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そんな日曜日 (前編)」(2007/10/14 (日) 17:07:40) の最新版変更点

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<p>桜の花が散り始め、景色がピンク色から緑色に染まりかけてきた頃の日曜日。<br> 今日はSOS団の活動がない。<br> だが、俺はいつもの駅前だある人を待っていた。<br> 現在、時刻は8時30分。待ち合わせ時間の9時まで、まだ余裕がある。<br> その場で踊りだしたい気持ちを抑え、ある人を待つ。<br> いかんな…顔がニヤケてしまう…これでは古泉になってしまうじゃないか。<br>  <br> 俺が内なる自分と悶々と戦っていると、声をかけられた。<br> 「ご、ごめんなさい。遅れちゃって。寝癖がなかなか直らなくて…。」<br> お分かりだろうか?<br> そう、俺が待っていたのは、地上に舞い降りた俺だけの天使様、<br> 朝比奈みくるさんだ。<br>  <br> 昨夜、朝比奈さんから電話があった。<br> 「もしもし、遅くにごめんなさい。あの、その、もし明日よければ、一緒にデパートにいきませんか?今のお茶が切れちゃって、新しいお茶をかおうと思っているんですけど…」<br> 俺は二つ返事で了承したね。毎日毎日、後ろの席にいる、黄色いカチューシャを着けた団長のせいで、疲れているんだ。その疲れきった心を癒してくれるのは、彼女しかいない。<br> ベッドに入っても、遠足前の小学生の様に興奮して全く寝ていないことことなんか、ミジンコ並にどうでもいいことだぜ!<br>  <br> 「そんなこと全く気にしなくていいですよ。こっちは、いつも遅れていますから」<br> 事実は少し違うがな。俺が遅いわけではない。他の4人が早すぎるんだ。<br> まっ、どうでもいいや。今はそんなこと。<br> 「うふふ、そういえばそうですよねぇ。じゃ、早速行きましょうか」<br> あぁ、その笑顔。まさしく天使の微笑みです。俺の心が浄化されていくようだ。しかし、いまさりげなく馬鹿にしませんでしたか?<br>  <br>  <br>  <br> 俺たちは、デパートまでの道をカップル(妄想)のように歩いた。<br> 「しかし、今日は何で俺を誘ったんですか?ハルヒとか鶴屋さんとき、他に誘う人はいなかったんですか?」<br> 「鶴屋さんは、どうしても外せない用事があるらしいです。涼宮さんは、変なコスプレショップに連れて行かれそうだし、長門さんは、会話が続かなくて気まずくなりそうだし、古泉くんは、女のわたしが誘っても来てくれませんし…」<br> 「というと、俺が余っていたから、仕方なくということですか?」<br> 「いえっ、あっ、違います。キョンくんと一緒にいきt……やん、その、禁則事項です…」<br> 何か嬉しい言葉が聞こえたような。っていうか、今の、禁則事項なんですか?<br>  <br> 「そんな、こっちは誘ってくれただけで大満足ですよ」<br> 「ありがとう。最近、わたし空気だから、少しは何か行動しないといけなくて…」<br> 「空気ってどういうことですか?」<br> 「禁則事項です♪」<br> 空気って何のことだ?朝比奈さんの巨大なアレのことか?まさか、あの大きさは風船みたいに空気を入れているからなのか?よし、朝比奈さんには悪いが、今度プスッとやってみよう。<br>  <br> もうすぐで、デパートに着くという頃、後ろから、<br> 「キョン?」<br> という声が聞こえた。空耳ではない。確かに聞こえた。<br> 考えなくても分かる。こんな最悪なタイミングで話しかけてくる奴なんて、世界中、いや、宇宙を探しても1人しかいない。俺の脳裏に黄色いカチューシャがちらつく。<br> 神様、助けてくれ!<br> いや、神様はアイツか。ここは、あきらめるしかないようだ…渋々振り返るとそこにいたのは、我らが団長、涼宮ハルヒ。<br>  <br> ではなく、佐々木だった。