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涼宮ハルヒの自覚 「転」」(2020/03/14 (土) 00:14:16) の最新版変更点

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<p> <br> 「あたしも、混ぜてよ。」<br>  <br> 昼休み、部室で緊急会合を開いていた俺達の前に、ハルヒが現れた。<br> ハルヒの顔にいつもの無邪気な笑みは無く、静かに不敵な笑みを浮かべている。<br> おいおいハルヒ、それはどちらかというと古泉の笑い方だ。お前にそんな笑いは似合わねぇよ。</p> <p>「いっつもそうやって、あたしを除け者にして面白いことしてたってワケね。」<br> 「なんで朝比奈さんの未来を消した。」<br> 「だって、未来があったらみくるちゃんいつか帰っちゃうじゃない。」<br>  <br> ハルヒはしれっと言ってのけた。そうだ、ハルヒは俺以外の三人の正体についても理解している。<br> 朝比奈さんはいつか未来に帰ってしまうってことも。<br> でもだからってこれは……ねぇよ。<br>  <br> 「涼宮さん、お願いします!未来を返してください!」<br> 「ダーメよ。みくるちゃんは大事なSOS団のマスコットなんだから!未来に帰るなんて許さないわよ!<br>  でもみくるちゃんの未来人設定ってのはおいしいから、無くすのはもったいないじゃない?<br>  だから、帰る場所の方を消したのよ。」<br> 「そんなの……そんなのあんまりですぅ!」<br> 「嬉しくないの?これでもう未来に縛られることなく、ず~っとこの時代にいられるのよ?」<br> 「涼宮さん、落ちついてください。向こうには朝比奈さんの両親もいるのです。<br>  それを消してしまうのは、いささかやり過ぎかと。」<br>  <br> ハルヒと朝比奈さんの口論に古泉が割って入った。だがハルヒはまったく動じることは無い。<br>  <br> 「そんなの関係ないわ。みくるちゃんの居場所はここしか無いはずよ。<br>  あ、それと古泉くん、今までご苦労様。ずっとあたしのご機嫌取りしてくれてたんでしょ?<br>  でももうそんなことしなくていいわよ、あたしはもう閉鎖空間をコントロールできる。<br>  自分のストレスぐらい自分で処理するわ。もうあたしのイエスマンを演じなくて済む。嬉しいでしょ?」<br> 「……お言葉ですが涼宮さん、僕は別に自分を偽ってなど……」<br> 「はいはいそれもあたしのご機嫌を取るための演技でしょ?<br>  ……有希もそうよね?あたしの監視のために仕方なくここにいるのよね。」<br> 「違う。私がここにいるのは私自身の意思。」<br> 「でもいいわ。いざとなったら全員留年させ……いえ、ずっと時間をループさせ続けるのもいいかもね!<br>  去年の夏休みの時みたいに!我ながら名案だわ!そうすればずっとSOS団は不滅になるし!」<br>  <br>  <br> SOS団のメンバーに次々と絡んでいくハルヒを、俺は冷静な目で見ていた。<br> これでも一年間、ハルヒのことを見ていたんだ。<br> 今ハルヒがどんなことを思っているか、なんとなくだが分かる。だから俺は言ってやるのさ。<br>  <br> 「もう……無理すんな、ハルヒ。」<br>  <br> そうだ、コイツは明らかに無理している。そもそも古泉的な笑みをしている時点で気付くべきだったか。<br> もっともその笑みももう崩れかけているがな。<br>  <br> 「……キョン?何言い出すのよ。あたしは別に無理なんか……」<br>  <br> そうは言っているが、ハルヒの笑みは更に崩れている。<br> お前に無理や我慢は向いてないんだよ。感情を100%表に出してこそのお前だろうが。<br>  <br> 「ハルヒ、お前は自分の能力を知ってショックだったんだろ?今まで信じてたものが信じられなくなった。<br>  下手したらSOS団のメンバーも偽りの仲間かもしれない。