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乙女ハルヒ日記1」(2007/07/02 (月) 13:01:36) の最新版変更点

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<p><br> もう認めてしまおう。<br> あたしは、キョンのことが好き。<br> <br> <br> こ、こうして字に書いてみると、なんだか…すごく恥ずかしい…。<br> <br> で、でも、いったん認めてしまうと、少しは心が晴れるわね。ううん、むしろ、世界が明るくなった気さえするわ。<br> いままでは、恋愛なんて精神病でしかないと思ってたけど…。<br> <br> あ。<br> そうだった。<br> あたし、キョンにもそう言っちゃってるんだ。いつのことだったかは覚えてないけど…。<br> <br> ああああ、何てこと口走ってんのよ、昔のあたし!! これじゃキョンに告白できないじゃない!<br> 「恋愛は精神病の一種なんじゃなかったのか?」なんて飄々と言ってくるに決まってるわ、キョンのやつ!<br> 誰のせいでこうなったと思ってんのよ…。<br> <br> …どうしよう。<br> キョンに告白させるしかないけど、あいつ鈍いし…。<br> どうしたらいいか分かんないよぉ…。<br> <br> それより、明日の不思議探索、キョンとペアになったりしたら…普通に話せるかしら。<br> ううぅ、やばい…。<br> <br> <br> あーっ、もう寝る!<br> 知らないわよ、あんなやつ!</p> <hr> <p><br> 運の悪いことに、午後はキョンとペアだったけど、自然に振舞えたかしら…。<br> まあ、あいつ鈍いし大丈夫、よね…。<br> <br> それにしても、キョンの顔見るだけで顔が熱くなってくる、これってどうにかならないのかしら!<br> 古泉くんとか鋭いから、顔が赤くなってたらきっとすぐにバレちゃうわね…。<br> <br> どうせバレるんなら、やっぱり有希かみくるちゃんがいいなあ。同性のほうが相談しやすいし。<br> あ、でも男の子の考えてることとか分かるから、古泉くんのほうがいいのかしら。<br> でも誰かに知られちゃうのって、ちょっと怖いのよね…。もちろん、みんなを信用してないわけじゃないんだけど。<br> <br> うーん、でも、変なタイミングで誰かにバレて、騒いでるところにキョンが居合わせちゃったりするのがいちばんまずいわよね。<br> とすると、キョン以外のSOS団のみんなには、先に知っておいてもらったほうがいいのかしら。<br> <br> でも、まだ自分の気持ちに気づいたばっかりだしなあ。もうちょっと様子見ようかな。</p> <p>そのあいだに変なことにならなきゃいいんだけど…。<br> <br> とりあえず、明日も学校あるし、キョンにだけはバレないようにしないとね。<br> <br> <br> なんだか疲れちゃった。お昼寝しよっと。</p> <hr> <p><br> 4時間目の数学で、キョンは居眠りしてた。<br> 頭がカクカク揺れてるんだもん。なんか可愛かった(笑)。<br> <br> ……可愛いだなんて、あたしホントにどうしちゃったのかしらね…。<br> <br> でも、そんなキョンを見ててふと思ったんだけど、キョンが目の前の席にいてくれるって、すごく幸せなことなのね。<br> 好きな人の姿を、いつでも目にすることができるんだもん。もし万が一、顔が赤くなったりしてもバレることないし。<br> 今日は、授業中ずっとキョンを見てた気がするわ。<br> 次の席替えでも、同じ席順になれるといいんだけど…。<br> <br> でも、もうずっとこの席順なのよね。何度席替えしても。<br> ……これって、運命、ってやつ……?<br> <br> …ばっかみたい! 恥ずかしすぎるわよ、このバカキョン!!