<br>  <br> 何だ、神様違いか。でも、面倒くさい状況になるのは、確実だ。<br>  <br> 「やっぱり、キョンか。偶然だな。こんな所で何をしているんだい?おっと、失礼。デート中だったか。涼宮さんは知っているのかい?君は青春をしっかりと謳歌しているようだね。そんな君が羨ましいよ」<br> 何か棘のある言い方だ。それより、何故ハルヒがでてくる。<br> 「デパートに買い出しだ。それに、何でお前もここにいるんだ?」<br> 「僕がここにいたら悪いのかい?それに君が買買い出しと言うなら、僕も買い出しだ。九曜さんの服をね」<br> 佐々木に後ろから、黒い物体が姿を表わした。<br> いたのか、九曜…言われるまで全く気付かなかった。朝比奈さんも同様のようだ。<br> 「九曜さんは、いつも光陽女子学院の制服しか着てこなくてね。というか、それしか持っていないらしいんだ。<br> 橘さんが女の子はもっとお洒落をするべきですと言って、ここに服を買いにくることになったのことは、いいんだが、言い出した本人に急に用事ができてしまってね。そこで、代わり僕が来たというわけさ」<br> …どこの長門だ、それは。<br> 「--おしゃれ--する」<br> そうかい。そんなことそっちで勝手にやっといてくれ。<br>  <br> 「そうだ、君たちと僕たちの目的の場所は同じだ。ならば、ともに行動しないか?大勢の方が楽しいだろうし、友好を深めるといった意味でもね」<br> 佐々木が提案した。<br> 「わたしなら全然構わないですよ。大勢の方が楽しいと思います」<br> 「--ぐっど--あいでぃあ」<br> 「満場一致で決まりのようだね。そうと決まったら、早く行こう。時間は短いんだ。無駄にはできない」<br> おいっ、俺はまだ何も言ってないぞ。勝手に決めるな。せっかくの朝比奈さんとのデートだ。邪魔されてたまるか!朝比奈さんを抱えてトンズラするしかないようだ。<br> 朝比奈さんの手をとり、逃げようとした瞬間、体が動かなくなった。いつぞやの朝倉の時みたいだ。<br> 九曜が何か小声で呟いている。そうかあいつも宇宙人だったな。逃げることは不可能のようだ。仕方なく、朝比奈さんとのデートをあきらめ、共に行動することにした。<br> ふと、体が自由になり、九曜を睨む。それに気付いた九曜の顔は、ほんの少しだが赤くなった。<br> 長門の表情を読み取れる俺だから、分かったのだ。<br> 何考えてんだ、あいつ。<br>  <br> しかし、話しかけてきたのが、ハルヒじゃなかったことだけが、せめてものの救いだな。<br>  <br> がんばれ、俺。やれやれだ。<br>  <br> デパートに着いた俺たちは、最初にお茶を買いに行くことにした。お茶売り場に着くと朝比奈さんの目の色が変わった。<br> ミクルビームはでないようだな…<br> 俺はお茶のことがさっぱり分からないので、売り場の外で待っている。佐々木も、お茶に興味があったようで、朝比奈さん、店員との3人で、話に花を咲かせている。九曜はというと、俺の横で、ボーッと突っ立ている。<br> お前忘れられていないか?お前の服を買いに来たんだろ…<br> ただ待っているのも、暇なので、九曜に話しかけた。<br> 「なぁ、周防。あの2人しばらく動きそうにないから、俺たちは休憩がてらソフトクリーム食いに行かないか?<br> 「--おごり--なら」<br> ちっ、ちゃっかりしてやがる。まあ、こっちが誘ったからそのつもりだったけどな。<br>  <br> お茶売り場を後にし、ソフトクリーム売り場まで歩く。<br> 後ろをついてくる九曜は、すれ違う人々の顔を穴があくほど見ている。<br> 人の顔見て何がおもしろいのだろうね。俺にはよくわからん。俺が興味あるのは、朝比奈さんと長門。…そして、たまにハルヒだな。<br>  <br> ソフトクリーム売り場に着き、何にする考えた。バニラにしようか、チョコにしようか。<br> 参考までにに九曜は何にするのか訊いてみた。すると、九曜は真っ直ぐと指差した。その先には、「ワカメ味」とかかれていた。