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「フレンドリー・グッドバイ」(2007/02/07 (水) 17:43:22) の最新版変更点
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傘を忘れ雨にうたれた。<br>
エラーを検出。<br>
評判の本が面白くなかった。<br>
エラーを検出。<br>
彼が涼宮ハルヒと話している。<br>
エラーを検出。<br>
彼がわたしの方を見る。<br>
エラーを検出。<br>
エラー、エラー、エラー……。<br>
エラーが許容範囲を上回る速度で蓄積する。このままでは昨年の12月19日の二の舞い。<br>
あるいはもっと悪い可能性もある。<br>
わたしの役目は涼宮ハルヒの観察及び彼女と彼の保全。<br>
わたしはそのために造られた思念体の『道具』。観察は別の端末でもできる。<br>
そしてわたしの中のエラーは致命的なバグを引き起こす。<br>
だから情報統合思念体にわたしの有機情報連結の解除を要請した。<br>
それが却下される。嬉しかった。……嬉しい?<br>
<br>
<br>
日増しにエラーがたまっていく。<br>
もはや時間は残されていない。<br>
ある日わたしは二人の人を放課後の教室に呼び出した。<br>
一人目は彼。夕日を背に受けて立つわたしに彼が声をかける。<br>
わたしは何も言わずにナイフを構えた。<br>
聴覚の機能を停止する。<br>
声を聞いてはいけない。<br>
殺さないように彼ギリギリの空を裂く。<br>
それでも彼にはわたしが本気としか見えないはずだ。<br>
夕日を背に受けて立つわたしに彼が声をかける。<br>
わたしは何も言わずにナイフを構えた。<br>
聴覚の機能を停止する。<br>
声を聞いてはいけない。<br>
殺さないように彼ギリギリの空を裂く。<br>
それでも彼にはわたしが本気としか見えないはずだ。<br>
二回、三回と襲いかかる。 手元がくるって一筋の赤い線が描かれる。いけない。<br>
再度彼に意識を集中する。その目に浮かぶ絶望がさらにエラーを生む。<br>
また新たな傷を彼につけてしまう。<br>
そのとき感知した。<br>
彼に訪れる救いを。わたしに訪れる破滅を。<br>
教室の扉が開き、彼女が、涼宮ハルヒが現れた。<br>
怒髪天を衝く、これほど状況と合致する言い回しがあることに感動を抱いた。<br>
そして彼女からほとばしる情報の奔流。<br>
できることなら、お別れを言いたかった。けれど、その間もなくわたしは消えた。<br>
<br>
<br>
いや、消えたはずだった。<br>
なのにここは……?<br>
途端に目の奥を何かが刺激する。<br>
わたしは自分の心がエラーで満たされているのをみつけた。<br>
けれどわたしに危機感はなかった。<br>
そこにあるのは――。<br>
わたしにとっての大切な場所。<br>
ゆっくりと辺りを見渡す。ちょうど誰かが入ってきた。<br>
それは彼だった。<br>
ぼんやりとした顔で歩いている。彼の視線がわたしを向く。<br>
しかしそれはすぐ反らされた。彼はわたしを知らない。<br>
わたしは涙をこらえて笑顔で小さく手を振った。見えるけれど見えない彼に。<br>
それは友好的なさようなら。<br>
<br>
<br>
図書館をでて街に行き、射す陽射しの中、わたしは消えていった。<br>
太陽を浴びて溶けてゆく雪のように。<br>
――さようなら。<br>
FIN