そう思った。<br>  だから朝比奈さんを無理矢理繋ぎとめるような真似をしたり、<br>  能力を持てて嬉しいんだと自分を偽っているんだ。違うか?」<br> 「……ちが……」<br> 「何が違うんだ?言ってみろ。<br>  悪いが俺には攻める要素なんてまったくないぞ。俺はいたって普通の人間だからな。」<br> 「……そうよ!その通りよ!悪い!?」<br>  <br> ハルヒが怒鳴った。ようやく、ハルヒらしい声が聞けたな。</p> <p>「アンタに分かる!?自分がとんでもないことをしていたと気付いた時の気持ちが!!<br>  自分の都合で8月を繰り返したり、自分の機嫌で変な空間を生んでたり!<br>  1歩間違えればあたし世界を滅ぼしてたのよ!?」<br>  <br> 大声で怒鳴りながらまくしたてるハルヒ。今まで我慢していたものが噴き出しているような感じだ。<br>  <br> 「だから全てを知った時、あたしは真っ先に願ったわ!『こんな能力なくなりますように』って!<br>  でもそれだけは何度願っても叶わないのよ!こんな能力いらないのに!」<br>  <br> 全ての感情を吐き出したハルヒは、その場に崩れ落ちてしまった。<br> 床に水滴が落ちる。……泣いているのか。<br>  <br> 「ハルヒ……」<br>  <br> 今のコイツに、俺はなんて声をかけてやればいいのだろう。<br> 俺が戸惑っていると、長門がハルヒの元へ歩みよった。<br>  <br> 「有希……?」 <br>  <br> ハルヒも顔をあげる。目元は真っ赤になっていた。<br>  <br> 「あなたに、処置をほどこしたいと思う。」<br> 「処置……?」<br> 「そう。」<br>  <br> 長門はハルヒの頭に手をかざした。<br>  <br> 「あなたが昨日獲得した情報を、あなたの記憶から消去したいと思う。」</p> <p> </p> <p>続く</p> <p> </p>
<p> <br /> 「あたしも、混ぜてよ。」<br />  <br /> 昼休み、部室で緊急会合を開いていた俺達の前に、ハルヒが現れた。<br /> ハルヒの顔にいつもの無邪気な笑みは無く、静かに不敵な笑みを浮かべている。<br /> おいおいハルヒ、それはどちらかというと古泉の笑い方だ。お前にそんな笑いは似合わねぇよ。</p> <p>「いっつもそうやって、あたしを除け者にして面白いことしてたってワケね。」<br /> 「なんで朝比奈さんの未来を消した。」<br /> 「だって、未来があったらみくるちゃんいつか帰っちゃうじゃない。」<br />  <br /> ハルヒはしれっと言ってのけた。そうだ、ハルヒは俺以外の三人の正体についても理解している。<br /> 朝比奈さんはいつか未来に帰ってしまうってことも。<br /> でもだからってこれは……ねぇよ。<br />  <br /> 「涼宮さん、お願いします!未来を返してください!」<br /> 「ダーメよ。みくるちゃんは大事なSOS団のマスコットなんだから!未来に帰るなんて許さないわよ!<br />  でもみくるちゃんの未来人設定ってのはおいしいから、無くすのはもったいないじゃない?<br />  だから、帰る場所の方を消したのよ。」<br /> 「そんなの……そんなのあんまりですぅ!」<br /> 「嬉しくないの?これでもう未来に縛られることなく、ず~っとこの時代にいられるのよ?」<br /> 「涼宮さん、落ちついてください。向こうには朝比奈さんの両親もいるのです。<br />  それを消してしまうのは、いささかやり過ぎかと。」<br />  <br /> ハルヒと朝比奈さんの口論に古泉が割って入った。だがハルヒはまったく動じることは無い。<br />  <br /> 「そんなの関係ないわ。みくるちゃんの居場所はここしか無いはずよ。<br />  あ、それと古泉くん、今までご苦労様。ずっとあたしのご機嫌取りしてくれてたんでしょ?<br />  でももうそんなことしなくていいわよ、あたしはもう閉鎖空間をコントロールできる。