いや、それ絶対不味いって。<br> 「--かれー--おでん--もいい。--でも--やっぱり--わかめ--がいい」<br> 意味が分からん。っていうか、カレー味もおでん味も駄目だろ。<br> でもまあ、九曜本人がそれがいいって言っているので、それを買ってやることにする。<br> 俺はバニラにしようっと。<br> 2つのソフトクリームを買い、黄緑色のやつを九曜に渡す。受け取った九曜は、礼も言わずにそれを舐めた。<br> 「--まずっ」<br> おい、不味いって何だよ。そりゃあ、不味いのはわかる。だって、ワカメ味だもんな。でも少しぐらい、奢ってやった俺の気持ちくらい考えてくれ…<br> 俺は早々と自分のを食べ終え、九曜が食べてる姿を見ていた。そんな俺を見て、九曜がソフトクリームを突き出してきた。どうやら、俺がワカメ味を欲しくて見ていた、と勘違いしたようだ。<br> 「--あじみ--する?」<br> 欲しいとは思っていなかったが、興味はある。素直に九曜の好意(元は俺の金だが)を受け取り、舐めてみた。<br> ……うん、不味い。<br> こんなもの誰が考えたんだ!ありえねぇだろ!カレー味もおでん味もそうだ、この店少し、いや、かなりおかしいんじゃないのか?<br> そんなことを考えていると、長門と朝倉と喜緑さんの3人が、ナイフを持って襲ってくる幻を見た。<br> 何だ今のは?めちゃめちゃ恐いじゃないか…<br> 朝倉はともかく、無表情でナイフを突き出してくる長門にはかんべんしてくれ…<br> そして、次に見えたのは、笑顔ながらも、禍々しいオーラをはなつ佐々木の幻。<br> やけにリアルだな。本物みたいだな。……あっ、本物だ…<br>  <br> 「どういうことか説明してくるかな、キョン?」<br> 「何を説明すりゃいいんだ?」<br> 「さっきのことだよ。君は九曜さんから、ソフトクリームを貰ったね?」<br> 「貰ったっていうか、あれは俺が買ってやったものだ。お前も欲しいのか?」<br> 「いや、遠慮しとくよ。それよりも、君が貰ったのは、どういう状態だったかっていうことだよ」<br> 「はあ?何のことだか、さっぱり分からん」<br> 「まだ分からないのかい?君は九曜さんの食べかけのを貰い、それを食べた。それがどういうことか分かると思うんだが?」<br> 「何だよ、何が言いたい?」<br> 「もういい。君に質問した僕が馬鹿だった。簡潔に言おう。君たち2人は、1つのソフトクリームを食べあう、カップルに見えたというわけだ」<br>  <br> あっ、確かに言われてみれば、そう見えるかもしれないな。だが、こいつは、俺と九曜がそういう関係でないことを知っている。怒る理由なんてないはずだ。何で怒ってるんだ?<br>  <br> 「俺らがカップルじゃないことは、お前がよく知っているだろ。何でそんなにツンツンしているんだ?」<br> 「--わたし--たちは--ふうふ--なの」<br> ……。<br> ダメだこいつ…何とかしないと…<br>  <br> 「そんなぁ!キョンくんそうなんですかぁ?ひどいですぅ。何で黙ってたんですかぁ!」<br> そんなことあるわけないじゃないですか!っていうか朝比奈さん、いつからいたんですか?<br> 「ここまで恋仲が進んでいたとは…。キョン、九曜さんを大事にしてやってくれよ」<br> おい、何か変な方向に話が進んでいるぞ。<br> 「--しんこん--りょこう--はわい」<br> もう嫌だ…帰っていいかな……<br>  <br> 俺たちは今、デパートの最上階にあるレストランにいる。<br> というのも佐々木が、<br> 「君は、乙女の大事なものを踏みにじった。しかも3人もだ。この代償は高くつくよ」<br> といってきたのがここ。<br> 償いたいのなら、昼飯ご馳走しろってどっか団長と同じようなことい言いやがる。代償はでかいって、言ってた割には、昼飯ぐらいで済むのかよ。まあ、俺の財布には大打撃だ。<br>  <br> 朝比奈さんは、もともと少食だし、あまり被害は大きくない。それでも、しっかりとデザートを注文しておられるが。