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笑顔の向く先」(2021/09/10 (金) 15:36:05) の最新版変更点

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 えっと……ど、どうしよう……。<br>  わたしは今、涼宮さんに押し倒された状態で部室にいます。もちろん、二人きり。<br> 「もう、いや……」<br>  そして、涼宮さんは泣いてます。どうしたらいいのか、わたしはわからない。<br>  ……なんでこんなことになっちゃったのかなぁ?<br> <br> <br>  わたしの知ってる未来は、SOS団はみんな幸せそうに暮らしていた。<br>  キョンくんは涼宮さんと、わたし達3人はそれぞれ幸せを見つけていた。<br>  ……でも、それが変わっちゃったのが三日前だった。<br> 「悪い、ハルヒ。お前とは付き合えない」<br>  嫌だけど監視・盗聴をしてた涼宮さんの告白シーンで、キョンくんはそう言った。<br> 「そ、そう。……なんで? あたしのこと、嫌い?」<br> 「嫌いじゃないけどな。好きでもない……って訳じゃないが、俺が中途半端な気持ちじゃ付き合いたくないんだ」<br> ――つまり、友達のままで――<br>  それがキョンくんの出した結論だった。<br>  もちろん、わたしの上の人達は慌てて、古泉くんの機関の人達も警戒した。<br>  ……でも、何も起きなかった。力が消えたわけじゃないみたいだけど。<br> <br>  多分、キョンくんにフラれちゃって、心が空虚になったんだと思う。失恋ってそんなものなんだもん。<br>  でも、次の日。涼宮さんは普段通りに学校に来た。そして、いつものように振る舞うように見せて、空元気を振りまいていた。<br>  そんな様子が、わたしは可哀相で見ていられなかった。……だけど、見なきゃダメなんだよね。<br> <br> 「付き合って……くれない?」<br> 「申し訳ありませんが……」<br> キョンくんにフラれた次の日、涼宮さんは古泉くんに告白した。<br>  たぶん、心に空いた穴を埋めたかったんだと思うんだけど……。<br> 「貴女のことはとても魅力的に感じます。……ですが、いろいろと事情がありまして……すみません」<br>  そして、古泉くんも涼宮さんをフった。理由はわからないけど。<br>  涼宮さん……何やってるんだろう……。<br> <br> 「キョンがダメだったから古泉。そして、次は俺か? 断るね。お前にゃ振り回されたくないしな」<br>  そして、さっき。この言葉と共に、谷口くんにもフラれちゃった。<br>  涼宮さんは、完全に空虚な、生気の無い顔立ちになって、部室に来た。<br>  その時、みんなは帰っていて、わたしは着替えてた。そこで、押し倒されちゃったの。……どうしよう。<br> <br> <br> 「あたしさ、そんなにダメな女かな? スタイルにも気を使ってるし、髪も綺麗にしてるのよ? ほら……」<br>  涼宮さんは、押し倒したわたしの手を掴み、髪、そして胸へと運んだ。<br> 「い、いいいえっ! 涼宮さんは羨ましいくらい素敵ですっ!」<br>  これは本心。わたしも、何度涼宮さんみたいになりたいって思ったかなぁ……。<br> 「……みくるちゃんみたいにかわいかったら、あたしも幸せになれたかも」<br> <br>  涼宮さんは、わたしの頬を撫でてきた。冷たい掌が、ヒンヤリ気持ちいい。<br> 「古泉くんも、谷口も……そして、バカキョンも。バカキョン……キョン……」<br>  とうとう、涼宮さんは涙が零れるくらいに泣き出して、その滴がわたしに当たり始めた。<br> 「なんでみんな……。あたしは幸せになれないの? これが、みんなに迷惑をかけてきた罰なの?」<br>  涼宮さんの心が不安定になってる。どうしよう……わたしは何をすればいいんだろう……。<br> 「ひぐっ……もう男なんかいい。……みくるちゃん、ずっとあたしといてね?」<br>  涼宮さんの顔が近付いてきて、わたしの唇と涼宮さんの唇は触れ合った。とても柔らかくて、震えてる。<br> 「涼宮さん……やめて下さい……お願いします……」<br>  そう言うしかなかった。だって、わたし達は女同士だから。