「古泉一樹の独白」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「古泉一樹の独白」(2020/08/23 (日) 01:49:06) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<div class="main">SOS団ですか……。<br>
懐かしい響きです。<br>
はじまりは僕が中学一年生だった『あの日』ですね。<br>
朝起きたときに自分の世界観が昨日までと180度違っていたのです。<br>
<br>
灰色の世界<br>
<br>
青い巨人赤い火の玉<br>
<br>
<br>
そして、涼宮ハルヒ<br>
<br>
<br>
もう、半狂乱でしたね。<br>
しかし、両親は思春期にありがちな行動ととらえていたようです。<br>
そんな僕を落ち着かせるため、気晴らしをさせるためにあるとき小旅行にいったんです。<br>
<br>
きれいな場所でした。しばらくその景色に見とれていました。<br>
そこにはもう一人観光客がいました。<br>
最初は気にしていなかったんです。<br>
<br>
僕は、なにげなしに彼の方を向きました。<br>
彼もこちらを見ていました。<br>
温和そうな老紳士でした。<br>
<br>
でも、僕は気づいてしまいました。<br>
彼も気づいてしまったのでしょう。深い悲しみが彼の目にありました。<br>
それと同時に安堵も。<br>
<br>
僕も同じような顔をしていたでしょう。<br>
<br>
『あの日』以来感じていることは自分の空想の産物でも、まして、気が狂ったわけでもない。<br>
現実に起きていることだと。<br>
彼と僕は同じ力を持っていると。<br>
<br>
僕は両親に、あたりを散歩する旨を伝えました。<br>
彼に聞こえるように。<br>
<br>
そして歩き出しました。<br>
<br>
しばらくして、彼が後ろから歩いてきました。<br>
そして僕に尋ねます。<br>
「貴方も知ってしまったのですか?」と。<br>
<br>
しばらく彼と話をしました。<br>
僕たち以外にも同じ力を持っている人がいること。<br>
彼らは世界を守るために活動を始めていること。<br>
彼らは『機関』を作ったこと。<br>
<br>
どうやら彼は、僕を捜していたようです。<br>
現実を知らせるために。<br>
<br>
ところで、彼から聞いた話のうちに許せないことがありました。<br>
正確に言うと、世の中の不公平を嘆くべきことがありました。<br>
それは一人の男のことです。<br>
彼は力に目覚めました。しかし、彼は力を使うことを拒否したというのです。<br>
彼は自分の財力で、機関を金銭面で援助するが、それ以外の行動はしないと言ったそうです。<br>
<br>
その話を聞いた時、涙がこぼれました。<br>
自分にも社会的な「力」があれば、きっと平穏な生活が送れるだろう、とね。<br>
<br>
もっとも温和な老紳士は、彼のおかげで機関はまともに活動できるといっていました。<br>
ほかにも、スポンサーとなる人はいるようですが、彼によるところが一番大きい、と。<br>
その後、彼は機関側の提案を示してきました。<br>
<br>
学校の授業中、および深夜、早朝の閉鎖空間は対処しなくてよい。<br>
しかし、放課後、休日のときは対処してほしい、と。<br>
<br>
知ってしまった以上は行動しなければなりません。<br>
<br>
僕は機関の提案に乗るしかなかったわけです。<br>
<br>
<br>
正直に言いましょう。僕は涼宮ハルヒが憎かった。<br>
<br>
何度思ったことでしょう。<br>
<br>
彼女は平穏な(彼女にすれば退屈、でしょうが)日常を送っているのに、<br>
なぜ僕はあの灰色の閉鎖空間で、神人と戦わなければならないのか?<br>
なぜ、彼女のイライラを僕らが解消しなければいけないのか?<br>
ふざけるな社会生活不適応者、とまで思ったこともあります。<br>
<br>
<br>
それから三年が過ぎました。<br>
その間に僕の世界観は大幅に変貌を遂げました。<br>
宇宙人のうろつくせかい。未来人がいる世界。<br>
SFの中の話が目の前で繰り広げられているわけですから。<br>
<br>
そして五月です。<br>
彼が涼宮さんとコミュニケーションを成立させた月。<br>
SOS団が出来た月。<br>
朝比奈みくる、長門有希が彼女に接触した月。<br>
そして、僕が彼女に接触した月でもあります。<br>
<br>
さらに言えば、世界崩壊の危機があった月でもあります。<br>
<br>
まぁ、無事にすみましたが。<br>
<br>
<br>
実を言えば僕は彼に嫉妬していました。<br>
<br>
彼も僕と同じ涼宮さんに選ばれた人である。<br>
僕は偶然に、彼は必然に。<br>
同じ選ばれたものでありながら、なんと立場の違うことか。<br>
<br>
彼は自分の都合で行動してもいいのです。<br>
彼が涼宮さんを不快にしても、誰も彼を責めません。<br>
なぜなら彼は何かに所属しているわけではないから。<br>
<br>
しかし、僕は?<br>
僕は機関の決めたことに従って動くしかないのです。<br>
彼女に必要以上の刺激を与えないように。<br>
<br>
<br>
さらに時は過ぎました。<br>
僕らが高校一年生を終えるときには彼女はずいぶん落ち着きました。<br>
その間に僕の彼女に対する評価もかわりました。<br>
自分の求める物を探す彼女の前向きすぎるほどに、前向きな姿勢に共感した、とでも言いましょうか?<br>
さらには、彼女が落ち着いてきたことに伴い、僕の学生生活は普通のものに近づきました。<br>
そうなって気づくのです。彼女と、またSOS団の仲間といると退屈しない、と。<br>
<br>
そして、僕にとって第二の人生の転換期がきます。<br>
<br>
彼が彼女に告白したのです。<br>
<br>
彼女は現実を肯定しました。<br>
彼女の中では、超常現象を求める気持ちと、彼を求める気持ち、どちらも同じぐらいの重さだったのでしょう。<br>
少し彼の方に傾いていたかもしれませんが。<br>
<br>
僕には彼女の力が弱くなっていくのを感じました。<br>
しかしまだ消えてはいません。<br>
僕の力もまだ残っているようです。<br>
僕の推測ですが、彼は二重の意味で長門さんの言う「鍵」だったのでしょう。<br>
<br>
一つは彼女の能力を解放させる鍵。<br>
「ジョン・スミス」<br>
<br>
もう一つは彼女の能力を落ち着かせる鍵。<br>
ただ、これは二段仕掛けの鍵です。高校時代と、社会人になってからと。<br>
<br>
<br>
そして、今日。僕の力は完全に消えました。<br>
<br>
<br>
涼宮さんは、彼と結婚しました。<br>
<br>
もう、彼女は現実をかえる必要がないのです。<br>
<br>
結婚式では久々にSOS団が全員そろいました。<br>
<br>
長門さんによれば、情報統合思念体の観察対象は涼宮さんから、我々人類へと移ったようです。<br>
そして長門さんは、人間の感情を分析する役目を仰せつかっているそうです。<br>
どうやらそれはうまくいっているようです。<br>
彼女は微笑んでいましたから。<br>
<br>
朝比奈さんは高校時代のたよりなさそうな面影は全くありませんでした。<br>
もう、過去の僕たちを助けてくれているのでしょうか?<br>
<br>
そして涼宮さんと、彼。<br>
(もっとも涼宮さんはもう涼宮、では無いわけですが)とても幸せそうに笑っています。<br>
<br>
fin.</div>
<!-- ad -->
<div class="main">SOS団ですか……。<br />
懐かしい響きです。<br />
はじまりは僕が中学一年生だった『あの日』ですね。<br />
朝起きたときに自分の世界観が昨日までと180度違っていたのです。<br />
<br />
灰色の世界<br />
<br />
青い巨人赤い火の玉<br />
<br />
<br />
そして、涼宮ハルヒ<br />
<br />
<br />
もう、半狂乱でしたね。<br />
しかし、両親は思春期にありがちな行動ととらえていたようです。<br />
そんな僕を落ち着かせるため、気晴らしをさせるためにあるとき小旅行にいったんです。<br />
<br />
きれいな場所でした。しばらくその景色に見とれていました。<br />
そこにはもう一人観光客がいました。<br />
最初は気にしていなかったんです。<br />
<br />
僕は、なにげなしに彼の方を向きました。<br />
彼もこちらを見ていました。<br />
温和そうな老紳士でした。<br />
<br />
でも、僕は気づいてしまいました。<br />
彼も気づいてしまったのでしょう。深い悲しみが彼の目にありました。<br />
それと同時に安堵も。<br />
<br />
僕も同じような顔をしていたでしょう。<br />
<br />
『あの日』以来感じていることは自分の空想の産物でも、まして、気が狂ったわけでもない。<br />
現実に起きていることだと。<br />
彼と僕は同じ力を持っていると。<br />
<br />
僕は両親に、あたりを散歩する旨を伝えました。<br />
彼に聞こえるように。<br />
<br />
そして歩き出しました。<br />
<br />
しばらくして、彼が後ろから歩いてきました。<br />
そして僕に尋ねます。<br />
「貴方も知ってしまったのですか?」と。<br />
<br />
しばらく彼と話をしました。<br />
僕たち以外にも同じ力を持っている人がいること。<br />
彼らは世界を守るために活動を始めていること。<br />
彼らは『機関』を作ったこと。<br />
<br />
どうやら彼は、僕を捜していたようです。<br />
現実を知らせるために。<br />
<br />
ところで、彼から聞いた話のうちに許せないことがありました。<br />
正確に言うと、世の中の不公平を嘆くべきことがありました。<br />
それは一人の男のことです。<br />
彼は力に目覚めました。しかし、彼は力を使うことを拒否したというのです。<br />
彼は自分の財力で、機関を金銭面で援助するが、それ以外の行動はしないと言ったそうです。<br />
<br />
その話を聞いた時、涙がこぼれました。<br />
自分にも社会的な「力」があれば、きっと平穏な生活が送れるだろう、とね。<br />
<br />
もっとも温和な老紳士は、彼のおかげで機関はまともに活動できるといっていました。<br />
ほかにも、スポンサーとなる人はいるようですが、彼によるところが一番大きい、と。<br />
その後、彼は機関側の提案を示してきました。<br />
<br />
学校の授業中、および深夜、早朝の閉鎖空間は対処しなくてよい。<br />
しかし、放課後、休日のときは対処してほしい、と。<br />
<br />
知ってしまった以上は行動しなければなりません。<br />
<br />
僕は機関の提案に乗るしかなかったわけです。<br />
<br />
<br />
正直に言いましょう。僕は涼宮ハルヒが憎かった。<br />
<br />
何度思ったことでしょう。<br />
<br />
彼女は平穏な(彼女にすれば退屈、でしょうが)日常を送っているのに、<br />
なぜ僕はあの灰色の閉鎖空間で、神人と戦わなければならないのか?<br />
なぜ、彼女のイライラを僕らが解消しなければいけないのか?<br />
ふざけるな社会生活不適応者、とまで思ったこともあります。<br />
<br />
<br />
それから三年が過ぎました。<br />
その間に僕の世界観は大幅に変貌を遂げました。<br />
宇宙人のうろつくせかい。未来人がいる世界。<br />
SFの中の話が目の前で繰り広げられているわけですから。<br />
<br />
そして五月です。<br />
彼が涼宮さんとコミュニケーションを成立させた月。<br />
SOS団が出来た月。<br />
朝比奈みくる、長門有希が彼女に接触した月。<br />
そして、僕が彼女に接触した月でもあります。<br />
<br />
さらに言えば、世界崩壊の危機があった月でもあります。<br />
<br />
まぁ、無事にすみましたが。<br />
<br />
<br />
実を言えば僕は彼に嫉妬していました。<br />
<br />
彼も僕と同じ涼宮さんに選ばれた人である。<br />
僕は偶然に、彼は必然に。<br />
同じ選ばれたものでありながら、なんと立場の違うことか。<br />
<br />
彼は自分の都合で行動してもいいのです。<br />
彼が涼宮さんを不快にしても、誰も彼を責めません。<br />
なぜなら彼は何かに所属しているわけではないから。<br />
<br />
しかし、僕は?<br />
僕は機関の決めたことに従って動くしかないのです。<br />
彼女に必要以上の刺激を与えないように。<br />
<br />
<br />
さらに時は過ぎました。<br />
僕らが高校一年生を終えるときには彼女はずいぶん落ち着きました。<br />
その間に僕の彼女に対する評価もかわりました。<br />
自分の求める物を探す彼女の前向きすぎるほどに、前向きな姿勢に共感した、とでも言いましょうか?<br />
さらには、彼女が落ち着いてきたことに伴い、僕の学生生活は普通のものに近づきました。<br />
そうなって気づくのです。彼女と、またSOS団の仲間といると退屈しない、と。<br />
<br />
そして、僕にとって第二の人生の転換期がきます。<br />
<br />
彼が彼女に告白したのです。<br />
<br />
彼女は現実を肯定しました。<br />
彼女の中では、超常現象を求める気持ちと、彼を求める気持ち、どちらも同じぐらいの重さだったのでしょう。<br />
少し彼の方に傾いていたかもしれませんが。<br />
<br />
僕には彼女の力が弱くなっていくのを感じました。<br />
しかしまだ消えてはいません。<br />
僕の力もまだ残っているようです。<br />
僕の推測ですが、彼は二重の意味で長門さんの言う「鍵」だったのでしょう。<br />
<br />
一つは彼女の能力を解放させる鍵。<br />
「ジョン・スミス」<br />
<br />
もう一つは彼女の能力を落ち着かせる鍵。<br />
ただ、これは二段仕掛けの鍵です。高校時代と、社会人になってからと。<br />
<br />
<br />
そして、今日。僕の力は完全に消えました。<br />
<br />
<br />
涼宮さんは、彼と結婚しました。<br />
<br />
もう、彼女は現実をかえる必要がないのです。<br />
<br />
結婚式では久々にSOS団が全員そろいました。<br />
<br />
長門さんによれば、情報統合思念体の観察対象は涼宮さんから、我々人類へと移ったようです。<br />
そして長門さんは、人間の感情を分析する役目を仰せつかっているそうです。<br />
どうやらそれはうまくいっているようです。<br />
彼女は微笑んでいましたから。<br />
<br />
朝比奈さんは高校時代のたよりなさそうな面影は全くありませんでした。<br />
もう、過去の僕たちを助けてくれているのでしょうか?<br />
<br />
そして涼宮さんと、彼。<br />
(もっとも涼宮さんはもう涼宮、では無いわけですが)とても幸せそうに笑っています。<br />
<br />
fin.</div>