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「内なるハルヒの応援」(2020/03/13 (金) 00:04:14) の最新版変更点
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<div class="main">こんにちは、涼宮ハルヒです!<br>
……って言うよりは、涼宮ハルヒの中にある、4年前になくなった、現実的で、乙女チックな心があたしなの。<br>
あたしはご主人様が幸せになったら消えちゃうんだけど、それがあたしの喜びだからいいわ。<br>
だからね、あたしの役目は一つ! いつも素直になれないご主人様の背中を押してあげること!<br>
いっつも、いっつもご主人様の心はキョンくんでいっぱいなんだけどね、それが態度に出ないみたいなの。<br>
むしろ、気が無いみたいな態度を取っちゃってる。<br>
それをあたしが応援して、ご主人様を幸せにしてあげるの!<br>
……あ、言ってるそばからキョンくんが登校してきたみたい。<br>
「よう、ハルヒ。今日はなんだか機嫌が良さそうだな。顔がニヤついてるぞ」<br>
ふふふ、いつもと違うご主人様を演出することで、キョンくんに興味をひかせちゃった。<br>
あたしは《涼宮ハルヒ》の一部だから、体や表情や言葉も思い通りなの。<br>
ま、ご主人様はあたしに気付かないけど。<br>
「う、うるさい! ニヤけてなんかないわよ!」<br>
あちゃ~、ここから世間話にでも発展すると思ったのに……。<br>
<br>
ご主人様は意地っ張りだなぁ、もう。<br>
「む……そんなに厳しくするなよ。ちょっと話をしようかなって思っただけだ。嫌なら黙っとく」<br>
ありゃ、キョンくん拗ねちゃったよ。……ご主人様、ガッカリしてる場合じゃないよ、キョンくんと話すチャンスだよ。頑張って!<br>
「あ、え……キョ、キョン! あたしは暇だから相手してあげるわ! 光栄に思いなさいっ!」<br>
よく頑張った! ご主人様、偉い!<br>
「じゃあ、いろいろ話すか。今日、妹がな……」<br>
よかった……キョンくんと喋れてご主人様、とっても幸せそうだ。心臓の鼓動も早いしね。<br>
しばらくはご主人様一人でもだいじょぶそうだね。じゃあ、あたしはしばらく休憩しよっと……。<br>
<br>
<br>
「じゃーな、ハルヒ」<br>
「あ、うん……」<br>
どうしたのかな、ご主人様の元気がないような気がする。<br>
何か悩みごとかなぁ……。ご主人様がいつもの日記を付ける時に調べちゃおう。<br>
<br>
「はぁ……どうしよ。嫌だなぁ……」<br>
ご主人様、どうしたのかな?<br>
「このあたしが本気で好きになっちゃうなんて思わなかったわ……はぁ」<br>
ありゃ、やっと気付いたんだなぁ。キョンくんが好きだってことに。<br>
ほんとはずっと前から惹かれてたくせに、ご主人様は認めないんだもん。<br>
「うじうじするのはあたしらしくないし……告白しちゃおっかなぁ……」<br>
そうだよ、ご主人様! 頑張って!<br>
「でも、面と向かってキョンにフラれちゃったら悔しいし……話せなくなりそうだし……はぁ」<br>
ご主人様は『キョン』と名前をつけたぬいぐるみを持ち上げた。<br>
「ねぇ、『キョン』。どうしたらいいか教えなさいよ」<br>
ダメだよ。ぬいぐるみに聞いても答えてくれるわけないから!<br>
<br>
……もう、しょうがないなぁ。ご主人様の思考に少しだけ働きかけて背中を押してあげようっと。<br>
「……あ、そうよ! 面と向かって言えないなら手紙があるじゃない! 我ながらナイスアイデアね!」<br>
あたしのアイデアだけどね。……まぁ、あたしも《涼宮ハルヒ》だけどさ。<br>
ご主人様の筆は止まることなく進んでいた。<br>
言いたいことはたくさんあったんだ、あたしが手伝う必要無いよね。……え?<br>
そこまで、5分程動き続けた手は止まり、ご主人様は机に突っ伏してしまった。<br>