<br> 「みくるちゃんも、あたしのこと嫌いなのね……」<br>  ち、ちが……。<br> 「いいの。あたし、そういう性格だもんね。あたしは必要ない人間なのよ」<br>  違いますよぉ……。<br> 「あーあ。また、一人ぼっちに戻っちゃうんだ……」<br> 「違いますっ!」<br>  わたしは、涼宮さんを抱き締めていた。だって、涼宮さんが悲しいことばかり言うから……。<br> 「無理しないでいいわよ。震えてるじゃない」<br>  涼宮さん……わたしだけは、ずっとあなたを好きでいますよ?<br>  そして、口付けた。涼宮さんの唇は、やっぱり柔らかくて、震えていた。<br> 「はぁ……。みくるちゃん……大好きぃ……」<br>  唇を離すと、涼宮さんはわたしにしがみついて、再び泣き始めた。<br> 「みんなキライ……もう、ずっと二人でいい……」<br>  ……え?<br> 「みくるちゃんと二人で、あいつらなんていないとこに行きたいな……」<br> <br>  ダメ、そんなこと言ったら……ダメですよ!<br>  このままじゃこの世界が消えちゃう。なんとかしなくちゃ。<br> 「だって、みんないなくちゃ楽しくないですよ? たった二人で生活しても……ほら、学校にいると楽しいですよね?」<br> 「あたしは楽しくない。去年まではよかったけど……もう、キョンや古泉くんに笑いかけたり出来ない」<br>  わたしも、人並みに危険を察知出来る。その本能が言ってる、このままじゃ世界が……って。<br> 「だからね、みくるちゃんと二人がいいの。ずっと一緒にいれるし、あたしのことも理解してくれる」<br>  わ、わたしは……何にも出来ないから、みんながいなくちゃ……。<br> 「大丈夫よ、あたしがぜーんぶしたげるから。だから……ずっと、あたしの笑顔の向く先になってね」<br> ……………………………<br>  その言葉を聞いた瞬間、わたしは暗闇に包まれ、すぐに明るくなった。<br>  そして、その世界は……。<br> <br> <br> 「おっはよー! みくるちゃん、今日もかわいいわっ! キスしちゃうんだから!」<br>  時間は、午前7時半。わたしは涼宮さんにキスされて、それから一緒に学校に向かうのが習慣になってる。<br> <br> 「あ、朝からやめて下さいっ! もう……人に見られちゃったらどうするんですかぁ?」<br> 「あたしは見られてもいいわ! それに、みんな知ってるわよ。『北高一の美少女カップル』なんて言われてるじゃない」<br>  この世界では、わたし達が付き合ってることが完全に自然になってる。<br>  それに、他にも違う点がある。涼宮さんが、無意識に拒絶したと思う、キョンくん、古泉くん、谷口くんはいなかった。<br>  長門さんは、普通の、静かでかわいい人間で、鶴屋さんは二人の共通の親友。<br>  未来とも連絡が取れない、普通の世界になっていた。<br> 「ねぇ、みくるちゃん。大丈夫? 元気ないわね……休もうか?」<br>  涼宮さんも能力はなくて、少しわたしに優しい。<br>  大丈夫ですよ、涼宮さん。わたしは元気です!<br> 「む~、それならいいわ。でね、涼宮さんはやめてって言ってるじゃない! 名前で呼んでよ、あたし達の仲でしょ!?」<br>  怒る時も、うれしそうにする涼宮さんを見るのはうれしい。でも、家族やキョンくん、古泉くんに会えないのは寂しいな……。<br>  それでも、わたしはわかっていた。元の世界に戻る術がないことを。<br>  だから、涼宮さんに選ばれたわたしは、涼宮さんと生きることにしよう。世界でただ一人、キョンくんと古泉くんを知る人間として。<br>  わたしの愛する涼宮さんと一緒に。決して一つにはなれないけど、彼女はわたしを愛してる。<br> だから、わたしも彼女を……。<br> 「みくるちゃん? いきなり黙っちゃってどうしたのよ?」<br>  でも、下の名前で呼ぶのは恥ずかしい。だからわたしはこう言います。<br> 「なんでもないですよ? 行きましょう、涼宮さん!」<br>  そして、怒りながら楽しそうに追いかけてくる涼宮さんから逃げながら、もう一つ呟いた。<br> 「バイバイ……お世話になった、わたしの世界の人達……」<br> <br> <br> おわり<br> <br>
