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眠たくないからやっぱり寝よう」(2007/08/25 (土) 22:28:32) の最新版変更点

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<p>雨が降る公園。その遊具の中で私は雨宿りをしていた。<br> ううん。雨宿りなんて出来てない。もう髪は濡れ、服にいたっては水が通過し肌まで濡らしていた。<br> 「・・・・・」<br> 私は、今日初めて彼と喧嘩をした。<br> 本当に下らない事なのに、エラーが止まらなくて。<br> これが怒りという感情なんだと知った。嫌なエラーだった。<br> 昼頃に私の家を飛び出してここに来て、それからずっとここに居る。<br> 「・・・・・」<br> 家は大丈夫だと思う。<br> 彼も鍵を持ってるし、いくら喧嘩した後とは言え出て行くなら鍵は閉めていくだろう。<br> だけどそんな事はどうでも良かった。家に対する不安は無い。<br> 家に帰った時、彼の荷物が無かったらどうしようというのが一番の不安だった。<br> せっかくのお泊まり会なのに。こんな事になって。<br> 「・・・・・」<br> ただ今は後悔だけが胸の中で渦巻いていた。<br> 会いたい。<br> けど彼を怒らせたのは私。<br> 自分が悪いのにむきになって言い返してしまった私が悪いんだ。<br> 「キョンくん・・・」<br> 会いたい人の名前を言っても、水滴が地面を叩く音に消されていくだけ。<br> 不安になって仕方が無かった。<br> もしかしたらもう彼と会話も出来なくなってしまうのではないかと。<br> 怖くなって仕方が無かった。<br> そうなったら私はこの世界に居るのも嫌になってしまう。<br> 彼が居て、変わっていく世界なのに。<br> また元の無機質な世界に変わっていくのかなと思うと悲しくなる。<br> 考えすぎな考えも、一度考えると止まらなくて、駄目だった。<br> 堰を切った涙はもう止まらない。嗚咽も、何もかもが止まらない。<br> 「ぐすっ・・・うぅ・・・」<br> きっと彼は私がこうやって泣いたら優しく頭を撫でてくれるだろう。<br> でも、もしかしたらしてくれないかもしれない。<br> だって嫌われたかもしれないから。ううん、きっと嫌われた。<br> あんなに優しいのに、あんなに好きなのに。<br> 自分がただ嫌になる。<br> 「キョンくん・・・うぇ・・・ぐすっ・・・」<br> 雨は止まない。<br> 夜空に浮かぶ暗黒の外套から私を苛めるように降ってくる。<br> そうだ。もう、私をもっとバカにして下さい。罰を下さい。<br> ひたすらに雨が私の体を穿ち、もうとっくに冷たい体をもっと冷やしていく。<br> 体は逆に熱くなっていくけど、ぼう、とする頭では何も考えられなかった。<br> もう何も考えたくなかった。<br> 考えれば悲しくなってしまう。もう良い。今はこのまま雨に打たれていれば良い。<br> ふと、その時遠くから<br> 「喜緑さーん! どこですかー!!」<br> と私を呼ぶ彼の声が聞こえた。きっと空耳。<br> 私を探してくれるわけがない。こんなにも酷い私を。<br> ううん、解ってる。彼は優しいからこんな私でも探してくれるんだって。<br> だけど私は彼に会わせる顔が無い。<br> なんて言えば良いの? 謝ればそれ良いの?<br> バシャバシャと水溜りを蹴る音が近付いてくる。<br> 私は見付かりたくなくってただ涙を堪えて黙っていた。<br> 「本当にどこに行ってしまったんだ・・・」<br> そう呟く彼の声がして、水溜りを蹴る音は、雨音の中に消えていった。<br> 「ごめんなさい・・・キョンくん、私を探してくれてるのに・・・ぐすっ・・・あぁ、駄目・・・」<br> すすり泣きじゃ我慢出来ない。