「涼宮ハルヒの自覚 「承」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

涼宮ハルヒの自覚 「承」」(2020/03/14 (土) 00:14:03) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p><br> ハルヒが雨を降らせた2時間目の後も、奇妙な出来事は続いた。<br> 何故かチョークが虹色になったり、校庭に突然小規模な竜巻が出現したり、何も無いとこで谷口がコケたり。<br> その度にクラスメイトが驚いたり笑ったりしていたが、ハルヒだけはただ静かに笑っているだけだった。<br> そして俺の疑念は、確信へと変わっていく。</p> <p> </p> <p>ハルヒは完全に、自分の能力を自覚してやがる。</p> <p> </p> <p>昼休み、俺はいつも一緒に飯を食う谷口と国木田に断りを入れた後、部室へとダッシュした。<br> こんな状況で頼れるのは、やっぱアイツだからな。</p> <p> </p> <p>息をきらせながらドアを開けると、やはり居た。寡黙な宇宙人、長門有希。<br> しかし今日は長門だけでは無かった。古泉もいる。<br> その古泉はいつものニヤケ面を封印して、シリアスな顔つきで居た。<br> これだけでも、ただごとじゃないと理解できる。</p> <p> </p> <p>「古泉、お前も来てたのか。」<br> 「ええ。その様子を見るとあなたも既に気付いているでしょう。<br>  はっきり申し上げます。緊急事態です。」<br> 「……涼宮ハルヒが自分の能力を自覚した。」</p> <p> </p> <p>やはりか……</p> <p> </p> <p>「恐らくトリガーは、彼女自身の能力によるもの。」<br> 「ハルヒの能力?」<br> 「ええ。恐らく涼宮さんは、僕達が隠し事をしていることを前々から感付いていたのでしょう。」</p> <p> </p> <p>マジでか………まあ前々から勘は鋭いヤツだったからな。</p> <p> </p> <p>「そして彼女は願ってしまった。『全てを知りたい』とね。<br>  その瞬間能力によって、彼女は自らの能力を自覚した。」<br> 「それだけではない。恐らく彼女は情報統合思念体のことも、古泉一樹が所属している機関のことも、<br>  朝比奈みくるが未来人であることも全て理解している。」</p> <p> </p> <p>おいおい、本当に『全て』じゃねぇか。<br> 俺でさえ理解するのに数日かかったというのに、あいつは一晩でそれを全部受けとめたのか。</p> <p> </p> <p>「昨日の深夜、大規模な閉鎖空間が発生しました。<br>  当然と言えるでしょう。突然大量の情報が彼女の脳に降りそそいだ。<br>  涼宮さんで無くてもパニックになるはずです。<br>  あまりも膨大な閉鎖空間で我々も苦戦を強いられました。ですが、その閉鎖空間は突然自然消滅したのです。<br>  きっと彼女は、閉鎖空間も自由にコントロールできるようになったのでしょう。」<br> 「能力を自覚した今、涼宮ハルヒに出来ないことは何一つ無い。」</p> <p> </p> <p>そうだ。今のハルヒに不可能という文字は無い。なんだって出来る。<br> さっきの雨程度で済むなら問題無いが、もっと大きな願いを叶えようとしたら?<br> 街中に宇宙人を光臨させるとか、動物園に不思議生物を入れるとか、メチャクチャな世界を望んだら?<br> ハルヒに限ってそんなことはしないと思うが、その気になれば一国を滅ぼすことすら出来てしまう。<br> ……まったく、ほんとにとんでもねぇ能力だ。自覚したとあっては、尚更だ。</p> <p> </p> <p>「だ、だがハルヒはあれでも常識的な部分はある。<br>  孤島の時にも言ったが、不思議のために人が死ぬことを望むようなヤツじゃないはずだ。」<br> 「ええ。僕もそう信じていますよ。しかし、彼女の願いが今のイタズラ程度で収まるとも考えにくい。<br>  そのうち、僕等に関わる大きな願いをしてしまうでしょう。