佐々木もどちらかというと少食のようだ。そして、問題の九曜。予想はしていたが、お前も<br> 長門並に大食いなんだな。宇宙人はみんなそうなのか?<br>  <br> 食事が一段落した頃(九曜はまだ食ってるが)、佐々木が話し出した。<br> 「このあとはどうする?どこか行きたい所はあるかい?」<br> 「行きたい所って、九曜の服を買いに来たんじゃなかったのか?」<br> 「それは、またの機会にするよ。僕と九曜さん、そして橘さんがいる時にね。今は君たちがいるから無理に付き合わすわけにはいかないだろう」<br> 「周防はそれでいいのか?」<br> 「--ふぃい」<br> 口の中の物を飲み込んでから言え。<br> 「そうか、なら別に気にすることもないな。朝比奈さんはどこか行きたいところってありますか?」<br> 「ふぇっ、あっ、特にないです」<br> 「キョンはどこかあるのかい?」<br> と佐々木。<br> 「俺も特にない。お前はどうなんだ?」<br> 「僕かい?そうだな、ゲームセンターなんてどうだい?」<br> 意外だ。佐々木がゲーセンに行きたいと言い出すなんて。<br> 「僕はまだ一度もゲームセンターという所に行ったことがないんだ。勉強が忙しいということもあるが、一緒に行く友達がいないんだ。1人で行くという手もあるんだが、ああいう所に1人で行くのは少し危険がある。一応僕は女だしね」<br> そりゃ、美人なお前がゲーセンにいたら、ナンパされまくりだらうな。谷口なら間違いなくナンパするな。<br> 「で、僕の案は認めてもらえるのかい?」<br>  <br> 3人とも、佐々木の案に賛成し、ゲーセンに行くことになった。昼食を終え、俺は会計をするために、レジへと向かう。<br> ……。<br> 絶句。何だよ、これ。<br> なぜデパートのレストランごときで、諭吉を1人手放さなくてはいけないのだ。<br> 分かっている、この損害の原因はあの真っ黒宇宙人だ。くそっ、覚えてろよ!<br>  <br>  </p>
<p>桜の花が散り始め、景色がピンク色から緑色に染まりかけてきた頃の日曜日。<br> 今日はSOS団の活動がない。<br> だが、俺はいつもの駅前だある人を待っていた。<br> 現在、時刻は8時30分。待ち合わせ時間の9時まで、まだ余裕がある。<br> その場で踊りだしたい気持ちを抑え、ある人を待つ。<br> いかんな…顔がニヤケてしまう…これでは古泉になってしまうじゃないか。<br>  <br> 俺が内なる自分と悶々と戦っていると、声をかけられた。<br> 「ご、ごめんなさい。遅れちゃって。寝癖がなかなか直らなくて…。」<br> お分かりだろうか?<br> そう、俺が待っていたのは、地上に舞い降りた俺だけの天使様、<br> 朝比奈みくるさんだ。<br>  <br> 昨夜、朝比奈さんから電話があった。<br> 「もしもし、遅くにごめんなさい。あの、その、もし明日よければ、一緒にデパートにいきませんか?今のお茶が切れちゃって、新しいお茶をかおうと思っているんですけど…」<br> 俺は二つ返事で了承したね。毎日毎日、後ろの席にいる、黄色いカチューシャを着けた団長のせいで、疲れているんだ。その疲れきった心を癒してくれるのは、彼女しかいない。<br> ベッドに入っても、遠足前の小学生の様に興奮して全く寝ていないことことなんか、ミジンコ並にどうでもいいことだぜ!<br>  <br> 「そんなこと全く気にしなくていいですよ。こっちは、いつも遅れていますから」<br> 事実は少し違うがな。俺が遅いわけではない。他の4人が早すぎるんだ。<br> まっ、どうでもいいや。今はそんなこと。<br> 「うふふ、そういえばそうですよねぇ。じゃ、早速行きましょうか」<br> あぁ、その笑顔。まさしく天使の微笑みです。俺の心が浄化されていくようだ。しかし、いまさりげなく馬鹿にしませんでしたか?<br>  <br>  <br>  <br> 俺たちは、デパートまでの道をカップル(妄想)のように歩いた。<br> 「しかし、今日は何で俺を誘ったんですか?ハルヒとか鶴屋さんとき、他に誘う人はいなかったんですか?」