けられるような思いがする。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">涼宮ハルヒのことが羨ましくて仕方がない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">今まで、涼宮ハルヒのことを羨ましく思ったことがないと言えば、それは嘘になる。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>私は、いつもの４人で集まった時に見せるあの明るい笑顔や、何でもそつなくこなすところを何度も見てきた。</p>
<p>それに対しては、尊敬の思いもあったし、羨望の思いもあった。</p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかし、今回のは、それとは違うのだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
何か、それよりももっと苦しくて、辛いような、とにかく今まで経験したことのないようなものだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼が、そんな私のことを心配してくれているのも、さっきの帰り道で分かった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しかし、私はろくに返事もせずに、ただ逃げるようにして立ち去ってしまった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">どうしたんだろう、私・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">しばらく、ぼーっとしていた私は、不意に鳴ったインターホンのベルの音で我に返った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">誰だろう？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私は、パネルを操作し、そこから聞こえてきた声に驚愕した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ああ、長門か。俺だ。ちょっと、用があってよ。入ってもいいか？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">え、彼？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼が、私に何の用なの？</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
私は、心臓の鼓動が高まるのを感じながらも、ボタンを押して彼をマンションの中へと通した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「よう、今日も来ちまったな。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「今晩は、長門さん。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>彼は、何故か古泉一樹を引き連れてやって来た。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">それだけじゃない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">その後ろには、誰だか分からないが、清楚な感じの女の人が立っている。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「森園生と申します。私は、古いｚ・・・失礼。一樹の従姉にあたるものです。よろしくお願いします。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう言うと、彼女は深々と礼をした。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">茶道か何かをやっているのだろうか、とても綺麗な礼だった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">私の心臓の鼓動が少し収まった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">何だ、彼１人じゃないんだ・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼は、何やら戸惑う素振りを見せつつも、言葉を選ぶようにして、こう切り出した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「えっと・・・あのな、長門。この２人は、長門、あ、もう１人の方な。そいつのアシスタントなんだよ。アシスタントというか、仲間というか・・・とりあえず、あいつがハルヒの力を消すのを手伝いに来たんだ。それで、向こうの世界に行かないといけないんだが、あっちとつながってるのは、この世界じゃ、どうやらこの部屋だけらしいんだ。だから、この人達をちょっと、中に入れてもらえないか？襖の奥のよく訳の分からん場所に入れてもらうだけでいいんだ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「すみませんね、夜分遅くに。ご迷惑をお掛けします。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう言って、笑顔と共にお辞儀をした古泉一樹と、森という女性を見た。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そういうことなら、別にいいけど・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・・・・どうぞ。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「すみません。失礼します。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そういうと、２人は部屋の中へと入っていった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>その後を、私と彼はついていく。</p>
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
「では、行って参ります。遅くとも、明日中には帰れると思います。ご心配なく、涼宮さんの方には、明日は親戚の用事で学校をお休みすると伝えておきましたので。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「おう、気をつけてな。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼とこう言葉を交わした後、２人は襖の奥にある、もう１つの襖の奥へと消えていった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「ふう・・・すまんな、突然押しかけちまって。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう言うと、彼は周りを見渡した。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あれ、夕食まだか？邪魔しちまったな。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">邪魔？別に、邪魔ではない。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">それどころか、夕食を食べていって貰いたいくらいだ。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「じゃあ、俺、帰るわ。また、明日な。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう言って、彼は玄関の方へと歩いて行った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">ちょっと待って！もうちょっと一緒に・・・・・・。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">そう思って声を掛けてみた。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「あ・・・・・・」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">それだけしか声に出せなかった。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「どうした？」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">彼が、きょとんとした顔をこちらに向ける。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">えっと・・・・・・</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「・・・何でもない。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「そうか、じゃあな。」</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">その言葉を残し、彼は玄関の外へと出て行った。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">
