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もりのこいずみくん」(2020/08/21 (金) 02:04:08) の最新版変更点

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<dl><dd> もりのこいずみくん<br />  <br />  その日、俺はどういうわけか見知らぬ森林を彷徨っていた。<br />  気がつくと木こりのような格好をして、ぶどう酒とパンを持っていたりなんかして、<br />  そして、奴は突然に現れたんだ。全裸で。<br /><br /> 「やあ、いい天気ですね」<br /> 「お前は誰だ」<br /> 「僕はこいずみくんです」<br /> 「何者だ」<br /> 「森の精です」<br /> 「なぜ全裸なんだ」<br /> 「ほら一応精霊ですし」<br /> 「なら余計に醜いもの晒すなよ」<br /> 「お嫌ですか?」<br /> 「そう真っ向訊かれてもな……。で、何やってるんだ」<br /> 「森林浴ですよ。どうですかあなたも」<br /> 「帰る」<br /><br /> 「待ってください」<br /> 「何だ」<br /> 「あなたが落としたのはこの金の斧ですか? 銀の鉈ですか?」<br /> 「落としてねぇよ! つうかなんで片方鉈なんだよ!」<br /> 「圭一くんはね……転校、しちゃったの」<br /> 「世界違うだろ!」<br /> 「はまってましてね最近」<br /> 「やっぱり帰る」<br /> 「だから待ってくださいってば」<br /> 「服をつかむな! 全裸で近くに寄るな!」<br /> 「では続いての商品はこちら、アヴフレックス!」<br /> 「いつの間に! 全裸で腹筋鍛えるなよ!」<br /> 「ん~どうだいナンシー? 最高よボブ♪」<br /> 「一人芝居かよ……しかも女側が使ってるのか」<br /> 「ジャパネットたか○なら金利手数料一切かかりません!」<br /> 「急に日本に帰ってくるな!!!」<br /><br /> 「まぁお茶でも飲んでいきませんか? いい天気ですし」<br /><br />  無駄に爽やかだったのでどういうわけか肯いてしまった俺だった。<br /><br /> 「どうぞ、お掛け下さい」<br /> 「すまんな」<br /> 「僕が毎日座ってる椅子です」<br /> 「ぶはっ! 余計な事を言うな! 普通使ってないほうに座らせるだろ!」<br /> 「毎日両方に座ってますよ?」<br /> 「……まぁいい。お茶を出してくれるのか?」<br /> 「えっ……」<br /> 「どうした急に」<br /> 「今月ピンチなのに……」<br /> 「そうなのか?」<br /> 「観鈴ちん、ぴんち」<br /> 「だぁぁ気持ち悪いからやめろ! 世界観を跨ぐな!」<br /> 「ぶっちゃけた話森の精霊って貧乏なんですよ」<br /> 「そうなのか」<br /> 「えぇ、木の実とかで飢えをしのいでます」<br /> 「えらい切実だな……」<br /> 「くんくん」<br /> 「ん?」<br /><br /> 「何だかいい匂いがしますね。くんくん」<br /> 「何のことだ。俺は何も持っちゃいないぞ」<br /> 「いいえ。僕の勘が正しければぶどう酒とパンがくんくん」<br /> 「ドンピシャすぎんだろ!」<br /> 「こう見えて僕超能力者なんですよ」<br /> 「暴露唐突だろ!」<br /> 「透視できるんですよねぇくんくん」<br /> 「こら、どこ嗅いでるんだよ」<br /> 「森の精霊さんがあなたの股間をチェーック!」<br /> 「すな!!!」<br /><br />  ――色々あって、<br /><br /> 「さぁ、それじゃぶどう酒でお祝いしましょう」<br /> 「俺のなんだが!」<br /><br /> 「どうですかこの森は」<br /> 「あぁ、なかなかいいんじゃないか」<br /> 「売地なんですけどね」<br /> 「不法侵入かよ!」<br /> 「ここまできたら共犯です」<br /> 「俺もかよ!」<br /> 「一緒に呑んだ仲じゃないですか」<br /> 「誤用の確信犯かてめぇは! つか酒俺のだし!!」<br /> 「あなた未成年でしょう? いいんですかお酒なんか持ってて」<br /> 「自分自分自分!!!!」<br /> 「僕はほら。精霊さんですから!」<br /> 「ターンしてポーズ決めながら喋るな!」<br /> 「あ、ほらこの土地の所有者がこっちに来ますよ」<br /> 「逃げるぞこのやろう!!!」