「従順なハルヒ~君と僕の間~ 第一話「鎖」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>とある部屋のとあるベッドの上。そこに、俺は眠っていた。<br />
「ごめんね、キョン!」<br />
そして、ハルヒは泣きながら謝っていた。<br />
理由?それは今病院に居ることが関係している。そう。俺が居るのは病室のベッドの上だ。<br />
俺は日頃からSOS団との毎日面白いと思いながら過ごしていた。それは偽りの無い楽しさだ。<br />
だが同時にストレスを溜めていた。あれだけ毎日好き勝手に使われればそりゃ溜まる。<br />
朝比奈さんや古泉も非常に溜まっているとは思うが中でも俺は特に酷いと自負できる。<br />
そんなある日だ。俺はハルヒと喧嘩してる最中に倒れたのだ。診断結果はストレスと疲労の蓄積。<br />
ハルヒにはストレスや疲労を与え続けていた自覚があったらしい。<br />
起きるや否や抱きついてきて、こうして泣きながら謝ってきたのだ。<br />
「ごめんね・・・ごめんね・・・」<br />
謝罪の言葉のみを繰り返すその姿にはいつものような100万ワットの輝きの笑顔は無い。<br />
暗く沈んだ泣き顔で、ただ壊れたCDのようにリピート再生し続けていた。<br />
「良いんだ、ハルヒ・・・」<br />
俺はその姿が見たくなくてただ頭を撫でてあやす。<br />
「ごめんね・・・キョン・・・」<br />
しかし、ハルヒはただ泣いていた。珍しいぐらいに泣いてた。<br />
宥めても、ごめんね、しか言わなくなっていた。<br />
「ねぇ・・・キョン。これからは私に何でも言って?私、何でも言う事聞くから」<br />
その言葉にぞくりとした感覚が芽生えた。<br />
唐突に脳内で発現したそれらは瞬く間に意識を乗っ取っていく。そして、<br />
「・・・なら―――」<br />
それが、俺とハルヒの歪んだ主従関係の始まりだった。<br />
<br />
第一話「~鎖~」<br />
<br />
<br />
あれから数週間後。<br />
「最近、閉鎖空間が小さい物も含めてめっきり無くなりましてね」<br />
古泉はいつもどおりの笑顔を浮かべている。最近、疲弊の色がぐっと減っているようだ。<br />
それに比べりゃ、きっと俺の顔は疲弊しきっているいるのだろう。<br />
「とても、疲れたような顔していますが・・・どうかしたんですか?」<br />
あいつがそう尋ねてきた。<br />
「別に・・・」<br />
俺はそう答えて教室をちらりと見る。<br />
そこにはいつも通りのハルヒが谷口を苛めていた。<br />
その横で国木田が笑い、それを見る由良さんなどのクラスメートが谷口を哀れむように見ている。<br />
でも、楽しんでいる。<br />
あたかも、いつも通りであるかのように日常の映写機がカタカタ動いている。<br />
1シーン、1シーンに変化の無い平和。<br />
それが、偽りだとみんな知っているのだろうか。<br />
知る由もないだろう。<br />
だって、異常が表面上に浮かんでいないのだから。<br />
SOS団部室も、教室も、授業中も、廊下も、校庭も。<br />
何が違う?何も違わないさ。だから、誰も知らない。<br />
帰路をハルヒ、長門と一緒に肩を並べて歩く。<br />
長門のマンションが見えて、そこで手を振り分かれる。<br />
途端に今まで笑顔だったハルヒから笑顔が消える。<br />
二人沈黙したまま我が家とは比べ物にならない広さのハルヒの家へと入る。<br />
ハルヒの両親は赴任中。つまりは、ここには二人しか居ない。<br />
唐突に横をすり抜ける陰。ハルヒだ。<br />
扉を開けて一足先に靴を脱いで俺の方向を向く。そして、座ってこう言った。<br />
「お帰りなさいませ」<br />
俺達は、歪んでしまった。あの病院で、全ては狂ったのだ。<br />
<br />
・・・・・・・・。<br />
<br />
「・・・なら―――今度から、お前は俺の奴隷だ」<br />
自分でも、何を言ったのか解らなかった。だけど、それがすぽっと口から出たのだ。<br />
悪夢の言葉が。<br />
