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真夜中の情事」(2007/01/15 (月) 01:46:55) の最新版変更点

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<div class="main"> <div> ある日、ある夜、ある時、学校の校舎の中。外履きのまま廊下をウロウロと歩いている。<br> え?なんで学校の中かって?正直に言えば涙が出るような理由だ。家に帰ってから忘れ物に気づいた。しかも明日出さなきゃいけない宿題。手をつけていないから大問題だ。<br> 「にしても、不気味だな」<br> 独り言も言いたくなる。ここまで静かで、闇が帳を落とし、月明かりが青白く照らす学校の廊下は不気味の一文字で表現するのが適切だ。<br> 「WAWAWA忘れ物~っと」<br> 何処かで聞いたフレーズだがまぁいいだろう。気にしないさ。そんな事は気にしない。気にしな……<br> 「あ!キョン君!」<br> どぅわぁあ!!!だだだ誰!?何!?何処!?<br> 「あっはっはっ!おもしろーっ!」<br> 後ろから笑い声が聞こえる。そして聞き覚えもある。ワタワタしていた体を落ち着かせてゆっくり振り返るとそこだけ太陽にでも照らされているような笑みを浮かべる制服姿の鶴屋さんの姿が。<br> 「つ……鶴屋さん?」<br></div> <br> <div>何故ここに?<br> 「いやぁ恥ずかしいんだけど忘れ物しちゃってさっ!」<br> 苦笑いを浮かべながら頭を掻く鶴屋さん。ああ、なんだか日溜りのような安心感が生まれましたよ。あなたも外履きなんですね。<br> 「それで、キョン君はどうしたにょろ?」<br> 実は同じ境遇でして……<br> 「そうなんだ。じゃぁ一緒に行こうかっ!」<br> なんとお心強いお言葉。ご一緒させていただきますよ。<br> 「よーし行こう行こうっ!」<br> スッと近づいて俺の手を取り、グイグイ引っ張っていく姿を見るとさすがと言うべきか何と言うか。仄かに感じる手の温もりがこのうす寒い空間の中で唯一無二の温もりなんだと思ったらつい強く手を握ってしまった。<br> 「ひぁっ!び、びっくりしたよーっ」<br> あ、すいません。つい出来心です。なんてさすがに言わなかったがちゃんと謝ることはした。いつもの笑顔が俺を見つめるから反射的に俺も笑い返す。今俺の感じている安心感を鶴屋さんは感じているのだろうか。<br> 「さあ着いたよっ」<br> 気づけば俺の教室の前だった。さっさと取りに行って早く帰るか。<br> 「じゃ、ちょっと待っててくださいね」<br> 鍵をかけ忘れたのか教室の扉は容易く開いた。机の中だよな、と思い返して前へ進もうとした、が。<br> 「…………」<br> 後ろに引かれる感覚が俺の足をピタリと止めた。この状況で俺を掴むのは一人しかいない。むしろ一人だけにしてくれ。<br> </div> <br> <div>「あの……鶴屋さん?」<br> 振り向くと、俺の服を掴んでビクとも動かない鶴屋さんの姿が。顔は俯いて見えないが笑ってはいないだろう。<br> 「ええ、えとだね……その…」<br> いつもの雰囲気が感じられない。こんな状況も笑い飛ばしてズイズイ進んでいく人なんだと思っていた。が、そこまで俺は疎くない。その考えは今無くなった。<br> 「一緒に行きましょうか」<br> さりげなく俺の服を掴む手を握ってみると、力強く握り返してきてくれた。<br> 「す、すまないねっ!恥ずかしいんだけど、こういうの苦手なんだよっ」<br> 声の調子はいつも通りだが、表情はまだ冴えないようだ。<br> 「俺もですよ。オバケ屋敷とか作り物ならなんでもないんですけど、ここまでリアルに静かで不気味だと誰でも怖くなりますって。」<br> 「そうだよね。やっぱめがっさ怖いよねっ」<br> ええ。とても怖いです。鶴屋さんがいなかったらここで失禁して朝まで気絶していた可能性が無くも無い状態でしたから。でもこれで確信がもてたことがある。<br> 彼女も、俺を頼ってくれていると言うことだ。<br> 話しながらもやることはやる。手を繋ぎながら俺の机まで行き、目的のブツを確保し、鶴屋さんの物を取りに行こうと教室を出た。<br> </div> <br> <div>「鶴屋さん、忘れ物取りに行きました?」<br> 「うんっ。ちゃんと確保しているよっ」<br> 怖がりながらもそこまでやったのか。すごい人だな。でも、これで帰るのが早まった。さっさと外に出て帰るかな。<br> 「キョン君?今なんか見えたかいっ?」<br> ピタリと止まり、廊下の向こう側を見つめだす鶴屋さん。へ?いや、俺は何も見てませんよ。同じ正面を見てますけど何も見えていないですけど。<br> 「………あれも…かいっ?」<br> あれ、と言って指を差した先に見えた。見えてしまった。ゆらゆら揺れる白いドレスに紅い斑点。これはまずい。非常にまずい。助けに来た猟師が赤頭巾を撃ち殺すぐらい衝撃的だ。<br> 「走るんだよキョン君っ!」<br> 突然手を引かれて凍り付いていた体が活動を再開した。よたつく足をすぐさま自分の力で動かし、猛ダッシュで駆け抜ける。<br> 「どどどどうするんだいっ!?」<br> どうするっていったってとにかく一階まで降りなきゃ外に出られない。俺が無茶をしてなら大丈夫だろうが鶴屋さんには厳しすぎるはずだ。<br> 「とりあえず降りましょう!そこから外に!」<br></div> <br> <div> 返事は無いが聞こえていたようだ。階段まで先導され駆け下りる。半分降りきり、気が一瞬緩んだのだろう。突然目の前の鶴屋さんが前のめりになり手が離れそうになった。<br> 「キャッ!」<br> まずい!咄嗟に引き寄せ、抱きしめたまま階段を転げ落ちる。転がり終えたのか体の回転は止まり、それと同時に鈍い痛みが体中に走った。<br> 「キョン君!大丈夫っ!?」<br> 目を開けると少し涙ぐんだ鶴屋さんが俺を大きな瞳でジッと見つめている。鶴屋さんもこういう顔をするんだな、なんて言ったら怒られるかな。<br> 「大丈夫です……体打っただけですから。鶴屋さんは大丈夫ですか?」<br> 「なんともないよっ!庇ってくれたから大丈夫っ」<br> そうか。咄嗟の行動は正しかったな。とりあえず学校から出ましょう。<br> 「でも立てるのかいっ?」<br> これくらい平気だと見せるようにすっくと立って鶴屋さんの手を引いた。無言で付いて来ているのを確認して窓までラストスパート。割る勢いで開けて鶴屋さんを先に外へ出し、俺も急いで抜け出した。<br> </div> <br> <div> やっと落ち着きを取り戻してとぼとぼと二人で岐路に着いた。<br> 「なんだったんだろうねっ」<br> ええ全く。なんだったんでしょうねあれは。七不思議とか聞いたことあったが血濡れのドレスなんて聞いたこと無いぞ。<br> 「でも何も無くてよかった……何も無かったわけじゃないかっ。本当にさっきはごめんにょろっ」<br> 足を止め、俺の前で両手を合わせて頭を下げている。そんなことされても困るんだが。好きでやったわけで謝って欲しいわけじゃないんだがな……<br> 「もう謝らないでください。俺が勝手にやったことですから」<br> チラッと顔をあげ、俺の顔を見る。この表情とアングルはそそられます。色っぽすぎます鶴屋さん。<br> 「じゃあ、何かお詫びをしたいから言ってごらんっ!何が良いんだいっ?」<br> ふとよぎった考え。たださすがに引かれるだろうかと思い思考は思い止まったが口は言うことを聞いていなかった。<br> 「じゃあ、ポニーテールにしてくれませんか?」<br> 「へっ?」<br> 馬鹿!よせ口よ!<br> 「俺ポニーテール好きなんです」<br> 言っちゃったよ。あー終わったな。ハルヒじゃなくても地球を消滅させることが出来そうな勢いだ。<br> </div> <br> <div>「……それだけでいいのかいっ?」<br> ……ええ。いいですよ。えらいこと口走ってしまったけど訂正はしないです。<br> 「わかったよっ!じゃあ明日のお楽しみねっ!」<br> やばい。今日寝られなくなる気がする。<br> 「でもそれだけじゃこの鶴にゃんの気がすまないのさっ!」<br> 電灯の無い道だからよく鶴屋さんの顔が見えない。<br> 「だから、これはサービスってことでよろしくっ」<br> 一瞬で鶴屋さんの姿が視界から消え、目の前に突然顔が現れた。驚いて下がろうとしたが顔を掴まれて動けなくなり、そして唇に暖かい感触が。<br> 唇から温もりが離れない。ゆっくり首に手が回されるのを感じたが、俺は手の行き場に困りながら状況に混乱している。<br> </div> <br> <div>「………」<br> 温もりが離れ、冷たい夜風が温まった唇を冷やしたのを感じた直後に今度は首に回された手が強く俺を引き寄せた。<br> 「ああああの、つつっ鶴屋さん!?これは」<br> 「サービスだよっ」<br> サービスが行き届きすぎじゃないのか?ここはメイド喫茶や執事喫茶じゃないんだぞ?こんな天に昇れるサービスが有っていいのか神よ!<br> 「いやー人肌はあったかいねっ」<br> 照れ隠しなのか笑いながら俺を離そうとしない。押し当てられる胸の感触で理性が音を立てて崩れ………そうだがさすがに思い止まった。野獣扱いじゃ洒落にならん。<br> 「はいっサービス終了っ」<br> するりと抜けるように離れた手がいとおしく、つい前のめりになりそうになった。<br> </div> <br> <div>「このことはみくるには内緒だよっ?」<br> ええ、もちろんです。俺の心の中でFBIの人間に厳重に保管させます。<br> 「じゃ、また明日っ!」<br> バイバイ、と手を振って走り去っていく後姿。追いたくなる衝動は本能と言うものだろう。結局家に着き、宿題に取り掛かったがあの感触(唇と胸)が忘れられず一文字も書くことが出来ず朝を迎えてしまったのだった。<br> </div> <br> <div>その朝。<br> 俺は寝不足で目に熊を作りながら登校した。後から知った話だが、あの血濡れのドレスは美術部員の生徒だったらしく、白いエプロンに赤い絵の具を付けていて俺たちを幽霊と勘違いして気絶をしたらしい。なんとまあマヌケな話だ。<br> 宿題はハルヒのを移させてもらい、何とかやり過ごした。その代わりに驕りが決定したがいつものことだ。まあいいだろう。<br> </div> <br> <div> だが、これはすべて後の話。俺は登校してすぐにしたことは、胸を躍らせて待っていたあの綺麗な長髪のポニーテール姿を拝みに行くことだった。<br> </div> <br> <br> <div>END<br></div> </div> <!-- ad -->

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