例えば……」</p> <p> </p> <p>古泉が例を挙げようとしたその時だった。<br> 部室のドアが控えめに開かれ、入ってきたのは朝比奈さん。<br> だがいつものエンジェルスマイルは影を潜め、暗くうつむいている。</p> <p> </p> <p>「朝比奈さん?どうかしたんですか?」</p> <p> </p> <p>俺が声をかけると、彼女の目に涙がたまっていく。</p> <p> </p> <p>「ふぇぇ、キョンく~ん……」</p> <p> </p> <p>そして朝比奈さんは、俺の胸に飛び込んで泣き始める。あ、朝比奈さん!?</p> <p> </p> <p>「ど、どうしたんですか朝比奈さん!」<br> 「未来が……未来が消えちゃったんですぅ!」</p> <p>なんだって……未来が!?</p> <p>「どういうことですか朝比奈さん。説明していただけますか?<br> 「はい……」</p> <p> </p> <p>彼女は涙をぬぐい、口を開いた。</p> <p> </p> <p>「未来との通信が一切出来なくなったんです。時間移動もしようとしたけど出来ませんでした。<br>  未来が完全に書き換わっちゃったんです。だから私が元々居た世界はもう存在しません。<br>  お父さんもお母さんも……ふぇぇぇ……」</p> <p> </p> <p>朝比奈さんはまた泣き出して座りこんでしまった。<br> これも、ハルヒの仕業か……おいハルヒ。これはシャレの限度を超えているぞ。<br> お前は間接的に、だが確実に、朝比奈さんの世界を滅ぼしたんだ。</p> <p> </p> <p>「あら、みんな集まって何してるの?楽しそうね。」</p> <p> </p> <p>その声にハッとして顔をあげると、そこにはハルヒが居た。</p> <p> </p> <p>「お前にはこれが楽しそうに見えるのか?」<br> 「ええ、とっても。」</p> <p> </p> <p>俺は怒りをこめた返事をした。だがハルヒは、静かな笑みを崩すことは無い。</p> <p> </p> <p>「あたしも、混ぜてよ。」</p> <p> </p> <p>続く</p>
<p><br /> ハルヒが雨を降らせた2時間目の後も、奇妙な出来事は続いた。<br /> 何故かチョークが虹色になったり、校庭に突然小規模な竜巻が出現したり、何も無いとこで谷口がコケたり。<br /> その度にクラスメイトが驚いたり笑ったりしていたが、ハルヒだけはただ静かに笑っているだけだった。<br /> そして俺の疑念は、確信へと変わっていく。</p> <p> </p> <p>ハルヒは完全に、自分の能力を自覚してやがる。</p> <p> </p> <p>昼休み、俺はいつも一緒に飯を食う谷口と国木田に断りを入れた後、部室へとダッシュした。<br /> こんな状況で頼れるのは、やっぱアイツだからな。</p> <p> </p> <p>息をきらせながらドアを開けると、やはり居た。寡黙な宇宙人、長門有希。<br /> しかし今日は長門だけでは無かった。古泉もいる。<br /> その古泉はいつものニヤケ面を封印して、シリアスな顔つきで居た。<br /> これだけでも、ただごとじゃないと理解できる。</p> <p> </p> <p>「古泉、お前も来てたのか。」<br /> 「ええ。その様子を見るとあなたも既に気付いているでしょう。<br />  はっきり申し上げます。緊急事態です。」<br /> 「……涼宮ハルヒが自分の能力を自覚した。」</p> <p> </p> <p>やはりか……</p> <p> </p> <p>「恐らくトリガーは、彼女自身の能力によるもの。」<br /> 「ハルヒの能力?」<br /> 「ええ。恐らく涼宮さんは、僕達が隠し事をしていることを前々から感付いていたのでしょう。」</p> <p> </p> <p>マジでか………まあ前々から勘は鋭いヤツだったからな。</p> <p> </p> <p>「そして彼女は願ってしまった。『全てを知りたい』とね。<br />  その瞬間能力によって、彼女は自らの能力を自覚した。」<br /> 「それだけではない。