声が、もう、抑えられない。<br> 「ぐすっ・・・ごめんね、キョンくん・・・キョンくん・・・!!」<br> 遊具の中で大声を出して私は泣いた。<br> 反響してうるさかったけど、そんな事はどうでも良かった。<br> 彼との記憶を反芻したら、もっと声が出て、もっと涙が出た。<br>  <br> 「喜緑さん、そんなに泣いたら可愛い顔が台無しですよ」<br>  <br> 声がした。<br> 向けば彼が遊具の中を、正確には遊具の中の私を覗き込んでいた。<br> 「ほら、帰りましょう?」<br> 唖然とする私に彼は優しく微笑んで手を伸ばしてくれた。<br> 「わ、私・・・私・・・あんな、く、下らない事で、ぐすっ、お、怒って・・・ごめ、んなさい・・・」<br> しゃくりあげてしまって、上手く喋れない。<br> 「いえいえ。俺も悪かったですよ。ごめんなさい」<br> 「ど、どうして・・・優しいんですか、うぇ、ぐすっ、貴方は・・・」<br> 「俺は優しくないですよ。ただ、喜緑さんが大好きなだけです」<br> 「・・・キョンくん・・・!!」<br> 「おっと・・・」<br> 私は彼に抱きついた。勢いで倒されて、彼は水溜りに転がった。<br> だけど、何も言わなかった。<br> ただでさえ水溜りに浸かって濡れてるのに、その上びしょ濡れの私が抱きついちゃったら余計に濡れちゃうのに。<br> 寒いはずなのに、冷たいはずなのに。<br> なのに抱きついたまま泣く私を何も言わずにそっと抱きしめてくれる。<br> 「大丈夫ですよ、大丈夫です・・・」<br> そう言って優しく頭を撫でてくれる。本当に彼は優しい。<br> でも、きっと何が大丈夫なのか彼自身わかってないんだろうな。彼らしいけど。<br> 「さぁ、帰りましょうか、喜緑さん。お泊まり会は始まったばかりです」<br> 「・・・はい」<br> 私は彼に回していた腕を解いて立ち上がった。彼も後に続いて立ち上がる。<br> 「ごめんなさい、濡らしてしまって・・・」<br> 「良いんですよ。お互い様です」<br> 彼の暖かい手に引かれて私は家路を歩く。<br> 「・・・キョンくん」<br> 「何ですか?」<br> 「私のこと、嫌いになってませんか?」<br> 「なるわけないですよ。俺は、喜緑さんが、世界一大好きですから。愛して止まないんですから」<br> 嬉しかった。<br> 「ありがとうございます・・・えへへ・・・」<br> 照れてしまった。<br> 傘の下で寄り添っているから彼の体温を感じて、尚更恥ずかしくなった。<br> びしょ濡れになって相合傘もないと思うけど、こうやってくっ付けるのは幸せなんだと思う。<br> なら相合傘も無意味じゃない。<br> 家に着いてすぐ私達は着替えた。でも、お互いに恥ずかしいから背中を向け合って。<br> 「キョンくん・・・」<br> 「はい」<br> 着替え終わって私は彼に声を掛けた。<br> 「えっと・・・喧嘩した後で悪いのですが、えっと・・・」<br> 「膝枕、ですか?」<br> 彼はすんなりと私の願望を言った。<br> 「・・・はい」<br> 「良いですよ?」<br> 彼はすぐにサッと正座をした。私はゆっくりとそこに頭を置く。<br> 「・・・膝枕好きですね」<br> 彼が私の頭を撫でながら、私の顔を見る。<br> 「はい、貴方の膝枕だけですけど」<br> 私も彼の顔を見る。<br> 「それは光栄です」<br> あぁ、やっぱり落ち着く。<br> 「ちょっと寝ても良いですか?」<br> 「はい。ですが、夕飯食べたいので程ほどにお願いしますね?」<br> 「くすっ・・・解りました」<br> 私は安らぎの地で目を閉じた。<br>  <br> ―――別に寝たいわけではない。<br> ―――ただこうして大好きな彼の温もりに接していたいだけ。<br> ―――だから、こそ。<br> ―――眠たくないからやっぱり寝よう、と私は思う。<br>  </p>
