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<div class="main"> <p> サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないぐらいのどうでもいいような話ですが、それでも僕がいつまでその夢のような老人の存在を信じていたのかと言うと、まぁ・・・5歳ごろまででしょうか。<br> そして宇宙人や未来人や・・・その他諸々が本当はこの世界に存在しないと気付いたのも、小学校にあがる前の話です。<br> 特にそれらに居て欲しい、存在して欲しいと考えたことはありません。それになりたいと思ったことも。<br> しかし、そういうものは求めている人より、求めていない人のところへやってくるものなのかも知れません。<br> まぁいろいろあって僕は、なりたかった訳でも無いのに超能力者となり――、</p> <p>涼宮ハルヒと出会いました。</p> <p>これが偶然などでは無いことを、僕は知っています。</p> <p><br> それは高校生活2回目の夏休みのことです。<br> この猛暑をかの松尾芭蕉ならどう形容するのか、気になるところですが現代にそれを知る方法は皆無なのでその疑問を口に出したりはしません。<br> 僕は、詩人でも小説家でも無いので上手な形容を見つけることが出来ないので、データで説明しましょう。<br> 気温32.4度。高すぎる数値ではありませんが、全国の学生に「暑い」と感じさせるには充分な数値だと考えられます。<br> 「暑い・・・暑すぎる・・・」<br> そう、そして彼もその一人。<br> 「古泉、お前なんでこの暑さでそんな顔してられるんだ・・・汗ぐらいかけ」<br> 「僕も当然暑いと感じています。ホラ、ここ汗かいてるでしょう?」<br> 「側頭部にちょ~っとだけじゃねぇか。それは汗かいてる内には入らない」<br> 彼・・・キョンと呼ばれている彼のことですが・・・が明らかに不快そうな顔をしました。僕、何か嫌な事言いましたか?<br> 「朝比奈さん、今すごく暑いですよね?」<br> 「そうですね~。すごく暑いです」<br> メイド服を着ている彼女・・・朝比奈みくるが彼の問いかけに答えました。ややオウム返しのような感じがしますが。<br> すると何故か彼が「ほら見ろ」と言わんばかりの顔でこちらを見てきました。いや、僕は暑いと感じていると言った筈ですが?<br> 「長門、一応聞こう。暑いよな?」<br> 彼が窓際で読書に耽っている少女に話し掛けました。その少女・・・長門有希は、顔をこちらに向け、静かに言いました。<br> 「私という固体は何も感じていない。だが、現在の気温は一般的な有機生命体にそう感じさせるには充分な数値」<br> う~ん、何か僕がさっき考えていたことと似ていますが、まぁそれは良いでしょう。</p> <p>「いや~暑いわね~フロイト先生もびっくりよ」<br> この部室に彼女・・・涼宮ハルヒが入ってきました。<br> この猛暑とジークムント・フロイトがどう関係しているかは全くもって不明ですが、僕には彼女の一言一言を無視出来ない理由があります。今度調べて置きましょう。<br> 「というわけで明日、海に行きましょう。朝8時に駅に集合」<br> 相変わらず行動の早い人ですね。<br> 「とても良いと思いますよ」<br> 僕はそう相槌を打ちました。本心です。<br> ・・・いままで何回かは嘘をついて涼宮さんを肯定したことがありますがね。<br> 「そうよね!夏はやっぱ海よ!キョンもみくるちゃんも、異論は無いわね?」<br> 長門有希には聞かなくても大丈夫でしょうね。<br> 「ちょっと待てハルヒ、急すぎる。いくらなんでも明日は無いだろ」<br> 異論を申し立てている者が一人居ますが・・・そんな彼も最終的には彼女に従うことになります。いつものパターンというやつですね。<br> 「何?文句あるの?どうせあんた暇でしょ?行ったらみくるちゃんの水着姿見れるわよ?」<br> 「いや、それには興味をそそ・・・じゃなくてだな、俺にも用事ぐらいある。明日は絶対無理だ」<br> 「そんなに言うなら聞いてあげましょう。何の用?」<br> 「里帰りだ」<br> 彼は短くそう言うと、あとにこう付け加えました。<br> 「あと一週間は向こうに居る。それまで部活には参加出来ない」<br> 彼も一応これを『部活』と考えているんですね。<br> 「そ、そうなの?じゃぁ予定変更。私達もキョンの実家に行きましょう。どうせそんなに遠くないでしょう?」<br> 「それは頼むからやめてくれ」<br> 「何でよ?何か見られちゃいけないものでもあるの?あ、おじぃちゃんがすんごい気難しい人とか!?」<br> 「だからな―――」<br> この二人が口論を始めると、僕は気が気でなりません。涼宮ハルヒをあまり刺激して欲しくはありませんからね。</p> <p> 「じゃぁもういいわよ!私達があんたとは関係なくあんたの実家に行くから!それで文句無いでしょ!!」<br> 「いや、おまっ、文句しか無ぇよ!なんで俺と関係無しに俺の実家に来るんだよ!?根本的に間違ってるだろ!?」<br> ・・・今日は、いつもと様子が違いますね。そろそろ危ないです。<br> 「あの、二人ともそのくらいにしてはどうでしょうか」<br> 僕はそう言いながら彼に目配せしました。『これ以上続けていては閉鎖空間が発生してしまう』と伝えたつもりなんですが。<br> 「古泉、お前考えても見ろ。俺には明日里帰りして、じぃちゃんやばぁちゃんと半年ぶりの再会を果たすわけだ。それを海に行くからって辞めろってのか?」<br> 客観的に見ると・・・彼の言い分が正しいと思われます。<br> 「だからあんたの家に行くって言ってるじゃない!ねぇ古泉君!古泉君はどう思う?」<br> しかし、涼宮ハルヒの意見に真っ向から逆らうことも出来ません。<br> 「とにかく落ち着いて下さい。涼宮さん、別に明日で無くても良いのではないですか?彼が帰ってきたあとでも」<br> こう言うのが一番良い筈でした。彼にとっても、彼女にとっても。<br> しかし、僕がそれを知ったのは、涼宮さんがこう言う直前です。<br> 「ああ、古泉君もキョンの味方なんだ!じゃぁもういいわよ!有希、みくるちゃん、私達だけで行きましょう」<br> 「あ、あの・・・涼宮さん・・・」<br> 「何?みくるちゃん、何か言いたいことがあるの?」<br> 僕は、こんなことをしている場合ではありません。朝比奈みくるの問いかけから話が膨らむとも思えません、ここは彼に任せましょう。<br> 「あ、すみません、用事を思い出しました。それで、明日はどうしますか?」<br> 「私達だけで行く」<br> 「そうですか」<br> そんな短い会話を交わしたあと、僕は急いで部室を出ました。</p> <p><br> 閉鎖空間が発生しました。<br> 僕は急いで校舎を出て、校門へ向かいました。そこには、いつも通り黒塗りタクシーが止まっていました。<br> 「規模は」<br> 僕が運転手にそう聞くと、その運転手は答えました。<br> 「いつもと同じぐらいです。大して重要視することも無いでしょう」<br> 「そうですか」<br> 正直言うと・・・あの部室の修羅場より閉鎖空間の方が楽だと、僕は思いました。彼には悪いですけどね。</p> <p> 閉鎖空間に入り、&lt;神人&gt;を倒すところは割愛させて頂きます。対して特筆すべきことも無く、&lt;神人&gt;は倒され、閉鎖空間も消えました。<br> 閉鎖空間から出ると同時、彼から電話がありました。<br> 『古泉か?明日だが、結局ハルヒ達が俺の実家に来ることになった』<br> 「そうですか。そこには僕が行っても?」<br> 『ああ、もうこうなったら構わない』<br> 「フフ、楽しみにしておきます」<br> 僕はそう言って、電話を切りました。<br> 電話を切ると、僕は安心と同時に少し愉快だと、そう感じました。<br> そう、何があっても結局こうなるんです。いつものパターンなので。<br> 彼は涼宮ハルヒに抗えない。</p> <p> 僕は帰りのタクシーの中で、彼の実家はどんなものなのだろうか、彼の祖父・祖母はどんな人だろうか、と。<br> そんな『普通』なことを考えていました。<br> <br> 終わり<br></p> </div> <!-- ad -->
<div class="main"> <p> サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないぐらいのどうでもいいような話ですが、それでも僕がいつまでその夢のような老人の存在を信じていたのかと言うと、まぁ・・・5歳ごろまででしょうか。<br /> そして宇宙人や未来人や・・・その他諸々が本当はこの世界に存在しないと気付いたのも、小学校にあがる前の話です。<br /> 特にそれらに居て欲しい、存在して欲しいと考えたことはありません。それになりたいと思ったことも。<br /> しかし、そういうものは求めている人より、求めていない人のところへやってくるものなのかも知れません。<br /> まぁいろいろあって僕は、なりたかった訳でも無いのに超能力者となり――、</p> <p>涼宮ハルヒと出会いました。</p> <p>これが偶然などでは無いことを、僕は知っています。</p> <p><br /> それは高校生活2回目の夏休みのことです。<br /> この猛暑をかの松尾芭蕉ならどう形容するのか、気になるところですが現代にそれを知る方法は皆無なのでその疑問を口に出したりはしません。<br /> 僕は、詩人でも小説家でも無いので上手な形容を見つけることが出来ないので、データで説明しましょう。<br /> 気温32.4度。高すぎる数値ではありませんが、全国の学生に「暑い」と感じさせるには充分な数値だと考えられます。<br /> 「暑い・・・暑すぎる・・・」<br /> そう、そして彼もその一人。<br /> 「古泉、お前なんでこの暑さでそんな顔してられるんだ・・・汗ぐらいかけ」<br /> 「僕も当然暑いと感じています。ホラ、ここ汗かいてるでしょう?」<br /> 「側頭部にちょ~っとだけじゃねぇか。それは汗かいてる内には入らない」<br /> 彼・・・キョンと呼ばれている彼のことですが・・・が明らかに不快そうな顔をしました。僕、何か嫌な事言いましたか?<br /> 「朝比奈さん、今すごく暑いですよね?」<br /> 「そうですね~。すごく暑いです」<br /> メイド服を着ている彼女・・・朝比奈みくるが彼の問いかけに答えました。ややオウム返しのような感じがしますが。<br /> すると何故か彼が「ほら見ろ」と言わんばかりの顔でこちらを見てきました。いや、僕は暑いと感じていると言った筈ですが?<br /> 「長門、一応聞こう。暑いよな?」<br /> 彼が窓際で読書に耽っている少女に話し掛けました。その少女・・・長門有希は、顔をこちらに向け、静かに言いました。<br /> 「私という固体は何も感じていない。だが、現在の気温は一般的な有機生命体にそう感じさせるには充分な数値」<br /> う~ん、何か僕がさっき考えていたことと似ていますが、まぁそれは良いでしょう。</p> <p>「いや~暑いわね~フロイト先生もびっくりよ」<br /> この部室に彼女・・・涼宮ハルヒが入ってきました。<br /> この猛暑とジークムント・フロイトがどう関係しているかは全くもって不明ですが、僕には彼女の一言一言を無視出来ない理由があります。今度調べて置きましょう。<br /> 「というわけで明日、海に行きましょう。朝8時に駅に集合」<br /> 相変わらず行動の早い人ですね。<br /> 「とても良いと思いますよ」<br /> 僕はそう相槌を打ちました。本心です。<br /> ・・・いままで何回かは嘘をついて涼宮さんを肯定したことがありますがね。<br /> 「そうよね!夏はやっぱ海よ!キョンもみくるちゃんも、異論は無いわね?」<br /> 長門有希には聞かなくても大丈夫でしょうね。<br /> 「ちょっと待てハルヒ、急すぎる。いくらなんでも明日は無いだろ」<br /> 異論を申し立てている者が一人居ますが・・・そんな彼も最終的には彼女に従うことになります。いつものパターンというやつですね。<br /> 「何?文句あるの?どうせあんた暇でしょ?行ったらみくるちゃんの水着姿見れるわよ?」<br /> 「いや、それには興味をそそ・・・じゃなくてだな、俺にも用事ぐらいある。明日は絶対無理だ」<br /> 「そんなに言うなら聞いてあげましょう。何の用?」<br /> 「里帰りだ」<br /> 彼は短くそう言うと、あとにこう付け加えました。<br /> 「あと一週間は向こうに居る。それまで部活には参加出来ない」<br /> 彼も一応これを『部活』と考えているんですね。<br /> 「そ、そうなの?じゃぁ予定変更。私達もキョンの実家に行きましょう。どうせそんなに遠くないでしょう?」<br /> 「それは頼むからやめてくれ」<br /> 「何でよ?何か見られちゃいけないものでもあるの?あ、おじぃちゃんがすんごい気難しい人とか!?」<br /> 「だからな―――」<br /> この二人が口論を始めると、僕は気が気でなりません。涼宮ハルヒをあまり刺激して欲しくはありませんからね。</p> <p>「じゃぁもういいわよ!私達があんたとは関係なくあんたの実家に行くから!それで文句無いでしょ!!」<br /> 「いや、おまっ、文句しか無ぇよ!なんで俺と関係無しに俺の実家に来るんだよ!?根本的に間違ってるだろ!?」<br /> ・・・今日は、いつもと様子が違いますね。そろそろ危ないです。<br /> 「あの、二人ともそのくらいにしてはどうでしょうか」<br /> 僕はそう言いながら彼に目配せしました。『これ以上続けていては閉鎖空間が発生してしまう』と伝えたつもりなんですが。<br /> 「古泉、お前考えても見ろ。俺には明日里帰りして、じぃちゃんやばぁちゃんと半年ぶりの再会を果たすわけだ。それを海に行くからって辞めろってのか?」<br /> 客観的に見ると・・・彼の言い分が正しいと思われます。<br /> 「だからあんたの家に行くって言ってるじゃない!ねぇ古泉君!古泉君はどう思う?」<br /> しかし、涼宮ハルヒの意見に真っ向から逆らうことも出来ません。<br /> 「とにかく落ち着いて下さい。涼宮さん、別に明日で無くても良いのではないですか?彼が帰ってきたあとでも」<br /> こう言うのが一番良い筈でした。彼にとっても、彼女にとっても。<br /> しかし、僕がそれを知ったのは、涼宮さんがこう言う直前です。<br /> 「ああ、古泉君もキョンの味方なんだ!じゃぁもういいわよ!有希、みくるちゃん、私達だけで行きましょう」<br /> 「あ、あの・・・涼宮さん・・・」<br /> 「何?みくるちゃん、何か言いたいことがあるの?」<br /> 僕は、こんなことをしている場合ではありません。朝比奈みくるの問いかけから話が膨らむとも思えません、ここは彼に任せましょう。<br /> 「あ、すみません、用事を思い出しました。それで、明日はどうしますか?」<br /> 「私達だけで行く」<br /> 「そうですか」<br /> そんな短い会話を交わしたあと、僕は急いで部室を出ました。</p> <p><br /> 閉鎖空間が発生しました。<br /> 僕は急いで校舎を出て、校門へ向かいました。そこには、いつも通り黒塗りタクシーが止まっていました。<br /> 「規模は」<br /> 僕が運転手にそう聞くと、その運転手は答えました。<br /> 「いつもと同じぐらいです。大して重要視することも無いでしょう」<br /> 「そうですか」<br /> 正直言うと・・・あの部室の修羅場より閉鎖空間の方が楽だと、僕は思いました。彼には悪いですけどね。</p> <p> 閉鎖空間に入り、&lt;神人&gt;を倒すところは割愛させて頂きます。対して特筆すべきことも無く、&lt;神人&gt;は倒され、閉鎖空間も消えました。<br /> 閉鎖空間から出ると同時、彼から電話がありました。<br /> 『古泉か?明日だが、結局ハルヒ達が俺の実家に来ることになった』<br /> 「そうですか。そこには僕が行っても?」<br /> 『ああ、もうこうなったら構わない』<br /> 「フフ、楽しみにしておきます」<br /> 僕はそう言って、電話を切りました。<br /> 電話を切ると、僕は安心と同時に少し愉快だと、そう感じました。<br /> そう、何があっても結局こうなるんです。いつものパターンなので。<br /> 彼は涼宮ハルヒに抗えない。</p> <p>僕は帰りのタクシーの中で、彼の実家はどんなものなのだろうか、彼の祖父・祖母はどんな人だろうか、と。<br /> そんな『普通』なことを考えていました。<br /> <br /> 終わり</p> </div>

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