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遠距離恋愛 第十七章 閉鎖空間」(2020/03/09 (月) 02:17:38) の最新版変更点

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<p>第十七章 閉鎖空間<br>  <br> 月も星もない、灰色の空。<br>  <br></p> <hr>  <br> がばと跳ね起きて、あたりを見渡す。見覚えの無い灰色のビル街、ホテル。直行する道路。<br> 俺はそのど真ん中に仰向けになっていた。<br>  <br> ……閉鎖空間。<br>  <br> やれやれ。<br>  <br> またここに来ちまった。通算3回目……いや、橘のアレも含めると4回目か?いい加減にして貰いたいね。<br> とりあえず、自分の服装を確認する。<br> ブレザー、ネクタイ……って、あれ?これ北高の制服じゃねーか。ああ、そっか、ハルヒは今の高校の制服は知らなかったんだっけか。だから俺今、北高ブレザーなのな。<br>  <br> 次に場所の確認だが……ここ、どこ?<br>  <br> 以前住んでいた場所じゃない。もちろん、今住んでいるところでもない。あっちにはこんな高いビルとか、こんな豪華なホテルとかはないからな。<br>  <br> 豪華なホテル……??<br>  <br> そうか。アレは確か、ハルヒや国木田達が投宿していたホテルだ。<br> 古泉が手配したとか言う、ハルヒが打ち上げパーティを開いたホテル。<br>  <br> なるほどな。俺が今、どこに行けばいいか分かったぜ。<br>  <br> ホテルの入り口をくぐり、フロントに向かう。もちろん、対応する人などいないことは分かっている。<br> 目標はフロントの中のPC端末だ。アレには、今日行われたパーティのデータがあるはずだ。<br>  <br> 4階の「鶴の間」か。早速俺はそこに向かった。<br>  <br> 「鶴の間」とやらは、それほど大きな宴会場ではなかった。<br> クラッカーの中身や倒れた紙コップ、テーブルに置かれた食事……だったものが散乱している。<br> いかにもパーティ終了直後って感じだ。<br>  <br> 正面に掲げられている大きな垂れ幕に俺は「第一回!SOS団受験終了記念パーティ」とある。<br>  <br> 第一回て。アイツの考えることは、一般人たる俺には未だによく分からん。<br>  <br> しかも重大発表だって?何を発表したんだ?<br> ハルヒは古泉とラブラブ?だそうだし、同じ大学へ行くんだろ。多分、長門も同じだろうな。<br> 朝比奈さんは……大学は違うけどあの人のことだ、何だかんだで一緒にいるだろう。<br>  <br> ……で、何故俺がまたこんな所に呼ばれなければならんのだ?<br>  <br> もうSOS団には俺の居場所は無いってのにさ。<br>  <br> それはともかく、ハルヒが居ないのは何故だ?多分ここだと思っていたんだが。<br> 色々と会場内を探し回ってみたものの、ハルヒは見つからなかった。参ったな。<br>  <br> そう思ったとき、胸ポケットの携帯が震えた。聞き慣れたメロディが物音一つしない閉鎖空間に響き渡る。<br>  <br> ……携帯の電源は切っていたはずだが。<br>  <br> 着信:涼宮ハルヒ<br> 「……もしもし」<br> 「……」<br> 「ハルヒか?」<br> 「……やっと出てくれた」<br> 「……ああ」<br> 「どうしちゃったの?どうしてパーティに来てくれなかったの?」<br> 「……メールした通りさ」<br> 「ウソ!だって、発車時刻まで3時間もあったじゃない!」<br> 「……」<br> 「そんなに佐々木さんとデートしたかったの?まあいいわ。今日は大事な発表があったのよ。それなのに」<br> 「ハルヒ。今どこにいる?」<br> 「……一番上の階」<br> 「スイートルームか」<br> 「うん」<br> スイートルーム。各国のVIPや金持ちの芸能人、もしくは新婚さんが泊まる部屋。<br> VIPでも新婚さんでもない俺が、足を踏み入れて良い部屋ではないな。<br> 「そうか」<br> 「……来てくれないの?