<br /><br /> 「いやぁ、たまに走るといいですねぇ」<br /> 「にこやかに言うな! 全裸で!」<br /> 「あ」<br /> 「のわああ! 銃持ってるのか相手は!」<br /> 「服着てない分僕の方が回避率上ですね」<br /> 「どんな理屈だ! つかもっと走れ!」<br /> 「実は僕飛べるんですけどね」<br /> 「なぜそれを早く言わない!!!」<br /> 「誰かを持ち上げることはできないんですよはっはっは」<br /> 「使えねぇぇえええ!!!」<br /> 「それじゃ僕はこの辺で」<br /> 「一人だけ飛ぶな! 薄情者!」<br /> 「お酒美味しかったですよ。そっらをじゆうに、とっびたーいなー♪」<br /> 「待て待て待て待てぇぇえええ!」<br /> 「はい! こいずみくん! あっはははははははは」<br /> 「待て! そんなステージアイドルっぽく宙を舞うな!!!」<br /><br />  ……結局捕まってしまった。<br /><br /> 「あんたが不法侵入者なわけ? よかったわね狙撃されなくて」<br /><br />  これがまたなかなかの美人だった。というか女だったことがまず驚きである。<br /><br /> 「いや、これにはマリアナ海溝より深い理由があってだな」<br /> 「何よ。つまらない理由だったら即刻死刑よ」<br /> 「お前は森の妖精さんを信じるか」<br /> 「はぁ!? あんた何言ってんの?」<br /> 「あいつのせいなんだよ。あいつがいなきゃ俺はとっくにこっからトンz――!」<br /><br />  窓の外で、全裸の精霊が手を振っていた。<br /><br /> 「あいつめぇぇぇえええ!!」<br /> 「ちょ、どうしたのよ急に! っていうか待ちなさいあんた!」<br /> 「離せ! 離せ! 一発ぶん殴ってやる! あのインチキ精霊!!!」<br /><br /> 「窓の外って、何もいないじゃないの」<br /> 「へ? ……あ。あれぇぇぇえええっ!!?」<br /><br />  奴は瞬きする間に姿を消していた。こんちくしょう!!!<br /><br /> 「さぁ、幼稚なウソをついた罰を与えなきゃねぇ?」<br /> 「何か嬉しそうだなおm――!」<br /><br />  女の後ろで、全裸の精霊が無言で挨拶していた。<br /><br /> 「てめぇぇええええ!!!!」<br /> 「きゃっ! なによあんた! ……えぇい座れっ!!!」<br /> 「のわっ! だって精霊が!」<br /> 「はぁ? あんた頭おかしいんじゃないの?」<br /><br />  精霊は女が首を振るのに合わせて器用に後ろに回りこんでいる。ついでに浮いている。<br /><br /> 「お前の後ろにいるんだよ! さっきからずっと!」<br /> 「はぁ? ……いないじゃないのよ」<br /> 「だから前! 前!」<br /> 「ん。やっぱりいないじゃない!」<br /> 「だぁぁあああっ! このクソ精霊!」<br /> 「あんた、あたしを誤魔化して逃げようったってそうはいかないんだからね?」<br /><br />  精霊は横宙返りとか観音ポーズとか取っている。くそ忌々しい! つかモノが見えてるんだよ!!!<br /><br /> 「……そうだ! おいお前! この家に鏡はあるか?」<br /> 「あるけど、それがどうしたのよ?」<br /> 「鏡の前に立ってみろ。そうすれば全てが分かるはずだ!!!」<br /> 「分かったわよ。……ちょっと待ってなさい」<br /> 「おう。……って何でお前ここに残ってんだよ! あいつの後つけてるんじゃないのかよ!」<br /> 「お久しぶりです」<br /> 「にこやかに言うな! つうか俺をここから逃がせ!」<br /><br /> 「はっきり言いましょう。これは異常事態です」<br /> 「んなこた言われなくとも分かってるんだよこの変態精霊!」<br /> 「……///」<br /> 「何で照れるんだよ!」<br /> 「僕たち、通じ合って――」<br /> 「ねぇよ!!!」<br /><br /> 「ちょっとあんた! 何にもないじゃないの……って、誰あんた?」<br /> 「やあこんにちは。僕は森の精霊です。はっははは」<br /><br />  注釈しておくが、精霊、もち、全裸である。<br />  男勝りとはいえ、相手はうら若き女性である。<br /><br /> 「あ、あんた……」<br /> 「なんでしょうか?」<br /><br />  終わった……色々な意味で。そう思った。<br /><br /> 「格好いいわ! 最高よ! 何者なの!?」