<br> …はあ、あたしももうすっかり重症患者ね。こんな妄言まで…。<br> <br> 部活に行くとき、キョンと一緒に行ったんだけど、教室から部室までのあいだは2人きりだってことに気づいちゃって、あたしはドキドキしっぱなしだった。<br> キョンは特に気づいた様子もなかったから、たぶん普段どおりを演じられたと思うんだけど…。<br> 今日いちばん焦った時間だったわね。<br> <br> はあ、なんか情けないなあ。あたしともあろうものが、たかだか男ぐらいで…。<br> しばらくしたら慣れるのかしら。早くまた普通に話ができるようになりたいな…。<br> <br> おやすみ、キョン。明日も仲良くしてね。</p> <hr> <p><br> 今日も授業中はキョン観察。今日はなんだか真面目に授業受けてたみたい。<br> 割と真面目なのに、キョンは成績悪いのよねー。たぶん要領が悪いんだわ。不器用だしね。<br> あたしが教えてあげようかしら。<br> <br> 2人っきりで勉強、なんていいかも…。<br> …あーっ、ダメ! 絶対挙動不審になっちゃうわ、あたし。まだ、いまはちょっと…。<br> <br> それにしても、今日はすっごく暑かった。<br> キョンに汗臭いなんて思われたくないから、制汗スプレーこまめに振ってたら、キョンが「なんかおまえ、今日いい匂いするな」って。<br> すんごくドキッとした! たぶん、顔赤くなっちゃってたと思う。<br> <br> うーん、「いい匂い」って言ってくれるのは嬉しいんだけど、スプレーの匂いだしなぁ…。<br> 普段から振ってるやつなんだけど、気づいてなかったのかしら。それともちょっと振りすぎ?<br> なんかいろいろ気にしちゃうわね。ホント、そういうのが大変。女の子って。<br> キョンを好きになってから、特に気になるのよねぇ。<br> <br> あ、そうだ! 明日からは、団扇持っていこうかしら。キョンに貸してあげてもいいし。<br> 後ろから突然扇いであげたりしたら、喜んでくれるかな、キョン。<br> <br> そろそろ寝よっと。おやすみ、キョン。</p> <hr> <p><br> 朝、キョンが汗流しながら教室に入ってきたから、団扇で扇いであげたら、「まさかおまえが俺を扇いでくれるとは…」だって。<br> 「今日は午後から雪か?」なんて言ってきやがった。いくらなんでもひどいわよ、そんな言い方!<br> もちろん、「ありがとよ」とも言ってくれたけど…。<br> <br> うーん……。<br> <br> あたしって、キョンにとってそんなにイメージ悪いのかしら。<br> なんか自信なくなっちゃったなぁ…。<br> <br> たしかに、ちょっとだけ自分勝手なところがあるのは自覚してるけど…、そんなにわがままかなぁ、あたし…。<br> もしかして嫌われてるのかしら。これって結構望み薄?<br> <br> はあ……。</p> <hr> <p><br> 昨日のことでちょっとヘコんでたら、キョンが心配して「元気ないな。どうした?」って聞いてきてくれて、ちょっと嬉しかった。<br> やっぱり、キョンはなんだかんだで優しいのよね!<br> ただ、元はといえばあんたのせいなんですけどね…。<br> <br> それから、キョンが「団扇貸してくれ」って言うから、そのままあげちゃった!<br> 「いいのか? 返すぞ」って言ってたけど、団扇ぐらい、家にまだあるしね。<br> それに実は、お揃いの団扇をもう一本持ってるのだ(笑)。<br> これでキョンとお揃い……。へへへ。<br> <br> 今日はいい日だったなあ。キョンともたくさん話せたし。<br> ちょっとずつ、普通に接していられるようにもなってきたしね。<br> まだ一緒にいるとドキドキするけど、楽しく話してると、自然な感じになっていけるみたい。よかった~。<br> <br> あ~もう、またキョンと話したくなってきちゃった! 