「え?」<br />
ハルヒも目を丸くして、信じられないような驚き方をしていた。<br />
「何でも言う事聞くんじゃなかったのか?」<br />
負けず嫌いのハルヒのことだ。どうせ、言うことを聞くさ。<br />
今まで生意気な事をしてくれた分だけ仕返しをしてやろうか。<br />
・・・俺、今なんて事を考えていた!?<br />
なんて低く冷たい声だろう。なんて酷く恐ろしい考え。<br />
これが俺なのか?これが。<br />
「・・・解ったわよ」<br />
ハルヒはぼそりを呟いた。駄目だ。このままでは全てが壊れる。<br />
解っていたのに、止めたかったのに、俺の口からは思ってる事とは違う言葉が出ていた。<br />
「口を慎め。俺は、お前の主だ」<br />
俯いたその顔にすまんと言う事も出来ず。ただ次の瞬間に<br />
「すいません・・・ご主人様」<br />
そういわれた事に鳥肌を立てていた。それは背徳感情と入り混じった快楽。<br />
あのハルヒに言われる。ご主人様と言われる。それが快感だった。<br />
だが、そう言ったハルヒ上がった顔の表情を見て絶句した。<br />
ハルヒからハルヒの色が失せていた。まるで除去されたかのように。<br />
「私は、貴方の奴隷、メイドです・・・学校でも何処ででも、ご主人様に尽くさせてもらいます」<br />
「いや、学校では今まで通りで良い」<br />
「ですが・・・」<br />
「良いから!!」<br />
「解りました」<br />
この判断は正しかったと言える。おかげで、日々混乱という日常が保たれているのだ。<br />
混乱に混乱が混じれば、それは恐ろしいことになるからな。<br />
<br />
・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
何故俺はあんな事を言った?何故だ?望んだから?<br />
なら何でこんなに後悔している?怖いから?何が怖い?<br />
壊れたもの、全てが。日常が。もう壊れている。<br />
だから、怖い。怖い。怖い。ひたすら、怖い。<br />
あれから数日間、ずっと俺はご主人様と呼ばれ続けている。<br />
ハルヒの家に居るのも、こいつが使用人ならば主人についていき世話するのが礼儀と言ってくるからだ。<br />
流石に家族の前で呼ばれるわけにはいかないだろ?ご主人様って。<br />
だから仕方なくこうしてハルヒの家に居るのだ。<br />
「・・・どうしましたか?」<br />
「っ・・・!」<br />
驚いて、覗き込んできた顔から思わず目を逸らした。<br />
いや、冷静であっても顔なんて合わせられない。ハルヒと顔を合わせれない。<br />
どうすれば良い。今の俺達は何がおかしい?<br />
この関係がおかしいんだ。<br />
・・・そうだ。なら、戻れば良いじゃないか!<br />
まだ日常はそんなに壊れていない。まだ直せるはずだ。<br />
何でこんな簡単な事を思いつかなかったんだろう。なんて馬鹿者なんだ、やれやれ。<br />
「なぁ、ハルヒ・・・前みたいに戻らないか?団長と団員の関係にさ」<br />
俺の言葉を聞いたハルヒは驚いたような顔をした。<br />
でもすぐに首を横に振って悲しそうに微笑んだ。俺はその笑顔の意味が解らず混乱する。<br />
だが次の言葉に、混乱は失せて代わりに闇を見た。<br />
「私は、貴方の奴隷です。貴方より上には、なれないんです」<br />
・・・どうしてだ?なんて言った?<br />
俺より上にはなれない?団長にはなれないって事か?<br />
じゃあ、戻れないのか?そんな馬鹿な。<br />
ハルヒだったらこの言葉ににやりと笑って俺に今までの仕返しをするものじゃないのか?<br />
俺はハルヒの眼を直視して、その表情を読む。そして理解した。<br />
その目があまりにも真剣な色だったせいで俺は悟ってしまった。<br />
駄目だ。もう、日常は壊れている。たったこの数日で。<br />
表面上は元のまま、誰も知らない土台部分がぶっ壊れている。<br />
やらなくてて後悔するよりやって後悔する方が良いとある奴は言った。<br />
本当に、そうなのか?<br />
