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白有希姫 演劇篇」(2020/05/29 (金) 13:53:28) の最新版変更点

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<p> <br> 第一章 プロローグ<br>  <br> 「昔、白雪姫というとても美しい王女と、深い谷に住む魔女が居た。魔女は、自分が世界で一番美しいと信じており、彼女の持つ魔法の鏡もそれに同意したため、満足な日々を送っていた。」<br>  <br> このナレーションの語りは国木田。そして文章はウィキペ○ィアから参照したものである。<br>  <br> 「『鏡よ鏡よ鏡っ!世界でいっちばーん美しいのは誰かしら?』」<br>  <br> 体育館、ステージから見て右側の大きなスクリーンに谷口の顔が映し出される。いいなあ、こいつは出番が少なくてよ。<br>  <br> 「『それはもちろん涼み…魔女様に決まってるでしょー。』」<br>  <br> こいつ、ちゃんと練習してきたのか?<br>  <br> 「白雪姫が16歳になったある日、魔女は魔法の鏡にもう一度問いかけた。」<br> 「『ちょっと!かがみ!世界で一番美しいのは誰かしら?』」<br> 「『それは白有希姫でございますー。』」<br> 「『なんですって!?聞き捨てならないわ、今すぐ白有希姫を始末しなきゃ!』」<br> 「そう言って魔女は白有希姫の元へ飛んでいきました。さてはて、これから一体どうなることやら。」<br>  <br> …それにしても魔女の台詞が適当だな、本当に大丈夫なのか?<br>  <br> 第二章に入りかかろうとした時、朝比奈さんがオドオドしながら寄って来た。<br>  <br> 「た、大変ですぅ…!!コンピ研の皆さんが居ません!!」<br> 「なんですってぇ!?」<br>  <br> ステージから戻って来たハルヒが叫んだ。おいおい、声でかすぎだ魔女さん。<br>  <br> 「置手紙がひとつ…『せいぜい頑張ったくれたまえ ハハハハ』と…」<br> 「どうするんだ。もう二章始めないと不自然だぞ?」<br>  <br> 第二章『白有希姫』。白有希姫と七人の小人が仲良く会話をするシーンだ。その七人の内であるコンピ研の奴らが居ないと話にならん。<br>  <br> 「と、とりあえず…キョン、あんた出なさい!七人の小人その3を演じるのよ!」<br>  <br> んな無茶な。<br>  <br> 「みくるちゃん、古泉くん。他の4人は風邪だとか言って、なんとかアドリブで繋いで頂戴!」<br> 「ふぇ、ふぇぇぇ…!?」<br> 「…分かりました、やってみましょう。」<br> 「キョン!早く小人の衣装に着替えて!!」<br>  <br> 第一章が終わってから3分後。観客がざわめき始めた頃、ようやく第二章が始まった。<br>  <br>  <br>  <br> 第二章 白有希姫<br>  <br> 「一方、白有希姫は、七人の小人と平和に仲良く暮らしていました。」<br>  <br> 「『何して遊ぶ…?』」と長門。<br>  <br> 「『あの、その…ええと…!』」<br>  <br> 朝比奈さん、かなりアガってるな…台詞が言えてないぞ。<br>  <br> 「『こちらの小人さんは、鬼ごっこがしたいと申しておりますよ。僕は隠れんぼがしたいなあ。』」<br>  <br> ナイスフォローだ、古泉。<br>  <br> 「『…あれ。他のみんなは。』」<br>  <br> ここからアドリブに突入だ。無表情の長門に俺が答える。<br>  <br> 「『あっと…みんな風邪を引いて寝ているんだ。』」<br>  <br> わざわざ七人の小人を風邪に設定する演劇はそう他にはないだろう。<br>  <br> 「『風邪…?風邪って…何?』」<br>  <br> この演劇の白雪姫は、風邪を知らないらしいな。もう滅茶苦茶だ。<br> ハルヒがいかにも「何やってんのよ、有希!」と言いたげな顔でこっちを見ている。<br>  <br> 「雪山であなたもなったでしょう。あの状態異常の事です。