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「エイリアンズ2 side-B」(2007/03/19 (月) 22:45:46) の最新版変更点
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手を引かれるままに辿り着いたのは、旧館の一角にあるトイレだった。<br>
渡り廊下まで来ていたのだからてっきり校舎の方へ行くのかと思ったのだが、<br>
ただ考えなしに歩いていただけのようだ、ちょっとは物を考えてから行動しようぜ。<br>
しかし、このトイレ、存在は知っていたが利用した事は一度もない、<br>
扉の前に立つだけで刺激臭が鼻をかすめるんだ、誰がこんなトイレを利用しようと思うのか。<br>
<br>
「とりあえず、この中で待っててくれ、ここなら誰も来ないだろ<br>
部活が終わったら迎えに来る、あんまり長い間席を外しているとハルヒも心配するからな」<br>
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期待してなかった期待も虚しく、早口でこんな事を言いやがった。<br>
ハルヒがちょっと席を外したくらいでそんな心配をするとは到底思えないぞ。<br>
バカ女は、じゃあな、とでも言いたげに片手を上げると、逃げるように踵を返し、走り去った。<br>
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「待て、これは何の罰ゲームだ」<br>
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思わず呟く、なんだこれは。<br>
あのバカ女を信用して着いて来た、そこまでは良い。<br>
だが、何故俺はこんなレベルの高い罰ゲームを受けなければならないんだ?<br>
部活の時間が終わるまでの数時間、こんな場所に居続けていたら服に臭いが染み付いてしまうではないか。<br>
嫌がらせとしか思えん、あの女、後でとっちめてやろうか。<br>
知らない人についていっちゃいけません、いつかお袋に言われた言葉を思い出さざるを得ないね。<br>
妹にも、兄としてしっかりと教え込んでやらなければ。<br>
<br>
バカ正直にこんな臭いトイレの中で何時間も待っていられる程、俺は出来た人間ではない。<br>
ないので、校内を適当にうろついて時間を潰すことにする。<br>
あいつは俺の事を誰かに見られるとまずい風な事を言って俺をトイレに監禁しようとしたが、<br>
制服もちゃんと着ているし、俺が北高の生徒である事を疑う奴なんか居るわけがない。<br>
まあ、要するにあのトイレは待ち合わせ場所なんだ。<br>
部活が終わる頃を見計らってあのトイレに戻れば、誰にも文句は言われないだろう。<br>
<br>
校舎をぶらつく、今のところ、この世界は俺の居た世界と全く何にも変わってなかった。<br>
ハルヒだって朝比奈さんだって文芸部室に居たし、長門は眼鏡をかけていなかった、古泉は知らん。<br>
今まで発見できたのは、見知らぬ女が俺の役を演じている、というただ一点のみだ。<br>
こんな事態になっても、長門の顔を思い出すだけで、俺は精神の安定を保てるのは何故だろう。<br>
神様、仏様、長門様。<br>
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長門大明神の無表情を思い出すと、なんとなく図書館に行きたくなる。<br>
まぁ、暇つぶしにもなるだろうと、俺は図書館へと赴いた。<br>
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長門? あっ、おい、椅子を回すな<br>
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「……、…ん、夢か」<br>
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やばい、寝ちまってたか。<br>
図書館というのはどうしてこう、俺を眠りへと誘うのだろうね、この世の不思議だ。<br>
半ば脊髄反射的に時計を見やると、ちょうど部活終了時刻丁度だった。<br>
俺の体内時計にもついに目覚ましアラームが設置されたのだろうか、<br>
これで早朝どこからともなく飛んでくる妹に悩む事もないだろう、と一瞬思うものの、<br>
校舎に鳴り響くチャイムの音に気付き、俺の腹時計に設置されたかもしれない目覚ましアラームの存在を否定せざるを得なくなった。<br>
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急いでトイレに戻らないと、あのサド女に今度はどんな嫌がらせをされるか解かったもんじゃないので、<br>
8ページほど読んだだけの本を棚に戻すのもそこそこに、俺は例のトイレへと向かった。<br>
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旧館へ続く渡り廊下を歩いていると前方にハルヒの姿が見えた。<br>
ああ、盲点だった。<br>
長門の部活ならぬ団活終了の合図の後、いの一番に部室を出て行くのは誰だ、ハルヒだ。<br>
もしかしてあのサド女はこの可能性を危惧していたからこそ、俺にあのトイレでの待機を命じたのだろうか、流石にそれは考えすぎか?<br>
