「『夏女』」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「『夏女』」(2007/01/15 (月) 04:02:06) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<div class="main">
<p>
気象庁はこの連日の暑さは今日も続き、午前中の早い時間で本日の最高<br>
気温が観測史上最高を更新する暑さになることを告げ、不要不急の外出は<br>
避けるるよう繰返し警告していたし。電力会社は電力供給が限界に近くなって<br>
きたため、さらなる節電を呼びかけていた。<br>
<br>
田舎から帰ってきたばかりの俺は、何の因果か、買出しのために外を歩いて<br>
いた。<br>
<br>
「キョン! いつ帰ってきてたのよ!、連絡ぐらいよこしなさい!、団員と<br>
して報告義務の怠慢は罰金ものよ!」<br>
<br>
記録的な暑さも、ものともしない元気さで、呼び止められた、誰かって、<br>
こんな日に、見ているほうが暑苦しくなるような元気さで声かけてくるやつ<br>
なんで、そういないだろう<br>
<br>
「元気だな、昨日の晩だ、こっちがこんなに暑いなら、もうしばらく向こうに<br>
いればよかったと後悔していることろだ」<br>
「なーに なっさけないこといってるのよ、この程度の暑さなんて、なんでも<br>
ないじゃないの!」<br>
<br>
こいつの冷却系はいったいどうなっているんだ、人間技じゃないな<br>
長門ならこんな日でも涼しい顔していそうではあるが<br>
<br>
「で、なに、買物?」<br>
「ああ、帰ったばかりで、家の中なんにもないんでな」<br>
「つきあったげるわよ」<br>
<br>
一体どうゆう風の吹き回しかって、そよ風すら吹いてはいないがな、こうして<br>
この、くそ暑いなか、俺とハルヒは並んで歩いているのだった。<br>
どうやら、ハルヒの奴、俺が田舎に帰っている間は、SOS団の活動も休みに<br>
していたようで、かまって欲しいオーラを放出しまっくている<br>
<br>
俺がこんなハルヒを見て、ちょっとからかってやろうと思ったとしてもそんな<br>
に不思議じゃなだろう<br>
<br>
「こう暑いとな、昔聞いた話を思い出すな」<br>
「なにそれ」<br>
「こんなに暑い日には外に出るなって話、聞きたいか」<br>
「別に、きーたげてもいいわ、話しなさいよ」<br>
「俺の田舎の方の話なんだが、夏女って話がある」<br>
「なにそれ、怪談?」<br>
「そう、むかしむかしの話、今日みたいにえれー暑い日のこと、旅の親子が<br>
いてな、あまりの暑さで進むこともままならず、小さな木陰をみつけて、<br>
休んでいたそうだ」<br>
<br>
怪談は好きなのか、口をはさむことなく、ハルヒは俺の話を聞いている<br>
<br>
「すると、彼らが通ってきた路から、一人の女が歩いてくるのが見えたんだ、<br>
倒れるような暑さの中、その女は、まるで何事もないように、こっちに歩いて<br>
いる、びっくりするというより2人は恐怖を感じた、なにしろ旅なれた大の<br>
大人がまいってしまいそうな暑い日なのに、その女は、まるで気持ちよく散歩<br>
でもしているように歩いているんだ、多分この世のものではないだろう、そう<br>
思った」<br>
<br>
別に俺の田舎にそんな話があるわけではない、このくそ暑いのにふらふら出<br>
歩いている誰かをちょっと皮肉った、そんだけのことだ<br>
<br>
「そのうち、その女は、木陰にいる親子に気がつき、近づいてきた、歩いてき<br>
て疲れたので、水が欲しいという、夏の最中、水を持たずに旅をするなぞ、<br>
尋常なことではないし、旅人も子づれということもあって、水は貴重だ、それ<br>
にその女、この暑さの中、さほど苦しんでいる様子もない」<br>
<br>
自分で話を続けていながら、俺の頭もこの暑さのせいで少々朦朧とし始めてい<br>
たのかもしれない、あたかも自分がかつて体験した出来事のように、話を続け<br>
ている。<br>
<br>
「旅人が水を渡すのを躊躇しているのを感じたのか、その女は、旅人の親の<br>
方に向かって、水が大事なら、そなたからもらおう、そういったかと思うと、<br>
女は、ふいに息を吸い込むようなそぶりをみせた、すると、その旅人は、みる<br>
みる干からびて干物のようになってしまった。その様子を見ていた、子供の<br>
方は、おびえながらもおずおずと水の入った竹筒を差し出したそうだ、そりゃ<br>
命は惜しいものな、するとその女は、お前はよき形をしている、このこと人に<br>
告げぬなら、命だけは助けようぞ、その子はそこまで聞くと、卒倒してしまい、<br>
気が付いたときにはすっかり夜も暮れた時だったそうな」<br>
<br>
<br>
「云わぬといったろ」<br>
<br>
なんだハルヒ<br>
<br>
「お主、云わぬと申したであろうぉぉぉぉ!」<br>
<br>
突然のハルヒの怒声に、なさけないことに 俺は腰を抜かして尻餅をついた<br>
格好になってしまった。<br>
<br>
「ぶふぁふぁふぁ おっかしー その程度であたしを出し抜こうなんて、<br>
キョンの分際で100年はやいわ」<br>
<br>
続けて聞こえてきたのは、俺を見下ろすように仁王立ちして、その手を俺に<br>
差し出しているハルヒの笑い声だった。<br>
<br>
「完敗です」<br>
俺はそれだけいうのが精一杯だった<br>
<br>
ふと頬に風を感じる、いままで、炎天下で坩堝のように蒸されていた街角に<br>
風がとおる<br>
<br>
まるで、夏女がその苛立ちと怒りを解き全てを許したかのように<br>
<br>
ハルヒはその後、とてつもない上機嫌で俺の家に押しかけ妹を巻き込んで<br>
一騒ぎして帰っていった。<br>
<br>
ハルヒ、おまえ、俺の居ない間、ひょっとして寂しかったのか?<br>
<br>
夕方の天気予報は、この夏の記録的な暑さも今日で峠を越えたと告げていた。<br>
<完><br>
</p>
</div>
<!-- ad -->