「あたし、キョンに『普通は大事なことは面と向かって伝えろ』って言ってたわよね……、だいぶ昔に」<br>
そういえば、そんなこともあったなぁ……。<br>
「でも、やっぱり恥ずかしいし……」<br>
もう…あとちょっとだから頑張ってよ! 『好きです』って書けばいいじゃない!<br>
「……すぅ……すぅ」<br>
うわぁ……寝ちゃってるよ。まったく、ご主人様ったら……。<br>
あたしが全部書いちゃおうかな。いいよね、ご主人様の気持ちは全部わかっちゃってるし。<br>
体、寝てる間に借りちゃいま~す。じゃあ、始め!<br>
《キョンへ あたしね、実はあんたが……中略……だからね、あたしと付き合いなさいっ!》<br>
よし、出来た! ご主人様の気持ちを詰め込んだ、《涼宮ハルヒ》らしい文になってるはず!<br>
あ~あ、あたしも疲れちゃったなぁ。ちょっと眠って、ご主人様と同じ時間に起きて反応見ようっと。<br>
<br>
<br>
うん……と、朝かぁ。体が起きてるし、ご主人様の方が早かったんだなぁ。<br>
「あれ? あたしちゃんと書いてから寝たのかしら……。まぁいいわ、けっこう良い文に仕上がってるし」<br>
<br>
よかったよかった。ご主人様も満足してるし、あとは結果が楽しみだなぁ。<br>
学校に一番に行って、キョンくんの引き出しの中に手紙を押し込んだご主人様は、とっても不安そうだった。<br>
こういう時があたしの出番だよね。<br>
――大丈夫、必ず成功するから――<br>
と、心の中に直接話しかけてあげた。<br>
「……うん、大丈夫。キョンなら優しく対応してくれるわ」<br>
ほら、落ち着いた。……あれ、キョンくん? 今日は早いなぁ……。<br>
「よう、ハルヒ。珍しく朝早くに起きちまってな」<br>
「あ、あら、そうなの。あたしも早く起きちゃったのよ、奇遇ね」<br>
うわ、すっごいドキドキしてるみたい。音が今までにないくらいに大きいよ。<br>
キョンくんが椅子に座って、引き出しに手を入れた。手紙に気付いた……って、えぇっ!<br>
ご主人様、逃げちゃダメだよおぉぉぉ!<br>
<br>
……あ~あ、屋上まで来ちゃった。意気地なしなんだから。<br>
「はぁ……教室、戻り辛いな。サボっちゃおうかな」<br>
ダメだよ、ちゃんと返事聞かなくちゃ!<br>
「でも、結局キョンとは会っちゃうのよね……戻ろう」<br>
すると、いきなり屋上のドアが音を立てて開いた。<br>
<br>
「ハルヒ! 探したぞ!」<br>
「キョ……キョン!?」<br>
追っかけて来てくれたんだ。たぶん、手紙も読んでくれたんだよね。<br>
「お前の気持ち、すごくうれしかったんだけどな。……なんで逃げたんだよ」<br>
「それは……こ、怖かったのよ。フラれたり、あんたと今まで通り出来なくなるのが……」<br>
が、頑張れとしか言えない! ご主人様、もう一回『好き』って言いなさい!<br>
「でも……好き!」<br>
「俺も、ハルヒのこと好きだぞ。自分でも気付かないくらい前からな」<br>
よかったぁ……これでご主人様は幸せだね。<br>
……あたしも消えよう。<br>
これからはキョンくんがご主人様に乙女チックな心や、現実的な心を教えてくれるだろうし。<br>
「キス……していいか?」<br>
「……うん」<br>
ありゃりゃ、キスシーンはあたしには刺激が強いから退散しちゃお。バイバイ、ご主人様!<br>
「ありがと、あたしの中のあたし」<br>
ご主人様は胸に手を当ててそう言った。気付かれてた? そんなわけ無いよね。<br>
あたしは足から消えはじめた。ご主人様の中に完全に溶け込むから。<br>
ギリギリ、キスする所が見えちゃうなぁ。<br>
……お幸せに。<br>
<br>
<br>
おわり</div>
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<div class="main">こんにちは、涼宮ハルヒです!<br />