早く明日にならないかしら。<br> 不思議探索、ペアになれるかなあ…。<br> おやすみ、キョン! また明日ねっ!</p> <hr> <p><br> 雨だったから、不思議探索は中止。その代わり、みんなでキョンの家に行っちゃった!<br> <br> 前に行ったときも思ったけど、キョンの部屋って、男のくせに割ときれいなのよね。<br> もしかしたら、普段はあたしの部屋の方が散らかってるかも…。<br> <br> 女の子がこんなんじゃダメね! 明日は部屋の片付けしよっかな。<br> <br> で、キョンのこといろいろ知るチャンスだと思って、さりげなく物色してたんだけど、あいつってホント無趣味なのねぇ。<br> これといって何にも出てこないんだもん。好きなこととか、集めてるものとか、知りたかったのに。<br> <br> でも、去年の夏合宿の写真を、ちゃんと飾っててくれたのは嬉しかった。<br> それがみんなで撮った集合写真だったのは、ちょっとだけ残念だけど。<br> せっかくなんだから、たった1枚、2人きりで写ったやつを飾っててくれれば……。<br> なんてね。あいつがそんなことするわけないっか。<br> けど、あの写真もきれいにとっておいてくれたし、それはそれでよかったのかな…。<br> <br> それにしても、キョンの部屋にいるってだけで、今日はすっごく落ち着かなかった。<br> お母さんもいたし。お父さんはいなかったけど。<br> お母さんにはちゃんと挨拶もしたし、特に変なこともしなかったつもりだけど、どう思われてるのかしら…。<br> でも、お母さんいい人そうだし、ちょっと安心した。妹ちゃんもいい子だし。<br> <br> …って、そ、そんな先のこと考えたって、意味ないか(笑)。</p> <hr> <p><br> 今日は午前中買い物に行って、帰ってきてから部屋の片付けをした。<br> おかげでいまは部屋がすっごくきれい。<br> 掃除機かけたし、なんとかシートで拭き掃除もしたし、カーペットにはコロコロテープもしたもんね。<br> キョン! いまなら遊びにきてもいいわよ~。なんちゃって(笑)。<br> <br> ただ、今日はキョンに会えなかったからなぁ…。<br> ま、会う予定もなかったから、しかたないんだけど。<br> <br> あ、でもじつは、今日買い物に行ってきたのは、フォトフレームを買うため!<br> だから、いまあたしの机の上には、キョンとのツーショット写真があるのだ!<br> あたしもすっかり忘れちゃってたのよねー。昨日キョンの家で見て、「あ、そういえば撮ったんだった」って思い出したわ。<br> <br> キョン…、へへへ…。<br> <br> ただ、これ誰かに見られたら、即刻死ねるわね…。お母さんでも無理。<br> どうしよう。せっかくだからきれいに飾りたいけど、飾っちゃうと…。<br> お母さんは、あたしが学校行ってるときとかにお布団干しにきたりするし、ときどき親父も勝手に入ってくるし…。<br> <br> うーん……。<br> あたしが部屋にいるときぐらいは、見えるところに置いておいてもいいよね。誰か入ってきたら、すぐにしまえばいっか!</p> <hr> <p><br> 体育が終わって、教室に帰ってきたら、あたしの机に団扇が2つ置いてあって、どっちがあたしのか分かんなくなっちゃった。<br> どっちがどっちのなのか、キョンと言い合ってたら、谷口が「どっちでもいいじゃねえか。どうせ2人でお揃いの買ったんだろ?」って。<br> 違うって言ったんだけど、「これ以上教室を暑苦しくしないでくれ」とか言って、全然聞いてない。<br> <br> そんな言い方、なんか、キョンとあたしが付き合ってるみたいじゃないのよ…。<br> まあ、そう扱われるのは嫌じゃないんだけど(笑)。<br> でも、やっぱり恥ずかしいのよね、そういうこと言われちゃうと。<br> たぶん顔赤かっただろうなあ、あたし。