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「【罪と罰】番外編/長門有希の幸福」(2020/03/20 (金) 14:55:18) の最新版変更点
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<div class="main">
<div>「…んぅ…」<br>
彼の手が、わたしの髪をそっと梳くように撫でる。思わず声が漏れる。<br>
片腕は背中に回されたまま。背中にかかる優しい圧力が、少しくすぐったい。<br>
「有希…」<br>
耳に届く、彼の囁くような声。<br>
抱き締められたまま名前を呼ばれると、それだけでわたしの身体はぞくぞくする感覚に支配される。<br>
彼に呼ばれたことが嬉しくて、頭を彼の胸に軽く押し付ける。<br>
こんなにも彼に甘えることができるなんて、少し前だったら考えもしなかったこと。<br>
ヒトの感じる幸福というものが何なのか、今ならば理解できる気がする。<br>
「有希、俺のこと好きか?」<br>
彼の言葉にわたしは顔を上げる。意地悪そうな笑み。<br>
本来なら訊くまでもないこと。答えなど分かりきっているはずだから。<br>
でも、わたしは知っているのだ。これが彼を喜ばせる為の一つの手段であるということを。だから、わたしは言う。<br>
「…好き」<br>
声が震える。昔のわたしなら感じるはずのなかったものが、わたしの声を震わせる。<br>
「もう一度」<br>
彼が言う。彼はわたしの反応を愉しんでいるのだ。でも、彼が喜んでくれるのが嬉しくて、わたしは声が震えるのを堪えながら呟く。<br>
「好き」<br>
「もう一回」<br>
愉しそうな声。彼のそんな声を聴くのは好きだけれど、わたしは戸惑う。<br>
わたしの中のある感情が大きくなっていく。<br>
恥ずかしい、と。<br>
彼に出会い、彼に愛されることでわたしの中に芽生えた感情。<br>
顔面表皮の温度が高くなっている。多分、今わたしの顔は赤くなっているはず。彼の顔をまともに見ることができない。<br>
でも、同時に思うのだ。<br>
嬉しい、と。<br>
この感情が、この昂りが。わたしを熱くさせる何かが。<br>
どうしようもなく、心地良い。<br></div>
<br>
<div>
何とか顔を上げて彼の顔を視界に捉えると、もう一度わたしは言った。<br>
「……大好き」<br>
「ん、そうか」<br>
頬に、彼の手が優しく触れる。…顔が赤いのが、ばれてしまったかもしれない。<br>
自分の頬に添えられた彼の手に、わたしもそっと手を重ねる。暖かい。<br>
「俺も…愛してるぞ、有希」<br>
彼が囁く。「アイシテル」という言葉の響きに、思わず身体が一瞬震える。<br>
彼の優しい目が、わたしを見つめる。<br>
その目を見て、わたしは次に何をするべきかを悟る。<br>
「ん……」<br>
身体をよじって、彼の身体の上を這う。<br>
顔の位置を、彼のそれと合わせる。<br>
彼はそれを確認すると、ふっと微笑んでわたしの頬を撫ぜる。<br>
わたしは目を閉じて、自分の唇を彼のそれに近付ける。<br>
「…大好き」<br>
唇が、重なる。瞬間に伝わる、彼の感触、彼の体温、…彼の想い。<br>
</div>
<br>
<div>「…っは…」<br>
暫しその感覚を堪能した後、名残惜しさを感じながら唇を離す。<br>
目を開けると、彼は目を細めて微笑んだままわたしを見つめていた。<br>
「そろそろ休むか。疲れただろ?」<br>
わたしは無言で頷く。疲労した身体が、わたしに休養を促している。<br>
ふと、彼の両の手がわたしに触れ、そのまま顔を優しく引っ張られた。<br>
「ふぅ…っ」<br>
唇が触れる。彼の熱が、わたしへと移っていくような感覚。くらくらするような快感。<br>
「…んぁ」<br>
唇が離される。喪失感を感じる。<br>
…でも、わたしは知っている。この時間が、今だけのものではないということを。<br>
また明日も、こうすることができる。そう想うだけで、わたしの胸は熱くなる。<br>
だから、心地良い疲労感に包まれながらわたしは目を閉じる。<br>
「…おやすみ、有希」<br>
薄れ行く意識の中、彼の優しい声が耳に届く。<br>
次に目覚めた時、わたしは彼の腕の中にいる。思わず顔が綻ぶ。<br>
彼の頬に自分の頬を寄せたまま、わたしは言った。<br>
「…おやすみなさい」<br>
――また、明日――<br></div>
</div>