……って言うよりは、涼宮ハルヒの中にある、4年前になくなった、現実的で、乙女チックな心があたしなの。<br />
あたしはご主人様が幸せになったら消えちゃうんだけど、それがあたしの喜びだからいいわ。<br />
だからね、あたしの役目は一つ! いつも素直になれないご主人様の背中を押してあげること!<br />
いっつも、いっつもご主人様の心はキョンくんでいっぱいなんだけどね、それが態度に出ないみたいなの。<br />
むしろ、気が無いみたいな態度を取っちゃってる。<br />
それをあたしが応援して、ご主人様を幸せにしてあげるの!<br />
……あ、言ってるそばからキョンくんが登校してきたみたい。<br />
「よう、ハルヒ。今日はなんだか機嫌が良さそうだな。顔がニヤついてるぞ」<br />
ふふふ、いつもと違うご主人様を演出することで、キョンくんに興味をひかせちゃった。<br />
あたしは《涼宮ハルヒ》の一部だから、体や表情や言葉も思い通りなの。<br />
ま、ご主人様はあたしに気付かないけど。<br />
「う、うるさい! ニヤけてなんかないわよ!」<br />
あちゃ~、ここから世間話にでも発展すると思ったのに……。<br />
<br />
ご主人様は意地っ張りだなぁ、もう。<br />
「む……そんなに厳しくするなよ。ちょっと話をしようかなって思っただけだ。嫌なら黙っとく」<br />
ありゃ、キョンくん拗ねちゃったよ。……ご主人様、ガッカリしてる場合じゃないよ、キョンくんと話すチャンスだよ。頑張って!<br />
「あ、え……キョ、キョン! あたしは暇だから相手してあげるわ! 光栄に思いなさいっ!」<br />
よく頑張った! ご主人様、偉い!<br />
「じゃあ、いろいろ話すか。今日、妹がな……」<br />
よかった……キョンくんと喋れてご主人様、とっても幸せそうだ。心臓の鼓動も早いしね。<br />
しばらくはご主人様一人でもだいじょぶそうだね。じゃあ、あたしはしばらく休憩しよっと……。<br />
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「じゃーな、ハルヒ」<br />
「あ、うん……」<br />
どうしたのかな、ご主人様の元気がないような気がする。<br />
何か悩みごとかなぁ……。ご主人様がいつもの日記を付ける時に調べちゃおう。<br />
<br />
「はぁ……どうしよ。嫌だなぁ……」<br />
ご主人様、どうしたのかな?<br />
「このあたしが本気で好きになっちゃうなんて思わなかったわ……はぁ」<br />
ありゃ、やっと気付いたんだなぁ。キョンくんが好きだってことに。<br />
ほんとはずっと前から惹かれてたくせに、ご主人様は認めないんだもん。<br />
「うじうじするのはあたしらしくないし……告白しちゃおっかなぁ……」<br />
そうだよ、ご主人様! 頑張って!<br />
「でも、面と向かってキョンにフラれちゃったら悔しいし……話せなくなりそうだし……はぁ」<br />
ご主人様は『キョン』と名前をつけたぬいぐるみを持ち上げた。<br />
「ねぇ、『キョン』。どうしたらいいか教えなさいよ」<br />
ダメだよ。ぬいぐるみに聞いても答えてくれるわけないから!<br />
<br />
……もう、しょうがないなぁ。ご主人様の思考に少しだけ働きかけて背中を押してあげようっと。<br />
「……あ、そうよ! 面と向かって言えないなら手紙があるじゃない! 我ながらナイスアイデアね!」<br />
あたしのアイデアだけどね。……まぁ、あたしも《涼宮ハルヒ》だけどさ。<br />
ご主人様の筆は止まることなく進んでいた。<br />
言いたいことはたくさんあったんだ、あたしが手伝う必要無いよね。……え?<br />
そこまで、5分程動き続けた手は止まり、ご主人様は机に突っ伏してしまった。<br />
「あたし、キョンに『普通は大事なことは面と向かって伝えろ』って言ってたわよね……、だいぶ昔に」<br />