<br> <br> 去年の合宿の写真を見たら、なんだかまたみんなで合宿したくなっちゃったから、今日の部活はミーティング。<br> 議題はもちろん、今年の夏合宿について!<br> で結局、今年はキャンプに行くことになった。<br> また古泉くんの親戚に、キャンプ場持ってる人がいるんだとか。…キャンプ場経営って、面白いのかしら…。<br> <br> キャンプかあ…。他にどんなことしようかしら。山だからなあ。川原で魚釣りとか、花火とかかしら、やっぱ。<br> あとは…肝試しなんかもできるかな。キョンと2人で、て、手とか繋いじゃったりして…。<br> <br> ……だ、ダメだ~。想像するだけで、すんごい暑くなってくる。心臓バクバクいってるし。<br> でも、キョンと同じテントで寝ちゃうことなるのかしら。…ちゃんと眠れるかな…。<br> <br> また明日、いろいろ話し合ってみようかしらね。古泉くんも、資料持ってきてくれるって言ってたし。<br> それじゃおやすみ、キョン!</p> <hr> <p><br> 今日も部活はミーティング。<br> 古泉くんの親戚が経営してるキャンプ場は、想像よりずっと設備が整ったものみたいだった。<br> キャンプファイヤーとかバーベキューができるだけじゃなくて、食堂とか、体育館とか、天文台まであってビックリ。<br> どっちかっていうと、宿泊施設って感じね。普通はロッジに泊まるみたいだし。<br> <br> なんか楽しみ! 天文台なんてすごく面白そうだし!<br> それに…、とりあえず2泊3日ってことになったけど、そんなにキョンと一緒にいられるなんて…。<br> いろんなことして、たくさん思い出作りたいなあ…。<br> <br> あうう、ダメだ…。<br> キョンと2人でいるとこ想像するだけで、なんか、胸が…、熱くなってくる…。<br> <br> …なんかいやらしいわね、↑これ……。恥ずかしい…。<br> <br> はあ、いつからこんな女の子になっちゃったんだろ。<br> キョンのこと考えるだけで、心が痛いっていうか、でも心地いいっていうか…、甘くて苦いっていうか…。<br> そういう、すっごく微妙なバランスのところでふらふらしてる、なんだか頼りない気持ちになっちゃうのよね…。<br> <br> いっそのこと、どっちかはっきりしてくれればいいのに。<br> 虫歯になっちゃいそうなくらい甘いか、頭痛がしてくるほど苦いか。<br> <br> …あたしがこんな気持ちでいること、キョンは全然知らないんだろうなあ…。</p> <hr> <p><br> 昨日の夜、いろいろ考えてたら眠れなくなっちゃったせいで、今日は一日中元気が出なかった。<br> 顔色もあまりよくないし、食欲もなくて、授業中はずっと机に突っ伏してた。<br> そしたら、やっぱり…っていうと計算してたみたいで嫌だけど、昼休みにキョンが心配してくれた。<br> 「大丈夫か? 保健室行くか?」って。<br> <br> そこでつい「寝てないの」って答えて、墓穴掘っちゃったのよね。<br> 「寝ずに何してたんだよ」って聞かれて、答えようがなかった。まさか「あんたのこと考えてたのよ」なんて言えるわけもないし。<br> だから「なんでもないっ!」って叫んで教室飛び出したら、すぐにクラッときてダウン。結局キョンに連れられて保健室に。<br> そのまま昼休みが終わるまで、ずっと一緒にいてくれた。お弁当も食べてないはずなのに。<br> <br> キョンって、実はすごく優しいのよね…。今日は本当にそう思った。<br> ただ、保健室まで抱っこして連れて行ってくれたら満点だったんだけど…なーんて(笑)。<br> 学校でお姫様抱っこするなんて、さすがにちょっとおかしいわよね。<br> <br> キョンにお礼しなきゃなあ。もちろん「ありがと」とは言ったけど、もっと、ちゃんとしたお礼。<br> 明日、それにかこつけて、部活の帰りにご飯でも誘っちゃおうかしら。