<p>何故だか、自分にものすごく腹が立った。</p>
<p> </p>
<p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　</p>
</div>
<p>　　　～<a title="Different World's Inhabitants YUKI～カヨウビ(その一)～ (2s)" href=
"http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3727.html">Different World's
Inhabitants YUKI～カヨウビ(その一)～</a> へ続く～</p>

<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p> </p>
<p> </p>
<p>
「いい？ストーリーのおおまかな流れはこうよ！今から、１８００年くらい前の三国時代の中国に、ある男がタイムスリップするの。その男は、現代では全く仕事をしないダメダメな男なんだけど、実はＩＱ２００の天才で、戦術をたてるのがめちゃくちゃ上手いの！そして、あっという間に領土を広げていって、４つ目の国を自らの手で作って、時代は四国時代に・・・・・・」</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">おいおい、どんどん違う道へ脱線している気がするぞ・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ちょっと待て。それじゃあ、歴史小説とは言えねぇだろ？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「いいじゃない、面白かったら。大体、あんたの頭じゃまともな歴史小説なんてね、書けやしないのよ！だから、私が代わりに考えてあげてんじゃないの！何？あんたは、そんな私の優しさを踏みにじる気？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
へいへい、分かりましたよ。しかし、そんなに自信満々で話せるストーリーがあるんなら、もっと早く教えてくれてもいいんじゃねぇのか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
俺は、笑怒顔(命名、俺)でいかにも楽しそうに、イラストをつけてまでストーリーを説明しているハルヒに逆らうことが出来ず、また、逆らうつもりも途中でなくなった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
まあ、何だ、こいつが考えたストーリーだ。これなら、仕上げて早々、没なんて事はないだろうしな。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
｢・・・・・・・最後は、中国を統一したけど、実はそれは夢でした、ってわけ。ま、ざっとこんな感じね。じゃあ、これを元に書きなさい。｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
ハルヒは、イラスト付きのあらすじを俺に手渡すと、そのまま俺の背後にパイプ椅子を移動させて陣取った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">｢・・・・・・｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">｢・・・・・・どうしたの？早く書きなさいよ。｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">いや、とりあえず、そこから立ち退いてもらえますか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">やりにくいったら、ありゃしない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
｢いいじゃない。こうでもしないと、あんた書かないでしょ。いいから、早く始めなさい！｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ピーチクパーチクわめくハルヒを背後に置いて、俺は嫌々、キーボードに手を付けた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">う～ん、文章というものは、書き出しが難しいんだよな、書き出しが・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
｢・・・ま、あんたの力じゃ、所詮こんなもんね。いいわ、あとは、クライマックスだけね。もう遅いし、今日はこれくらいにしましょう。｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ふう・・・疲れた・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
あれから、ハルヒの｢ちょっと、それ、もっといい表現できないの！？｣とか、｢それじゃあ、全く臨場感ってもんがないじゃない！迫力が足りないのよ、迫力が！｣とかいった、ダメ出しを何発も受け、瀕死寸前になりつつも、何とか俺の原稿が８割方完成した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>残りは、主人公の男が軍を引き連れて、蜀の都、成都に攻め込み、蜀の軍師、諸葛亮孔明と頭脳戦を繰り広げるシーンを書くだけだ。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">全く、俺は一体何を書いているんだろうね。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">帰り道の下り坂。辺りは、もうだいぶ薄暗くなっている。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">１番前には、ハルヒと朝比奈さんがいて、何やら談笑している。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その後ろでは、長門がとぼとぼと歩いている。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">鞄がやけにふくれているのは、ノートパソコンが入っているからだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうやら、家で原稿の続きを書くらしい。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>そして、１番後ろを俺は、フラフラと歩いている。</p>
<p> </p>
<p>谷口なら、「全く、今日はいつもみてる番組があるのによ～！」とか言って、真っ先に帰ってしまった。</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
さあ、今日の晩飯は何だろうな。出来れば軽いモンがいい。さっきから、激しい頭痛に襲われているからな。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そんなどうでもいいことを考えていると、そのうち光陽園駅前に辿り着いた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ここで、みんなとはお別れだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>｢じゃ、明日も気合入れて書くのよ！もう、明日中に仕上げちゃいたいからね。｣</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、ハルヒ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">｢じゃあね、キョン君。お疲れ様。｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、朝比奈さん。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">｢・・・・・・｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">は、長門の沈黙だ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">さっきから長門は、気のせいか、ぼーっとしているような気がする。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">というか、小さな表情の変化すら全く見られない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうした？いつの間にか、元の長門に戻ったか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">｢どうした、長門？何か、気になることでもあったか？｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">俺の声に長門は一瞬ビクッとしたが、それでも表情は変えずに、</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">｢・・・何でもない。｣</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、呟いた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうか、それならいいんだが・・・・・・」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