<br> 「鶴屋さんは、どうしても外せない用事があるらしいです。涼宮さんは、変なコスプレショップに連れて行かれそうだし、長門さんは、会話が続かなくて気まずくなりそうだし、古泉くんは、女のわたしが誘っても来てくれませんし…」<br> 「というと、俺が余っていたから、仕方なくということですか?」<br> 「いえっ、あっ、違います。キョンくんと一緒にいきt……やん、その、禁則事項です…」<br> 何か嬉しい言葉が聞こえたような。っていうか、今の、禁則事項なんですか?<br>  <br> 「そんな、こっちは誘ってくれただけで大満足ですよ」<br> 「ありがとう。最近、わたし空気だから、少しは何か行動しないといけなくて…」<br> 「空気ってどういうことですか?」<br> 「禁則事項です♪」<br> 空気って何のことだ?朝比奈さんの巨大なアレのことか?まさか、あの大きさは風船みたいに空気を入れているからなのか?よし、朝比奈さんには悪いが、今度プスッとやってみよう。<br>  <br> もうすぐで、デパートに着くという頃、後ろから、<br> 「キョン?」<br> という声が聞こえた。空耳ではない。確かに聞こえた。<br> 考えなくても分かる。こんな最悪なタイミングで話しかけてくる奴なんて、世界中、いや、宇宙を探しても1人しかいない。俺の脳裏に黄色いカチューシャがちらつく。<br> 神様、助けてくれ!<br> いや、神様はアイツか。ここは、あきらめるしかないようだ…渋々振り返るとそこにいたのは、我らが団長、涼宮ハルヒ。<br>  <br> ではなく、佐々木だった。<br>  <br> 何だ、神様違いか。でも、面倒くさい状況になるのは、確実だ。<br>  <br> 「やっぱり、キョンか。偶然だな。こんな所で何をしているんだい?おっと、失礼。デート中だったか。涼宮さんは知っているのかい?君は青春をしっかりと謳歌しているようだね。そんな君が羨ましいよ」<br> 何か棘のある言い方だ。それより、何故ハルヒがでてくる。<br> 「デパートに買い出しだ。それに、何でお前もここにいるんだ?」<br> 「僕がここにいたら悪いのかい?それに君が買買い出しと言うなら、僕も買い出しだ。九曜さんの服をね」<br> 佐々木に後ろから、黒い物体が姿を表わした。<br> いたのか、九曜…言われるまで全く気付かなかった。朝比奈さんも同様のようだ。<br> 「九曜さんは、いつも光陽女子学院の制服しか着てこなくてね。というか、それしか持っていないらしいんだ。<br> 橘さんが女の子はもっとお洒落をするべきですと言って、ここに服を買いにくることになったのことは、いいんだが、言い出した本人に急に用事ができてしまってね。そこで、代わり僕が来たというわけさ」<br> …どこの長門だ、それは。<br> 「--おしゃれ--する」<br> そうかい。そんなことそっちで勝手にやっといてくれ。<br>  <br> 「そうだ、君たちと僕たちの目的の場所は同じだ。ならば、ともに行動しないか?大勢の方が楽しいだろうし、友好を深めるといった意味でもね」<br> 佐々木が提案した。<br> 「わたしなら全然構わないですよ。大勢の方が楽しいと思います」<br> 「--ぐっど--あいでぃあ」<br> 「満場一致で決まりのようだね。そうと決まったら、早く行こう。時間は短いんだ。無駄にはできない」<br> おいっ、俺はまだ何も言ってないぞ。勝手に決めるな。せっかくの朝比奈さんとのデートだ。邪魔されてたまるか!朝比奈さんを抱えてトンズラするしかないようだ。<br> 朝比奈さんの手をとり、逃げようとした瞬間、体が動かなくなった。いつぞやの朝倉の時みたいだ。<br> 九曜が何か小声で呟いている。そうかあいつも宇宙人だったな。逃げることは不可能のようだ。仕方なく、朝比奈さんとのデートをあきらめ、共に行動することにした。<br> ふと、体が自由になり、九曜を睨む。それに気付いた九曜の顔は、ほんの少しだが赤くなった。<br> 長門の表情を読み取れる俺だから、分かったのだ。<br> 何考えてんだ、あいつ。