<br> ……ダメだわ、やっぱり。今日「ありがと」って言うだけでも結構勇気が要ったのに、そんな誘いなんてできるわけないよう。<br> <br> うーん、でもお礼はしたいし…。どうしよう。<br> キョン、何がいい……?</p> <hr> <p><br> キョンのバカバカ! あたしのバカバカぁ~!!<br> なんて鈍感なやつなの!? 信じらんない! 誘われたら、普通は2人でって思うのもんなんじゃないの!?<br> <br> ……結局、頑張ってご飯に誘った。部室に行くまでの廊下で。<br> 部活が終わってからだと、もうキョンのお母さんがご飯作っちゃってる可能性もあるから、その時間しかないって、朝から考えてたのよね。<br> だから、教室から部室まではものすっっごく緊張してた。<br> 顔真っ赤なのはもちろんだし、指先もなんだか震えてるし、心臓飛び出しそうだったし。<br> <br> 頑張った~。あたし、エライっ!! キョンにも断られなくて、ホントよかったわ。<br> <br> ……そう思ってたのに…。<br> <br> 部室に着いたら、みんなも誘っちゃうんだもん。「今日はハルヒがみんなでご飯食べに行こうってさ」とかなんとか。<br> 「行こうってさ」じゃないわよ、このバカキョン!!<br> その場でそう言いたかったけど、キョンやみんなに感づかれるのも嫌だし……。<br> <br> 結局、みんなでご飯に行ってきた。<br> はあ、あたしももっとはっきり言えばよかったのかしら。キョンが鈍感なことぐらい分かってた。でも、さすがにここまでとは……。<br> しまいには、「最近悩み事でもあるのか? よかったら相談に乗るぞ」なんて言って。あんたのせいだっつーの!<br> 笑ってごまかしといたけど、顔引きつってたんじゃないかしら、あたし。<br> <br> 結局、キョンにだけ奢るのもおかしいから、みんなの分も出して。「日頃のお礼よ!」なんて言っといたけど。<br> <br> はあ……。キョンが相手だと前途多難ね…。<br> おやすみ、バカキョン。</p> <hr> <p><br> 古泉くんに、気づかれちゃった…。<br> 団のなかでいちばん鋭そうだし、気づかれるとしたら、たぶん最初は古泉くんだろうな、とはなんとなく思ってたけど。<br> ただ気になるのが、「彼を除けば、おそらくみなさん気づいていたと思いますが」って言葉。しかも「前から」?<br> <br> あたし自身、自分の気持ちに気づいたのなんてついこの前のことなのに、みんなは分かってたなんて、ホントかしら?<br> だってだって、いままではキョンの前にいても、緊張したり顔が赤くなったりすることなんて全然なかったもん。<br> 「好き」っていう態度をとったことだってなかった。<br> むしろ、雑用係とかいって、結構ひどい扱いしてきちゃったかなって思ってるくらい…。あうう、ごめん、キョン。<br> よくみんな気づいたわね…。有希は分かるけど、ホントはみくるちゃんも鋭い子なのかしら?<br> <br> 「僕でよろしければ、相談に乗りますよ」って言ってくれたけど、「キョンの鈍さをどうにかしてほしい」なんて言っても無理だしね。<br> とりあえず、「キョンにお礼がしたいんだけど、何がいいと思う?」って聞いてみた。昨日のはキョンへのお礼になってないもん。<br> そしたら、「ほう、何のお礼ですか?」って聞かれて、一昨日のことを話すハメに……。あああ、あたしのバカ…。<br> <br> で、提案してくれたのがお弁当。明々後日、月曜日のお弁当を作ってあげたらどうかって。<br> そ、そんなの恥ずかしくてできないわよう!<br> <br> ……でも、作ったら、喜んでくれる? キョン…。</p> <hr> <p><br> 今日は不思議探索に行った。相変わらず不思議は見つからないけど…楽しいからいいよね(笑)。<br> <br> 午前中は、あたしと古泉くんとみくるちゃん、キョンと有希の組み合わせ。