<p> えっと……ど、どうしよう……。<br />  わたしは今、涼宮さんに押し倒された状態で部室にいます。もちろん、二人きり。<br /> 「もう、いや……」<br />  そして、涼宮さんは泣いてます。どうしたらいいのか、わたしはわからない。<br />  ……なんでこんなことになっちゃったのかなぁ?<br /> <br /> <br />  わたしの知ってる未来は、SOS団はみんな幸せそうに暮らしていた。<br />  キョンくんは涼宮さんと、わたし達3人はそれぞれ幸せを見つけていた。<br />  ……でも、それが変わっちゃったのが三日前だった。<br /> 「悪い、ハルヒ。お前とは付き合えない」<br />  嫌だけど監視・盗聴をしてた涼宮さんの告白シーンで、キョンくんはそう言った。<br /> 「そ、そう。……なんで? あたしのこと、嫌い?」<br /> 「嫌いじゃないけどな。好きでもない……って訳じゃないが、俺が中途半端な気持ちじゃ付き合いたくないんだ」<br /> ――つまり、友達のままで――<br />  それがキョンくんの出した結論だった。<br />  もちろん、わたしの上の人達は慌てて、古泉くんの機関の人達も警戒した。<br />  ……でも、何も起きなかった。力が消えたわけじゃないみたいだけど。<br /> <br />  多分、キョンくんにフラれちゃって、心が空虚になったんだと思う。失恋ってそんなものなんだもん。<br />  でも、次の日。涼宮さんは普段通りに学校に来た。そして、いつものように振る舞うように見せて、空元気を振りまいていた。<br />  そんな様子が、わたしは可哀相で見ていられなかった。……だけど、見なきゃダメなんだよね。<br /> <br /> 「付き合って……くれない?」<br /> 「申し訳ありませんが……」<br /> キョンくんにフラれた次の日、涼宮さんは古泉くんに告白した。<br />  たぶん、心に空いた穴を埋めたかったんだと思うんだけど……。<br /> 「貴女のことはとても魅力的に感じます。……ですが、いろいろと事情がありまして……すみません」<br />  そして、古泉くんも涼宮さんをフった。理由はわからないけど。<br />  涼宮さん……何やってるんだろう……。<br /> <br /> 「キョンがダメだったから古泉。そして、次は俺か? 断るね。お前にゃ振り回されたくないしな」<br />  そして、さっき。この言葉と共に、谷口くんにもフラれちゃった。<br />  涼宮さんは、完全に空虚な、生気の無い顔立ちになって、部室に来た。<br />  その時、みんなは帰っていて、わたしは着替えてた。そこで、押し倒されちゃったの。……どうしよう。<br /> <br /> <br /> 「あたしさ、そんなにダメな女かな? スタイルにも気を使ってるし、髪も綺麗にしてるのよ? ほら……」<br />  涼宮さんは、押し倒したわたしの手を掴み、髪、そして胸へと運んだ。<br /> 「い、いいいえっ! 涼宮さんは羨ましいくらい素敵ですっ!」<br />  これは本心。わたしも、何度涼宮さんみたいになりたいって思ったかなぁ……。<br /> 「……みくるちゃんみたいにかわいかったら、あたしも幸せになれたかも」<br /> <br />  涼宮さんは、わたしの頬を撫でてきた。冷たい掌が、ヒンヤリ気持ちいい。<br /> 「古泉くんも、谷口も……そして、バカキョンも。バカキョン……キョン……」<br />  とうとう、涼宮さんは涙が零れるくらいに泣き出して、その滴がわたしに当たり始めた。<br /> 「なんでみんな……。あたしは幸せになれないの? これが、みんなに迷惑をかけてきた罰なの?」<br />  涼宮さんの心が不安定になってる。どうしよう……わたしは何をすればいいんだろう……。<br /> 「ひぐっ……もう男なんかいい。……みくるちゃん、ずっとあたしといてね?」<br />  涼宮さんの顔が近付いてきて、わたしの唇と涼宮さんの唇は触れ合った。とても柔らかくて、震えてる。<br /> 「涼宮さん……やめて下さい……お願いします……」<br />  そう言うしかなかった。だって、わたし達は女同士だから。<br /> 「みくるちゃんも、あたしのこと嫌いなのね……」<br />  ち、ちが……。<br /> 「いいの。あたし、そういう性格だもんね。あたしは必要ない人間なのよ」<br />  違いますよぉ……。<br /> 「あーあ。