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「最後の手紙」(2007/01/12 (金) 13:42:04) の最新版変更点
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高校3年の3月。俺たちはとうとう北高を卒業していた。<br>
卒業したのに高校3年の3月という表現も変だとは思うが、こういう表現法しかできないのだから仕方がない。<br>
俺たち全員は一応大学の第一志望校に合格を果たしたものの、まだ入学しないうちは高校生でもなく、大学生でもないのだからな。<br>
まったく中途半端だよ、この時期は。んで、今日は近くの居酒屋でハルヒ提案による卒業コンパをしているというわけだ。<br>
コンパと言ってもなぜかとっくに卒業したはずの朝比奈さんも含めていつもの5人で行う、わびしいことこの上ないものだ。<br>
朝比奈さんが出席している理由。それは彼女いわく、ハルヒによって無理矢理つれてこられたとのことだ。いかにもあいつのやりそうなことだな。<br>
まぁ、俺としてもマイスウィートエンジェル朝比奈さんがいてくれたほうが場が数倍華やかになるから文句は無い。<br>
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卒業コンパは、もはや単なる酒盛りになっていた。おいおいハルヒ、お前は金輪際酒を飲まないと誓ったんじゃなかったのか?あの1年の夏合宿の時によ。<br>
「何言ってんの。今日は無礼講よ!!」その一言で俺の意見は却下されちまった。ま、いつものことだが。<br>
今日限りでハルヒのわがまま暴走っぷりとおさらばできることを考えると、そんなのはどうってことないね。<br>
ハルヒが酔って朝比奈さんにからみ、古泉がそれをなだめ、長門がいつもの無表情で次々とビール瓶を空にしているのを俺はフルーツサワーをちびちびとやりながら眺めていた。<br>
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帰り道、俺は酔いつぶれたハルヒを、古泉は朝比奈さんを背負って各々帰宅した。ちくしょう、交代しやがれ。<br>
ちなみに長門は用事があるといって早々に卒業コンパという名の酒盛りから離脱していた。まぁ、また巨大カマドウマとかとでも一戦を交えているんだろう。<br>
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ハルヒを家に送り届けてから無事に自宅へと生還し、俺はいつものクセで郵便受けを覗いた。<br>
そこには一枚の封筒。切手も宛先も差出人名もない。ということは謎の差出人はこの手紙を直接郵便受けに入れたってことだ。わざわざご苦労なこったな。<br>
俺はその封筒を自室に持ち帰り、封を開ける。これは俺への手紙だという確信がなぜかあった。<br>
そこにはそっけない便箋が一枚だけ入ってる。この習字の手本のような楷書体には見覚えがあった。他でもない。SOS団団員の一人、長門有希のものだ。<br>
なんだあいつのか。さっき俺たちと早めに別れたのはこのためだったのか。まったく、直接渡せばいいものを。<br>
とにかく読んでみる。その手紙には、こう書いてあった。<br>
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<div>「情報統合思念体は失望している。<br>
涼宮ハルヒから以前のような力が失われたから。<br>
不思議なことに、彼女の能力は高校卒業と同時に消失していた。<br>
これにより彼らの自立進化の可能性は失われた。<br>
と同時に、わたしの情報結合解除の決定も下された。<br>
この手紙を読んでいる頃にはもうわたしはこの世に存在していないだろう。<br>
否、わたしという存在は元々無かったことになる。<br>
あなたが明日目覚める頃には全ての記録からわたしに関する物は消え、この手紙も消滅する手筈になっている。<br>
あなたの記憶からも。<br></div>
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<div>最後に。<br>
もしわたしにも唯一つの願望がもてるなら、あなたともう一度図書館に。」<br>
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<div>手紙はそこで終わっていた。<br>
何だよ…。何なんだよこれ!!こんなのってありか!?<br>
長門が消える?俺が忘れる?冗っ談じゃねぇ!!<br></div>
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<div>お前は俺の大切な―――仲間だ!!<br></div>
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<div>ちくしょう!!ちくしょう!!<br>
俺は、絶対に、忘れねぇぞ!!!!<br></div>
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翌日、俺は図書館へと赴いた。駅前にある例の図書館である。<br>
これといった用事があったわけでもないが、なぜか行きたくなったのだ。<br>
なんでだろうな。わざわざこんなこの春一番の猛暑に外に出たくならなくてもいいのに。まったく俺の脳みそはどうなってやがる。<br>
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そういえば、昨日はいつの間にか眠っちまったな。なんだかとても腹立たしく、同時に悲しい出来事があった気がするんだが。<br>
そんなことを忘れるほど俺の頭もどうにかなっているつもりは無いから、多分気のせいなんだろう。<br>
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自動ドアが開くのを待ち、館内に足を運ぶ。ふぃー、涼しいぜ。まったく、中と外じゃ天国と地獄ぐらいの差があるね。<br>
せっかく来たんだから本でも読むか。俺は図書館本来の機能を行使すべく適当に本を見繕って、椅子に座ろうと辺りを見回す。<br>
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<div>そのとき、俺の目に留まったものがあった。<br>
紫色のショートヘア。見慣れた北高のセーラー服。ピンと背筋を伸ばし、黙々と分厚い洋書を読みふける少女の姿だった。<br>
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<div>―――彼女だ。<br></div>
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<div>終わり<br></div>
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