<br> ホントにみくるちゃんも気づいてるのか、ちょっと気になったけど、余計なことは言わないようにした。<br> また墓穴掘っちゃうのも嫌だしね(笑)。<br> <br> 午後は、キョンとみくるちゃんの3人で組むことになった。<br> キョンと2人だと緊張するけど、みくるちゃんも一緒だったからよかった。<br> <br> 駅でみんなと別れて、あたしとキョンだけになったとき、あたし頑張って言ったわ!<br> 「月曜日はお弁当持ってこないで」って。<br> そしたらキョンのやつ、「なんでだ?」とか聞いてくるのよ。もうぅ、なんでこいつはこんなに鈍いのよっ!<br> 「いいから! 持ってきちゃダメよ! 分かったわね!」って言って帰ってきたけど…、こんな言い方しかできないあたし…。<br> もっと可愛くならなきゃ、キョンに好きになってもらえないよ……。<br> <br> キョンだってやっぱり、可愛い女の子が好きよね…。でも、具体的にはどんなタイプの人が好きなのかしら。<br> ……どうしよう。おとなしくて淑やかな子が趣味だったりしたら…。<br> <br> あううう、キョンの好きなタイプが気になる~!<br> 誰か知らないかしら。古泉くんとはそういう話しないのかしら。今度聞いてみよっかな…。<br> <br> おやすみ、キョン! 明日…は会えないか。また明後日ね!</p> <hr> <p><br> キョンのお弁当のために、ルンルン気分で買い物に行ったら、みくるちゃんに会っちゃった!<br> もちろんみくるちゃんは、あたしが何の買い物に来てるのか聞いてくるわけで…。<br> なんとかごまかそうとしたけど、無理っぽかったから喋っちゃった。<br> はっきり「キョンのことが好き」とは言わなかったけど、やっぱり分かっちゃうわよね、さすがに。<br> <br> そしたらみくるちゃん、「羨ましいです」って。<br> みくるちゃんなんて学校一モテモテなんだから、素敵な恋愛しようと思えば、いくらでもできると思うんだけどな。<br> あたしがそう言うと、「ダメなんです、わたしは…」って。みくるちゃん、恥ずかしがり屋だからなのかな…?<br> <br> 別れ際に、「きっとキョンくんも、涼宮さんのこと好きだと思いますよ」って言ってくれた。<br> ビックリして、「な、なんで!?」って聞いたら、「うーん、なんとなくですけど」って。そ、そりゃそうよね……。<br> わたしも「みくるちゃんはいい子なんだから、絶対素敵な恋愛できるわよ!」って言ってあげたかったけど、その前に手を振って行っちゃった。<br> みくるちゃん、ありがとう。<br> <br> 帰ってきて、お弁当の仕込み。前日からしっかり準備しておかないとね。気合が違うんだから!<br> お母さんに「明日お弁当いるの?」って聞かれたから、適当に「うん」って言っておいた。あたしも持っていくんだから、嘘じゃないもん。<br> <br> ……ただ、あたしはどこでお弁当食べればいいのか分からないのよね…。キョンは谷口たちと食べるだろうし…。<br> <br> あわわああ! キョンからメールが来た!! 「明日は弁当持ってきちゃいけないんだよな?」って。<br> 「うん! 持ってこないで!」って返す。メールだとあんまり強い口調になれないのよね…。<br> <br> あうう、それよりどうしよう! 緊張するよう! 何て言って渡して、あたしはどうすればいいの~!?<br> また眠れる気がしない…。でも明日は早起きしなきゃだから、今日はもうおやすみ!<br> キョン! あんた明日喜ばなかったら死刑よ、死刑!!</p> <hr> <p><br> 今日は気合入れて書くわよ! 頑張っちゃったもんね、あたし!<br> エライっ! すごいっ! 可愛いっ! …なんちゃって(笑)。<br> <br> <br> 朝からドキドキしながらお弁当作って、詰めて、お母さんに「あれ、2つ持っていくの?」