また、一人ぼっちに戻っちゃうんだ……」<br /> 「違いますっ!」<br />  わたしは、涼宮さんを抱き締めていた。だって、涼宮さんが悲しいことばかり言うから……。<br /> 「無理しないでいいわよ。震えてるじゃない」<br />  涼宮さん……わたしだけは、ずっとあなたを好きでいますよ?<br />  そして、口付けた。涼宮さんの唇は、やっぱり柔らかくて、震えていた。<br /> 「はぁ……。みくるちゃん……大好きぃ……」<br />  唇を離すと、涼宮さんはわたしにしがみついて、再び泣き始めた。<br /> 「みんなキライ……もう、ずっと二人でいい……」<br />  ……え?<br /> 「みくるちゃんと二人で、あいつらなんていないとこに行きたいな……」<br /> <br />  ダメ、そんなこと言ったら……ダメですよ!<br />  このままじゃこの世界が消えちゃう。なんとかしなくちゃ。<br /> 「だって、みんないなくちゃ楽しくないですよ? たった二人で生活しても……ほら、学校にいると楽しいですよね?」<br /> 「あたしは楽しくない。去年まではよかったけど……もう、キョンや古泉くんに笑いかけたり出来ない」<br />  わたしも、人並みに危険を察知出来る。その本能が言ってる、このままじゃ世界が……って。<br /> 「だからね、みくるちゃんと二人がいいの。ずっと一緒にいれるし、あたしのことも理解してくれる」<br />  わ、わたしは……何にも出来ないから、みんながいなくちゃ……。<br /> 「大丈夫よ、あたしがぜーんぶしたげるから。だから……ずっと、あたしの笑顔の向く先になってね」<br /> ……………………………<br />  その言葉を聞いた瞬間、わたしは暗闇に包まれ、すぐに明るくなった。<br />  そして、その世界は……。<br /> <br /> <br /> 「おっはよー! みくるちゃん、今日もかわいいわっ! キスしちゃうんだから!」<br />  時間は、午前7時半。わたしは涼宮さんにキスされて、それから一緒に学校に向かうのが習慣になってる。<br /> <br /> 「あ、朝からやめて下さいっ! もう……人に見られちゃったらどうするんですかぁ?」<br /> 「あたしは見られてもいいわ! それに、みんな知ってるわよ。『北高一の美少女カップル』なんて言われてるじゃない」<br />  この世界では、わたし達が付き合ってることが完全に自然になってる。<br />  それに、他にも違う点がある。涼宮さんが、無意識に拒絶したと思う、キョンくん、古泉くん、谷口くんはいなかった。<br />  長門さんは、普通の、静かでかわいい人間で、鶴屋さんは二人の共通の親友。<br />  未来とも連絡が取れない、普通の世界になっていた。<br /> 「ねぇ、みくるちゃん。大丈夫? 元気ないわね……休もうか?」<br />  涼宮さんも能力はなくて、少しわたしに優しい。<br />  大丈夫ですよ、涼宮さん。わたしは元気です!<br /> 「む~、それならいいわ。でね、涼宮さんはやめてって言ってるじゃない! 名前で呼んでよ、あたし達の仲でしょ!?」<br />  怒る時も、うれしそうにする涼宮さんを見るのはうれしい。でも、家族やキョンくん、古泉くんに会えないのは寂しいな……。<br />  それでも、わたしはわかっていた。元の世界に戻る術がないことを。<br />  だから、涼宮さんに選ばれたわたしは、涼宮さんと生きることにしよう。世界でただ一人、キョンくんと古泉くんを知る人間として。<br />  わたしの愛する涼宮さんと一緒に。決して一つにはなれないけど、彼女はわたしを愛してる。<br /> だから、わたしも彼女を……。<br /> 「みくるちゃん? いきなり黙っちゃってどうしたのよ?」<br />  でも、下の名前で呼ぶのは恥ずかしい。だからわたしはこう言います。<br /> 「なんでもないですよ? 行きましょう、涼宮さん!」<br />  そして、怒りながら楽しそうに追いかけてくる涼宮さんから逃げながら、もう一つ呟いた。<br /> 「バイバイ……お世話になった、わたしの世界の人達……」<br /> <br /> <br /> おわり<br />  </p>

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