<br />  自分のストレスぐらい自分で処理するわ。もうあたしのイエスマンを演じなくて済む。嬉しいでしょ?」<br /> 「……お言葉ですが涼宮さん、僕は別に自分を偽ってなど……」<br /> 「はいはいそれもあたしのご機嫌を取るための演技でしょ?<br />  ……有希もそうよね?あたしの監視のために仕方なくここにいるのよね。」<br /> 「違う。私がここにいるのは私自身の意思。」<br /> 「でもいいわ。いざとなったら全員留年させ……いえ、ずっと時間をループさせ続けるのもいいかもね!<br />  去年の夏休みの時みたいに!我ながら名案だわ!そうすればずっとSOS団は不滅になるし!」<br />  <br />  <br /> SOS団のメンバーに次々と絡んでいくハルヒを、俺は冷静な目で見ていた。<br /> これでも一年間、ハルヒのことを見ていたんだ。<br /> 今ハルヒがどんなことを思っているか、なんとなくだが分かる。だから俺は言ってやるのさ。<br />  <br /> 「もう……無理すんな、ハルヒ。」<br />  <br /> そうだ、コイツは明らかに無理している。そもそも古泉的な笑みをしている時点で気付くべきだったか。<br /> もっともその笑みももう崩れかけているがな。<br />  <br /> 「……キョン?何言い出すのよ。あたしは別に無理なんか……」<br />  <br /> そうは言っているが、ハルヒの笑みは更に崩れている。<br /> お前に無理や我慢は向いてないんだよ。感情を100%表に出してこそのお前だろうが。<br />  <br /> 「ハルヒ、お前は自分の能力を知ってショックだったんだろ?今まで信じてたものが信じられなくなった。<br />  下手したらSOS団のメンバーも偽りの仲間かもしれない。そう思った。<br />  だから朝比奈さんを無理矢理繋ぎとめるような真似をしたり、<br />  能力を持てて嬉しいんだと自分を偽っているんだ。違うか?」<br /> 「……ちが……」<br /> 「何が違うんだ?言ってみろ。<br />  悪いが俺には攻める要素なんてまったくないぞ。俺はいたって普通の人間だからな。」<br /> 「……そうよ!その通りよ!悪い!?」<br />  <br /> ハルヒが怒鳴った。ようやく、ハルヒらしい声が聞けたな。</p> <p>「アンタに分かる!?自分がとんでもないことをしていたと気付いた時の気持ちが!!<br />  自分の都合で8月を繰り返したり、自分の機嫌で変な空間を生んでたり!<br />  1歩間違えればあたし世界を滅ぼしてたのよ!?」<br />  <br /> 大声で怒鳴りながらまくしたてるハルヒ。今まで我慢していたものが噴き出しているような感じだ。<br />  <br /> 「だから全てを知った時、あたしは真っ先に願ったわ!『こんな能力なくなりますように』って!<br />  でもそれだけは何度願っても叶わないのよ!こんな能力いらないのに!」<br />  <br /> 全ての感情を吐き出したハルヒは、その場に崩れ落ちてしまった。<br /> 床に水滴が落ちる。……泣いているのか。<br />  <br /> 「ハルヒ……」<br />  <br /> 今のコイツに、俺はなんて声をかけてやればいいのだろう。<br /> 俺が戸惑っていると、長門がハルヒの元へ歩みよった。<br />  <br /> 「有希……?」 <br />  <br /> ハルヒも顔をあげる。目元は真っ赤になっていた。<br />  <br /> 「あなたに、処置をほどこしたいと思う。」<br /> 「処置……?」<br /> 「そう。」<br />  <br /> 長門はハルヒの頭に手をかざした。<br />  <br /> 「あなたが昨日獲得した情報を、あなたの記憶から消去したいと思う。」</p> <p> </p> <p>続く</p> <p> </p>

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