今はそれについて触れずに、劇を続けましょう、長門さん。」<br>  <br> 「…わかった。」<br>  <br> 小声で会話を始めた白雪姫と小人。これだけのグダグダ具合なら観客も飽きてる頃だろうと思い観客席に目をやったが、思いのほかまだ8割ほど残っている。<br> 観客の目を釘付けにしていたのは長門だった。ああ、納得だぜ。<br>  <br> 「白有希姫と七人の小人はその日も楽しく遊んでいました。が、白有希姫が森に出かけたある日…ついに白有希姫は魔女に見つかってしまったのです。」<br>  <br> 無理矢理ナレーションが入る。まだ二章が終わったところだぜ?大丈夫かよ、ほんと。<br>  <br>  <br>  <br> 第三章 毒リンゴ<br>  <br> 「『ヒィーッヒッヒ、お嬢さん、リンゴでもいかがかねぇ?』」<br>  <br> 幸いな事に、この章は長門とハルヒしか出演しない。練習風景は前に見た事があったが…完成したのか?<br>  <br> 「『まあ。美味しそうなリンゴ。早速いただくわ。』」<br>  <br> 前より酷くなってるのは気のせいだろうか。いや、きっと気のせいだよな。<br> ガブリッ、と本物のリンゴを長門がかじり付く。<br>  <br> 「…おいしい。」<br> 「ちょっと有希…倒れないとダメでしょっ!?」<br>  <br> ガブガブとかじり付く長門。…相当美味しいんだろうか、あのリンゴ。終わったら俺も少し分けてもらうことにしよう。<br>  <br> 「『…あうっ』」バタリ<br> 「『ヒィーヒッヒ!残念だったねぇ白有希姫!』」<br>  <br> ハルヒが長門を押し倒したように見えたのは目の錯覚と信じるしかない。<br> これで無難に第三章終了…戻って来たハルヒは言い放った。<br>  <br> 「オチ変更!第四章と第五章は最後にして、それからズラしていきましょ!」<br> 「何故オチを変えるんだ。」<br> 「だって、王子が魔女を倒して終わりなんて、ありきたりでしょ?」<br>  <br> 確かにそうだが…唐突すぎる。<br>  <br> 「じゃあ次、第六章の内容やるわよ!」<br>  <br>  <br>  <br> 第四章だったはずの内容を第六章に変更。えーと、六章ったら…げ、俺のアクロバットシーンじゃねぇか!!<br> 王子衣装に着替えてとぼとぼとステージ上に歩いていく。俺の反対側から現れたのは魔女の手下その1(鶴屋さん)その2(国木田)だ。<br>  <br> 「『お前が魔女様を邪魔する王子っさね!』」<br> 「『魔女様の命により、お前を倒すよ!』」<br>  <br> 俺はまだ魔女にすら会ってないんだが…とかこのアドリブ具合にダメ出しをしていたが、この際やるしかない。<br>  <br> 「『白有希姫は渡さないぞ!とりゃあっ!』」<br>  <br> 当然、白有希姫にすら会ってないわけだ。<br> 俺はゆっくりと側転をしてそのまま床をゴロゴロと転がり、手下その2(国木田)を切り裂く演技をする。<br>  <br> 「『ぐあー!!』」<br>  <br> その場に倒れこむ手下その2を見て、<br>  <br> 「『ひいー!どうか命だけお助けっさー!!』」と手下その1(鶴屋さん)。<br>  <br> ゆっくりと近づく俺。<br>  <br> 「『もう悪さをしないと誓えば命だけは…』」<br> 「『引っかかったねー!!』」<br>  <br> 手下その1(鶴屋さん)は剣で俺に切りかかるが、俺はずっと練習を重ねてきたバック転を決めて軽やかに避ける。<br>  <br> 「『終わりだ!』」<br>  <br> 前に足を挫いた最後のジャンプ。見事に成功したんだが、でんぐり返しの後じゃあ格好付かねぇよな、これ。<br> そのまま第五章に入る。そこ、もう見なくていいぞ、こんな劇。<br>  <br>  <br>  <br> 第五章 俺VSハルヒ。いや、王子VS魔女だけど。<br> ここもアドリブでやっていいのか?もしいいのなら滅多打ちにしても別に怒られんよな?<br>  <br> 「キョン、ここはあたしがやられるシーンから、あんたがやられるシーンに変更ね。」