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『コタツから出たら』」(2007/01/22 (月) 02:11:59) の最新版変更点

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正月休みも、年明け四日目ともなると流石にやる事が無くなる。<br> まだ子供の居ない俺とハルヒだから尚更だ。<br> 大晦日には大掃除…<br> 元旦には初詣…<br> その次の日には手近な親戚回り…<br> まあ昨日まで忙しかった俺達夫婦には、やる事が無いくらいで丁度良いのかもしれないが。<br> <br> そんな訳で今日は、朝からコタツに足を突っ込んで、お互いに寝転びながらダラダラと過ごしている。<br> つけっぱなしのテレビから流れてくる楽しげな声…<br> 食べかけの蜜柑の甘い香り…<br> ああ…今日は一日中このままでいいや…<br> <br> お互いに向かい合わせに座ったまま寝転んだから、こちらからハルヒの様子は判らない。<br> だが、パラパラと雑誌か何かをめくる音がゆったりとしたペースで聞こえて来るところをみると、おそらく俺と同じ気持ちでいるんだと思う。<br> <br> いつも休みともなれば「どこか出掛けよう」と煩いハルヒだが、さすがに疲れてるのだろう。<br> いやいや、結構な事だ。<br> <br> 俺も何か雑誌でも読もうかと、コタツから少し離れた所にある新聞受けに手を伸ばす。<br> そしてガサガサとあさっていると、その向こうにあるストーブに赤いランプが点滅している事に気が付いた。<br> <br> 「ああ…灯油が切れたか…」<br> <br> 灯油を入れなくちゃ…だが億劫だな…と思ったその時、コタツの向こう側でハルヒがムクッと起き上がった。<br> <br> 「う~トイレ、トイレ!こう寒いとトイレが近くてしょうがないわねっ」<br> 「おっ?丁度良かった!ついでに灯油も入れて来てくれないか?」<br> 「いやよ!寒いもの!大体、こういうのは旦那様の役目でしょっ?それよりトイレ~」<br> <br> 全く…都合の良い時だけ旦那様か。<br> 普段ならここで仕方なく俺がやってやる所だが、今日は何だか気分が乗らない。<br> てゆうか正直「たまにはハルヒがやれ」と思う。<br> <br> やがてトイレからハルヒが、パタパタとスリッパを鳴らしながら戻って来た。<br> <br> 「あー寒かった!トイレにも暖房付けようか?」<br> 「よせよ、もったいない」<br> 「何よ!キョンはいつも何かにつけて『もったいない、もったいない』ってさ?それより灯油は?」<br> 「まだ」<br> 「早くしなさいよ!」<br> 「…いつも俺じゃないか。たまにはハルヒがやれよ」<br> 「あっ!優しくないんだっ?……そうだ、アタシに勝負で勝ったら灯油を入れてあげても良いわよっ?」<br> 「勝負?」<br> 「そう!『コタツから先に出た方が灯油を入れる勝負』!」<br> <br> <br> …くだらない。非常にくだらない。<br> だが、この際だから是非ハルヒの奴に灯油を入れさせてやろうと思う。<br> <br> 「のった!」<br> 「よーし、今からスタートねっ?ルールは簡単、いかなる理由があろうともコタツから先に出た方が負け!良いわね!」<br> <br> 簡単だ、こんな楽な勝負は無いぜ?<br> コタツなんて、死ぬまで入っていたって良いくらいだからな。<br> <br> 「…ふふん、まあ今のところはアタシが有利ね。なにしろトイレに行ったばかりだし」<br> 「何っ?トイレに行くのも『負け』になるのかっ?」<br> 「あたりまえでしょ?『いかなる理由があっても』ってのが公式ルールよっ!」<br> <br> しまった…<br> まんまとハルヒの悪知恵に乗せられた…<br> だって俺、朝に行ったきりトイレに行って無いし…<br> <br> 「もうスタートしてるからねっ!先にコタツから出たら、観念して灯油入れて来なさいよっ!」<br> 「あ…ああ、望むところだっ!」<br> <br> 俺はコタツに腰まで入ると、とりあえず雑誌を読み始める。<br> ハルヒの様子が気になるが、持久戦では『相手を意識し過ぎると負ける』というのが定石だ。<br> 雑誌に集中しつつ、勝利のその瞬間を待つ事にする。<br> <br> 「ね~え?キョン」<br> <br> コタツの向こうからハルヒが呼ぶ。<br> <br> 「なんだよ」<br> 「コタツってさ?