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未来への坂道」(2007/05/29 (火) 22:50:02) の最新版変更点

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<div class="mes"> <div class="mes">「さよなら」 <br />  声に出した言葉は、二度と元には戻らない。 <br /> <br />  この桜は、誰を祝福するわけでもない。 <br />  わたしは、ただ坂道を登る。 <br />  誰も待っていない坂道を登る。 <br /> <br />  高校の制服をハンガーにかけたとき、もうこれを着ることはないのだと、自分に言い聞かせた。 <br />  特別な思い出が、そういくつもあるわけではないのに。 <br />  なぜだかその日、わたしは泣いた。 <br /> <br />  桜が舞い散る坂道は、いつにも増して長い。 <br />  そこに誰も待っていないのに、わたしはまだ登り続ける。 <br /> <br />  いつか、わたしはここを同じように登っていた。 <br />  息を切らせて、歩きなのに、鼓動を速めて。 <br /> <br />  思い出して、苦しくなる。 <br />  今でもずっと、せつなくなる。</div> <br /> <br /> 「じゃぁな。またいつか会おうぜ」 <br /> <br />  そう言って彼は手を振った。わたしも倣って振り返した。 <br />  春のにおいが、鼻をかすめていった。 <br /> <br />  それはほんの、ひと月まえ。 <br /> <br />  けれど、時間は元には戻らない。 <br />  あの日の言葉と一緒、二度と元には戻らない。 <br /> <br />  また、胸が静かに声をあげる。 <br />  まだ、聞こえている声がある。 <br /> <br />  でも、もう叶いはしないのだ。 <br />  わたしは、彼に別れを言ってしまったのだから。 <br /> <br />  最後まで何にも言えないわたしに、最後まで彼は笑顔だった。 <br /> <br />  そうしてわたしたちは手を振った。 <br /> <br /> <br /> 「さよなら」 <br />  声に出した言葉は、二度と元には戻らない。 <br /> <br />  わたしは、ひとりで坂道を登る。 <br />  誰も待っていない坂道を――。</div> <p><a name="360"></a></p>

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