<br> 「なんだって?」<br> 「だから、王子役のあんたがやられるの!説明は後よ!」<br> 「王子がやられてどうする。」<br> 「ちゃんと後のシナリオも考えてあるから!さぁ行くわよ!!」<br>  <br> 白雪姫の世界でも俺はハルヒに負けてしまうのか。いや違う、いつもの世界でも負けてはいないはずだ。<br>  <br> 「『お前が魔女か!よくも白有希姫を…』」<br>  <br> 言うまでもなくここで矛盾が発生してるよな。<br>  <br> 「『あんたこそよくあたしの手下をやってくれたわね!』」<br>  <br> もう完璧にハルヒだ。魔女の面影はどこにもなくなっちまった。<br> 俺は側転を3回連続で決めて魔女に接近する。ハルヒは全力疾走で俺に向かってきやがった。<br> こいつまさか、本気で俺を倒す気じゃねぇだろうな。<br>  <br> 「『覚悟ぉっ!!』」<br>  <br> いかにも魔女らしくない攻撃が俺の腹部に直撃。魔女の肉弾戦ってどうよ。<br>  <br> 「あんた、ちょっとは避けなさいよ!」<br> 「無茶言うな!」<br>  <br> もう1発…いや、2、3発はくらったね。演技じゃなくても俺はそこに倒れざるおえなかった。<br> これはバッドエンド劇に変わったってことか?<br>  <br> 「『そこまでです!魔女!』」<br> 「『だ、誰!?』」<br> 「『名乗る程の者ではありません。とうっ!』」<br>  <br> 倒れる俺を通り越して魔女と対峙する何者か。敢えて名前は出したくねぇ。<br>  <br> 「『ふんっ…もっふ!』」<br> 「『ぎゃあーっ!』」<br>  <br> 何をしたかは知らないが、どうやら魔女は倒れたらしい。<br>  <br> 「『大丈夫ですか…王子様。』」<br>  <br> 俺が顔を上げた先には、あのニヤケスマイルがいつも以上にニヤニヤして俺を見ている。<br> …やれやれ。<br>  <br>  <br> ステージに幕が垂れ下がった。まだこんな劇を見ている方は相当無理をしていることだろう。<br> 言っておくがもう長門はあんまり見えないぞ、あとは棺桶で眠るだけだ。<br>  <br>  <br>  <br> 第六章 王子と小人達の出会い<br>  <br> 俺は小人その2(古泉)に背負われて他の小人達に迎えられる。<br>  <br> 「『連れて来ましたよ、王子様を。』」<br> 「『さすがね、コイズーミ!』」<br>  <br> 俺が驚いたのはコイズーミとかいう即席で付けたふざけた名前ではなく、小人役の中にハルヒが居た事だった。<br> ほんとに自由だな、こいつは。<br> …よく見ると谷口や国木田、鶴屋さんも小人役として参加している。<br>  <br> 「『お、王子様っ…白有希姫が大変なんですぅ!』」<br> 「『あなたならなんとかしてくれると思い、僕がここに連れてきた、というわけです。』」<br>  <br> 意外とストーリーは上手く繋がってるな。…あとはラストシーンか。<br> 俺は立ち上がって棺桶の中で眠っている長門の前に立つ。七人の小人はステージ外に掃けて、俺と長門のツーショットだ。<br> 観客の目は俺に向いている。ああ、心配しなくても大丈夫さ。キスなんてしねぇ。フリじゃなくほんとはしたいところだが、ここは我慢我慢。<br>  <br>  <br>  <br> 第七章 Kiss <br>  <br> 「『可哀想な美女…魔女の毒によって死んでしまったというのか…』」<br> 「『………』」 <br> 「『俺の口付けで…目を覚ましてくれ、美女よ…!!』」<br> 「『………』」<br>  <br> 閉鎖空間での事を思い出しつつ台詞を言う。ああ、ファーストとセカンドのキスがあいつだったとは…俺も災難な人生だよな…。<br> 少しの静寂の間――<br>  <br> 「えぇぇっー!!!!!!????」<br>  <br> な、なんだなんだ!?観客がいきなり騒ぎ始め、困惑している。一体何を起きた?<br>  <br> 「こっのバカキョォーン!!!!!!」<br> 「いだぁっ!!」<br>  <br> ハルヒに思い切り殴られる。