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プレゼント 」(2007/02/06 (火) 23:03:00) の最新版変更点

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<br>  ひい……ふう……みい……。はぁ……一年間貯めて5000円かぁ……。<br>  動物の形の貯金箱を目の前に、大きな溜息が出ちゃった。<br>  明日はキョンくんの誕生日。わたしは去年からこの日のために貯金してたの。<br>  5000円で何が買えるかなぁ……。そもそも、キョンくんが欲しいと思う物がわからない。<br>  かと言って、相談する相手もいないの。<br>  ミヨキチはライバルだし、ハルにゃんも多分そう。みくるちゃんも……。有希はよくわかんない。<br>  本当は古泉くんを頼りたいんだけど、キョンくんがいないから連絡先がわからない。うーん……どうしよ……。<br> 「ただいま」<br> 「お邪魔します」<br>  あ、ちょうどいい時にキョンくんが帰ってきたみたい。……あれ? 声が一つ多かった気がする……。<br>  自分の部屋から顔を出して廊下を覗くと、キョンくんの後ろに国木田くんがいた。<br>  キョンくんの、中学校の時からのお友達。だけど、なんだか久しぶりに見たなぁ。<br> 「久しぶり、妹ちゃん」<br>  優しく笑いかけてくる国木田くんに少しだけ頭を下げて挨拶をして、もう一度貯金箱の前に座った。<br>  どうしよう……。<br> 「おい、ちょっと飲み物買ってくるから。隣りに国木田がいるけど……気にすんな」<br>  いきなりドアを開けてキョンくんはそう言った。……って、お金見られちゃマズいじゃん!<br> 「キョンくん! い、いきなり開けないでよ……あ、わたしコーラ!」<br>  体でお金を隠しながらそう言ったら、「やれやれ」って言いながらキョンくんは出て行った。<br>  もう……いつまでも子ども扱いするんだもん。わたしだって部屋を勝手に見られたくないのに。<br> <br>  そういえば、国木田くんは隣りの部屋に残ってるんだっけ……キョンくんと付き合いが長いから欲しい物とか知ってるかなぁ?<br> 「国木田くーん……」<br>  ちょこっとだけキョンくんの部屋のドアを開けて、国木田くんに声をかけてみる。話すのって久しぶりだなぁ。<br> 「あ、妹ちゃん。どうしたんだい?」<br> 「えっとね、キョンくんが欲しがってる物ってなにかなぁ?」<br> 「キョンが欲しがってる物? そうだなぁ……」<br>  しばらく考える素振りをしたあと、思いだしたように国木田くんは口を開いた。<br> 「あー、そういえば静かな日常が欲しいとか言ってたね。物じゃないけど、これくらいしか聞かなかったよ」<br>  『静かな日常』なんて用意出来る物じゃないよぉ……。お金で買えない物じゃダメだよ。<br> 「そっか、キョンの誕生日だね? キョンなら心がこもってれば何でもよろこぶと思うよ」<br>  そう……なのかな? わたしからでも、心がこもってれば良いのかな?<br> 「キョンはいいね。妹ちゃんがこんなに悩んでまでプレゼントくれるんだから」<br>  なんだかニヤニヤって笑いながら国木田くんがわたしを見てる。バレてないよね?<br> 「国木田くん、ありがとっ!」<br>  わたしは素早くドアを閉めて、自分の部屋のベッドに飛び込んだ。<br>  心がこもってれば……かぁ。わたしの心……気持ち……大好き……。<br> 「おい、コーラ買ってきたぞ。ほれ」<br>  うわわっ! 勝手に入らないで……って、コーラ投げないでよっ!<br> 「大丈夫だ、飲めないわけじゃない」<br>  キョンくんはちょこっと笑って、すぐにドアの向こうに消えていった。びっくりしたなぁ、もう……。<br>  心を込めたプレゼント。