「カバンと、コートをお預かりします」<br />
成されるがままに俺はただ絶望に打ちひしがれていた。<br />
あのハルヒが帰ってこない事に。そして、好きだった事に。<br />
「ご主人様、いつまでも玄関に居ると風邪引きますよ?」<br />
「・・・そうだな」<br />
帰ってこない?いや、帰ってこさせるさ。<br />
俺は”鍵”だからな。ただ、ジョンを復活させる訳にはいかない。<br />
ジョンとしてではなく俺としてここに呼び戻さないといけないんだ。<br />
決意と同時に涼宮宅、もとい現在の俺の宿へと入った。<br />
俺の部屋は空き室だった場所だ。広さとしては十分である。<br />
ちなみに俺の本家本元の家にはしばらく友達の家で長期的にお手伝いをすると言っている。<br />
本当は、長期的なお手伝いをされているんだがな。<br />
「さて・・・」<br />
部屋に閉じこもってまず考える事は現在の状況の打破だ。<br />
「まずは、どうしてこうなったかだな・・・」<br />
そんなの理由は一つで俺があんな事を言ったから負けず嫌いなハルヒが従った、という所だろう。<br />
・・・いや、だが妙だ。俺は喋りたくもないような事を喋ってた。<br />
よく意思に背き、なんて事はよくあるがいくらなんでもあんなにスラスラとは口から出まい。<br />
意思に従わない声帯。意思に従わない口。脳が従わせる事の出来なかったこと。<br />
これは思い過ごしか。いや、可能性としてはあるのではないだろうか。<br />
何らかの力が干渉したという可能性が。<br />
そうすれば、今の状態に関しても言える。<br />
何らかの力が働いていて、ハルヒが元に戻るのを、もしくはこの関係が戻るのを防いでいる、と。<br />
では、考えられるパターンは。<br />
ハルヒの力とか、インターフェースの力か。ビックリな未来の力や機関を用いてもこれは出来ないだろう。<br />
問題はそれらの力の干渉を確認できるか。<br />
「と、なるとアイツに聞くしかない」<br />
長門へ電話をしよう。</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
<p>つづく</p>
<p>とある部屋のとあるベッドの上。そこに、俺は眠っていた。<br />
「ごめんね、キョン!」<br />
そして、ハルヒは泣きながら謝っていた。<br />
理由?それは今病院に居ることが関係している。そう。俺が居るのは病室のベッドの上だ。<br />
俺は日頃からSOS団との毎日面白いと思いながら過ごしていた。それは偽りの無い楽しさだ。<br />
だが同時にストレスを溜めていた。あれだけ毎日好き勝手に使われればそりゃ溜まる。<br />
朝比奈さんや古泉も非常に溜まっているとは思うが中でも俺は特に酷いと自負できる。<br />
そんなある日だ。俺はハルヒと喧嘩してる最中に倒れたのだ。診断結果はストレスと疲労の蓄積。<br />
ハルヒにはストレスや疲労を与え続けていた自覚があったらしい。<br />
起きるや否や抱きついてきて、こうして泣きながら謝ってきたのだ。<br />
「ごめんね・・・ごめんね・・・」<br />
謝罪の言葉のみを繰り返すその姿にはいつものような100万ワットの輝きの笑顔は無い。<br />
暗く沈んだ泣き顔で、ただ壊れたCDのようにリピート再生し続けていた。<br />
「良いんだ、ハルヒ・・・」<br />
俺はその姿が見たくなくてただ頭を撫でてあやす。<br />
「ごめんね・・・キョン・・・」<br />
しかし、ハルヒはただ泣いていた。珍しいぐらいに泣いてた。<br />
宥めても、ごめんね、しか言わなくなっていた。<br />
「ねぇ・・・キョン。これからは私に何でも言って?私、何でも言う事聞くから」<br />
その言葉にぞくりとした感覚が芽生えた。<br />
唐突に脳内で発現したそれらは瞬く間に意識を乗っ取っていく。そして、<br />
「・・・なら―――」<br />
それが、俺とハルヒの歪んだ主従関係の始まりだった。<br />
<br />
第一話「~鎖~」<br />
<br />
<br />
あれから数週間後。<br />
「最近、閉鎖空間が小さい物も含めてめっきり無くなりましてね」<br />