痛ぇなこのっ!<br>  <br> 「あ、あんた何したか分かってんの!?」<br>  <br> 何したかって…俺は何をした?<br> 棺桶で眠っている白有希姫の頬を見ると、朱の色で染まりきっている。<br>  <br> 「説明しろ、俺は何をした」<br> 「しらばっくてれんじゃないわよっ!!」<br>  <br> ハルヒのローキックが直撃。<br>  <br> 「ま、幕を下ろして!これで白有希姫は終了です!!」<br>  <br> 観客の大ブーイングの中、エピローグがないまま『白有希姫』は終わった。<br>  <br> 「有希、大丈夫だった!?」<br> 「…………びっくり」<br>  <br> 大丈夫だったとは?俺の知らぬ間に長門の身に何があったんだよ。<br>  <br> 「説明しろ、古泉。」<br> 「まさか覚えてないんですか?」<br> 「何の事だ。」<br> 「あなたは何のためらいもなく、長門さんに…これ以上はちょっと。」<br> 「な、なんなんだよ!」<br>  <br> 少し分かってきて更に俺は混乱する。おいおい、ちょっと待て。待て待て待て待て<br>  <br> 「死ねぇ変態キョンっ!!」<br>  <br> それから俺はハルヒの猛攻撃を受けた。足を挫いた怪我以上の重症を負ったのは、言うまでもないよな。<br>  <br>  <br>  <br>  <br> 「…………ユニーク」<br>  <br>  <br>  <br> 『白有希姫』 Fin</p>
<p> <br /> 第一章 プロローグ<br />  <br /> 「昔、白雪姫というとても美しい王女と、深い谷に住む魔女が居た。魔女は、自分が世界で一番美しいと信じており、彼女の持つ魔法の鏡もそれに同意したため、満足な日々を送っていた。」<br />  <br /> このナレーションの語りは国木田。そして文章はウィキペ○ィアから参照したものである。<br />  <br /> 「『鏡よ鏡よ鏡っ!世界でいっちばーん美しいのは誰かしら?』」<br />  <br /> 体育館、ステージから見て右側の大きなスクリーンに谷口の顔が映し出される。いいなあ、こいつは出番が少なくてよ。<br />  <br /> 「『それはもちろん涼み…魔女様に決まってるでしょー。』」<br />  <br /> こいつ、ちゃんと練習してきたのか?<br />  <br /> 「白雪姫が16歳になったある日、魔女は魔法の鏡にもう一度問いかけた。」<br /> 「『ちょっと!かがみ!世界で一番美しいのは誰かしら?』」<br /> 「『それは白有希姫でございますー。』」<br /> 「『なんですって!?聞き捨てならないわ、今すぐ白有希姫を始末しなきゃ!』」<br /> 「そう言って魔女は白有希姫の元へ飛んでいきました。さてはて、これから一体どうなることやら。」<br />  <br /> …それにしても魔女の台詞が適当だな、本当に大丈夫なのか?<br />  <br /> 第二章に入りかかろうとした時、朝比奈さんがオドオドしながら寄って来た。<br />  <br /> 「た、大変ですぅ…!!コンピ研の皆さんが居ません!!」<br /> 「なんですってぇ!?」<br />  <br /> ステージから戻って来たハルヒが叫んだ。おいおい、声でかすぎだ魔女さん。<br />  <br /> 「置手紙がひとつ…『せいぜい頑張ったくれたまえ ハハハハ』と…」<br /> 「どうするんだ。もう二章始めないと不自然だぞ?」<br />  <br /> 第二章『白有希姫』。白有希姫と七人の小人が仲良く会話をするシーンだ。その七人の内であるコンピ研の奴らが居ないと話にならん。<br />  <br /> 「と、とりあえず…キョン、あんた出なさい!七人の小人その3を演じるのよ!」<br />  <br /> んな無茶な。<br />  <br /> 「みくるちゃん、古泉くん。他の4人は風邪だとか言って、なんとかアドリブで繋いで頂戴!」<br /> 「ふぇ、ふぇぇぇ…!?」<br /> 「…分かりました、やってみましょう。」<br /> 「キョン!