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<div>「…んぅ…」<br />
彼の手が、わたしの髪をそっと梳くように撫でる。思わず声が漏れる。<br />
片腕は背中に回されたまま。背中にかかる優しい圧力が、少しくすぐったい。<br />
「有希…」<br />
耳に届く、彼の囁くような声。<br />
抱き締められたまま名前を呼ばれると、それだけでわたしの身体はぞくぞくする感覚に支配される。<br />
彼に呼ばれたことが嬉しくて、頭を彼の胸に軽く押し付ける。<br />
こんなにも彼に甘えることができるなんて、少し前だったら考えもしなかったこと。<br />
ヒトの感じる幸福というものが何なのか、今ならば理解できる気がする。<br />
「有希、俺のこと好きか?」<br />
彼の言葉にわたしは顔を上げる。意地悪そうな笑み。<br />
本来なら訊くまでもないこと。答えなど分かりきっているはずだから。<br />
でも、わたしは知っているのだ。これが彼を喜ばせる為の一つの手段であるということを。だから、わたしは言う。<br />
「…好き」<br />
声が震える。昔のわたしなら感じるはずのなかったものが、わたしの声を震わせる。<br />
「もう一度」<br />
彼が言う。彼はわたしの反応を愉しんでいるのだ。でも、彼が喜んでくれるのが嬉しくて、わたしは声が震えるのを堪えながら呟く。<br />
「好き」<br />
「もう一回」<br />
愉しそうな声。彼のそんな声を聴くのは好きだけれど、わたしは戸惑う。<br />
わたしの中のある感情が大きくなっていく。<br />
恥ずかしい、と。<br />
彼に出会い、彼に愛されることでわたしの中に芽生えた感情。<br />
顔面表皮の温度が高くなっている。多分、今わたしの顔は赤くなっているはず。彼の顔をまともに見ることができない。<br />
でも、同時に思うのだ。<br />
嬉しい、と。<br />
この感情が、この昂りが。わたしを熱くさせる何かが。<br />
どうしようもなく、心地良い。<br /></div>
<br />
<div>何とか顔を上げて彼の顔を視界に捉えると、もう一度わたしは言った。<br />
「……大好き」<br />
「ん、そうか」<br />
頬に、彼の手が優しく触れる。…顔が赤いのが、ばれてしまったかもしれない。<br />
自分の頬に添えられた彼の手に、わたしもそっと手を重ねる。暖かい。<br />
「俺も…愛してるぞ、有希」<br />
彼が囁く。「アイシテル」という言葉の響きに、思わず身体が一瞬震える。<br />
彼の優しい目が、わたしを見つめる。<br />
その目を見て、わたしは次に何をするべきかを悟る。<br />
「ん……」<br />
身体をよじって、彼の身体の上を這う。<br />
顔の位置を、彼のそれと合わせる。<br />
彼はそれを確認すると、ふっと微笑んでわたしの頬を撫ぜる。<br />
わたしは目を閉じて、自分の唇を彼のそれに近付ける。<br />
「…大好き」<br />
唇が、重なる。瞬間に伝わる、彼の感触、彼の体温、…彼の想い。<br /></div>
<br />
<div>「…っは…」<br />
暫しその感覚を堪能した後、名残惜しさを感じながら唇を離す。<br />
目を開けると、彼は目を細めて微笑んだままわたしを見つめていた。<br />
「そろそろ休むか。疲れただろ?」<br />
わたしは無言で頷く。疲労した身体が、わたしに休養を促している。<br />
ふと、彼の両の手がわたしに触れ、そのまま顔を優しく引っ張られた。<br />
「ふぅ…っ」<br />
唇が触れる。彼の熱が、わたしへと移っていくような感覚。くらくらするような快感。<br />
「…んぁ」<br />
唇が離される。喪失感を感じる。<br />
…でも、わたしは知っている。この時間が、今だけのものではないということを。<br />
また明日も、こうすることができる。そう想うだけで、わたしの胸は熱くなる。<br />
だから、心地良い疲労感に包まれながらわたしは目を閉じる。<br />
「…おやすみ、有希」<br />
薄れ行く意識の中、彼の優しい声が耳に届く。<br />
次に目覚めた時、わたしは彼の腕の中にいる。思わず顔が綻ぶ。<br />
彼の頬に自分の頬を寄せたまま、わたしは言った。<br />
「…おやすみなさい」<br />
――また、明日――<br /></div>
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