やっぱり手作りかな? でも、まともに作れる物なんて無いよ。<br> <br>  キョンくんって、いつも疲れてるから静かな日常が欲しいのかなぁ? そうだとしたら、疲れが取れそうな物を渡せばいいよね。<br>  そして、それにわたしの気持ちを込めよう。キョンくん大好きだよーって。<br>  そうと決まればお買い物! キョンくん、わたし出かけてくるねー!<br> 「晩飯までには帰るんだぞ、いいな?」<br> 「はーい!」<br>  勢いよく家を出て、行き先を決めると、わたしは走り始めた。<br>  別に急ぐ必要は無いんだけど、なんだか楽しくて勝手に走っちゃうの。<br>  キョンくんのためのお買い物、初めてかも。<br> <br> <br>  外から帰って玄関で靴を脱ぐ。国木田くんの靴は無いし、もう帰ったみたい。<br>  わたしの手には、甘いお菓子と枕がある。これで少しでも疲れを取ってねっていうプレゼントなの。<br>  これを日付が変わるのと一緒に渡そう。誰よりも早く、わたしがキョンくんの一番になるんだもん。<br> 「ただいまー!」<br> 「おかえり。ご飯食べるわよ」<br>  おかーさんの声に迎えられたけど、一度部屋に戻ってプレゼントを置いて食卓に向かった。<br>  キョンくん驚かせるため、明日になるまでは絶対に隠しとくんだもん。<br>  わたしがご飯を食べ始めると、キョンくんが声をかけてきた。<br> 「なぁ、どこに行ってたんだ? こんな時間まで珍しいな」<br> 「えへへー、秘密だよ。わたしだってもう一人前の女の子なんだよ? 秘密にしたいこともあるんだもん」<br> 「む……そ、そうか。兄ちゃんは少し悲しいぞ……」<br>  大丈夫だよ、悲しいのはあと少しだけだから。もう何時間もすれば、プレゼントをもらってうれしくなるから。<br>  えへへへ、ちゃんと気持ちを込めたから喜んでくれるよね? 楽しみだなぁ……。<br> <br>  大好きなキョンくんの、久しぶりに笑う顔を想像したらわたしの顔もニヤけてきちゃうよ。<br>  お風呂に入ってても、お部屋で漫画を読んでても、なんでだろう……顔が笑っちゃう。えへへへへ……。<br>  あと少し、あと少しで日付が変わる。今日はなんだか眠くない。<br>  興奮してるのかな? なんか、わたし自身が変になってるみたい。<br>  ……あと5分。もう、行ってもいいよね? 絶対に喜んでくれるよね?<br>  なんだか、少しだけ不安になっちゃうかも……。だけど、行って気持ちを伝えないとドキドキが止まらないよ。<br>  それじゃあ、行こうかな。もう、1分もないからね。<br>  わたしはキョンくんの部屋の前に立って大きく深呼吸をして、ドアを開けた。<br> 「キョンくん! お誕生日おめで……と……う……」<br>  部屋の中は真っ暗。キョンくんは寝てるみたい。全然考えてなかった……。<br>  もう、寝るの早いよ。起きて待ってたわたしがバカみたいだよぉ……。<br>  しょうがないから、枕元にプレゼントを置いとこう。サンタさんだよー……なんちゃって。<br>  うーん……キョンくんって寝てても苦しそうな顔してる。そんなに疲れてるのかなぁ?<br>  あ、でも疲れてるってことは何しても起きないよね?<br>  プレゼントのお礼を今のうちにもらっとこう。えへへ、ごめんねキョンくん。<br>  ほっぺ……口でもいいよね、寝てるんだし。んー……ちゅっ。<br>  わたしのファーストキスはキョンくん。いい思い出ができたよっ! ありがと!<br>  それじゃあ、おやすみなさーい。<br>  後ろを向いて歩き始めた時、何かに掴まれちゃった。……起こしちゃった?<br> 「あんな大声でドアを開けられたら誰でも起きるぞ」<br> <br>  キョンくんは、わたしのパジャマを掴んだまま起き上がった。もしかして……うわぁ……恥ずかしいよぅ……。<br> 「寝てるうちに実の兄にキスか。