早く小人の衣装に着替えて!!」<br />  <br /> 第一章が終わってから3分後。観客がざわめき始めた頃、ようやく第二章が始まった。<br />  <br />  <br />  <br /> 第二章 白有希姫<br />  <br /> 「一方、白有希姫は、七人の小人と平和に仲良く暮らしていました。」<br />  <br /> 「『何して遊ぶ…?』」と長門。<br />  <br /> 「『あの、その…ええと…!』」<br />  <br /> 朝比奈さん、かなりアガってるな…台詞が言えてないぞ。<br />  <br /> 「『こちらの小人さんは、鬼ごっこがしたいと申しておりますよ。僕は隠れんぼがしたいなあ。』」<br />  <br /> ナイスフォローだ、古泉。<br />  <br /> 「『…あれ。他のみんなは。』」<br />  <br /> ここからアドリブに突入だ。無表情の長門に俺が答える。<br />  <br /> 「『あっと…みんな風邪を引いて寝ているんだ。』」<br />  <br /> わざわざ七人の小人を風邪に設定する演劇はそう他にはないだろう。<br />  <br /> 「『風邪…?風邪って…何?』」<br />  <br /> この演劇の白雪姫は、風邪を知らないらしいな。もう滅茶苦茶だ。<br /> ハルヒがいかにも「何やってんのよ、有希!」と言いたげな顔でこっちを見ている。<br />  <br /> 「雪山であなたもなったでしょう。あの状態異常の事です。今はそれについて触れずに、劇を続けましょう、長門さん。」<br />  <br /> 「…わかった。」<br />  <br /> 小声で会話を始めた白雪姫と小人。これだけのグダグダ具合なら観客も飽きてる頃だろうと思い観客席に目をやったが、思いのほかまだ8割ほど残っている。<br /> 観客の目を釘付けにしていたのは長門だった。ああ、納得だぜ。<br />  <br /> 「白有希姫と七人の小人はその日も楽しく遊んでいました。が、白有希姫が森に出かけたある日…ついに白有希姫は魔女に見つかってしまったのです。」<br />  <br /> 無理矢理ナレーションが入る。まだ二章が終わったところだぜ?大丈夫かよ、ほんと。<br />  <br />  <br />  <br /> 第三章 毒リンゴ<br />  <br /> 「『ヒィーッヒッヒ、お嬢さん、リンゴでもいかがかねぇ?』」<br />  <br /> 幸いな事に、この章は長門とハルヒしか出演しない。練習風景は前に見た事があったが…完成したのか?<br />  <br /> 「『まあ。美味しそうなリンゴ。早速いただくわ。』」<br />  <br /> 前より酷くなってるのは気のせいだろうか。いや、きっと気のせいだよな。<br /> ガブリッ、と本物のリンゴを長門がかじり付く。<br />  <br /> 「…おいしい。」<br /> 「ちょっと有希…倒れないとダメでしょっ!?」<br />  <br /> ガブガブとかじり付く長門。…相当美味しいんだろうか、あのリンゴ。終わったら俺も少し分けてもらうことにしよう。<br />  <br /> 「『…あうっ』」バタリ<br /> 「『ヒィーヒッヒ!残念だったねぇ白有希姫!』」<br />  <br /> ハルヒが長門を押し倒したように見えたのは目の錯覚と信じるしかない。<br /> これで無難に第三章終了…戻って来たハルヒは言い放った。<br />  <br /> 「オチ変更!第四章と第五章は最後にして、それからズラしていきましょ!」<br /> 「何故オチを変えるんだ。」<br /> 「だって、王子が魔女を倒して終わりなんて、ありきたりでしょ?」<br />  <br /> 確かにそうだが…唐突すぎる。<br />  <br /> 「じゃあ次、第六章の内容やるわよ!」<br />  <br />  <br />  <br /> 第四章だったはずの内容を第六章に変更。えーと、六章ったら…げ、俺のアクロバットシーンじゃねぇか!!<br /> 王子衣装に着替えてとぼとぼとステージ上に歩いていく。