<br>  <br> しかし、話しかけてきたのが、ハルヒじゃなかったことだけが、せめてものの救いだな。<br>  <br> がんばれ、俺。やれやれだ。<br>  <br> デパートに着いた俺たちは、最初にお茶を買いに行くことにした。お茶売り場に着くと朝比奈さんの目の色が変わった。<br> ミクルビームはでないようだな…<br> 俺はお茶のことがさっぱり分からないので、売り場の外で待っている。佐々木も、お茶に興味があったようで、朝比奈さん、店員との3人で、話に花を咲かせている。九曜はというと、俺の横で、ボーッと突っ立ている。<br> お前忘れられていないか?お前の服を買いに来たんだろ…<br> ただ待っているのも、暇なので、九曜に話しかけた。<br> 「なぁ、周防。あの2人しばらく動きそうにないから、俺たちは休憩がてらソフトクリーム食いに行かないか?<br> 「--おごり--なら」<br> ちっ、ちゃっかりしてやがる。まあ、こっちが誘ったからそのつもりだったけどな。<br>  <br> お茶売り場を後にし、ソフトクリーム売り場まで歩く。<br> 後ろをついてくる九曜は、すれ違う人々の顔を穴があくほど見ている。<br> 人の顔見て何がおもしろいのだろうね。俺にはよくわからん。俺が興味あるのは、朝比奈さんと長門。…そして、たまにハルヒだな。<br>  <br> ソフトクリーム売り場に着き、何にする考えた。バニラにしようか、チョコにしようか。<br> 参考までにに九曜は何にするのか訊いてみた。すると、九曜は真っ直ぐと指差した。その先には、「ワカメ味」とかかれていた。いや、それ絶対不味いって。<br> 「--かれー--おでん--もいい。--でも--やっぱり--わかめ--がいい」<br> 意味が分からん。っていうか、カレー味もおでん味も駄目だろ。<br> でもまあ、九曜本人がそれがいいって言っているので、それを買ってやることにする。<br> 俺はバニラにしようっと。<br> 2つのソフトクリームを買い、黄緑色のやつを九曜に渡す。受け取った九曜は、礼も言わずにそれを舐めた。<br> 「--まずっ」<br> おい、不味いって何だよ。そりゃあ、不味いのはわかる。だって、ワカメ味だもんな。でも少しぐらい、奢ってやった俺の気持ちくらい考えてくれ…<br> 俺は早々と自分のを食べ終え、九曜が食べてる姿を見ていた。そんな俺を見て、九曜がソフトクリームを突き出してきた。どうやら、俺がワカメ味を欲しくて見ていた、と勘違いしたようだ。<br> 「--あじみ--する?」<br> 欲しいとは思っていなかったが、興味はある。素直に九曜の好意(元は俺の金だが)を受け取り、舐めてみた。<br> ……うん、不味い。<br> こんなもの誰が考えたんだ!ありえねぇだろ!カレー味もおでん味もそうだ、この店少し、いや、かなりおかしいんじゃないのか?<br> そんなことを考えていると、長門と朝倉と喜緑さんの3人が、ナイフを持って襲ってくる幻を見た。<br> 何だ今のは?めちゃめちゃ恐いじゃないか…<br> 朝倉はともかく、無表情でナイフを突き出してくる長門にはかんべんしてくれ…<br> そして、次に見えたのは、笑顔ながらも、禍々しいオーラをはなつ佐々木の幻。<br> やけにリアルだな。本物みたいだな。……あっ、本物だ…<br>  <br> 「どういうことか説明してくるかな、キョン?」<br> 「何を説明すりゃいいんだ?」<br> 「さっきのことだよ。君は九曜さんから、ソフトクリームを貰ったね?」<br> 「貰ったっていうか、あれは俺が買ってやったものだ。お前も欲しいのか?」<br> 「いや、遠慮しとくよ。それよりも、君が貰ったのは、どういう状態だったかっていうことだよ」<br> 「はあ?何のことだか、さっぱり分からん」<br> 「まだ分からないのかい?君は九曜さんの食べかけのを貰い、それを食べた。それがどういうことか分かると思うんだが?」<br> 「何だよ、何が言いたい?」<br> 「もういい。君に質問した僕が馬鹿だった。簡潔に言おう。