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お悩みハルヒ~最終部・主導権の行方編~」(2020/03/13 (金) 00:10:13) の最新版変更点

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「いらっしゃいませ!」<br>  あたしは今、いつもの喫茶店にいた。向かいに座ってるのは、『魔法遣い』のキョン。<br>  あたしが目を瞑った後のことを少しだけ思いだしてみた。<br> <br> <br>  あたしが目を開けると元の明るい部室に戻っていた。どっかの部活の朝練の音も聞こえている。<br>  その代わり、キョンの姿がなくなっていた。……やっぱり夢だったの?<br>  あたしは鞄を取りに来て、そのまま寝ちゃって夢を見た。その時、キョンはいなかった……ってことよね。<br>  戻ってこれたのはうれしいけど……残念だわ。キョンから「好き」って言われたのも夢の話だったってことが。<br>  あたしは、顔を覆って少しだけ泣いた。よくわかんないけど、涙が出たから。<br> 「なに泣いてんだ、団長様」<br>  ドアの方から聞こえてくる声にあたしは顔を上げた。<br> 「早く来て、鞄を教室に持って行ってやろうと思ったんだけどな。お前の方が早かったか」<br>  あ、あら、気が利くじゃない。……これは、あくびで涙が出ただけだからね!<br> 「はいはい、そうだな」<br>  ……やっぱり夢、よね。あんな現実があったら、それこそあたしの望んだ不思議な世界だわ。<br>  でも、夢の中で約束しちゃったからね。何も知らないこのバカに朝ご飯を奢ってあげようじゃない。<br>  あたしは鞄を持って立上がり、キョンの腕を掴んで引っ張った。<br> 「朝ご飯食べに行くわよ! 今日は財布を持ってきたから、貧乏人のあんたに奢ってあげるわ!」<br>  そして、一歩、二歩と大股で歩きだ……す? おかしいわ、今日はキョンが動かない。<br>  足を踏ん張って、逆にあたしが引っ張られた。<br> 「今日は俺の勝ちだな」<br> <br>  頭に血が登っていくのがわかる。今のあたしは顔真っ赤ね。<br> 「あ、あんたね! 人がせっかく奢っ「大好きだ」<br>  ……へ?<br> 「少しは喜べよ。お前の告白は実ったんだぞ?」<br>  キョンはあっけらかんとした表情であたしを見下ろしている。また……夢?<br> 「現実だ。なんなら確かめてやる」<br>  頬を抓られ、痛みがくる。紛れもない本物の痛み……って、<br> 「いひゃい、いひゃい! いい加減にひなひゃい!」<br> 「ぷっ……なにマヌケな声をだしてんだ」<br>  このバカ……痛くて、涙が出ちゃうじゃない。バカキョン……バカぁ……。<br> 「お、おいハルヒ。泣くなって、悪かったって」<br>  ほんとにバカね。救いようがないわ。うれしくて泣いてるのに気付かないなんてバカの極みよ。<br>  でも、うれしかったらやっぱり笑いたいわ。だからあたしはこう言うの。<br> 「許してあげるからキスしなさい」<br>  そうするとね、多分キョンはしてくれるのよ。いつものセリフと一緒に。<br> 「またお前はいきなり……やれやれ」<br>  やっぱり。あたしは目を閉じて、触れ合う唇の感触を大事にした。<br>  あたしの気持ちを一番に感じ取ってくれる魔法をつかう、魔法遣いの彼氏。そんなキャッチフレーズも面白いわね。<br>  あたしがそんなくだらない冗談を考えていると、唇が離れた。<br> 「これでいいよな。さぁ、教室に行くぞ」<br> 「ふふん、忘れてるみたいね。さぁ、行くわよ! 学校は遅れても構わないわ!」<br>  あたしはそう言って、キョンの手を強く握って走り出した。<br>  キョンが何やら喚いてるのも無視して、笑顔で部室と学校を後にした……。<br> <br> <br>  それで、今に至るんだけど……。<br> 「ハルヒ、食わないのか? お前から誘っといて……」<br> <br>  今日はゆっくりと食べたい気分なの!