俺の反対側から現れたのは魔女の手下その1(鶴屋さん)その2(国木田)だ。<br />  <br /> 「『お前が魔女様を邪魔する王子っさね!』」<br /> 「『魔女様の命により、お前を倒すよ!』」<br />  <br /> 俺はまだ魔女にすら会ってないんだが…とかこのアドリブ具合にダメ出しをしていたが、この際やるしかない。<br />  <br /> 「『白有希姫は渡さないぞ!とりゃあっ!』」<br />  <br /> 当然、白有希姫にすら会ってないわけだ。<br /> 俺はゆっくりと側転をしてそのまま床をゴロゴロと転がり、手下その2(国木田)を切り裂く演技をする。<br />  <br /> 「『ぐあー!!』」<br />  <br /> その場に倒れこむ手下その2を見て、<br />  <br /> 「『ひいー!どうか命だけお助けっさー!!』」と手下その1(鶴屋さん)。<br />  <br /> ゆっくりと近づく俺。<br />  <br /> 「『もう悪さをしないと誓えば命だけは…』」<br /> 「『引っかかったねー!!』」<br />  <br /> 手下その1(鶴屋さん)は剣で俺に切りかかるが、俺はずっと練習を重ねてきたバック転を決めて軽やかに避ける。<br />  <br /> 「『終わりだ!』」<br />  <br /> 前に足を挫いた最後のジャンプ。見事に成功したんだが、でんぐり返しの後じゃあ格好付かねぇよな、これ。<br /> そのまま第五章に入る。そこ、もう見なくていいぞ、こんな劇。<br />  <br />  <br />  <br /> 第五章 俺VSハルヒ。いや、王子VS魔女だけど。<br /> ここもアドリブでやっていいのか?もしいいのなら滅多打ちにしても別に怒られんよな?<br />  <br /> 「キョン、ここはあたしがやられるシーンから、あんたがやられるシーンに変更ね。」<br /> 「なんだって?」<br /> 「だから、王子役のあんたがやられるの!説明は後よ!」<br /> 「王子がやられてどうする。」<br /> 「ちゃんと後のシナリオも考えてあるから!さぁ行くわよ!!」<br />  <br /> 白雪姫の世界でも俺はハルヒに負けてしまうのか。いや違う、いつもの世界でも負けてはいないはずだ。<br />  <br /> 「『お前が魔女か!よくも白有希姫を…』」<br />  <br /> 言うまでもなくここで矛盾が発生してるよな。<br />  <br /> 「『あんたこそよくあたしの手下をやってくれたわね!』」<br />  <br /> もう完璧にハルヒだ。魔女の面影はどこにもなくなっちまった。<br /> 俺は側転を3回連続で決めて魔女に接近する。ハルヒは全力疾走で俺に向かってきやがった。<br /> こいつまさか、本気で俺を倒す気じゃねぇだろうな。<br />  <br /> 「『覚悟ぉっ!!』」<br />  <br /> いかにも魔女らしくない攻撃が俺の腹部に直撃。魔女の肉弾戦ってどうよ。<br />  <br /> 「あんた、ちょっとは避けなさいよ!」<br /> 「無茶言うな!」<br />  <br /> もう1発…いや、2、3発はくらったね。演技じゃなくても俺はそこに倒れざるおえなかった。<br /> これはバッドエンド劇に変わったってことか?<br />  <br /> 「『そこまでです!魔女!』」<br /> 「『だ、誰!?』」<br /> 「『名乗る程の者ではありません。とうっ!』」<br />  <br /> 倒れる俺を通り越して魔女と対峙する何者か。敢えて名前は出したくねぇ。<br />  <br /> 「『ふんっ…もっふ!』」<br /> 「『ぎゃあーっ!』」<br />  <br /> 何をしたかは知らないが、どうやら魔女は倒れたらしい。<br />  <br /> 「『大丈夫ですか…王子様。』」<br />  <br /> 俺が顔を上げた先には、あのニヤケスマイルがいつも以上にニヤニヤして俺を見ている。<br /> …やれやれ。<br />  <br />  <br /> ステージに幕が垂れ下がった。