いやしかしだ、天上天下唯我独尊を地で行く変人が、少しだけ顔を合わせただけの俺に気付くだろうか?<br>
否、そんなわけがない。<br>
という訳で、何食わぬ顔でスルーする事にした。<br>
しかし、思惑という物は往々にして外されるために存在しているといっても過言ではなく、<br>
そんなわけで、俺の思惑も虚しい結果に終わる事になるのだった。<br>
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「アンタ、キョンとどういう関係なの?」<br>
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ハルヒはすれ違い様にこんな言葉を吐いた。<br>
質問の意図がわからん、まったくもって意味不明だ。<br>
関係ってのはどういう意味だ? まさか俺とあのバカサド女が恋仲だとでも言うのか?<br>
冗談にしたって笑えない、何でまたハルヒはこんな事を言い出すのか。<br>
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こいつは前に、恋愛感情を一種の気の迷いだとか精神病の一種だとか言ってたのは記憶にあるし、<br>
まさかハルヒがそんな青春的な意味で言ったわけじゃないだろうと思った俺は振り返り<br>
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「関係ってのはどういう意味だ」<br>
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ああ、この時適当に友達だなんだと言ってお茶を濁しておけば良かったんだ。<br>
そうすりゃさっさと開放されて万々歳だ、人間とはかくも愚かな生物だね、まったく。<br>
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ハルヒはいつの間にか、こちらを睨みつけている。<br>
さっき部室で睨まれた時よりは20%ほど柔らかくなった睨みだ。<br>
柔らかい睨みってのがどんなもんなのかは知らん。<br>
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「そのままの意味に決まってるじゃないの。
まあいいわ、聞きなおしてあげる」<br>
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一拍置いてから、少し睨みを強くして<br>
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「アンタとキョンは付き合ってるの?」<br>
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待て待て、恋愛は一種の精神病じゃなかったのか? 気の迷いじゃなかったのか?<br>
まさかハルヒがこんな事を言い出すとはな、この世界はどうなってんだ。<br>
いやいや違う、このハルヒと俺のハルヒを重ねて見ちゃいけない、<br>
長門にも朝比奈さんにもだ、いつのまにか俺の知っているこいつらと重ねて見てしまっていた。<br>
そもそも、この世界が俺の世界と似すぎているのがいけないんだよ、<br>
長門は眼鏡をかけてないし、朝比奈さんはメイド服を着こなしているし、ハルヒの髪は短いし、もう!<br>
落ち着け俺、俺はこんな不可解な質疑応答はさっさと切り抜けてトイレへ向かい、<br>
あの女と善後策を協議して、元の世界に戻らなければならんのに。<br>
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「あいつとはただの知り合いだし、お前がそんな事を聞く意味もわからん」<br>
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ハルヒは、「ふーん…」と何か考えるように呟き<br>
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「なんでかはわからないんだけどね、あんたとキョンってただの知り合いって感じがしないのよ」<br>
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毎度の事ながら、ハルヒの勘の良さには辟易するね。<br>
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「期待に応えられなくてすまんが、あいつとは本当にただの知り合いなんだ」<br>
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俺はあくまでも白を切り通す。<br>
というか、白も何もあったもんじゃない、<br>
あいつと俺の関係は、顔見知りでも知り合いでも友達でもましてや恋人でもなんでもない何かだ。<br>
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「あっ、そう」<br>
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ハルヒはそう言うと、さっさと居なくなってしまった。<br>
あのバカ女にしろ、このハルヒにしろ、一体何がしたいんだ。<br>
女ってのはよくわからん。<br>