<br /> 「僕は森の精霊ですよあっははははははははは」<br /> 「ちょ、えぇぇぇえ!? えぇぇぇええええええええええええええええっ!!!!??」<br /><br />  色々あって――、<br /><br /> 「そう。そういうことだったのね」<br /> 「えぇ、全く彼ときたらそそっかしくてあっははは」<br /> 「釈然としねぇ……」<br /> 「それで? 精霊さんはあたしの森を守ってくれてるわけ?」<br /> 「そうなりますね。彼のような不届きな侵入者を捕らえたりしてるんですよ」<br /> 「ちょ、自分自分! 精霊自分は!!!」<br /> 「何よあんた。精霊さんにケチつけるつもりなの?」<br /> 「いやだってお前こいつは……」<br /> 「ここで質問です」<br /> 「何? 精霊さん」<br /> 「……」<br /> 「あなたが落としたのは、この金の斧ですか? 銀の鉈ですか?」<br /> 「またそれかよ!!!」<br /><br />  日が暮れる頃――、<br /><br /> 「それじゃぁねー精霊さーん!」<br /> 「はい。今日はどうもごちそうさまでした。はははっ」<br /> 「腑に落ちねぇ……」<br /> 「あんた」<br /> 「何だよ?」<br /> 「……精霊さんと、また来ればいいわよ」<br /> 「……」<br /> 「何よ?」<br /> 「いや! べ、別に何でもねぇよ!」<br /> 「さぁ! それじゃぁ行きましょうか。今夜はどこに泊まりますか?」<br /> 「泊まる……って、え? え?」<br /> 「精霊ぇぇぇええ!!!! 何言ってんだてめぇ!!!」<br /> 「あんた……へぇ。そういうコトなの」<br /> 「誤解だ! 俺はヘテロだ! 完全なるミスアンダスタンディングだっ!!!」<br /> 「やっぱ死刑よ死刑!!!」<br /><br /> 「のぁぁぁああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」<br /><br /><br />  ……ふふ。<br />  僕はもりのこいずみくん。精霊さんです。<br />  次は誰をしあわせにしてあげようかな?<br /><br /><br />  (終われひっこめ消えろっ!!!)<br /><br /><br /></dd> </dl>
<dl> <dd> もりのこいずみくん<br />  <br />  その日、俺はどういうわけか見知らぬ森林を彷徨っていた。<br />  気がつくと木こりのような格好をして、ぶどう酒とパンを持っていたりなんかして、<br />  そして、奴は突然に現れたんだ。全裸で。<br /> <br /> 「やあ、いい天気ですね」<br /> 「お前は誰だ」<br /> 「僕はこいずみくんです」<br /> 「何者だ」<br /> 「森の精です」<br /> 「なぜ全裸なんだ」<br /> 「ほら一応精霊ですし」<br /> 「なら余計に醜いもの晒すなよ」<br /> 「お嫌ですか?」<br /> 「そう真っ向訊かれてもな……。で、何やってるんだ」<br /> 「森林浴ですよ。どうですかあなたも」<br /> 「帰る」<br /> <br /> 「待ってください」<br /> 「何だ」<br /> 「あなたが落としたのはこの金の斧ですか? 銀の鉈ですか?」<br /> 「落としてねぇよ! つうかなんで片方鉈なんだよ!」<br /> 「圭一くんはね……転校、しちゃったの」<br /> 「世界違うだろ!」<br /> 「はまってましてね最近」<br /> 「やっぱり帰る」<br /> 「だから待ってくださいってば」<br /> 「服をつかむな! 全裸で近くに寄るな!」<br /> 「では続いての商品はこちら、アヴフレックス!」<br /> 「いつの間に! 全裸で腹筋鍛えるなよ!」<br /> 「ん~どうだいナンシー? 最高よボブ♪」<br /> 「一人芝居かよ……しかも女側が使ってるのか」<br /> 「ジャパネットたか○なら金利手数料一切かかりません!」<br /> 「急に日本に帰ってくるな!!!」<br /> <br /> 「まぁお茶でも飲んでいきませんか? いい天気ですし」<br /> <br />  無駄に爽やかだったのでどういうわけか肯いてしまった俺だった。<br /> <br /> 「どうぞ、お掛け下さい」<br /> 「すまんな」<br /> 「僕が毎日座ってる椅子です」<br /> 「ぶはっ! 余計な事を言うな! 普通使ってないほうに座らせるだろ!」<br /> 「毎日両方に座ってますよ?」<br /> 「……まぁいい。