俺の言葉に沈黙で応答した長門は、そのまま逃げるようにマンションの方へと向かっていった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">う～ん、何なんだ？気になるな・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「少しお願いしたいことが御座いましてね。電話させていただきました。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">疑問をお土産に帰宅した俺のもとに、古泉からの電話がかかってきた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">お前のお願いは、大体厄介事ばかりなんだがな・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「まあ、そう仰らずに。今回のは、簡単な頼み事ですよ。あなたの先ほどの話を『機関』に報告したところ、我々は新たに『異時空間内閉鎖空間対策本部』というものを設置することになりました。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
異時空間内閉鎖空間対策本部？何だ、その無駄に長くて、分かりにくい上に、意味もそのまんまという、読者に不親切な名前は？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうですか？僕としては重要機関みたいな感じで少し気に入っているのですが。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
電話越しにでも顔が想像できそうな声で、いかにも疑問げにこう言った古泉は、いくらか声のトーンを抑えて、さらにこう続けた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「もう、お察しかもしれませんが、その本部の部長に僕が任命されました。臨時の部なのでそれほど名誉なことではありませんが。我々は、何らかの方法でその別時空に向かい、閉鎖空間内へと侵入するつもりです。そこに神人が例え存在していないのだとしてもね。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そうかそうか、それはご苦労なこった。まあ、せいぜい死なない程度に頑張ってくれ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「ずいぶん冷たい言い方をなされますが、今回の任務はあなたが大きな鍵を握っているんですよ？あなたは昨日、こちらの世界に一時的に来ていた『長門有希』とコンタクトを取っています。となれば、長門さんがどうやって別の時空に戻ったのかご存知のはずです。違いますか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">なるほど。俺が方法を教えてやらないと、お前らは何も出来ないってことだな？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そういうことです。どうです？何か知っていることでも？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>
俺は、昨日、長門の部屋で見た、何やらよく分からないカラフルな空間『パラレルゲート』のことと、その向こうにあった、あまりにもミスマッチな襖のことを話した。</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">あの襖の向こうに長門は消えていった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ってことは、あの向こうがおそらく別世界へとつながっているんだろう。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「だが、長門はあのゲートは変な力を持った奴は通れないとか言ってたぞ。お前らみたいな超能力者は大丈夫なのか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「ああ、その点でしたらご心配なく。我々は、普段は何の力も持たない普通の一般人ですからね。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
完璧に執事やメイドや、気が付いたら警官にさえなっているような人々が、果たして普通の一般人と言えるのだろうか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「まあ、そうかもしれませんが、おそらくゲートに拒絶されるような力を持っているとは、認識されないでしょう。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
俺は、「突然お尋ねしたら、ひょっとしたら入れてくれないかもしれませんからね。」という、古泉の無駄な心配のせいで、長門の家まで同伴することになった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何だ？俺が着いていっても同じことじゃないのか？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
とりあえず、長門に電話してから行こうと思ったが、誰も出なかったので、そのまま向かうことにした。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ふう・・・まさか、２日連続行くはめになろうとはね・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ＰＵＬＬＬＬＬＬＬＬＬＬ</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋の電話が鳴る。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しかし、私はそれに出なかった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、いうより気が付いていなかった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>頭の中で、今日の部室の中での、彼と涼宮ハルヒの様子を思い浮かべる。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何でだろう？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">この事を思うと、胸が締め付けられるような思いがする。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">涼宮ハルヒのことが羨ましくて仕方がない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">今まで、涼宮ハルヒのことを羨ましく思ったことがないと言えば、それは嘘になる。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>私は、いつもの４人で集まった時に見せるあの明るい笑顔や、何でもそつなくこなすところを何度も見てきた。</p>
<p>それに対しては、尊敬の思いもあったし、羨望の思いもあった。</p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しかし、今回のは、それとは違うのだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