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ハルヒがここに来たという事は、SOS団本日の活動は終了しているのか、<br>
こんなところで突っ立ってったら、また誰かと遭遇するかもしれない。<br>
残るは朝比奈さんと古泉と長門か、<br>
この3人が見知らぬ男子生徒に何らかのアクションをかけてくるとは思えないが、<br>
何が起きるか予想もつかん時、常に最悪の事態を想定して動くのは当たり前だ。<br>
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そうと決まれば、SOS団の面子が帰り支度をする前にトイレへと向かわなければならない。<br>
考える時間も惜しいので、とりあえず走る。<br>
廊下を走っちゃいけません、なんて野暮な事言うバカ野朗は居ないだろ。<br>
居たとしても知らん、俺はこの学校の生徒じゃねえ。<br>
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トイレの前には、長身の優男、ちんちくりん、ポニテ女が3人集合していた。<br>
古泉と長門の姿が有るのは気になるが、どうせあの女が連れてきたんだろう、<br>
何か策があるのかもな。<br>
女に頼りきりになってるからって情けないとかは言ってくれるなよ、<br>
俺だってそう思うし、できるもんなら一人でなんとかしたいさ。<br>
だがな、こんな状況で俺に何ができる?<br>
たった数時間前まで久しぶりの平和な日常を過ごしていたにも関わらず、<br>
なんの因果か、こうしてわけもわからず異世界に来ちまった。<br>
こんな状況で、こうして正気を保っている俺はまだマシな方なんじゃないかと思うね。<br>
それに、有無を言わさず俺を拉致し、トイレに監禁しようとしたあのバカサドポニテ女にも<br>
多少の責任はある、だろ?<br>
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「よう」<br>
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少し息を整えて声をかけると、その三人は三者三様の表情に振り向いた。<br>
古泉はニヤケ面、長門は無表情、バカ女は文句有り気な顰め面だ。<br>
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「なんで、この中で待ってなかったんだ?」<br>
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この女は俺がバカ正直にこのくっさいトイレの中で待っている物と思っていたらしい。<br>
随分とゴキゲンな思考回路をお持ちのようだ。<br>
まるでハルヒだぜ。<br>
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「じゃあ逆に聞かせてもらうがな、お前は、このくっせえトイレの中で何時間も待つ事ができるか?」<br>
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掃除するのも躊躇われるほどの刺激臭、まさに魔の無限ループを具現化したかの様なトイレだぞ。<br>
少々の怒気を込めて言ったのが効いたのか、バカ女は顰め面をレベルアップさせて俺を睨みつけてきやがった。<br>
まるで「お前は文句を言う立場じゃない」とでも言いたげな表情だ、さっきから何なんだろうね、この女は。<br>
腹が立つ。<br>
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立ったので、こいつが次にどんな文句を言ってくるのか予想し、傾向と対策を練っていると、<br>
今まで事態を傍観していた古泉が――そういやこいつも居たんだったな――笑い出した。<br>
気色悪い。<br>
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「失礼、あなたが二人居る、と言う事実を今更ながらに実感しましてね。なんだかおかしくて、つい」<br>
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柔和な微笑を浮かべた古泉は<br>
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「まず、落ち着いて話のできる場所に移動しませんか?
こんなところで立ち話というのも何ですし」<br>
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それはいいんだが、なんだかちょっと臭うぞ、お前。<br>
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「ん、ああ、そうだな、そうするか」<br>
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バカ女はそう言い、やれやれと言った風情で溜息を吐くと、古泉と並んで歩き出した。<br>
おいおい、俺の事は置いてけぼりかよ。<br>
なんだか馬鹿らしくなったので、俺もさっさと着いていく事にする。<br>
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