長く入ってると喉が渇かない?」<br> 「ん?まあな…」<br> <br> そういえばそうだ…喉が渇いた気がする。<br> 考えてみれば、今日は朝にコーヒーを飲んで以来何も飲んでないや。<br> <br> 「アタシね…さっきトイレに行ったときに、キッチンから冷たいコーラを持ってきたんだ~。今から飲むけど、一口あげようか」<br> 「ん…ああ、悪いな」<br> 「じゃあ…コタツから出て、こっちに来なさい?」<br> 「だったら、いらん!」<br> 「あーあ、残念!一人で飲もうっと」<br> <br> プシュッとペットボトルを開ける音ががする。<br> そして「ゴクッ、ゴクッ」と喉を鳴らす音…<br> <br> 「ぷはぁ!うまいっ!コーラ最高っ!」<br> <br> ちっ、心理作戦かよ。<br> なんて姑息な…<br> <br> 俺も何か反撃をしてやろうと考える。<br> <br> <br> そうだ…向こうが飲みモノで攻めてくるなら…<br> <br> 「なあ、ハルヒ…」<br> 「何よ」<br> 「お前、月曜九時からのドラマって視てたよな」<br> 「え?うん…」<br> 「来週やる第五話のあらすじが詳しく載ってるぜ?この雑誌に」<br> 「えっ、うそ!?ちょっとその雑誌、こっちに渡してよ」<br> 「嫌だ。コタツを一回出て、こっちに来い」<br> 「ふん、じゃあいい」<br> <br> 双方共に退かず、戦闘は膠着状態に突入した。<br> お互いに無言。<br> 相変わらずつけっぱなしのテレビから流れてくる楽しげな声と、時計の音だけが部屋に響く。<br> <br> なんだか本当に喉が渇いたな…<br> 少しトイレにも行きたくなってきた気がする。<br> <br> しかも…ちょっと馬鹿馬鹿しくなってきた。<br> 少しでもハルヒを懲りさせてやろうと始めたこのゲームも、今となっては酷く不毛な争いに感じる。<br> <br> 仕方無い…降参してやろうか…<br> <br> そう思った瞬間!<br> ハルヒの足がコタツの中でモジモジと動いた!<br> <br> まさかっ!<br> <br> 「なあハルヒ?お前トイレに行きたいんじゃないのか?」<br> 「べ…別に大丈夫よ」<br> 「本当か?我慢は体に良くないぜ?」<br> 「ほ…本当に大丈夫だって」<br> 「ふ~ん、ならばコレでどうだ?」<br> <br> コタツの中にあるハルヒの下半身を、足を使って揺すってやる。<br> <br> 「あ!やめなさいよっ!このエロキョン!」<br> 「ほれほれ、我慢するなよ~」<br> 「いやっ…本当に違うのっ…やめて…」<br> 「ほらほら、降参しろ~」<br> 「やめてっ…出ちゃう…」<br> 「えっ?」<br> <br> <br> 『ぷすう~』<br> <br> <br> な、何だ『ぷすう~』って…<br> もしかして、オナ…<br> <br> 「バカッ!キョンのバカッ!最低!信じられないっ!」<br> 「あ…ご…ゴメン」<br> <br> 謝る様な事じゃ無い気もするが、おもわず謝まってしまう俺って…<br> <br> 「もうっ!絶対嫌だっ!キョンとは口利かないっ」<br> 「そんな…怒り過ぎだろ…」<br> 「…………」<br> 「なあ、ハルヒ?」<br> 「…………… 」<br> <br> 駄目だ、本気でダンマリを決めこみやがった。<br> 仕方がないからコタツから出て、ちゃんと謝ろうか…<br> でも、待てよ?<br> またいつかの様に、本気で謝った瞬間に「へっへ~ん!キョンの負け~!」なんて舌を出されるのは嫌だな…<br> <br> とりあえず、もう少し様子を見る事にする。<br> が…コタツの向こうからは物音すらしない。<br> <br> 「おーい、ハルヒ…」「……… 」<br> 「俺、少し悪ふざけが過ぎたよ」<br> 「………」<br> <br> 駄目だ、もう…俺の負けでいいや。<br> <br> コタツから出て反対がわへ…<br> ふてくされて丸まっているハルヒの顔を覗きこむ。<br> <br> 「おーいハルヒ……あれ?」<br> <br> <br> …寝てやがる。<br> <br> 全く…しょうがないな。<br> <br> 俺は少しだけコタツの温度を下げてやると、灯油を入れる為にストーブのある廊下へと向かった。<br> <br> <br> おしまい<br> <br>

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