アタシ、キョンのこと待ってるんだよ?」<br> 「ハルヒ」<br> 「……何よ」<br> 「何が不満なのかは、今の俺には分からん。だから、今の俺が言えるのはこれだけだ……少しは古泉のことを信用してやれ」<br> 「な……」<br> 「おめでとう。お幸せに『涼宮』」<br> 「キョ」<br>  <br> 俺は携帯を切った。それと同時に、強烈なめまいが俺を襲い……<br>   <hr>  <br> ガタン。<br>  <br> 気付くと、夜行列車の簡易ベッドの中だった。時間を確認すると、もう20分もすれば地元の駅に到着するような時間だ。俺は大きく伸びをして、カーテンを開けた。<br>  <br> 「おはよう、キョン」<br> 向かいのベッドには、既に出発準備を整えた佐々木が腰掛けていた。<br>  <br> 「……酷い顔だ。まずは顔を洗って、その涙の跡を消してくることだな。一緒に歩いていたら、僕が誤解されかねない」<br> 涙のあと?俺は寝ながら泣いていたのか?<br>  <br> 「キミは気付いていないようだが、一晩中うなされていたようだ。おそらくはその名残だと思うけどね。さあ、もうすぐ到着なんだから、早く行った行った!」<br> 佐々木に背を押されて、俺はタオルと歯磨きセットを持ったまま廊下に押し出された。<br>  <br> 確か昨日は閉鎖空間でハルヒの相手をして……その後は覚えていない。多分、何か夢見が悪かったんだろう。<br> やっとあのことにも整理が付いてきたところだからな。<br> 車両備え付けの洗面台の順番を待ちながら、俺はそんなことを考えていた。<br>   <p> </p> <ul> <li><a title="遠距離恋愛 第十八章 佐々木 (15s)" href= "http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3582.html">第十八章 佐々木</a>へ</li> </ul>
<p>第十七章 閉鎖空間<br />  <br /> 月も星もない、灰色の空。<br />  </p> <hr /> <p> <br /> がばと跳ね起きて、あたりを見渡す。見覚えの無い灰色のビル街、ホテル。直行する道路。<br /> 俺はそのど真ん中に仰向けになっていた。<br />  <br /> ……閉鎖空間。<br />  <br /> やれやれ。<br />  <br /> またここに来ちまった。通算3回目……いや、橘のアレも含めると4回目か?いい加減にして貰いたいね。<br /> とりあえず、自分の服装を確認する。<br /> ブレザー、ネクタイ……って、あれ?これ北高の制服じゃねーか。ああ、そっか、ハルヒは今の高校の制服は知らなかったんだっけか。だから俺今、北高ブレザーなのな。<br />  <br /> 次に場所の確認だが……ここ、どこ?<br />  <br /> 以前住んでいた場所じゃない。もちろん、今住んでいるところでもない。あっちにはこんな高いビルとか、こんな豪華なホテルとかはないからな。<br />  <br /> 豪華なホテル……??<br />  <br /> そうか。アレは確か、ハルヒや国木田達が投宿していたホテルだ。<br /> 古泉が手配したとか言う、ハルヒが打ち上げパーティを開いたホテル。<br />  <br /> なるほどな。俺が今、どこに行けばいいか分かったぜ。<br />  <br /> ホテルの入り口をくぐり、フロントに向かう。もちろん、対応する人などいないことは分かっている。<br /> 目標はフロントの中のPC端末だ。アレには、今日行われたパーティのデータがあるはずだ。<br />  <br /> 4階の「鶴の間」か。早速俺はそこに向かった。<br />  <br /> 「鶴の間」とやらは、それほど大きな宴会場ではなかった。<br /> クラッカーの中身や倒れた紙コップ、テーブルに置かれた食事……だったものが散乱している。<br /> いかにもパーティ終了直後って感じだ。<br />  <br /> 正面に掲げられている大きな垂れ幕に俺は「第一回!SOS団受験終了記念パーティ」とある。<br />  <br /> 第一回て。