何か、それよりももっと苦しくて、辛いような、とにかく今まで経験したことのないようなものだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼が、そんな私のことを心配してくれているのも、さっきの帰り道で分かった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しかし、私はろくに返事もせずに、ただ逃げるようにして立ち去ってしまった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうしたんだろう、私・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">しばらく、ぼーっとしていた私は、不意に鳴ったインターホンのベルの音で我に返った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">誰だろう？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私は、パネルを操作し、そこから聞こえてきた声に驚愕した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ああ、長門か。俺だ。ちょっと、用があってよ。入ってもいいか？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">え、彼？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼が、私に何の用なの？</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
私は、心臓の鼓動が高まるのを感じながらも、ボタンを押して彼をマンションの中へと通した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「よう、今日も来ちまったな。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「今晩は、長門さん。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>彼は、何故か古泉一樹を引き連れてやって来た。</p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それだけじゃない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その後ろには、誰だか分からないが、清楚な感じの女の人が立っている。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「森園生と申します。私は、古いｚ・・・失礼。一樹の従姉にあたるものです。よろしくお願いします。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そう言うと、彼女は深々と礼をした。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">茶道か何かをやっているのだろうか、とても綺麗な礼だった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私の心臓の鼓動が少し収まった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何だ、彼１人じゃないんだ・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼は、何やら戸惑う素振りを見せつつも、言葉を選ぶようにして、こう切り出した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「えっと・・・あのな、長門。この２人は、長門、あ、もう１人の方な。そいつのアシスタントなんだよ。アシスタントというか、仲間というか・・・とりあえず、あいつがハルヒの力を消すのを手伝いに来たんだ。それで、向こうの世界に行かないといけないんだが、あっちとつながってるのは、この世界じゃ、どうやらこの部屋だけらしいんだ。だから、この人達をちょっと、中に入れてもらえないか？襖の奥のよく訳の分からん場所に入れてもらうだけでいいんだ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「すみませんね、夜分遅くに。ご迷惑をお掛けします。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そう言って、笑顔と共にお辞儀をした古泉一樹と、森という女性を見た。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そういうことなら、別にいいけど・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・・・・どうぞ。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「すみません。失礼します。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そういうと、２人は部屋の中へと入っていった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>その後を、私と彼はついていく。</p>
<p> </p>
<p> </p>
</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
「では、行って参ります。遅くとも、明日中には帰れると思います。ご心配なく、涼宮さんの方には、明日は親戚の用事で学校をお休みすると伝えておきましたので。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「おう、気をつけてな。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼とこう言葉を交わした後、２人は襖の奥にある、もう１つの襖の奥へと消えていった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ふう・・・すまんな、突然押しかけちまって。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そう言うと、彼は周りを見渡した。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あれ、夕食まだか？邪魔しちまったな。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">邪魔？別に、邪魔ではない。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それどころか、夕食を食べていって貰いたいくらいだ。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「じゃあ、俺、帰るわ。また、明日な。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そう言って、彼は玄関の方へと歩いて行った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ちょっと待って！もうちょっと一緒に・・・・・・。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そう思って声を掛けてみた。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あ・・・・・・」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それだけしか声に出せなかった。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「どうした？」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">彼が、きょとんとした顔をこちらに向ける。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">えっと・・・・・・</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「・・・何でもない。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうか、じゃあな。」</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その言葉を残し、彼は玄関の外へと出て行った。</div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>
<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">
<p>何故だか、自分にものすごく腹が立った。</p>
<p> </p>
<p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　</p>
</div>
<p>　　　～<a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3727.html" title="Different World's Inhabitants YUKI～カヨウビ(その一)～ (2s)">Different World's
Inhabitants YUKI～カヨウビ(その一)～</a>へ続く～</p>