なかなか面白い趣味をしてるな、妹よ」<br>  ち、違うもん! ただプレゼントを渡しにきただけだもん!<br> 「プレゼントはありがとな。本当にうれしい……が、今のは忘れてやる。もう二度とするんじゃないぞ」<br>  え……? それって、わたしの大好きなキョンくんとファーストキスをしたことを忘れろってことだよね。<br>  絶対やだ。そんなのやだもん。わたしは好きなの。キョンくんが好きなの!<br> 「それは無理だよ。だって……」<br>  わたしはキョンくんに抱きついて、もう一回キスをした。さっきもだったけど……柔らかいなぁ……。<br> 「おい、バカ! 何しやがる!」<br>  女の子にバカって言うなんてひどいと思うんだけどなぁ。あ、そんな場合じゃないって? そうだよね。<br> 「わたしはキョンくんが大好きだもん! だから、何回も何回もしちゃうもん!」<br> 「あー、わかったわかった。お前が俺を好きって言うのは何回も聞いた。次は何を買って欲しいんだ?」<br>  キョンくんは誤解してる。わたしが何か買ってほしくて大好きって言ってるんだと思ってるみたい。<br>  違うんだよ? 今日は妹としての大好きじゃなくて、女の子としての大好きなの。<br>  だからね、わかってくれるまで何回も何回も言っちゃうもん。<br> 「本気だもん。大好きだよ、キョンくん! ……ちゃんと答えてよ!」<br>  困って、困って、困って答えてよ。簡単に考えちゃダメ。だって、わたしの初めての告白なんだから。<br>  別にわたしを好きじゃなくてもいいよ? それはキョンくんの気持ちだもん。<br> <br>  だけどね、妹だからって答えないのだけは許さないもん。そんなことしたら、ずっと喋ってあげないから。<br> 「……好きだぞ。好きだけど付き合えない。そういう意味の『好き』だ」<br>  ……なんだか、難しいことを言ってるみたいだけど言いたいことはわかる。わたしはフラれちゃったみたい。<br> 「だからな、俺に彼女が出来るまでは……ちょっとだけなら行き過ぎたスキンシップも許してやらんでもない」<br>  えっと……よくわかんない。もっとわかりやすく言ってほしいなぁ。<br>  つまり、付き合えないけどキスとかはしちゃっていいのかな?<br> 「……まぁ、これくらいならしてやるさ。兄としてのサービスだ」<br>  そう言うと、キョンくんはわたしを抱いて、ほっぺにキスしてくれた。<br> 「言っておくが、ロリコンでも妹趣味でもないからな。お前の気持ちを思って……」<br>  わかってる、わかってるよキョンくん。これからは『お兄ちゃん』としてしか見ないから。<br>  その代わり、甘えたり、ベタベタすることが多くなっちゃうかも。<br> 「それくらいなら許す。ただし、俺が許可する範囲でならな」<br>  抱きついたまま、キョンくんの胸におでこをくっつけてみる。なんだか優しくて変な感じ。<br>  暖かくて、安心できて、気持ちいい。なんだか一気に眠くなってきちゃった。<br>  今日は、一緒に寝ようね? それくらいいいよね?<br> 「あぁ。もう子どもが起きてるような時間じゃないんだ。早く寝ろ」<br>  そんなキョンくんの声を聞いて、わたしは目を閉じた。キョンくんと長く一緒にいたいから、明日は寝坊しちゃうかも。……いいよね。<br>  わたしのファーストキスは出来たけど、同時に初めての失恋も経験しちゃった。<br>  なんだか、わたしも大人の女になった気分だなぁ。でもね、気分だけ。<br>  まだまだわたしは子どもでいい。だって……しばらくはキョンくんに甘えたいんだもん!<br>  キョンくんに彼女が出来ちゃうその日までは子ども。だから、今のうちにたくさんこの言葉を言うの。<br> 「キョンくん、大好き!」<br> <br> <br> おわり<br> <br>

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