お茶を出してくれるのか?」<br /> 「えっ……」<br /> 「どうした急に」<br /> 「今月ピンチなのに……」<br /> 「そうなのか?」<br /> 「観鈴ちん、ぴんち」<br /> 「だぁぁ気持ち悪いからやめろ! 世界観を跨ぐな!」<br /> 「ぶっちゃけた話森の精霊って貧乏なんですよ」<br /> 「そうなのか」<br /> 「えぇ、木の実とかで飢えをしのいでます」<br /> 「えらい切実だな……」<br /> 「くんくん」<br /> 「ん?」<br /> <br /> 「何だかいい匂いがしますね。くんくん」<br /> 「何のことだ。俺は何も持っちゃいないぞ」<br /> 「いいえ。僕の勘が正しければぶどう酒とパンがくんくん」<br /> 「ドンピシャすぎんだろ!」<br /> 「こう見えて僕超能力者なんですよ」<br /> 「暴露唐突だろ!」<br /> 「透視できるんですよねぇくんくん」<br /> 「こら、どこ嗅いでるんだよ」<br /> 「森の精霊さんがあなたの股間をチェーック!」<br /> 「すな!!!」<br /> <br />  ――色々あって、<br /> <br /> 「さぁ、それじゃぶどう酒でお祝いしましょう」<br /> 「俺のなんだが!」<br /> <br /> 「どうですかこの森は」<br /> 「あぁ、なかなかいいんじゃないか」<br /> 「売地なんですけどね」<br /> 「不法侵入かよ!」<br /> 「ここまできたら共犯です」<br /> 「俺もかよ!」<br /> 「一緒に呑んだ仲じゃないですか」<br /> 「誤用の確信犯かてめぇは! つか酒俺のだし!!」<br /> 「あなた未成年でしょう? いいんですかお酒なんか持ってて」<br /> 「自分自分自分!!!!」<br /> 「僕はほら。精霊さんですから!」<br /> 「ターンしてポーズ決めながら喋るな!」<br /> 「あ、ほらこの土地の所有者がこっちに来ますよ」<br /> 「逃げるぞこのやろう!!!」<br /> <br /> 「いやぁ、たまに走るといいですねぇ」<br /> 「にこやかに言うな! 全裸で!」<br /> 「あ」<br /> 「のわああ! 銃持ってるのか相手は!」<br /> 「服着てない分僕の方が回避率上ですね」<br /> 「どんな理屈だ! つかもっと走れ!」<br /> 「実は僕飛べるんですけどね」<br /> 「なぜそれを早く言わない!!!」<br /> 「誰かを持ち上げることはできないんですよはっはっは」<br /> 「使えねぇぇえええ!!!」<br /> 「それじゃ僕はこの辺で」<br /> 「一人だけ飛ぶな! 薄情者!」<br /> 「お酒美味しかったですよ。そっらをじゆうに、とっびたーいなー♪」<br /> 「待て待て待て待てぇぇえええ!」<br /> 「はい! こいずみくん! あっはははははははは」<br /> 「待て! そんなステージアイドルっぽく宙を舞うな!!!」<br /> <br />  ……結局捕まってしまった。<br /> <br /> 「あんたが不法侵入者なわけ? よかったわね狙撃されなくて」<br /> <br />  これがまたなかなかの美人だった。というか女だったことがまず驚きである。<br /> <br /> 「いや、これにはマリアナ海溝より深い理由があってだな」<br /> 「何よ。つまらない理由だったら即刻死刑よ」<br /> 「お前は森の妖精さんを信じるか」<br /> 「はぁ!? あんた何言ってんの?」<br /> 「あいつのせいなんだよ。あいつがいなきゃ俺はとっくにこっからトンz――!」<br /> <br />  窓の外で、全裸の精霊が手を振っていた。<br /> <br /> 「あいつめぇぇぇえええ!!」<br /> 「ちょ、どうしたのよ急に! っていうか待ちなさいあんた!」<br /> 「離せ! 離せ! 一発ぶん殴ってやる! あのインチキ精霊!!!」<br /> <br /> 「窓の外って、何もいないじゃないの」<br /> 「へ? ……あ。あれぇぇぇえええっ!!?」<br /> <br />  奴は瞬きする間に姿を消していた。こんちくしょう!!!<br /> <br /> 「さぁ、幼稚なウソをついた罰を与えなきゃねぇ?」<br /> 「何か嬉しそうだなおm――!」<br /> <br />  女の後ろで、全裸の精霊が無言で挨拶していた。<br /> <br /> 「てめぇぇええええ!!!!」<br /> 「きゃっ! なによあんた! ……えぇい座れっ!!!」<br /> 「のわっ! だって精霊が!」