君たち2人は、1つのソフトクリームを食べあう、カップルに見えたというわけだ」<br>  <br> あっ、確かに言われてみれば、そう見えるかもしれないな。だが、こいつは、俺と九曜がそういう関係でないことを知っている。怒る理由なんてないはずだ。何で怒ってるんだ?<br>  <br> 「俺らがカップルじゃないことは、お前がよく知っているだろ。何でそんなにツンツンしているんだ?」<br> 「--わたし--たちは--ふうふ--なの」<br> ……。<br> ダメだこいつ…何とかしないと…<br>  <br> 「そんなぁ!キョンくんそうなんですかぁ?ひどいですぅ。何で黙ってたんですかぁ!」<br> そんなことあるわけないじゃないですか!っていうか朝比奈さん、いつからいたんですか?<br> 「ここまで恋仲が進んでいたとは…。キョン、九曜さんを大事にしてやってくれよ」<br> おい、何か変な方向に話が進んでいるぞ。<br> 「--しんこん--りょこう--はわい」<br> もう嫌だ…帰っていいかな……<br>  <br> 俺たちは今、デパートの最上階にあるレストランにいる。<br> というのも佐々木が、<br> 「君は、乙女の大事なものを踏みにじった。しかも3人もだ。この代償は高くつくよ」<br> といってきたのがここ。<br> 償いたいのなら、昼飯ご馳走しろってどっか団長と同じようなことい言いやがる。代償はでかいって、言ってた割には、昼飯ぐらいで済むのかよ。まあ、俺の財布には大打撃だ。<br>  <br> 朝比奈さんは、もともと少食だし、あまり被害は大きくない。それでも、しっかりとデザートを注文しておられるが。佐々木もどちらかというと少食のようだ。そして、問題の九曜。予想はしていたが、お前も<br> 長門並に大食いなんだな。宇宙人はみんなそうなのか?<br>  <br> 食事が一段落した頃(九曜はまだ食ってるが)、佐々木が話し出した。<br> 「このあとはどうする?どこか行きたい所はあるかい?」<br> 「行きたい所って、九曜の服を買いに来たんじゃなかったのか?」<br> 「それは、またの機会にするよ。僕と九曜さん、そして橘さんがいる時にね。今は君たちがいるから無理に付き合わすわけにはいかないだろう」<br> 「周防はそれでいいのか?」<br> 「--ふぃい」<br> 口の中の物を飲み込んでから言え。<br> 「そうか、なら別に気にすることもないな。朝比奈さんはどこか行きたいところってありますか?」<br> 「ふぇっ、あっ、特にないです」<br> 「キョンはどこかあるのかい?」<br> と佐々木。<br> 「俺も特にない。お前はどうなんだ?」<br> 「僕かい?そうだな、ゲームセンターなんてどうだい?」<br> 意外だ。佐々木がゲーセンに行きたいと言い出すなんて。<br> 「僕はまだ一度もゲームセンターという所に行ったことがないんだ。勉強が忙しいということもあるが、一緒に行く友達がいないんだ。1人で行くという手もあるんだが、ああいう所に1人で行くのは少し危険がある。一応僕は女だしね」<br> そりゃ、美人なお前がゲーセンにいたら、ナンパされまくりだらうな。谷口なら間違いなくナンパするな。<br> 「で、僕の案は認めてもらえるのかい?」<br>  <br> 3人とも、佐々木の案に賛成し、ゲーセンに行くことになった。昼食を終え、俺は会計をするために、レジへと向かう。<br> ……。<br> 絶句。何だよ、これ。<br> なぜデパートのレストランごときで、諭吉を1人手放さなくてはいけないのだ。<br> 分かっている、この損害の原因はあの真っ黒宇宙人だ。くそっ、覚えてろよ!<br>  <br>  </p> <ul> <li><a title="そんな日曜日 (後編) (1m)" href= "http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3564.html">(後編)</a> へ</li> </ul>

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