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「長門とアイス」(2020/03/12 (木) 20:40:11) の最新版変更点
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<div class="main">
<div>「今回は、わたしと、みくるちゃんと、古泉君ね。<br>
キョン、分かってると思うけど、暑いからってサボっちゃダメよ?<br>
これは不思議探しなんだからね!」<br></div>
<br>
<div>
時は、期末テストも終わり、あとは夏休みを待つだけとなった1学期の終わり。<br>
俺たちは、例によって例のごとく、朝の喫茶店で不思議探しのメンバーを決めるくじを引いたところだ。<br>
今回は、俺は長門とのペアだ。<br></div>
<br>
<div>喫茶店を出て、ハルヒたちとは別行動を取る。<br></div>
<br>
<div>
「さて、長門…どこか、行きたい所とかはあるか?」<br></div>
<br>
<div>長門は、ゆっくりと視線を俺に向ける。<br>
その首が、左右に僅かに振れる。否定を示すジェスチャー。<br>
</div>
<br>
<div>「とくにない」<br></div>
<br>
<div>ふむ、と俺は考えを巡らせる。<br>
前に長門と組んだときは、図書館に行ったんだったな。<br>
あの時は、本棚の前で本を広げ、時間になっても全く動こうとしなかった。<br>
とくにない、とは言ったが、こいつはやっぱり図書館に行きたいんじゃないだろうか。<br>
</div>
<br>
<div>「じゃ、図書館でいいか」<br></div>
<br>
<div>相変わらずの無表情。<br>
質問を投げかけた3秒後、1ミリほど首を縦に振ったのを見とどけた後、<br>
俺は図書館に向かって足を動かし始めた。<br></div>
<br>
<br>
<div>「…あちぃ」<br></div>
<br>
<div>
駅前まで自転車を漕いでいたときも思ったが、なんて暑さだ。<br>
まだ10時過ぎだってのに、俺の皮膚の温度センサーは気温34度を示している。<br>
こんな中で、日向を歩くなんて正気な人間のすることじゃないな。<br>
</div>
<br>
<div>「なあ、長門。暑くないか?」<br></div>
<br>
<div>俺は長門に問いかける。<br>
長門の首筋には汗一つ浮かんでいない。<br>
…こりゃ愚問だったか。<br></div>
<br>
<div>
「わたしには自動温度調節機能が備わっている。問題ない」<br>
</div>
<br>
<div>
やっぱりそうか。まあ、こいつは対有機生命体インターフェイス、<br>
いわゆるアンドロイドであって、人間じゃないからな。<br>
そういう類のもんがついてるほうが自然ってもんだ。<br>
…しかし、ほんっと、暑いな。<br></div>
<br>
<div>
コンビニを発見した瞬間、俺は長門に、コンビニに入って涼をとる事を提案した。<br>
数秒の後に了承が出た瞬間、俺はコンビニに向かって走り、ドアを開ける。<br>
冷房のよく効いた店内はまさに天国の一言に尽きる。<br>
しかし、コンビニまでやって来たはいいが、何も買わずに出るってのもアレだな。<br>
ここはアイスでも買うか。<br>
俺は店内のアイス売り場に向かい、種類を確認する。<br>
ここは、やはり定番のガリガリ君にするべきか…<br></div>
<br>
<div>「………」<br></div>
<br>
<div>気がつくと、長門が俺の横まで来ていた。<br>
じっと俺の胸を、いや俺の持っているガリガリ君を見つめている。<br>
</div>
<br>
<div>「…食いたいのか?」<br>
「…べつに」<br></div>
<br>
<div>
ならいいか、と思った俺だったが、一瞬後にふと思いついた。<br>
こいつはアンドロイドである。<br>
そして、映画とかで出てくるアンドロイドよろしく、こいつには感情というものが希薄だ。<br>
なら、これから様々な経験を積んでいく中で、少しづつ感情を獲得していく、ってのが王道ではなかろうか。<br>
そう、例えばアイスを初めて口にする、何ていうのでもいい。<br>
</div>
<br>
<div>「長門。お前、アイス食ったことあるのか」<br>
「ない」<br></div>
<br>
<div>ほらきた。<br></div>
<br>
<div>
「じゃ、これは俺がおごってやる。一緒に食おう」<br></div>
<br>
<div>俺は長門の返事を待たず、レジに向かう。<br>
ガリガリ君2つ、しめて126円なり。<br></div>
<br>
<div>
コンビニの外に出て、俺はアイスの片方を長門に渡した。<br>
俺が袋を破って中身を取り出したのを見てから、長門も中身を取り出す。<br>
うん。やっぱり、暑い日はアイスに限る。<br>
ちら、と横に視線を向けると、<br></div>
<br>
<div>「…長門。お前、もう食い終わったのか」<br></div>
<br>
<div>
幾らなんでも早すぎるだろう。まだ30秒も経っていない。<br>
ガリガリ君を30秒完食ってのは何の罰ゲームだ。<br></div>
<br>
<div>「あー、どうだった?」<br>
「……冷たい」<br>
「…美味かったか?」<br>
「………」<br></div>
<br>
<div>答えずに、長門は再びコンビニへと入っていった。<br>
俺は食いかけのアイスを齧りつつ待っていると、袋いっぱいのアイスを手にした長門が出て来る。<br>