<p>雨が降る公園。その遊具の中で私は雨宿りをしていた。<br> ううん。雨宿りなんて出来てない。もう髪は濡れ、服にいたっては水が通過し肌まで濡らしていた。<br> 「・・・・・」<br> 私は、今日初めて彼と喧嘩をした。<br> 本当に下らない事なのに、エラーが止まらなくて。<br> これが怒りという感情なんだと知った。嫌なエラーだった。<br> 昼頃に私の家を飛び出してここに来て、それからずっとここに居る。<br> 「・・・・・」<br> 家は大丈夫だと思う。<br> 彼も鍵を持ってるし、いくら喧嘩した後とは言え出て行くなら鍵は閉めていくだろう。<br> だけどそんな事はどうでも良かった。家に対する不安は無い。<br> 家に帰った時、彼の荷物が無かったらどうしようというのが一番の不安だった。<br> せっかくのお泊まり会なのに。こんな事になって。<br> 「・・・・・」<br> ただ今は後悔だけが胸の中で渦巻いていた。<br> 会いたい。<br> けど彼を怒らせたのは私。<br> 自分が悪いのにむきになって言い返してしまった私が悪いんだ。<br> 「キョンくん・・・」<br> 会いたい人の名前を言っても、水滴が地面を叩く音に消されていくだけ。<br> 不安になって仕方が無かった。<br> もしかしたらもう彼と会話も出来なくなってしまうのではないかと。<br> 怖くなって仕方が無かった。<br> そうなったら私はこの世界に居るのも嫌になってしまう。<br> 彼が居て、変わっていく世界なのに。<br> また元の無機質な世界に変わっていくのかなと思うと悲しくなる。<br> 考えすぎな考えも、一度考えると止まらなくて、駄目だった。<br> 堰を切った涙はもう止まらない。嗚咽も、何もかもが止まらない。<br> 「ぐすっ・・・うぅ・・・」<br> きっと彼は私がこうやって泣いたら優しく頭を撫でてくれるだろう。<br> でも、もしかしたらしてくれないかもしれない。<br> だって嫌われたかもしれないから。ううん、きっと嫌われた。<br> あんなに優しいのに、あんなに好きなのに。<br> 自分がただ嫌になる。<br> 「キョンくん・・・うぇ・・・ぐすっ・・・」<br> 雨は止まない。<br> 夜空に浮かぶ暗黒の外套から私を苛めるように降ってくる。<br> そうだ。もう、私をもっとバカにして下さい。罰を下さい。<br> ひたすらに雨が私の体を穿ち、もうとっくに冷たい体をもっと冷やしていく。<br> 体は逆に熱くなっていくけど、ぼう、とする頭では何も考えられなかった。<br> もう何も考えたくなかった。<br> 考えれば悲しくなってしまう。もう良い。今はこのまま雨に打たれていれば良い。<br> ふと、その時遠くから<br> 「喜緑さーん! どこですかー!!」<br> と私を呼ぶ彼の声が聞こえた。きっと空耳。<br> 私を探してくれるわけがない。こんなにも酷い私を。<br> ううん、解ってる。彼は優しいからこんな私でも探してくれるんだって。<br> だけど私は彼に会わせる顔が無い。<br> なんて言えば良いの? 謝ればそれ良いの?<br> バシャバシャと水溜りを蹴る音が近付いてくる。<br> 私は見付かりたくなくってただ涙を堪えて黙っていた。<br> 「本当にどこに行ってしまったんだ・・・」<br> そう呟く彼の声がして、水溜りを蹴る音は、雨音の中に消えていった。<br> 「ごめんなさい・・・キョンくん、私を探してくれてるのに・・・ぐすっ・・・あぁ、駄目・・・」<br> すすり泣きじゃ我慢出来ない。声が、もう、抑えられない。<br> 「ぐすっ・・・ごめんね、キョンくん・・・キョンくん・・・!!」<br> 遊具の中で大声を出して私は泣いた。<br> 反響してうるさかったけど、そんな事はどうでも良かった。<br> 彼との記憶を反芻したら、もっと声が出て、もっと涙が出た。<br>  <br> 「喜緑さん、そんなに泣いたら可愛い顔が台無しですよ」<br>  <br> 声がした。<br> 向けば彼が遊具の中を、正確には遊具の中の私を覗き込んでいた。<br> 「ほら、帰りましょう?」<br> 唖然とする私に彼は優しく微笑んで手を伸ばしてくれた。<br> 「わ、私・・・私・・・あんな、く、下らない事で、ぐすっ、お、怒って・・・ごめ、んなさい・・・」<br> しゃくりあげてしまって、上手く喋れない。<br> 「いえいえ。俺も悪かったですよ。ごめんなさい」<br> 「ど、どうして・・・優しいんですか、うぇ、ぐすっ、貴方は・・・」<br> 「俺は優しくないですよ。ただ、喜緑さんが大好きなだけです」<br> 「・・・キョンくん・・・!!」<br> 「おっと・・・」<br> 私は彼に抱きついた。勢いで倒されて、彼は水溜りに転がった。<br> だけど、何も言わなかった。<br> ただでさえ水溜りに浸かって濡れてるのに、その上びしょ濡れの私が抱きついちゃったら余計に濡れちゃうのに。<br> 寒いはずなのに、冷たいはずなのに。<br> なのに抱きついたまま泣く私を何も言わずにそっと抱きしめてくれる。<br> 「大丈夫ですよ、大丈夫です・・・」<br> そう言って優しく頭を撫でてくれる。本当に彼は優しい。<br> でも、きっと何が大丈夫なのか彼自身わかってないんだろうな。彼らしいけど。<br> 「さぁ、帰りましょうか、喜緑さん。お泊まり会は始まったばかりです」<br> 「・・・はい」<br> 私は彼に回していた腕を解いて立ち上がった。彼も後に続いて立ち上がる。<br> 「ごめんなさい、濡らしてしまって・・・」<br> 「良いんですよ。お互い様です」<br> 彼の暖かい手に引かれて私は家路を歩く。<br> 「・・・キョンくん」<br> 「何ですか?」<br> 「私のこと、嫌いになってませんか?」<br> 「なるわけないですよ。俺は、喜緑さんが、世界一大好きですから。愛して止まないんですから」<br> 嬉しかった。<br> 「ありがとうございます・・・えへへ・・・」<br> 照れてしまった。<br> 傘の下で寄り添っているから彼の体温を感じて、尚更恥ずかしくなった。<br> びしょ濡れになって相合傘もないと思うけど、こうやってくっ付けるのは幸せなんだと思う。<br> なら相合傘も無意味じゃない。<br> 家に着いてすぐ私達は着替えた。でも、お互いに恥ずかしいから背中を向け合って。<br> 「キョンくん・・・」<br> 「はい」<br> 着替え終わって私は彼に声を掛けた。<br> 「えっと・・・喧嘩した後で悪いのですが、えっと・・・」<br> 「膝枕、ですか?」<br> 彼はすんなりと私の願望を言った。<br> 「・・・はい」<br> 「良いですよ?」<br> 彼はすぐにサッと正座をした。私はゆっくりとそこに頭を置く。<br> 「・・・膝枕好きですね」<br> 彼が私の頭を撫でながら、私の顔を見る。<br> 「はい、貴方の膝枕だけですけど」<br> 私も彼の顔を見る。<br> 「それは光栄です」<br> あぁ、やっぱり落ち着く。<br> 「ちょっと寝ても良いですか?」<br> 「はい。ですが、夕飯食べたいので程ほどにお願いしますね?」<br> 「くすっ・・・解りました」<br> 私は安らぎの地で目を閉じた。<br>  <br> ―――別に寝たいわけではない。<br> ―――ただこうして大好きな彼の温もりに接していたいだけ。<br> ―――だから、こそ。<br> ―――眠たくないからやっぱり寝よう、と私は思う。<br>  </p>

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