<br /> 「はぁ? あんた頭おかしいんじゃないの?」<br /> <br />  精霊は女が首を振るのに合わせて器用に後ろに回りこんでいる。ついでに浮いている。<br /> <br /> 「お前の後ろにいるんだよ! さっきからずっと!」<br /> 「はぁ? ……いないじゃないのよ」<br /> 「だから前! 前!」<br /> 「ん。やっぱりいないじゃない!」<br /> 「だぁぁあああっ! このクソ精霊!」<br /> 「あんた、あたしを誤魔化して逃げようったってそうはいかないんだからね?」<br /> <br />  精霊は横宙返りとか観音ポーズとか取っている。くそ忌々しい! つかモノが見えてるんだよ!!!<br /> <br /> 「……そうだ! おいお前! この家に鏡はあるか?」<br /> 「あるけど、それがどうしたのよ?」<br /> 「鏡の前に立ってみろ。そうすれば全てが分かるはずだ!!!」<br /> 「分かったわよ。……ちょっと待ってなさい」<br /> 「おう。……って何でお前ここに残ってんだよ! あいつの後つけてるんじゃないのかよ!」<br /> 「お久しぶりです」<br /> 「にこやかに言うな! つうか俺をここから逃がせ!」<br /> <br /> 「はっきり言いましょう。これは異常事態です」<br /> 「んなこた言われなくとも分かってるんだよこの変態精霊!」<br /> 「……///」<br /> 「何で照れるんだよ!」<br /> 「僕たち、通じ合って――」<br /> 「ねぇよ!!!」<br /> <br /> 「ちょっとあんた! 何にもないじゃないの……って、誰あんた?」<br /> 「やあこんにちは。僕は森の精霊です。はっははは」<br /> <br />  注釈しておくが、精霊、もち、全裸である。<br />  男勝りとはいえ、相手はうら若き女性である。<br /> <br /> 「あ、あんた……」<br /> 「なんでしょうか?」<br /> <br />  終わった……色々な意味で。そう思った。<br /> <br /> 「格好いいわ! 最高よ! 何者なの!?」<br /> 「僕は森の精霊ですよあっははははははははは」<br /> 「ちょ、えぇぇぇえ!? えぇぇぇええええええええええええええええっ!!!!??」<br /> <br />  色々あって――、<br /> <br /> 「そう。そういうことだったのね」<br /> 「えぇ、全く彼ときたらそそっかしくてあっははは」<br /> 「釈然としねぇ……」<br /> 「それで? 精霊さんはあたしの森を守ってくれてるわけ?」<br /> 「そうなりますね。彼のような不届きな侵入者を捕らえたりしてるんですよ」<br /> 「ちょ、自分自分! 精霊自分は!!!」<br /> 「何よあんた。精霊さんにケチつけるつもりなの?」<br /> 「いやだってお前こいつは……」<br /> 「ここで質問です」<br /> 「何? 精霊さん」<br /> 「……」<br /> 「あなたが落としたのは、この金の斧ですか? 銀の鉈ですか?」<br /> 「またそれかよ!!!」<br /> <br />  日が暮れる頃――、<br /> <br /> 「それじゃぁねー精霊さーん!」<br /> 「はい。今日はどうもごちそうさまでした。はははっ」<br /> 「腑に落ちねぇ……」<br /> 「あんた」<br /> 「何だよ?」<br /> 「……精霊さんと、また来ればいいわよ」<br /> 「……」<br /> 「何よ?」<br /> 「いや! べ、別に何でもねぇよ!」<br /> 「さぁ! それじゃぁ行きましょうか。今夜はどこに泊まりますか?」<br /> 「泊まる……って、え? え?」<br /> 「精霊ぇぇぇええ!!!! 何言ってんだてめぇ!!!」<br /> 「あんた……へぇ。そういうコトなの」<br /> 「誤解だ! 俺はヘテロだ! 完全なるミスアンダスタンディングだっ!!!」<br /> 「やっぱ死刑よ死刑!!!」<br /> <br /> 「のぁぁぁああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」<br /> <br /> <br />  ……ふふ。<br />  僕はもりのこいずみくん。精霊さんです。<br />  次は誰をしあわせにしてあげようかな?<br /> <br /> <br />  (終われひっこめ消えろっ!!!)<br /> <br />  </dd> </dl>

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