アイツの考えることは、一般人たる俺には未だによく分からん。<br />  <br /> しかも重大発表だって?何を発表したんだ?<br /> ハルヒは古泉とラブラブ?だそうだし、同じ大学へ行くんだろ。多分、長門も同じだろうな。<br /> 朝比奈さんは……大学は違うけどあの人のことだ、何だかんだで一緒にいるだろう。<br />  <br /> ……で、何故俺がまたこんな所に呼ばれなければならんのだ?<br />  <br /> もうSOS団には俺の居場所は無いってのにさ。<br />  <br /> それはともかく、ハルヒが居ないのは何故だ?多分ここだと思っていたんだが。<br /> 色々と会場内を探し回ってみたものの、ハルヒは見つからなかった。参ったな。<br />  <br /> そう思ったとき、胸ポケットの携帯が震えた。聞き慣れたメロディが物音一つしない閉鎖空間に響き渡る。<br />  <br /> ……携帯の電源は切っていたはずだが。<br />  <br /> 着信:涼宮ハルヒ<br /> 「……もしもし」<br /> 「……」<br /> 「ハルヒか?」<br /> 「……やっと出てくれた」<br /> 「……ああ」<br /> 「どうしちゃったの?どうしてパーティに来てくれなかったの?」<br /> 「……メールした通りさ」<br /> 「ウソ!だって、発車時刻まで3時間もあったじゃない!」<br /> 「……」<br /> 「そんなに佐々木さんとデートしたかったの?まあいいわ。今日は大事な発表があったのよ。それなのに」<br /> 「ハルヒ。今どこにいる?」<br /> 「……一番上の階」<br /> 「スイートルームか」<br /> 「うん」<br /> スイートルーム。各国のVIPや金持ちの芸能人、もしくは新婚さんが泊まる部屋。<br /> VIPでも新婚さんでもない俺が、足を踏み入れて良い部屋ではないな。<br /> 「そうか」<br /> 「……来てくれないの?アタシ、キョンのこと待ってるんだよ?」<br /> 「ハルヒ」<br /> 「……何よ」<br /> 「何が不満なのかは、今の俺には分からん。だから、今の俺が言えるのはこれだけだ……少しは古泉のことを信用してやれ」<br /> 「な……」<br /> 「おめでとう。お幸せに『涼宮』」<br /> 「キョ」<br />  <br /> 俺は携帯を切った。それと同時に、強烈なめまいが俺を襲い……<br />  </p> <hr /> <p> <br /> ガタン。<br />  <br /> 気付くと、夜行列車の簡易ベッドの中だった。時間を確認すると、もう20分もすれば地元の駅に到着するような時間だ。俺は大きく伸びをして、カーテンを開けた。<br />  <br /> 「おはよう、キョン」<br /> 向かいのベッドには、既に出発準備を整えた佐々木が腰掛けていた。<br />  <br /> 「……酷い顔だ。まずは顔を洗って、その涙の跡を消してくることだな。一緒に歩いていたら、僕が誤解されかねない」<br /> 涙のあと?俺は寝ながら泣いていたのか?<br />  <br /> 「キミは気付いていないようだが、一晩中うなされていたようだ。おそらくはその名残だと思うけどね。さあ、もうすぐ到着なんだから、早く行った行った!」<br /> 佐々木に背を押されて、俺はタオルと歯磨きセットを持ったまま廊下に押し出された。<br />  <br /> 確か昨日は閉鎖空間でハルヒの相手をして……その後は覚えていない。多分、何か夢見が悪かったんだろう。<br /> やっとあのことにも整理が付いてきたところだからな。<br /> 車両備え付けの洗面台の順番を待ちながら、俺はそんなことを考えていた。<br />  </p> <p> </p> <ul> <li><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3582.html" title="遠距離恋愛 第十八章 佐々木 (15s)">第十八章 佐々木</a>へ</li> </ul>

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