古泉はいつもどおりの笑顔を浮かべている。最近、疲弊の色がぐっと減っているようだ。<br />
それに比べりゃ、きっと俺の顔は疲弊しきっているいるのだろう。<br />
「とても、疲れたような顔していますが・・・どうかしたんですか?」<br />
あいつがそう尋ねてきた。<br />
「別に・・・」<br />
俺はそう答えて教室をちらりと見る。<br />
そこにはいつも通りのハルヒが谷口を苛めていた。<br />
その横で国木田が笑い、それを見る由良さんなどのクラスメートが谷口を哀れむように見ている。<br />
でも、楽しんでいる。<br />
あたかも、いつも通りであるかのように日常の映写機がカタカタ動いている。<br />
1シーン、1シーンに変化の無い平和。<br />
それが、偽りだとみんな知っているのだろうか。<br />
知る由もないだろう。<br />
だって、異常が表面上に浮かんでいないのだから。<br />
SOS団部室も、教室も、授業中も、廊下も、校庭も。<br />
何が違う?何も違わないさ。だから、誰も知らない。<br />
帰路をハルヒ、長門と一緒に肩を並べて歩く。<br />
長門のマンションが見えて、そこで手を振り分かれる。<br />
途端に今まで笑顔だったハルヒから笑顔が消える。<br />
二人沈黙したまま我が家とは比べ物にならない広さのハルヒの家へと入る。<br />
ハルヒの両親は赴任中。つまりは、ここには二人しか居ない。<br />
唐突に横をすり抜ける陰。ハルヒだ。<br />
扉を開けて一足先に靴を脱いで俺の方向を向く。そして、座ってこう言った。<br />
「お帰りなさいませ」<br />
俺達は、歪んでしまった。あの病院で、全ては狂ったのだ。<br />
<br />
・・・・・・・・。<br />
<br />
「・・・なら―――今度から、お前は俺の奴隷だ」<br />
自分でも、何を言ったのか解らなかった。だけど、それがすぽっと口から出たのだ。<br />
悪夢の言葉が。<br />
「え?」<br />
ハルヒも目を丸くして、信じられないような驚き方をしていた。<br />
「何でも言う事聞くんじゃなかったのか?」<br />
負けず嫌いのハルヒのことだ。どうせ、言うことを聞くさ。<br />
今まで生意気な事をしてくれた分だけ仕返しをしてやろうか。<br />
・・・俺、今なんて事を考えていた!?<br />
なんて低く冷たい声だろう。なんて酷く恐ろしい考え。<br />
これが俺なのか?これが。<br />
「・・・解ったわよ」<br />
ハルヒはぼそりを呟いた。駄目だ。このままでは全てが壊れる。<br />
解っていたのに、止めたかったのに、俺の口からは思ってる事とは違う言葉が出ていた。<br />
「口を慎め。俺は、お前の主だ」<br />
俯いたその顔にすまんと言う事も出来ず。ただ次の瞬間に<br />
「すいません・・・ご主人様」<br />
そういわれた事に鳥肌を立てていた。それは背徳感情と入り混じった快楽。<br />
あのハルヒに言われる。ご主人様と言われる。それが快感だった。<br />
だが、そう言ったハルヒ上がった顔の表情を見て絶句した。<br />
ハルヒからハルヒの色が失せていた。まるで除去されたかのように。<br />
「私は、貴方の奴隷、メイドです・・・学校でも何処ででも、ご主人様に尽くさせてもらいます」<br />
「いや、学校では今まで通りで良い」<br />
「ですが・・・」<br />
「良いから!!」<br />
「解りました」<br />
この判断は正しかったと言える。おかげで、日々混乱という日常が保たれているのだ。<br />
混乱に混乱が混じれば、それは恐ろしいことになるからな。<br />
<br />
・・・・・・。<br />
<br />
<br />
<br />
何故俺はあんな事を言った?何故だ?望んだから?<br />
なら何でこんなに後悔している?怖いから?何が怖い?<br />
壊れたもの、全てが。日常が。もう壊れている。<br />
だから、怖い。怖い。怖い。ひたすら、怖い。<br />
あれから数日間、ずっと俺はご主人様と呼ばれ続けている。<br />
