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「鶴の舞 第2幕」(2007/02/25 (日) 23:06:50) の最新版変更点
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<p>「ちょっと、なにを話していたのよ」<br>
鞄を持って帰ろうと部室に戻ってきた俺に、好奇心と期待感、そして暇だから<br>
こそくるイベントへの「飢え」がうまいこと中和して100Wぐらいは出るのでは<br>
ないかという笑顔を浮かべたハルヒが話しかけてきた。<br>
「別に。ただ鶴屋さんと話をしただけさ」<br>
「話ってなによ」<br>
俺は肩をすくめ、<br>
「プライバシーの問題だ」<br>
と、ここからハルヒの「SOS団に秘密ごとはないのよ!」といった攻撃が始<br>
まった。まあ、はじめから想定はしていたことだ。が、俺の「騒いでいるうち<br>
に即ドアを開けてゴー!」作戦(ハルヒみたいだな)が使えそうにない。なぜか?<br>
ハルヒが怖すぎたからだ。体験した事もあるだろ?先生に職員室に呼ばれ、説教<br>
されているまさに其の
時に等しい。逃げればいいという単純なことができない。 先生の怒った顔が子供
にとっては鬼であるかのように、俺はそこに立ちつくすことしかできない。<br>
ちょうどいまハルヒは、俺にとっての鬼になった。<br>
「ちょっとキョン、聞いているの?!」<br>
ハルヒ、胸倉掴むな。なんでそんなに怒るんだよ。マジで怖いから!この状況、<br>
なんとかして打破せねば。鶴屋さんが校門前で待っていてくれている。これ以上<br>
待たせるわけにはいかない。というかいい加減左にいる古泉のにこやかスマイル<br>
に耐えられなくなってきた。ちくしょう、なにが面白い?!<br>
本当のことをいうか?<br>
「俺、一日だけ鶴屋さんの彼氏になったwww」<br>
とか言ってしまおうか?いや、それはそれで鶴屋さんに迷惑がかかる。このとんでも<br>
ない女のことだ、すぐさま鶴屋さんを見つけ出してはいろいろと聞き出すだろう。<br>
というか俺が鶴屋さんの彼氏になったということすら「言い訳」ととらえて納得し<br>
ないだろうな。<br>
鶴屋さんの家に行く」はどうだ?いや、そうするとハルヒたちが押しかけてく<br>
るかもしれない。ただでさえ「しきたり」の忙しい準備に追われている中、あのハルヒが来たら…<br>
なんか先生の前で言い訳を考えているみたいだな。事実だが。<br>
「なんか言いなさいよ!」<br>
お前そんなに退屈なのか。まあ年がら年中暇をもてあましているからな。<br>
バタン<br>
長門の本を閉じる音が聞こえた。それに伴い、一瞬、ハルヒの注目が俺からそれた。<br>
今だ!<br>
「明日話す!」<br>
と俺は一目散に逃げた。こういう「ここしかないチャンス」にぶち当たると、意外と<br>
体は言うことは聞いてくれるのだな。<br>
「あーっ!ちょっと待ちなさ・・キョン!」<br>
<br>
<br>
<br>
「すいません、遅くなりました」<br>
俺は校門前に止めている黒塗りの車の中にいた鶴屋さんに、遅れたことを謝った。が<br>
「・・・」<br>
反応なし。<br>
校門前にある時計台を見た。5時・・23分か。鶴屋さんが俺を呼んだのは5時。<br>
そして鶴屋さんが車に乗ったのは、まあ10分からか。13分でこんなに怒る人だったか?<br>
「どうぞ」<br>
と運転手らしき人(おそらく初老あたりだろうか)がドアを開けてくれた。<br>
やけにぴりぴりしているな。<br>
「あ、どうも」<br>
運転手が怪訝な顔を見せる。俺は心のなかで<br>
(どうも、はまずかったかな)と舌打ちをした。<br>
車で走ること3分経過。一向に口を開かない鶴屋さん。気まずい空気が車の静寂を作り出す。<br>
これが長門相手なら気も楽なのに。普段明るい性格の人が黙ると、<br>
それだけで元の明るさと比例するように、静寂の場を作り出すパワーが強くなる。<br>
俺はそんなことを考えていた。<br>
「あと、どれくらいで着くのですか?」<br>
と鶴屋さんに聞いてみた。とにかく、この空気を換えなければ。<br>
「後、10少々で着きます」<br>
言ったのは運転手じゃなかった。<br>
鶴屋さんだった。<br>
俺は(緊張しているのか?)
と思い、鶴屋さんの顔を見た。緊張なんかしてない。<br>
むしろ凛とした顔つきで、窓に顔を向くことなく、真正面を向いている。<br>
俺は驚きと共に、(まるで、別人だな・・・)と感じた。<br>
やけにうけを狙っている性格のアイドルとかを見ていると、一発で<br>
(私生活ではだらしない格好で、はしたないことをしているのだろうな)<br>
というのが想像できる。<br>
だが、今の鶴屋さんを見たら、これが不思議なことに、いつもの鶴屋さんの顔が<br>
頭の中で浮かび上がらない。まるで、これが本当の性格であるかのように。<br>
<br>
まさか・・・学校では嘘の性格を使っていたのか?とすると、よくもまあ<br>
ハルヒのテンションに付いていけるものだ。<br>
「あら、私の顔に何かついているのかしら?」<br>
と、今度は鶴屋さんが逆に話しかけてきた。<br>
俺はずっと鶴屋さんの顔を凝視していたことに気づいた。<br>
「あ、ああ、すみません。つい、見とれてしまって」<br>
正直、マジだ。本気と書いてマジだ。<br>
鶴屋さんはにっこり、<br>
「口がうまいのですね」<br>
と微笑んだ。<br>
この瞬間、俺の顔が赤くなっているのを感じた。<br>
赤い顔を見られまいと、すぐに窓のほうに顔を向けた。<br>
背後からにこやかに笑っている鶴屋さんが想像できる。というより、<br>
見えます。窓に鶴屋さんが、まさに「美しい笑顔」をしているのを。<br>
<br></p>