どうやら、相当気に入ったようだ。<br></div>
<br>
<br>
<br>
<div>後日。<br>
長門の部屋に行ったとき、ふと気になって冷凍庫を開けると、<br>
そこにはアイスの山が鎮座していたのは、また別の話だ。<br>
</div>
</div>
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<div class="main">
<div>「今回は、わたしと、みくるちゃんと、古泉君ね。<br />
キョン、分かってると思うけど、暑いからってサボっちゃダメよ?<br />
これは不思議探しなんだからね!」</div>
<div>時は、期末テストも終わり、あとは夏休みを待つだけとなった1学期の終わり。<br />
俺たちは、例によって例のごとく、朝の喫茶店で不思議探しのメンバーを決めるくじを引いたところだ。<br />
今回は、俺は長門とのペアだ。</div>
<div>喫茶店を出て、ハルヒたちとは別行動を取る。</div>
<div>「さて、長門…どこか、行きたい所とかはあるか?」</div>
<div>長門は、ゆっくりと視線を俺に向ける。<br />
その首が、左右に僅かに振れる。否定を示すジェスチャー。</div>
<div>「とくにない」</div>
<div>ふむ、と俺は考えを巡らせる。<br />
前に長門と組んだときは、図書館に行ったんだったな。<br />
あの時は、本棚の前で本を広げ、時間になっても全く動こうとしなかった。<br />
とくにない、とは言ったが、こいつはやっぱり図書館に行きたいんじゃないだろうか。</div>
<div>「じゃ、図書館でいいか」</div>
<div>相変わらずの無表情。<br />
質問を投げかけた3秒後、1ミリほど首を縦に振ったのを見とどけた後、<br />
俺は図書館に向かって足を動かし始めた。</div>
<div>「…あちぃ」</div>
<div>駅前まで自転車を漕いでいたときも思ったが、なんて暑さだ。<br />
まだ10時過ぎだってのに、俺の皮膚の温度センサーは気温34度を示している。<br />
こんな中で、日向を歩くなんて正気な人間のすることじゃないな。</div>
<div>「なあ、長門。暑くないか?」</div>
<div>俺は長門に問いかける。<br />
長門の首筋には汗一つ浮かんでいない。<br />
…こりゃ愚問だったか。</div>
<div>「わたしには自動温度調節機能が備わっている。問題ない」</div>
<div>やっぱりそうか。まあ、こいつは対有機生命体インターフェイス、<br />
いわゆるアンドロイドであって、人間じゃないからな。<br />
そういう類のもんがついてるほうが自然ってもんだ。<br />
…しかし、ほんっと、暑いな。</div>
<div>コンビニを発見した瞬間、俺は長門に、コンビニに入って涼をとる事を提案した。<br />
数秒の後に了承が出た瞬間、俺はコンビニに向かって走り、ドアを開ける。<br />
冷房のよく効いた店内はまさに天国の一言に尽きる。<br />
しかし、コンビニまでやって来たはいいが、何も買わずに出るってのもアレだな。<br />
ここはアイスでも買うか。<br />
俺は店内のアイス売り場に向かい、種類を確認する。<br />
ここは、やはり定番のガリガリ君にするべきか…</div>
<div>「………」</div>
<div>気がつくと、長門が俺の横まで来ていた。<br />
じっと俺の胸を、いや俺の持っているガリガリ君を見つめている。</div>
<div>「…食いたいのか?」<br />
「…べつに」</div>
<div>ならいいか、と思った俺だったが、一瞬後にふと思いついた。<br />
こいつはアンドロイドである。<br />
そして、映画とかで出てくるアンドロイドよろしく、こいつには感情というものが希薄だ。<br />
なら、これから様々な経験を積んでいく中で、少しづつ感情を獲得していく、ってのが王道ではなかろうか。<br />
そう、例えばアイスを初めて口にする、何ていうのでもいい。</div>
<div>「長門。お前、アイス食ったことあるのか」<br />
「ない」</div>
<div>ほらきた。</div>
<div>「じゃ、これは俺がおごってやる。一緒に食おう」</div>
<div>俺は長門の返事を待たず、レジに向かう。<br />
ガリガリ君2つ、しめて126円なり。</div>
<div>コンビニの外に出て、俺はアイスの片方を長門に渡した。<br />
俺が袋を破って中身を取り出したのを見てから、長門も中身を取り出す。<br />
うん。やっぱり、暑い日はアイスに限る。<br />
ちら、と横に視線を向けると、</div>
<div>「…長門。お前、もう食い終わったのか」</div>
<div>幾らなんでも早すぎるだろう。まだ30秒も経っていない。<br />
ガリガリ君を30秒完食ってのは何の罰ゲームだ。</div>
<div>「あー、どうだった?」<br />
「……冷たい」<br />
「…美味かったか?」<br />
「………」</div>
<div>答えずに、長門は再びコンビニへと入っていった。<br />
俺は食いかけのアイスを齧りつつ待っていると、袋いっぱいのアイスを手にした長門が出て来る。<br />
どうやら、相当気に入ったようだ。</div>
<br />
<br />
<div>後日。<br />
長門の部屋に行ったとき、ふと気になって冷凍庫を開けると、<br />
そこにはアイスの山が鎮座していたのは、また別の話だ。</div>
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