ハルヒの家に居るのも、こいつが使用人ならば主人についていき世話するのが礼儀と言ってくるからだ。<br />
流石に家族の前で呼ばれるわけにはいかないだろ?ご主人様って。<br />
だから仕方なくこうしてハルヒの家に居るのだ。<br />
「・・・どうしましたか?」<br />
「っ・・・!」<br />
驚いて、覗き込んできた顔から思わず目を逸らした。<br />
いや、冷静であっても顔なんて合わせられない。ハルヒと顔を合わせれない。<br />
どうすれば良い。今の俺達は何がおかしい?<br />
この関係がおかしいんだ。<br />
・・・そうだ。なら、戻れば良いじゃないか!<br />
まだ日常はそんなに壊れていない。まだ直せるはずだ。<br />
何でこんな簡単な事を思いつかなかったんだろう。なんて馬鹿者なんだ、やれやれ。<br />
「なぁ、ハルヒ・・・前みたいに戻らないか?団長と団員の関係にさ」<br />
俺の言葉を聞いたハルヒは驚いたような顔をした。<br />
でもすぐに首を横に振って悲しそうに微笑んだ。俺はその笑顔の意味が解らず混乱する。<br />
だが次の言葉に、混乱は失せて代わりに闇を見た。<br />
「私は、貴方の奴隷です。貴方より上には、なれないんです」<br />
・・・どうしてだ?なんて言った?<br />
俺より上にはなれない?団長にはなれないって事か?<br />
じゃあ、戻れないのか?そんな馬鹿な。<br />
ハルヒだったらこの言葉ににやりと笑って俺に今までの仕返しをするものじゃないのか?<br />
俺はハルヒの眼を直視して、その表情を読む。そして理解した。<br />
その目があまりにも真剣な色だったせいで俺は悟ってしまった。<br />
駄目だ。もう、日常は壊れている。たったこの数日で。<br />
表面上は元のまま、誰も知らない土台部分がぶっ壊れている。<br />
やらなくてて後悔するよりやって後悔する方が良いとある奴は言った。<br />
本当に、そうなのか?<br />
「カバンと、コートをお預かりします」<br />
成されるがままに俺はただ絶望に打ちひしがれていた。<br />
あのハルヒが帰ってこない事に。そして、好きだった事に。<br />
「ご主人様、いつまでも玄関に居ると風邪引きますよ?」<br />
「・・・そうだな」<br />
帰ってこない?いや、帰ってこさせるさ。<br />
俺は”鍵”だからな。ただ、ジョンを復活させる訳にはいかない。<br />
ジョンとしてではなく俺としてここに呼び戻さないといけないんだ。<br />
決意と同時に涼宮宅、もとい現在の俺の宿へと入った。<br />
俺の部屋は空き室だった場所だ。広さとしては十分である。<br />
ちなみに俺の本家本元の家にはしばらく友達の家で長期的にお手伝いをすると言っている。<br />
本当は、長期的なお手伝いをされているんだがな。<br />
「さて・・・」<br />
部屋に閉じこもってまず考える事は現在の状況の打破だ。<br />
「まずは、どうしてこうなったかだな・・・」<br />
そんなの理由は一つで俺があんな事を言ったから負けず嫌いなハルヒが従った、という所だろう。<br />
・・・いや、だが妙だ。俺は喋りたくもないような事を喋ってた。<br />
よく意思に背き、なんて事はよくあるがいくらなんでもあんなにスラスラとは口から出まい。<br />
意思に従わない声帯。意思に従わない口。脳が従わせる事の出来なかったこと。<br />
これは思い過ごしか。いや、可能性としてはあるのではないだろうか。<br />
何らかの力が干渉したという可能性が。<br />
そうすれば、今の状態に関しても言える。<br />
何らかの力が働いていて、ハルヒが元に戻るのを、もしくはこの関係が戻るのを防いでいる、と。<br />
では、考えられるパターンは。<br />
ハルヒの力とか、インターフェースの力か。ビックリな未来の力や機関を用いてもこれは出来ないだろう。<br />
問題はそれらの力の干渉を確認できるか。<br />
「と、なるとアイツに聞くしかない」<br />
長門へ電話をしよう。</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
<p>つづく</p>