まだこんな劇を見ている方は相当無理をしていることだろう。<br /> 言っておくがもう長門はあんまり見えないぞ、あとは棺桶で眠るだけだ。<br />  <br />  <br />  <br /> 第六章 王子と小人達の出会い<br />  <br /> 俺は小人その2(古泉)に背負われて他の小人達に迎えられる。<br />  <br /> 「『連れて来ましたよ、王子様を。』」<br /> 「『さすがね、コイズーミ!』」<br />  <br /> 俺が驚いたのはコイズーミとかいう即席で付けたふざけた名前ではなく、小人役の中にハルヒが居た事だった。<br /> ほんとに自由だな、こいつは。<br /> …よく見ると谷口や国木田、鶴屋さんも小人役として参加している。<br />  <br /> 「『お、王子様っ…白有希姫が大変なんですぅ!』」<br /> 「『あなたならなんとかしてくれると思い、僕がここに連れてきた、というわけです。』」<br />  <br /> 意外とストーリーは上手く繋がってるな。…あとはラストシーンか。<br /> 俺は立ち上がって棺桶の中で眠っている長門の前に立つ。七人の小人はステージ外に掃けて、俺と長門のツーショットだ。<br /> 観客の目は俺に向いている。ああ、心配しなくても大丈夫さ。キスなんてしねぇ。フリじゃなくほんとはしたいところだが、ここは我慢我慢。<br />  <br />  <br />  <br /> 第七章 Kiss <br />  <br /> 「『可哀想な美女…魔女の毒によって死んでしまったというのか…』」<br /> 「『………』」 <br /> 「『俺の口付けで…目を覚ましてくれ、美女よ…!!』」<br /> 「『………』」<br />  <br /> 閉鎖空間での事を思い出しつつ台詞を言う。ああ、ファーストとセカンドのキスがあいつだったとは…俺も災難な人生だよな…。<br /> 少しの静寂の間――<br />  <br /> 「えぇぇっー!!!!!!????」<br />  <br /> な、なんだなんだ!?観客がいきなり騒ぎ始め、困惑している。一体何を起きた?<br />  <br /> 「こっのバカキョォーン!!!!!!」<br /> 「いだぁっ!!」<br />  <br /> ハルヒに思い切り殴られる。痛ぇなこのっ!<br />  <br /> 「あ、あんた何したか分かってんの!?」<br />  <br /> 何したかって…俺は何をした?<br /> 棺桶で眠っている白有希姫の頬を見ると、朱の色で染まりきっている。<br />  <br /> 「説明しろ、俺は何をした」<br /> 「しらばっくてれんじゃないわよっ!!」<br />  <br /> ハルヒのローキックが直撃。<br />  <br /> 「ま、幕を下ろして!これで白有希姫は終了です!!」<br />  <br /> 観客の大ブーイングの中、エピローグがないまま『白有希姫』は終わった。<br />  <br /> 「有希、大丈夫だった!?」<br /> 「…………びっくり」<br />  <br /> 大丈夫だったとは?俺の知らぬ間に長門の身に何があったんだよ。<br />  <br /> 「説明しろ、古泉。」<br /> 「まさか覚えてないんですか?」<br /> 「何の事だ。」<br /> 「あなたは何のためらいもなく、長門さんに…これ以上はちょっと。」<br /> 「な、なんなんだよ!」<br />  <br /> 少し分かってきて更に俺は混乱する。おいおい、ちょっと待て。待て待て待て待て<br />  <br /> 「死ねぇ変態キョンっ!!」<br />  <br /> それから俺はハルヒの猛攻撃を受けた。足を挫いた怪我以上の重症を負ったのは、言うまでもないよな。<br />  <br />  <br />  <br />  <br /> 「…………ユニーク」<br />  <br />  <br />  <br /> 『白有希姫』 Fin</p>

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