<br>  彼氏、かぁ……。どう接すればいいのかしら? 今まで通りでいいのよね?<br>  あたしはゆっくりと食事を口に運びつつ、ずっと考えていた。……あれ? もう食べる物が無い。<br> 「それがお前のゆっくりか。人並み以上には変わりないな。……学校に行くか」<br>  まだ何にも考えてない! 普通は嫌よ、普通は! あたしは普通の付き合いじゃ満足できないんだから!<br>  普通にしたら、今までフってきた男達と何一つ変わりないわ!<br>  谷口とかと同レベルになっちゃダメ!<br> 「ハルヒ、勘定。今日はお前の奢りなんだろ?」<br>  わかってるわよ、今から済ませるから!<br>  あたしは乱暴にお金を店員に渡し、会計を済ませて外で待つキョンと合流した。<br> 「ごちそーさん」<br>  ……はいはい。行きましょ。<br>  顔が見れない恥ずかしい! どうすりゃいいのよ、あたし!<br>  キョンの前を歩いていると、後ろから手を繋がれた。しかも指と指をしっかり絡ませるアレよ。<br> 「俺の彼女だろ? 同じ歩幅で、同じ速さで歩こうぜ」<br>  なんでこんなに恥ずかしいセリフをサラッと言えるのよ! ……ま、いっか。<br>  これでいいわ。決めた、あたしはキョンに合わせてやろうじゃない。二人でいる時の主導権はくれてやるわ。<br>  それじゃあ普通のカップルになるんじゃないかって? ふふん、甘いわね。<br>  今、気付いたのよ。キョンといるだけであたしにとっては特別なんだから!<br>  だから、やってることは普通でもいいのよ。……幸せだし。<br> 「今度は遅すぎる、自分の足で歩け!」<br>  キョンのちょっと怒ったような声に、あたしは笑顔を浮かべて答えた。着いてこさせるのはもう終わりよ。これからは……。<br> 「キョン、しっかりとあたしを引っ張って行きなさい!」<br> <br> <br> おわり<br>
<p>「いらっしゃいませ!」<br />  あたしは今、いつもの喫茶店にいた。向かいに座ってるのは、『魔法遣い』のキョン。<br />  あたしが目を瞑った後のことを少しだけ思いだしてみた。<br /> <br /> <br />  あたしが目を開けると元の明るい部室に戻っていた。どっかの部活の朝練の音も聞こえている。<br />  その代わり、キョンの姿がなくなっていた。……やっぱり夢だったの?<br />  あたしは鞄を取りに来て、そのまま寝ちゃって夢を見た。その時、キョンはいなかった……ってことよね。<br />  戻ってこれたのはうれしいけど……残念だわ。キョンから「好き」って言われたのも夢の話だったってことが。<br />  あたしは、顔を覆って少しだけ泣いた。よくわかんないけど、涙が出たから。<br /> 「なに泣いてんだ、団長様」<br />  ドアの方から聞こえてくる声にあたしは顔を上げた。<br /> 「早く来て、鞄を教室に持って行ってやろうと思ったんだけどな。お前の方が早かったか」<br />  あ、あら、気が利くじゃない。……これは、あくびで涙が出ただけだからね!<br /> 「はいはい、そうだな」<br />  ……やっぱり夢、よね。あんな現実があったら、それこそあたしの望んだ不思議な世界だわ。<br />  でも、夢の中で約束しちゃったからね。何も知らないこのバカに朝ご飯を奢ってあげようじゃない。<br />  あたしは鞄を持って立上がり、キョンの腕を掴んで引っ張った。<br /> 「朝ご飯食べに行くわよ! 今日は財布を持ってきたから、貧乏人のあんたに奢ってあげるわ!」<br />  そして、一歩、二歩と大股で歩きだ……す? おかしいわ、今日はキョンが動かない。<br />  足を踏ん張って、逆にあたしが引っ張られた。<br /> 「今日は俺の勝ちだな」<br /> <br />  頭に血が登っていくのがわかる。今のあたしは顔真っ赤ね。<br /> 「あ、あんたね! 人がせっかく奢っ「大好きだ」<br />  ……へ?<br /> 「少しは喜べよ。