って聞かれたのをとりあえず流して。<br> なんだか、脚が地に着かないような感じのまま学校へ。あまり眠れなかったしね。<br> キョンの顔は見れなかった。「昼飯どうすんだ?」って聞いてきたけど、「だ、大丈夫だから」としか話せない…。<br> <br> こんな日は時間が経つのが早くて、あっという間に昼休み。はああぁ…って深呼吸して、緊張の一瞬!!!<br> バカみたいにぷるぷる震える手のまま、「はい」とだけ言ってアイツのお弁当を突き出す。目も顔も合わせられない。<br> キョンは「え、なんだこれ」って。<br> 「いいから! この前のお礼!」<br> 言葉がこれだけしか出てこなくて、あたしは教室を飛び出した。死んじゃいたいくらい恥ずかしかった。<br> <br> 屋上に来て気がついたけど、あたしは自分のお弁当を教室に忘れちゃってた。<br> けど、そんなの考えられなくて当然なくらい、頭の中はパニックだった。胸がいっぱいで、お腹なんて全然空いてないし。<br> <br> どうにか落ち着きたかったけど、屋上はちょっと暑すぎた。団扇も持ってるわけなかったし。<br> だから日陰に座って休んでた。そしたら、誰かが階段を上ってくる音がして……。<br> <br> 汗だくになって、息を切らした、キョンだった。<br> あたしがあげたお弁当を持ってた。<br> <br> あたしは嫌な予感がして、直前に貯水タンクのところに登って、隠れてた。<br> キョンは屋上を一通り見渡して、また校舎の中に戻っていった。<br> …あれってやっぱり、あたしを探してくれたのよね……?<br> そう思うと、すごく、すんごく嬉しかったけど、さっき勇気を完全に使い果たしたあたしは、キョンに姿を見せられなかった。<br> <br> ……このまま、もうずっと、ずっと顔が見られなくなったら…、どうすればいいの…?<br> <br> なんでお弁当なんて作っちゃったんだろう。よく考えれば、それがどういうことを意味するかぐらい、分かったはずなのに。<br> さすがにキョンにも気づかれたかもしれない。ううん、気づかれてなかったとしても、あたしの方がもうダメだ…。<br> 古泉くんのせいじゃない。古泉くんは提案してくれただけだもん。採用したのはあたし。<br> …キョンが鈍いからいけないんだ。あんなに鈍いのなら、これぐらいしないと…って思っちゃったのよ。<br> ぜんぶキョンが悪いんだ。キョンのバカ。にぶちん! 鈍感!<br> <br> ……鈍感なくせに、なんでこういうときにかぎって、探しにきてくれるのよ…。<br> <br> キョンが屋上に落としてった汗の雫を見て、なぜか涙が出そうになった。<br> <br> <br> なんだかもう疲れちゃって、昼休みが終わっても、教室に戻る気にはならなかった。<br> でも、ずっと奥上にいて日焼けしちゃうのも厭だから、とりあえず部室に行くことにした。<br> <br> 部室に着いて、あまりの暑さに窓を開けたけど、ドアを閉めてるから、風は入ってこない。<br> ドアを開ければ涼しいんだろうけど、なんとなく、閉めておきたかった。<br> 何もすることがないから、椅子に座って休んでた。団長机のじゃなく、ふだんはキョンが使ってる椅子で。<br> だって、団長机のほうは日が差して暑いんだもの。しょうがない、しょうがない…。<br> <br> そんなこと考えてたら、突然扉が開いて、入ってきたのは……キョンだった。<br> <br> 「よっ」<br> キョンは軽くそう言ったけど、そのシャツは、汗でびっしょり濡れてるのが分かった。手にはまだお弁当がある。<br> でも、授業は…?<br> 「探したぜ。どこに行ってんだ?」ってキョン。やっぱり部室にはいちど探しに来てたのね。<br> 一気に固まっちゃったあたしは、「べ、べつに……」としか答えられなかった。<br> 「何があったんだよ?」<br> そんなの答えられるわけない。ここで告白までするつもりなんてない。<br> いたたまれなくなって逃げようとしたら、キョンに阻まれた。<br> 「頼むからもう逃げないでくれよな。これ以上走り回されんのはごめんだぜ」……ごめんなさい。<br> でも、そこにいても、あたしは何も答えなかった。黙秘。当然よね。<br> <br> 「じゃ質問を変えよう。その、この前のお礼ってのは…何の話だ?」<br> これにはさすがにビックリした。このお礼の意味も分かってなかったなんて!<br> これがきっかけで、なんだか…、1人で舞い上がったりヘコんだりしてるあたしが、バカみたいに思えてきちゃった。<br> ドキドキが徐々に引いていく。<br> 「この前、保健室まで連れて行ってくれたでしょ。昼休みが終わるまで、付き添っててくれたし。そのお礼よ」<br> あたしはあっさり言った。<br> そしたら、「ああ、なんだ、そのことか」って。<br> <br> キョンは「なるほどな」とか言いながら、あたしの隣に座った。お弁当を広げ始める。<br> 「ここで食べるけど、いいか?」って聞かれた。……な、何の確認なのよ…。<br> あたしは「好きにすればいいでしょ」って言った。けど、キョンがお弁当を食べるところは、正直見られない…。<br> <br> キョンはお弁当を開けて、「うまそうだな」って言って食べ始める。<br> 背中向けてたから、最初に何を口に入れたのかは知らないけど、キョンが言った。<br> 「うん、うまいぞ、ハルヒ」って……。<br> <br> なんでもない一言なのに、あたしはそれを聞いて、気持ちがすごく落ち着いていくのを感じた。<br> 嬉しかったぁ…。なんていうか、響くのよね、セリフが。心に。<br> <br> それでホッとしたら、突然!<br> <br> 「きゅうぅぅ」<br> <br> ……鳴った。お腹が。あたしの。それも結構な音で。<br> ああああああ!! あたしのバカあああぁ!! なんでこんなときにお腹鳴っちゃうの!?<br> 死んじゃいたかった。いくらなんでもこんなタイミングで、酷すぎるわようぅぅ!<br> あたし、顔真っ赤。確認しなくても自分でわかる。<br> <br> それを聞いたキョンもキョンで、「おまえも昼飯食べてないんだろ。食うか? うまいぞ」って。<br> それでもうあたしは即座に振り向いて、キョンの襟首掴まえて「いまのことは忘れなさい! いいわね!?」<br> って言おうとしたんだけど……、できなかった。<br> <br> キョンが、あたしの口の中に、タコさんウインナーを放り込んだから。<br> <br> 「うまいだろ」<br> キョンが笑顔で言う。すごく……可愛くて、すごくカッコいい笑顔だった。<br> 反則よね。<br> <br> それからあたしたちは、仲良く一つのお弁当を食べた。授業中だったから、あたしのお弁当は取りにいけなかったし。<br> ちょっと中身が崩れてたのが残念だけど、それはキョンの汗と同じ、大切な優しさのしるし。<br> <br> 思えば、キョンと2人で笑い合うのは、久しぶりだった。ドキドキしてたけど、心はすごく軽かった。<br> やっぱり、こうして笑い合ってる時間が、いちばん自然でいられる気がする。<br> <br> 6時間目は授業に出て、放課後はまた部室へ。<br> 部活はいつも通りだったけど、帰りに古泉くんが、「なんとかうまくいったみたいですね」って。<br> あたしは笑顔で応えた。<br> <br> <br> 今日は、キョンへの大好きが、また一つ大きくなった日だった。あたし、頑張ってよかった。<br> たまには、またお弁当作ってあげてもいいかな(笑)。<br> <br> は~、頑張って書いたら手が疲れちゃった。<br> あ、もうこんな時間。明日も学校だし、寝なきゃ。<br> おやすみ、キョン! 大好きだよっ!</p>

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