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「『God knows』 9章」(2021/01/09 (土) 22:03:09) の最新版変更点
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<div class="main">
<div>『God knows』<br></div>
<br>
<div>~9章~<br></div>
<br>
<div>歩いて帰る俺。<br>
家に着く頃には24時を回るだろうな。<br>
言い訳を考えつつ歩く、歩く。<br>
決めた、もうごり押しだ。<br>
ヤケクソになって決めた俺の作戦を発表しよう。<br></div>
<br>
<div>
帰宅→叱られる際に彼女の家に行っていたことカミングアウト→みくるさんの住む場所が無くなるとでっち上げる<br>
</div>
<br>
<div>完璧だろ?…………笑ってくれ。<br>
家に…着いた。<br>
正直、入りたくねぇ。<br>
だがそういうわけにもいかず、心を決めて家に入る。<br>
「ただい……「キョン!こっちに来なさい!!」<br>
鬼の声が聞こえる……。<br>
みくるさん、《あなたのキョン》は、生きて帰れないかもしれません……。<br>
</div>
<br>
<div>
え~、ここからは母親とのやり取りをダイジェストでどうぞ。<br>
……一人言増えたな、俺。<br></div>
<br>
<div>
「キョン!あなたこんな時間まで何処に言ってたの!?」<br>
「まