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「長門有希の憂鬱II プロローグ」(2020/05/17 (日) 18:27:28) の最新版変更点
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<p><br>
プロローグ</p>
<p><br>
グラウンドに到着したとき、すでに火は消えつつあった。辺りに立ち込める、灯油と火薬の燃えた臭いが鼻を突いた。俺が描いた地上絵の形に、赤い光がゆらゆらとゆらめいていた。ときおり吹き抜ける冷たい風に、火は立ち消えようとしていた。暗くてよく分からなかったが、野球のバックネットのそばに人影らしきものが見えた。どうやらまだ帰ってないようだ。<br>
「谷川さん!谷川さん!俺です」俺は大声で叫んだ。<br>
その人影はこちらを振り向き、驚いて目を見張った。<br>
「谷川さん!また戻ってきました」<br>
「そんなバカな」<br>
谷川氏は口をあんぐりと開け、俺の顔を確認すると後ろにぶっ倒れた。</p>
<p> </p>
<p> 階段のほうから四人が歩いてくるのが見えた。俺はこっちだと手を振って示した。<br>
「それ、誰?」ハルヒが尋ねた。<br>
「この人は谷川さんと言ってな、俺たちがいつもお世話になってる人だ」<br>
白目むいて気絶してるけど。<br>
「ふーん。……なかなかいい男ね」<br>
冗談言ってる場合か。<br>
冬の夜空に、冷たい雨が降り始めた。<br>
「雨だ。傘持ってくればよかったですね」<br>
「あ、わたし持ってますよ」<br>
さすが朝比奈さん、準備がいい。<br>
「一本だけですけど」<br>
それを五人で身を寄せ合ってさすのは無理があるかと。<br>
「濡れますから、とりあえず運びましょう」<br>
俺の記憶が正しければ、学校の前の坂を登ったところに車が止めてあるはずだ。<br>
「古泉、足を持ってくれ」<br>
俺と古泉は死体を運ぶように谷川氏を抱え、校門への坂を登った。<br>
「僕たち、なんだか死体を運んでる殺人犯みたいですね」<br>
なんて物騒なことを言うんだお前は。俺も想像してた。<br>
人目を避けて車のところまで来た。前回来たときと何も変わっていない。車のキーは谷川氏のポケットに入っていた。<br>
「車まで運んだはいいが、後どうしよう?」<br>
「……わたしが運転する」<br>
「長門、運転できるのか」<br>
「……理論はわかる」<br>
理論って、長門なら学科試験は簡単に通るだろうが……。俺はほかに運転できそうなやつがいないかメンツを見回した。<br>
「古泉は?」<br>
「残念ながら経験ありません」<br>
「あたし、運転くらいできるわよ」<br>
いや、ハルヒ、お前が運転する車に乗るくらいなら三百六十度回転ジェットコースターに乗ったほうがまだ安心できる。俺は朝比奈さんにコソコソっと尋ねた。未来にも車くらいあるだろう。<br>
「運転できますか」<br>
「ごめんなさい、こんな古い方式の移動車両は運転したことがないですぅ」<br>
そうでしょうね。未来じゃ行き先を告げるだけで自動操縦っぽいですもんね。しょうがない、完璧を期する長門の力学的正確さに任せよう。俺が助手席に座り、後ろの三人の膝の上に谷川氏を寝かせた。長門の、おそらく生涯初であろう車の運転をハラハラしながら見守った。</p>
<p><br>
さて、どこから話そう。そもそも、なんでハルヒがここにいるのかを説明しなければなるまい。事の起りは、俺と長門が平行世界から帰還して、二ヵ月くらいしてからのことだ。</p>
<hr>
<p align="right"><a target="_self" href=
"http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3039.html">一章へ</a> </p>
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プロローグ</p>
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グラウンドに到着したとき、すでに火は消えつつあった。辺りに立ち込める、灯油と火薬の燃えた臭いが鼻を突いた。俺が描いた地上絵の形に、赤い光がゆらゆらとゆらめいていた。ときおり吹き抜ける冷たい風に、火は立ち消えようとしていた。暗くてよく分からなかったが、野球のバックネットのそばに人影らしきものが見えた。どうやらまだ帰ってないようだ。<br />
「谷川さん!谷川さん!俺です」俺は大声で叫んだ。<br />
その人影はこちらを振り向き、驚いて目を見張った。<br />
「谷川さん!また戻ってきました」<br />
「そんなバカな」<br />
谷川氏は口をあんぐりと開け、俺の顔を確認すると後ろにぶっ倒れた。</p>
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<p> 階段のほうから四人が歩いてくるのが見えた。俺はこっちだと手を振って示した。<br />
「それ、誰?」ハルヒが尋ねた。<br />
「この人は谷川さんと言ってな、俺たちがいつもお世話になってる人だ」<br />
白目むいて気絶してるけど。<br />
「ふーん。……なかなかいい男ね」<br />
冗談言ってる場合か。<br />
冬の夜空に、冷たい雨が降り始めた。<br />
「雨だ。傘持ってくればよかったですね」<br />
「あ、わたし持ってますよ」<br />
さすが朝比奈さん、準備がいい。<br />
「一本だけですけど」<br />
それを五人で身を寄せ合ってさすのは無理があるかと。<br />
「濡れますから、とりあえず運びましょう」<br />
俺の記憶が正しければ、学校の前の坂を登ったところに車が止めてあるはずだ。<br />
「古泉、足を持ってくれ」<br />
俺と古泉は死体を運ぶように谷川氏を抱え、校門への坂を登った。<br />
「僕たち、なんだか死体を運んでる殺人犯みたいですね」<br />
なんて物騒なことを言うんだお前は。俺も想像してた。<br />
人目を避けて車のところまで来た。前回来たときと何も変わっていない。車のキーは谷川氏のポケットに入っていた。<br />
「車まで運んだはいいが、後どうしよう?」<br />
「……わたしが運転する」<br />
「長門、運転できるのか」<br />
「……理論はわかる」<br />
理論って、長門なら学科試験は簡単に通るだろうが……。俺はほかに運転できそうなやつがいないかメンツを見回した。<br />
「古泉は?」<br />
「残念ながら経験ありません」<br />
「あたし、運転くらいできるわよ」<br />
いや、ハルヒ、お前が運転する車に乗るくらいなら三百六十度回転ジェットコースターに乗ったほうがまだ安心できる。俺は朝比奈さんにコソコソっと尋ねた。未来にも車くらいあるだろう。<br />
「運転できますか」<br />
「ごめんなさい、こんな古い方式の移動車両は運転したことがないですぅ」<br />
そうでしょうね。未来じゃ行き先を告げるだけで自動操縦っぽいですもんね。しょうがない、完璧を期する長門の力学的正確さに任せよう。俺が助手席に座り、後ろの三人の膝の上に谷川氏を寝かせた。長門の、おそらく生涯初であろう車の運転をハラハラしながら見守った。</p>
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さて、どこから話そう。そもそも、なんでハルヒがここにいるのかを説明しなければなるまい。事の起りは、俺と長門が平行世界から帰還して、二ヵ月くらいしてからのことだ。</p>
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<p align="right"><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3039.html" target="_self" rel="noreferrer noopener">一章へ</a> </p>
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