お前の告白は実ったんだぞ?」<br />  キョンはあっけらかんとした表情であたしを見下ろしている。また……夢?<br /> 「現実だ。なんなら確かめてやる」<br />  頬を抓られ、痛みがくる。紛れもない本物の痛み……って、<br /> 「いひゃい、いひゃい! いい加減にひなひゃい!」<br /> 「ぷっ……なにマヌケな声をだしてんだ」<br />  このバカ……痛くて、涙が出ちゃうじゃない。バカキョン……バカぁ……。<br /> 「お、おいハルヒ。泣くなって、悪かったって」<br />  ほんとにバカね。救いようがないわ。うれしくて泣いてるのに気付かないなんてバカの極みよ。<br />  でも、うれしかったらやっぱり笑いたいわ。だからあたしはこう言うの。<br /> 「許してあげるからキスしなさい」<br />  そうするとね、多分キョンはしてくれるのよ。いつものセリフと一緒に。<br /> 「またお前はいきなり……やれやれ」<br />  やっぱり。あたしは目を閉じて、触れ合う唇の感触を大事にした。<br />  あたしの気持ちを一番に感じ取ってくれる魔法をつかう、魔法遣いの彼氏。そんなキャッチフレーズも面白いわね。<br />  あたしがそんなくだらない冗談を考えていると、唇が離れた。<br /> 「これでいいよな。さぁ、教室に行くぞ」<br /> 「ふふん、忘れてるみたいね。さぁ、行くわよ! 学校は遅れても構わないわ!」<br />  あたしはそう言って、キョンの手を強く握って走り出した。<br />  キョンが何やら喚いてるのも無視して、笑顔で部室と学校を後にした……。<br /> <br /> <br />  それで、今に至るんだけど……。<br /> 「ハルヒ、食わないのか? お前から誘っといて……」<br /> <br />  今日はゆっくりと食べたい気分なの!<br />  彼氏、かぁ……。どう接すればいいのかしら? 今まで通りでいいのよね?<br />  あたしはゆっくりと食事を口に運びつつ、ずっと考えていた。……あれ? もう食べる物が無い。<br /> 「それがお前のゆっくりか。人並み以上には変わりないな。……学校に行くか」<br />  まだ何にも考えてない! 普通は嫌よ、普通は! あたしは普通の付き合いじゃ満足できないんだから!<br />  普通にしたら、今までフってきた男達と何一つ変わりないわ!<br />  谷口とかと同レベルになっちゃダメ!<br /> 「ハルヒ、勘定。今日はお前の奢りなんだろ?」<br />  わかってるわよ、今から済ませるから!<br />  あたしは乱暴にお金を店員に渡し、会計を済ませて外で待つキョンと合流した。<br /> 「ごちそーさん」<br />  ……はいはい。行きましょ。<br />  顔が見れない恥ずかしい! どうすりゃいいのよ、あたし!<br />  キョンの前を歩いていると、後ろから手を繋がれた。しかも指と指をしっかり絡ませるアレよ。<br /> 「俺の彼女だろ? 同じ歩幅で、同じ速さで歩こうぜ」<br />  なんでこんなに恥ずかしいセリフをサラッと言えるのよ! ……ま、いっか。<br />  これでいいわ。決めた、あたしはキョンに合わせてやろうじゃない。二人でいる時の主導権はくれてやるわ。<br />  それじゃあ普通のカップルになるんじゃないかって? ふふん、甘いわね。<br />  今、気付いたのよ。キョンといるだけであたしにとっては特別なんだから!<br />  だから、やってることは普通でもいいのよ。……幸せだし。<br /> 「今度は遅すぎる、自分の足で歩け!」<br />  キョンのちょっと怒ったような声に、あたしは笑顔を浮かべて答えた。着いてこさせるのはもう終わりよ。これからは……。<br /> 「キョン、しっかりとあたしを引っ張って行きなさい!」<br /> <br /> <br /> おわり</p>

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