そういえば、そんなこともあったなぁ……。<br />
「でも、やっぱり恥ずかしいし……」<br />
もう…あとちょっとだから頑張ってよ! 『好きです』って書けばいいじゃない!<br />
「……すぅ……すぅ」<br />
うわぁ……寝ちゃってるよ。まったく、ご主人様ったら……。<br />
あたしが全部書いちゃおうかな。いいよね、ご主人様の気持ちは全部わかっちゃってるし。<br />
体、寝てる間に借りちゃいま~す。じゃあ、始め!<br />
《キョンへ あたしね、実はあんたが……中略……だからね、あたしと付き合いなさいっ!》<br />
よし、出来た! ご主人様の気持ちを詰め込んだ、《涼宮ハルヒ》らしい文になってるはず!<br />
あ~あ、あたしも疲れちゃったなぁ。ちょっと眠って、ご主人様と同じ時間に起きて反応見ようっと。<br />
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うん……と、朝かぁ。体が起きてるし、ご主人様の方が早かったんだなぁ。<br />
「あれ? あたしちゃんと書いてから寝たのかしら……。まぁいいわ、けっこう良い文に仕上がってるし」<br />
<br />
よかったよかった。ご主人様も満足してるし、あとは結果が楽しみだなぁ。<br />
学校に一番に行って、キョンくんの引き出しの中に手紙を押し込んだご主人様は、とっても不安そうだった。<br />
こういう時があたしの出番だよね。<br />
――大丈夫、必ず成功するから――<br />
と、心の中に直接話しかけてあげた。<br />
「……うん、大丈夫。キョンなら優しく対応してくれるわ」<br />
ほら、落ち着いた。……あれ、キョンくん? 今日は早いなぁ……。<br />
「よう、ハルヒ。珍しく朝早くに起きちまってな」<br />
「あ、あら、そうなの。あたしも早く起きちゃったのよ、奇遇ね」<br />
うわ、すっごいドキドキしてるみたい。音が今までにないくらいに大きいよ。<br />
キョンくんが椅子に座って、引き出しに手を入れた。手紙に気付いた……って、えぇっ!<br />
ご主人様、逃げちゃダメだよおぉぉぉ!<br />
<br />
……あ~あ、屋上まで来ちゃった。意気地なしなんだから。<br />
「はぁ……教室、戻り辛いな。サボっちゃおうかな」<br />
ダメだよ、ちゃんと返事聞かなくちゃ!<br />
「でも、結局キョンとは会っちゃうのよね……戻ろう」<br />
すると、いきなり屋上のドアが音を立てて開いた。<br />
<br />
「ハルヒ! 探したぞ!」<br />
「キョ……キョン!?」<br />
追っかけて来てくれたんだ。たぶん、手紙も読んでくれたんだよね。<br />
「お前の気持ち、すごくうれしかったんだけどな。……なんで逃げたんだよ」<br />
「それは……こ、怖かったのよ。フラれたり、あんたと今まで通り出来なくなるのが……」<br />
が、頑張れとしか言えない! ご主人様、もう一回『好き』って言いなさい!<br />
「でも……好き!」<br />
「俺も、ハルヒのこと好きだぞ。自分でも気付かないくらい前からな」<br />
よかったぁ……これでご主人様は幸せだね。<br />
……あたしも消えよう。<br />
これからはキョンくんがご主人様に乙女チックな心や、現実的な心を教えてくれるだろうし。<br />
「キス……していいか?」<br />
「……うん」<br />
ありゃりゃ、キスシーンはあたしには刺激が強いから退散しちゃお。バイバイ、ご主人様!<br />
「ありがと、あたしの中のあたし」<br />
ご主人様は胸に手を当ててそう言った。気付かれてた? そんなわけ無いよね。<br />
あたしは足から消えはじめた。ご主人様の中に完全に溶け込むから。<br />
ギリギリ、キスする所が見えちゃうなぁ。<br />
……お幸せに。<br />
<br />
<br />
おわり</div>