恐らく彼女は情報統合思念体のことも、古泉一樹が所属している機関のことも、<br />  朝比奈みくるが未来人であることも全て理解している。」</p> <p> </p> <p>おいおい、本当に『全て』じゃねぇか。<br /> 俺でさえ理解するのに数日かかったというのに、あいつは一晩でそれを全部受けとめたのか。</p> <p> </p> <p>「昨日の深夜、大規模な閉鎖空間が発生しました。<br />  当然と言えるでしょう。突然大量の情報が彼女の脳に降りそそいだ。<br />  涼宮さんで無くてもパニックになるはずです。<br />  あまりも膨大な閉鎖空間で我々も苦戦を強いられました。ですが、その閉鎖空間は突然自然消滅したのです。<br />  きっと彼女は、閉鎖空間も自由にコントロールできるようになったのでしょう。」<br /> 「能力を自覚した今、涼宮ハルヒに出来ないことは何一つ無い。」</p> <p> </p> <p>そうだ。今のハルヒに不可能という文字は無い。なんだって出来る。<br /> さっきの雨程度で済むなら問題無いが、もっと大きな願いを叶えようとしたら?<br /> 街中に宇宙人を光臨させるとか、動物園に不思議生物を入れるとか、メチャクチャな世界を望んだら?<br /> ハルヒに限ってそんなことはしないと思うが、その気になれば一国を滅ぼすことすら出来てしまう。<br /> ……まったく、ほんとにとんでもねぇ能力だ。自覚したとあっては、尚更だ。</p> <p> </p> <p>「だ、だがハルヒはあれでも常識的な部分はある。<br />  孤島の時にも言ったが、不思議のために人が死ぬことを望むようなヤツじゃないはずだ。」<br /> 「ええ。僕もそう信じていますよ。しかし、彼女の願いが今のイタズラ程度で収まるとも考えにくい。<br />  そのうち、僕等に関わる大きな願いをしてしまうでしょう。例えば……」</p> <p> </p> <p>古泉が例を挙げようとしたその時だった。<br /> 部室のドアが控えめに開かれ、入ってきたのは朝比奈さん。<br /> だがいつものエンジェルスマイルは影を潜め、暗くうつむいている。</p> <p> </p> <p>「朝比奈さん?どうかしたんですか?」</p> <p> </p> <p>俺が声をかけると、彼女の目に涙がたまっていく。</p> <p> </p> <p>「ふぇぇ、キョンく~ん……」</p> <p> </p> <p>そして朝比奈さんは、俺の胸に飛び込んで泣き始める。あ、朝比奈さん!?</p> <p> </p> <p>「ど、どうしたんですか朝比奈さん!」<br /> 「未来が……未来が消えちゃったんですぅ!」</p> <p>なんだって……未来が!?</p> <p>「どういうことですか朝比奈さん。説明していただけますか?<br /> 「はい……」</p> <p> </p> <p>彼女は涙をぬぐい、口を開いた。</p> <p> </p> <p>「未来との通信が一切出来なくなったんです。時間移動もしようとしたけど出来ませんでした。<br />  未来が完全に書き換わっちゃったんです。だから私が元々居た世界はもう存在しません。<br />  お父さんもお母さんも……ふぇぇぇ……」</p> <p> </p> <p>朝比奈さんはまた泣き出して座りこんでしまった。<br /> これも、ハルヒの仕業か……おいハルヒ。これはシャレの限度を超えているぞ。<br /> お前は間接的に、だが確実に、朝比奈さんの世界を滅ぼしたんだ。</p> <p> </p> <p>「あら、みんな集まって何してるの?楽しそうね。」</p> <p> </p> <p>その声にハッとして顔をあげると、そこにはハルヒが居た。</p> <p> </p> <p>「お前にはこれが楽しそうに見えるのか?」<br /> 「ええ、とっても。」</p> <p> </p> <p>俺は怒りをこめた返事をした。だがハルヒは、静かな笑みを崩すことは無い。</p> <p> </p> <p>「あたしも、混ぜてよ。」</p> <p> </p> <p>続く</p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: