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乙女ハルヒ日記2」(2007/07/02 (月) 12:55:08) の最新版変更点

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<p><br> 今日も昨日に引き続き、キョンとたくさん喋れた! 改めて、昨日のあたしを褒めてあげたいわ~。頑張ったもんね!<br> そういえば昼休み、谷口が「今日は涼宮の手作り弁当じゃねえのか」とかなんとか言ってたわね。<br> 恥ずかしかったから、あたしはさっさと学食に行ったけど、キョンはあれからいろいろ聞かれたんでしょうね…。<br> キョン、あいつらに変なこと喋ってなきゃいいけど。<br> <br> ご飯を食べてから、古泉くんと後者の裏、木のテーブルと椅子があるところでちょっとおしゃべり。<br> というか、キョンの好きなタイプを、もしかしたら知ってるかと思って。<br> でも残念。そういう話はあまりしてないみたい。男の子同士って、普段どんな会話してるのかしら?<br> <br> うーん…、こうなったら、キョンの中学時代をよく知ってる国木田に聞いてみるしかないかしら。それとも…。<br> <br> ……佐々木さん―――。<br> <br> キョンは、佐々木さんとはそういう仲じゃなかったって言ってたはずだけど、それって…ホントなのかな…。<br> じつは好きだった…なんてこと、ない……?<br> 佐々木さんに直接会って…なんて無理か。連絡先も知らないし。…じゃ、やっぱり国木田に…。<br> はうう、聞くのが怖いよう。でも知りたいっ!<br> <br> …キョン、どんな子が好きなの? 佐々木さんみたいな子…?<br> <br></p> <hr> <br> 国木田に聞いてみたけど、結局あまりはっきりした答えは聞けなかった。<br> 「傍目にはすごく仲良く見えたけど、キョンに尋ねても、佐々木さんとはそういう関係じゃないって言うばかりだったよ」って。<br> …うーん、やっぱり、キョンか佐々木さん本人に聞いてみないと、これ以上は分かりそうにないわね…。<br> <br> ついでに、「いまのあたしとキョンの関係と、どっちが仲良さそうに見える?」とも聞いてみた。<br> 国木田はちょっと悩んで、「あくまでも傍目には、だけど、同じくらいかな」って言った。<br> 2人のタイプはたいぶ違うけど、佐々木さんとのときも周りは付き合ってると思ってたし、<br> あたしとだっていま付き合ってるように見える、らしい。<br> …うーん……。<br> <br> 「タイプはだいぶ違うけど」って言葉が、なんだか気になっちゃうのよね…。<br> そりゃ、あたしだって、佐々木さんと似てるなんて思ったことないけど…、もし、もしもよ?<br> キョンが、むかし佐々木さんのことを好きだったとしたら、あたしに振り向く可能性は、ほとんどないってことじゃない…?<br> <br> …はあ…、なんだか悪い方にばっかり考えちゃうよぉ…。<br> 「恋は人を強くする」なんて言うけど、嘘っぱちね、あんなの。あたしは弱気になってばっかり…。<br> キョンの一挙手一投足にドキドキさせられたり、自分はキョンの好きなタイプじゃないんじゃないかって思ったり…。<br> <br> …キョン…、お願い。あんたの気持ち、あたしにちょうだいよ…。<br> あたしの気持ちは、もうとっくに、あんたが持ってっちゃったんだからね…。<br> <br> <hr> <br> 今日は間違えて、この日記を学校に持ってきちゃった。というわけで、授業中のキョンを実況しまーす(笑)。<br> …っていっても、最近キョンのやつ、真面目に授業受けてるのよねー。ほとんど居眠りもしないで。<br> もうちょっとしたら期末だし、頑張ってるのかな。いいことよね。補習で夏休み潰れて、合宿に行けなくなると困るし。<br> あ、いまは英語。うーん、つまんない。<br> <br> 5時間目、古典。キョンがこっくりこっくり舟漕いでる。この時間の古典は寝るしかないわよね…。<br> ちょっといたずらしてやった。背中つついたら、ビクッてなって起きたみたい。ふふふ、なんか可愛い(笑)。<br> <br> いま帰ってきて気づいたら、あたし、あの写真机の上に出しっぱなし…。<br> しかも今日はお母さんが、布団を干した様子…。<br> しまったああああぁ!!! ……これ……、見たわよね、絶対。<br> <br> 案の定、ご飯の準備してるときに言われた。「ボーイフレンド、こんどうちに連れてきたら?」って。<br> 「ボーイフレンドって誰のこと?」なんてとぼけることもできなかった…。<br> お母さん、まさか、あたしたちが付き合ってるなんて勘違いしてないでしょうね…。まだまだそんな関係じゃないのに。<br> やっぱり勘違いするかな、ふつう。でなきゃあんな写真飾らないもんね…。<br> <br> …はあ、実際付き合ってたら、こんなに悩むこともないわよう。<br> 最近は、1人でいるとキョンのことばっかり考えて、しかも勝手に落ち込んじゃうからダメだ…。<br> もしキョンと付き合えたら、毎日幸せだろうなあ…。<br> <br> <hr> <br> 今日は暑かったから、ポニーテールにして学校に行った。<br> べ、べつに、キョンのためにしていったわけじゃ…っていままでのあたしなら言ってただろうけど、そんな弁解はもう必要なし!<br> そ、キョンの目を意識して、ポニーテールにしました。<br> …自分で書いておいて言うのもなんだけど、↑なんだかバカな子みたい…。<br> <br> キョンが教室に入ってきたら、早速気づいてくれた。「お、今日はどうしたんだ?」って。<br> よかった…、気づいてくれなかったらどうしようって、実はちょっとドキドキしてたのよね。<br> ま、さすがのキョンもそこまで鈍感じゃないとは思ってたけど。<br> まさか「キョンに見てもらいたかったから」なんて言えるわけもなく、普通に「暑いから」って答えとく。<br> そしたら、「へえ…。そんなに涼しくなるもんなのか?」って。考えてみたら、男の子はこの体感温度の違いを知らないのよね。<br> 髪が長かった時期なんて特に、くくるだけで、首もとの涼しさが全然違って感じたんだけど。<br> あたしがそう説明したら、「そうなのか。じゃ…、夏のあいだはそうしてればいいんじゃないか?」って。<br> そのときのキョンの顔が…、ううん、あたしの錯覚かもしれないけど、<br> ただ坂と階段を上ってきて暑かったからってだけかもしれないけど、<br> ほんの少しだけ、すこーしだけ、赤くなってたような気がしないでもないような…、だった。<br> <br> さっきのセリフの真意が見えなかったから、あたし、勇気を出して聞いてみた!<br> 「キョンは…、ど、どっちが、いいと思う?」って。ううう、こんな短いセリフなのに、噛みまくってて恥ずかしかった…。<br> キョンはちょっとだけ気まずそうな顔をして、<br> 「俺は…、そ、そのほうがいいと思うぞ」<br> って答えてくれた。<br> <br> や、やっぱり、効果ありってことでいいのかしら!?<br> 今日一日なんとなくだけど、キョンの視線をいつもよりも多く感じたのも、気のせいじゃないって信じちゃっていい!?<br> よ、よーし、ちょっと自信ついてきた! これから毎日、ポニーテールで攻めまくるのよっ!<br> 覚悟してなさいよ、キョン! 絶対あたしのこと、好きにさせてやるんだからっ!<br> <br> ……な、なんかやっぱり恥ずかしい…。ちょっと調子に乗りすぎたかな…。<br> でも…、ちょっとだけでもいいから、好きになってね、キョン。おやすみ。<br> <br> <hr> <br> 今日は不思議探索だったんだけど、もちろんポニーテールにして行ったわ!<br> 服も、お気に入りのを選んじゃったりして。<br> ……それなのに…、今日は一度も、キョンと一緒に行動できなかった…。<br> なんでえぇ!? 神様のばかああああ!!<br> <br> …ううう、キョンに「可愛いな」って言ってもらいたかったよう…。<br> それで、頭ちょっと撫でてもらったり、結んだ髪をくいって引っ張ったりしてほしかったよう…。<br> 並んで歩いてたのに、いつのまにかキョンがちょっと後ろに行ってて、「どうしたの?」って振り返ったら、<br> 「あ、いや、その…、……やっぱ、いいよな…」なんてちょっと緩んだ顔で、赤くなりながら言ってきて、<br> それであたしが「変な目で見ないでよ、エロキョン!」なんて言いながらもちょっと嬉しくて、<br> キョンに気づかれないようにくすくす笑ったり、したかったよう…。<br> <br> ……はああ、重症ね、あたし…。こんな妄想…、自分で書いておきながら、ホントに恥ずかしい……。<br> 消さないけどね! だって楽しいんだもん。<br> キョンに好きになってもらえなくて悩むよりも、キョンがあたしのこと好きになってくれるとこ想像するほうが。<br> ……現実逃避っていうのかしら、これ…。<br> <br> でも、実際嫌われてるわけじゃないもん! ちょっとは、きっと好きでいてくれてるはず。……よね?<br> <br> …はあ、明日はキョンには会えないしなあ。何しよう。キョンは何するの?<br> それじゃおやすみ、キョン。ばーか。あっかんべー。好きだよ。<br> <br> <hr> <br> 今日は特に予定はなかったんだけど、夕方、退屈だったから外を散歩してた。<br> そしたら偶然、会っちゃった…。<br> <br> ―――佐々木さんに。<br> <br> <br> あたしが先に気づいた。その視線に佐々木さんも気づいて、お互いこんにちは。<br> 佐々木さんは、図書館の帰りだったらしい。勉強してたのかしら。<br> あたしたち、キョンを通じての知り合いってだけだから、そんなにお互いよく知った仲ってわけじゃないんだけど、<br> お茶に誘ってみた。ふだんから使ってる、駅前の喫茶店へ。<br> <br> ……ちょうど、訊きたいこともあったし。<br> <br> <br> 誘っておきながら、あたしははっきりと、訊きたいことを訊けずにいた。<br> だって、中学のときのキョンとの間柄なんて、そんなに簡単に尋ねられるわけない…。<br> だから、適当な話をしながら、言葉とタイミングを探してたんだけど、さすが佐々木さんね。<br> あたしは何も言ってないのに、「何か聞きたいことがあるみたいですね」って。あまりの的確さに舌を巻いたわ。<br> <br> それからも、あたしはしばらく言葉を選んでたけど、いいかげん決心して、けどためらいがちに尋ねた。<br> 「中学のとき、キョンとはどういう関係だったの?」って。<br> 言葉選ぶのに時間使っておきながら、結構ダイレクトよね。自分で言うのもなんだけど。<br> <br> 佐々木さんは、まるであたしの質問を予想してたみたいだった。アイスティーを飲みながら、顔色一つ変えずに、<br> 「それはつまり、『親友』っていう説明には、涼宮さんは納得してないということですか?」<br> ホント、見事にあたしの心を読んでくるのよね。賢い子だわ、佐々木さん。<br> 「半分ね」って答えておく。これは嘘じゃない。<br> <br> あたしは、2つの意味で、「親友」っていう説明には納得してなかった。<br> 1つは、本当は「親友」っていうほどの間柄じゃなかったんじゃないかっていう予感。<br> もう1つは、本当は「親友」っていう以上に仲がよかったんじゃないかっていう予感。<br> もちろん、どちらかの予感が当たれば、必然的にもう一方の可能性は消えるわけだけど、<br> あたしは当然、前者であることを願って、後者であることを恐れてた。<br> <br> ちょっと緊張するあたしをよそに、佐々木さんはくすっと可愛く笑って、「大丈夫ですよ」と言った。<br> 「わたしたちは純粋な意味で『親友』でしたから」って。<br> <br> …そっか、あたしの予感はどっちも外れたってことね、こんどこそ納得しよう。<br> キョンと佐々木さんは親友であって…、それ以上でも、それ以下でもなかった。<br> <br> そう自分に言い聞かせようとしたあたしに、佐々木さんは、聞き捨てならない一言を付け足した。<br> <br> 「いわゆる恋人という関係までは、至っていなかったので」<br> <br> レモンスカッシュに伸ばそうとした、あたしの手が止まった。<br> ここは完璧に覚えたもの。一言一句間違ってないわ。<br> <br> <br> いわゆる恋人という関係までは、至っていなかったので。<br> <br> 恋人という関係までは、至っていなかった。<br> <br> ―――までは―――至って―――。<br> <br> <br> 「関係、という言葉の限りで言うのであれば、『親友』という関係、で間違いはなかったと思いますよ」<br> <br> 背中にひんやりとした風を感じた。冷房効かせすぎじゃないかしら、このお店。<br> 何も言えないあたしに、佐々木さんは穏やかに続ける。<br> <br> 「彼がどう思っていたかまでは、わたしは知りませんけどね。…あるいは―――」<br> <br> ようやくストローを口に含んで、レモンスカッシュを吸い上げる。<br> 舌に、炭酸の強い刺激と、レモンの酸味が走る。<br> <br> 「わたしのほうは、彼にたいして、『親友』という言葉に相応しくない感情をもっていたのかもしれませんね」<br> <br> 佐々木さんは、アイスティーをまた静かに口に含むと、5百円玉をテーブルに置いて、席を立った。<br> 「ごめんなさい。あたしは家族と夕飯の約束があるので、これで」<br> グラスには、まだ3分の1くらい、きれいな赤茶色が残ってた。<br> <br> <br> なんだか勝ち逃げされたみたいで悔しかった。そんなこと聞いて、黙ってるあたしじゃないわよ。<br> だからあたしは急いでお店を出て、佐々木さんの背中を見つけて、呼びかけた。<br> 「まだ、あなたはキョンのことが好きなの!?」って。<br> <br> 佐々木さんは振り返って、「そうだとしたら、どうするんですか?」って訊いてきた。<br> 西日が逆光になって、彼女の顔はよく見えなかったけど、笑顔みたいだった。<br> <br> どうするですって? 当然よ。負けるもんですか。<br> あたしのキョンへの気持ちだって、ホンモノの恋なんだから。<br> <br> 「勝負よ!!」<br> <br> まっすぐに指差して、あたしは言った。「キョンは誰にも渡さない!」<br> <br> 佐々木さんは、空を一度仰いでからあたしに向き直ると、<br> 「お互い頑張りましょ!」と、よく響くきれいな声で言って、手を振って帰っていった。<br> <br> <br> いままでいろんな勝負をしてきたけど、今回の相手には不足はないわね。こんなに燃えるのは久しぶり。<br> 中学時代の親友? 面白いじゃない。そう簡単に引き下がってたまるもんですか。<br> 絶対にキョンを、あ・た・し・に振り向かせてあげるわよ。待ってなさい、キョン!<br> <br> やっぱり、恋にはライバルが必要なのかもしれないわね。<br> いまのあたしなら、弱気になるどころか、キョンの胸に抱きついて「大好き」って言ってキスの1つでも…。<br> ……まぁ…、それはさすがに無理だけど……。<br> <br> でも大丈夫、必ず勝つわ。あたしには分かるの。<br> ―――あたしの指は、彼女の左胸を、確実に捕らえていたはずだから。<br> <br> <hr> <br> 今日から、キョンへの猛アピール開始! もちろんポニーテールだし、たくさん話しかけた!<br> もう、これぐらいのことで恥ずかしいなんて言ってられないもんね。押して押して押しまくるのよっ!<br> <br> 今日はまずまずね。やれるだけのことはやったし。でも、これからの具体的な攻め方をあまり考えてないのよねえ。<br> どうしようかしら。うーん…。<br> <br>  ・お弁当<br>  ・デート<br>  ・一緒に登下校<br>  ・うちに招待<br>  ・キョンの家に行く<br>  ・勉強会<br> <br> こんなところかしら。でもなんか途中から、単純にあたしがしたいことになってるよーな…? ま、いっか(笑)。<br> だって、キョンが喜んでくれることなんて、考えたってなかなか分からないんだもん…。<br> ……佐々木さんは分かるのかしら、キョンが喜んでくれること…。<br> <br> ダメダメ! 彼女には負けないんだから! 弱気になったら相手の思うツボよっ! 頑張れあたしっ!<br> とにかく明日も気合入れて攻めるのよっ! えい、えい、おーっ!<br> <br> <hr> <br> 今日は登校のとき、キョンを待ちぶせしてみた。しっかりポニーテールにして、坂の下でキョンを待つ。<br> なんだか恋してるって感じするわよねっ!<br> <br> おはようって声をかけたら、ちょっと驚いてた。どうしたんだって。<br> あたしは、恥ずかしかったけど言った。「一緒に学校行こうと思って」<br> キョンはビックリしてた。「…それで、俺を待っててくれたのか?」って。あたしは黙って、コクンと頷く。<br> そしたらキョンは照れくさそうに、「そ、そうか…、じゃあ、一緒に行くか」って言って歩きだした。<br> <br> 話しながら歩いてたんだけど、その会話の隙間にキョンが、「ハルヒ。…最近おまえ…、その、どうしたんだ?」って訊いてきた。<br> ちょっとドキッとした。キョンが何のことを言ってるのか、思い当たることがありすぎたから(笑)。<br> <br> キョンが、いまのあたしを不思議に思うのも、無理はないと思う。<br> キョンへの自分の気持ちに気づいてから、あたし、いろんなアピールしてきたもんね。<br> きっと、それがぜんぶ、まだキョンは慣れてないんだ。…もちろん、あたし自身も慣れてないんだけど。<br> <br> たしかに積極的にアピールしてる。…けど、まだあたしの気持ちは言えない。<br> 「自分の気持ちに気づいたの」なんて、いまはまだ言えない。いつか伝えなきゃいけないけど、いまは、まだ。<br> だから「べつに。何もないわよ」って答えておく。できるだけ、無愛想にならないように。<br> <br> キョンは「…そっか」って、納得したのかしてないのかよく分からなかったけど、<br> それ以上は、あたしの気持ちに触れようとしなかった。<br> <br> 1つ、分かったことがある。<br> キョンは、あたしの気持ちに気づき始めてるってこと。<br> <br> 雰囲気とか態度とかから、なんとなく分かる。<br> あたしがキョンに送る視線を変えたように、キョンも、あたしを見る目が少しずつ変わってきてるんだ。<br> だって、いままでのキョンだったら、きっと、しつこく聞いてきたはずだもん。<br> 「最近のおまえ、ホントにおかしいぞ。大丈夫か? 何か悩みでもあるんじゃないのか?」とか言って、<br> 優しいのは優しいんだけど、もうちょっと感じ取ってくれたらなぁって、見る人を呆れさせて、あたしを悩ませるような感じで。<br> でも、いまのキョンは違う。あたしが「おかしくなった」原因を、ぼんやりと感じてくれてる。<br> <br> それは悪いことじゃないの。あたしにとっては、むしろそうあってほしかった。<br> 告白するときに、驚かせたくはない。それよりもちょと前から、「もしかしたら」って感じててほしい。<br> でも、こう思えるのはきっと、相手がキョンだからなのね。<br> あたしの気持ちに気づいても、キョンは逃げずに待っててくれるって、信じてたもん。<br> そして実際、キョンはあたしに背を向けることなく、傍にいてくれてる。<br> <br> キョンの気持ちが、あたしと同じかどうかは分からない。<br> あたしの想いをきちんと伝えたときじゃないと、キョンのはっきりした気持ちは分からない。<br> もしかしたら、想いは通じ合わないかもしれないけど、それでもキョンの優しさは変わらない…。<br> <br> キョン、ありがとう。あたしにちゃんと、思いをぶつけさせてくれるんだね。<br> あたし、精一杯の気持ちを届けるから、そのときまで、もうちょっとだけ待ってて…。<br> ホントに、ホントにホントに、大好きだよ、キョン。おやすみなさい。<br> <br> <hr> <br> もうすぐ期末テストなのよね。キョンに「テスト勉強してる?」って聞いてみたら、<br> 「少しはやってるんだが、元のデキが悪いからな」なんて言って。<br> そんなこともないと思うんだけど。でも、そこで思い出した! キョンと勉強会作戦!<br> 提案してみると、「おまえに教えてもらえるんだったら心強いぜ。よろしく頼むな」って。やった!!<br> <br> で、さっそく放課後、キョンの家に。部活は休みにしちゃった。お母さんと妹ちゃんに挨拶して、キョンの部屋へ。<br> みんなと来たときとは状況が違うし、男の子の部屋に2人きりになるって、結構ドキドキするのね…。<br> べ、べつに変な期待してたわけじゃ…、あうう、じゃなくて、えーと、……ちょっとだけ。はい、してました、期待…。<br> だだだだって、好きな人の部屋に2人きりよ!?<br> そりゃ、その……キス…ぐらい、もしかしたらー、なんて思っちゃうじゃない…?<br> <br> ……それで…途中、ふと気がつくと、あたし、キョンにすごく接近して教えてたのよね。<br> 自覚しちゃうと、もうヤバい。顔はどんどん赤くなっていくし、頭はどんどん真っ白になっていく。<br> 「えーっと」とか「だから」とか「つまり」なんて単語しか出てこなくて、これじゃあ全然解説になってない(笑)。<br> キョンもそんなあたしに気づいて、なんだか微妙な雰囲気に…。<br> もうあたし耐えられなくなって、ベクトル方程式の説明止めて、ぷいって横向いちゃった。<br> <br> いったん意識しちゃうと、なかなか気持ちが収まってくれなくて、しばらく2人とも無言のまま…。<br> 結局何もなかったんだけど、5分ぐらい中断してたかしら。<br> それからも普通に接しようとしてくれるキョンが、ありがたかった。ううう、ごめんね、キョン…。<br> <br> そんなに遅くまではいられないから、勉強できても2時間ぐらい。<br> でも、帰りはキョンに送ってもらった。その頃には、また普通に話せるようになってた。<br> うちの近くまで来てもらったから、「ありがと」って言ってお別れ。<br> キョンが「また勉強教えてもらってもいいか?」って言ってくれた。「もちろんよ!」<br> <br> 今日はすごくいい日だったなあ。また明日ね、キョン! おやすみ!<br> <br> <hr> <br> 今日はちゃんと部活してきた。っていっても、やっぱり時期が時期だから、あたしはキョンの勉強の手伝いだけど。<br> 古泉くんはみくるちゃんとゲームしてた。…どっちが強いのかしら。<br> うーん、でもやっぱり、どうせ勉強するんだったら2人きりで…、なんてダメダメ。<br> 2日も連続で部活を休みになんてできないわ。<br> それに、…密室で2人っきりになっちゃうと、あたし自身がもたないのよね。どうしても意識しちゃって。<br> もちろん、状況としては嬉しいんだけどさ。なーんて。<br> <br> それよりも、今日帰ってるときのこと。キョンが<br> 「おふくろがまたうちに来てくれってさ。俺が勉強してるのが嬉しかったらしい」って。やった! 嬉しい!<br> …そう、嬉しかったから、思わず言っちゃったのよね。<br> 「そういえば、うちの親も、キョンを連れてこいって言ってたわよ」って。<br> <br> 「ん? なんで俺だけなんだ?」ってキョンが聞いてきてから気づいた。しまった…!<br> なんだか、「うちではすでにキョンが特別扱いされてる」みたいな言い方になっちゃったのね。<br> …事実そうなりつつあるからまた困るわよね。キョンもそのことに気づいたみたいで、<br> 「あーいや、その、…だな」とか言って口をつぐむ。<br> <br> ちょっとして、キョンが思い出したように「…あ、それで、こんどの日曜、またうちで勉強教えてもらえないか?」って。<br> あたしも我に返って、「…え? あ、ああ、うん、いいわよ」なんて焦りながら返す。<br> で、またもや返事してから気づいたんだけど、……日曜?<br> 「に、日曜って、お父さんとかいるんじゃないの…?」キョンに訊く。<br> そしたら、「おう、いるぞ。だから連れてこいってことなんだと」って。<br> <br> …ええええ!? じゃ、じゃあたし、キョンのお父さんにも会っちゃうってこと!?<br> あわわ、ただでさえ2人きりの部屋だと緊張するのに…、もう十分ドキドキしてきたよう!<br> …キョンのお父さん…。どんな人なんだろう…。失礼のないようにしないと…。はうう…。<br> <br> で、でも、そうやってご家族と仲良くなっておくのはいいことよね。うん。<br> 頑張ろう! バッチリいい子を演じてみせるわ! …って、これじゃ、あたしがいい子じゃないみたいね。<br> …いい子とは言わないけど、そんなに悪い子でも…ないよね? おやすみ、キョン!<br> <br> <hr> <br> 昨日はすごく楽しい夢を見ちゃった! 夢だけど…、これは忘れたくないから書いておく(笑)。<br> <br> 部室で、あたしとキョンの2人きり。何をしてるってわけでもなくて、ただ正面に立って見つめあってた。<br> そしたらキョンが言うの。<br> <br> 「ハルヒ、俺、おまえが好きだ」<br> <br> 気がついたら、キョンがすぐ目の前に来てて、あたしはそのまま優しく抱き締められた…。<br> すごく嬉しかった。だから、キョンの耳元で「ありがとう、キョン。あたしもずっと好きだったのよ」って囁く。<br> ちょっと泣いてたかもしれない。<br> <br> キョンはあたしを見て笑うと、「おまえと一緒に行きたいところがあるんだ」って言う。<br> あたしは、どこへ行くのかなんて聞くことなく、自然と「うん、一緒に行こう」って答える。<br> そしたら、キョンはあたしの手を握って、部室の窓から出ようとするの。<br> 落ちたら死んじゃうはずなのに、あたしは全然恐くなくて、むしろ笑って、それについていく。<br> <br> 窓の枠を潜り抜けると、突然世界が変わって、あたしたちは宙に浮いた。<br> 下を見るとすごい高さで、森とか川とか、湖の中に家があったり、巨人が歩いてたりするの。<br> あたしたちは空を飛んでて、上下左右、自在に動くことができる。すごく気持ちがいい!<br> その世界にあたしが驚いてると、キョンが<br> 「いままで黙っててごめんな、ハルヒ。俺、じつは、異世界人だったんだ」って。<br> <br> 不思議な世界には驚いたのに、キョンの衝撃的な告白には、あたしはなぜか驚かなかった。<br> それどころか、「そうなの。じゃあ、ここがキョンの住んでるホントの世界?」なんて平然と尋ねる。<br> キョンは「ああ、そうだよ」って言って、「ここで暮らそう、2人で」<br> <br> ―――そこで終わりってう、不思議な夢だった。<br> キョンが異世界人だったらすごいわよね。ありえないけど(笑)。<br> でも、実際「おまえが好きだ」なんて言われちゃったら…。それで、それで、ぎゅって抱き締められちゃったりしたら…。<br> <br> <br> ……ふう。<br> …キョンに告白されるとこ想像したら、鼻血が出た(笑)。いま止血中…。<br> い、いくらお風呂の後で血行が良いとはいえ、こんなマンガみたいなことってある!?<br> 妄想で鼻血なんて、なんか変態みたいじゃない、あたし…。さすがにそろそろヤバイかしら。<br> だいたい、妄想くらいで鼻血出してるようじゃ、もし万が一、そういう状況になったときどうなるのよう!<br> 失神してまったく覚えてない、とか嫌よ、あたし。…しっかり!<br> <br> さ、明日は不思議探索ね! 変な夢見ちゃったし、何か見つかったりして。なんてね。<br> そんなことより、明日はキョンとペアになりたいなあ。神様、お願いしますっ!<br> <br> <hr> <br> 今日は土曜日だから、不思議探索の日!<br> いつもどおり駅前にみんな集合したんだけど、喫茶店へ行こうとしたところで、あたしの脚が、思わず止まった。<br> <br> 「おはよう、涼宮さん」って声をかけてきたのは―――佐々木さん。<br> そう、キョンにじゃなくて、あたしに声をかけてきた。それにはキョンも驚いてたみたい。<br> なるほど、あくまで正々堂々と勝負ってわけね。恋敵ながらさすがだわ。あたしも「おはよう」って返す。<br> けど、「今日はどこへ行くの?」っていうあたしの質問に、佐々木さんがにこっと笑いながら返してきた答えには、<br> さすがに絶句したわ。<br> <br> 「今日だけ、SOS団の活動に交ぜてもらえないかと思って」<br> <br> SOS団全員の思考が止まったでしょうね。あたしも含めて。……でも、これくらいで怯むあたしじゃないもん。<br> 「いいわよ」<br> あたしのひと言が、キョンの「佐々木、あのな―――」って言葉を遮った。<br> 「たまにはこういうのも面白いわね。今日は、佐々木さんを特別団員として迎え入れて、探索することにしましょう!」<br> そう言うと、佐々木さんは可愛い笑顔で「ありがとう、涼宮さん。今日一日、よろしくお願いします」って返してきた。<br> キョンが、あたしと佐々木さんにむかって何か言ってたみたいだったけど、あまり耳に入ってこなかった。<br> …正直に白状すると、あたしは、この展開にけっこう動揺してた。<br> <br> 喫茶店で班分けをすると、見事にあたし、キョン、佐々木さんが3人でグループを作ることになった。<br> これ以上ないってくらいに公平だわ。<br> <br> <br> 出発してから、キョンが佐々木さんに訊いた。「なんでいきなり俺たちに交ざろうなんて思ったんだよ」<br> そしたら佐々木さんは、<br> 「キミとは中学時代の頃のように親交を取り戻したかったし、涼宮さんとも親密になりたかったのさ」とかなんとか。<br> 佐々木さんの喋り方って独特だから、正確には覚えてないけど、なんかそんな内容のことを言ってたはず。<br> ま、でもたしかに、その言葉には嘘はないんでしょうね。<br> あたしだって、キョンとのことを抜きにすれば、ぜひ仲良くなってみたい人ではあるし。佐々木さんって。<br> <br> ただ…、それからキョンと佐々木さんは、中学時代の思い出話を始めちゃった。…あたしの入る余地なし…。<br> あたしは黙って、2人の前を独りで歩く。ううぅ、何なのよ、この疎外感…。<br> でも、これぐらいで圧されちゃうようじゃダメよ! 何か違う話題、何か違う話題…。あああ、何も出てこないよう!<br> 話題を切り替えるための鍵を探して困ってると、佐々木さんが訊いてきた。<br> 「涼宮さんは中学時代、何をしてたの?」って。<br> <br> つまらなかった中学時代。……それを話せって言うの?<br> あたしの中学時代なんて、何もなかった。<br> 面白いことを探してるのに、何も見つからなくてイライラして、まわりからは孤立するいっぽうで…。<br> そんなことを、あたしは佐々木さんに話した。<br> <br> でも話しながら、そういえばって、中学1年生だった頃の七夕の出来事を思い出してた。<br> 今年ももうすぐなのね、七夕…。<br> 北高の制服を着た変なやつに会って、そいつに手伝ってもらいながら、校庭に大きく絵文字を書いた夜。<br> あれは、中学3年間のなかで、唯一楽しいと思えた出来事だった。<br> 「ジョン・スミス」なんてバレバレの偽名を名乗ったあいつとの出会いは、その一度きりだったけど、<br> だからこそ、なんだか神秘的な感覚が、はじめからあったのよね…。<br> <br> それを思い出したけど、佐々木さんには話さなかった。<br> あの出来事は、誰にも教えない。あたしだけの思い出にしておくの。キョンにでさえ、言っちゃダメ。<br> キョンにも佐々木さんにも、あたしの中学時代はつまらないことしかなかった、そう思われてていいんだ。<br> 中学時代なんて、問題じゃない。大事なのはいまなのよ。<br> <br> 「中学時代のことなんてもういいの。いまはこうして、キョンやSOS団の仲間がいるし、他にも友達はいるわ。<br> 不思議な出来事はなかなか見つからないけど、面白いことだったら、自分から動けばできるんだもん。<br> 野球大会に出たり、夏休みや冬休みに合宿をしたり…。<br> イベントとしては平凡かもしれないけど、実際やってみると、意外と面白いことになったりもするからね」<br> そんなようなことを、あたしは言った。佐々木さんやキョンにだけじゃなく、自分自身にたいしても。<br> <br> 佐々木さんは、あたしの話を聞いて、「そうなんだ…。なんだか…、羨ましいなぁ」って。<br> 意外だった。言葉だけじゃなくて、佐々木さんの表情が、純粋に、本当に、憧れてるような感じに見えたから。<br> 「私の高校生活は、充実はしてるはずなんだけど、友達とそういう交流をする機会があまりないから…」<br> そう言った佐々木さんに、なんだか親近感を覚えた。<br> <br> それから、あたしたちは急激に仲良くなった!<br> こんどはキョンをのけ者にして、あたしと佐々木さんだけでおしゃべり(笑)。<br> 恋敵ってことはべつにして、あたしたちはすごくいい友達になれそうって、ホントにそう思った。<br> こんどから気が向いたときはいつでも、佐々木さんもSOS団の活動に加わってもらうことにして、<br> 午前中の不思議探索は終了。<br> <br> でも、佐々木さんは塾があるからって、ここでお別れ。佐々木さんも楽しんでもらえたみたいだし、よかったかな。<br> ただ、帰っていくときに佐々木さんは、あたしの耳元に口を寄せて、「それでもキョンは渡さないよ」って。<br> あたし、自分の顔が一瞬引きつるのを感じたわ…。佐々木さん…、恐ろしい子…。<br> でも、佐々木さんと仲良くなれたことは、本当に嬉しかった! 仲間がまた1人増えたみたいね。<br> <br> <br> 午後は、あたしは有希とペア。暑くなってきたから、近くのデパートの中を歩き回ってた。<br> 地下の食品売り場に行って、試食コーナーを2人で制覇したり(笑)。有希も食べるの好きだもんね。<br> こんなところじゃ不思議も見つかるわけないけど、まあいっか。外は暑いんだもん。<br> <br> 4時になって解散するときに、キョンに明日のことを確認。明日は、10時にキョンの家に行くことになった。<br> でもやっぱり…、SOS団のほかのメンバーがいないところで、2人で会うってなると、緊張してくるわね…。<br> 明日は、キョンのお父さんも家にいるみたいだし…。<br> 楽しみだけど、このドキドキが一日中続くと思うと、耐えられるかどうか心配だわ。すっごく疲れそう…。<br> <br> うぅ~、ダメダメ! 明日は、キョンをみっちりと鍛え上げることが第一の目的なんだからね!<br> 勉強して、おしまい! それだけよ! 何も恐がることはないわ!……でもやっぱりドキドキする…。あうう…。<br> <br> と、とにかく頑張ろう。あたしもちょっとは勉強しなきゃだしね。<br> おやすみ、キョン! あ、あと言っとくけど、佐々木さんには渡さないからね、あんたのこと!

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