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「鶴の舞 終幕」(2007/03/07 (水) 12:37:43) の最新版変更点
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ずいぶんと長い夢を見た俺は、起きたときも現実と夢の境目が分からなくなっていた。<br>
だが、妹の頭突き攻撃によって完全に頭が冴えた。<br>
うーん、ワイルド。<br>
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「だから頭突きは止めろって言っただろ?」<br>
朝飯を食いながら妹に釘を刺す。<br>
「だってキョン君、全然起きてくれないんだもーん」<br>
「正当化するな!」<br>
妹はニコニコと笑っている。<br>
・・・くそ、後で妹お気に入りのプリンを食ってやる。<br>
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「あれ、昨日はカレーだったっけ」<br>
「あれ~、キョン君覚えてないの~?」<br>
いや、確かに昨日はカレーのはずだ。<br>
なぜなら、朝食はカレーだからだ。<br>
昨日の残り物を使って朝の朝食は作られる。これぞ永遠の真理。<br>
おそらく昨日作ったのだろう、台所には鍋が置いてある。<br>
これで確定。だが・・・夢の中での夕食の方が頭に残っている・・・。<br>
だが、詳しくは思い出せなかった。<br>
(・・・俺はどんだけ長い夢見てたんだ?我ながら、自分の脳に呆れるよ)<br>
なぜか、唇も変な感触が残っていた。<br>
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朝のハイキングコースを歩きながら、俺はずっと思い出そうとしていた。<br>
(なんだろうな・・・、嬉しいことと悲しいことを一気に叩きつけられたような・・・)<br>
不鮮明な記憶だけが頭に残っていた。<br>
「おい~っす、キョン!」<br>
・・・誰かと思ったら谷口か。<br>
「どうしたぁ?そんな思いつめた顔してぇ!」<br>
「・・・今の俺の顔、そんな感じなのか?」<br>
「おう!何かあったのか?」<br>
こいつに言っても何も解決しなさそうだが、<br>
とりあえず昨日見た(であろう)夢の話した。<br>
といっても『なんか幸せだった』とか『泣いていた』<br>
ぐらいのことしか言えなかったが。<br>
「ふ~ん・・・」<br>
おいこら、言わせておいてその態度はなんだ?!<br>
もう少し協力しろ!<br>
「だって、断片的すぎてわかんねえもん」<br>
まあ確かにそこら辺は同意するが。<br>
「とは言え」<br>
急に会話に入ってきたのは、<br>
「あれ、国木田、いつの間にいたんだ?」<br>
「へへへ、こっそり盗み聞きしちゃった」<br>
「だったら挨拶とか何かしとけよ。びっくりするだろ?」<br>
「いやあ、だってキョンがあんなに真剣になっている顔なんて、<br>
そうそう見られたものじゃないからね」<br>
「真剣?俺が?」<br>
「うん、すごく真面目な顔だったよ」<br>
そんなに俺は夢の内容が気になっていたのか・・・<br>
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「んで、国木田は何が言いたいんだ?」<br>
「あ、そうそう。キョンが夢の中で泣いたっていうのは、<br>
結局、言ってみれば悪夢だよね」<br>
いや、そんなに明るく言うな。<br>
「悪夢だったらなんなんだ?」<br>
「悪夢を見たときは、他人にその夢のことを話すのが一番いいんだって」<br>
悪夢ねえ。確かに、そんな感じだったかもしれない。でも・・・<br>
「嫌なことと幸せなことが1:1だったらそれは悪夢なのか?」<br>
国木田が考えるポーズをとった。<br>
「う~ん、じゃあ、キョンがその夢を悪夢と思っているのかで分かると思う」<br>
そいつは簡単な判断の仕方だ。考えるまでもない。<br>
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「最高の、夢だったさ」<br>
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その日から丸十年、俺はまだ夢の内容を思い出そうとしていた。<br>
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しかし、ずっと考えていたのにもかかわらず、<br>
今だ何一つとして思い出せない。<br>
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ふと、俺は思い出した。<br>
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夢のことではなく、隣にいる俺の女房のこと。<br>
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(そういえば、まだはっきりと言ってなかったな・・・)<br>
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一応プロポーズの際に言うはずだったのだが、<br>
俺がそれを言う前に相手から抱きつかれたので<br>
(ま、いいか)<br>
とそのままでいたからだ。<br>
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高校時代、恥ずかしくて言えなかった言葉。<br>
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―昔の呼び方で、呼んでみようか―<br>
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<p>俺は女房の名前を呼ぶ。<br>
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横を向いた彼女の髪は、俺の希望にそったポニーテール。<br>
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笑顔が眩しい。<br>
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高校時代に戻ったような気がした。<br>
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<p>「大好きです・・・鶴屋さん」<br>
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<p>満面の笑みを浮かべた女房と抱きつきながら、<br>
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俺はようやく、夢の出来事を思い出した。<br>
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<p>・・・十年も要したか・・・。<br>
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さて、今日はどこへいこうかね。<br>
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そうだ、桜の花が舞い落ちる、彼女の家の庭に出よう。<br>
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―夢の続きを、するために―<br>
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終幕<br>
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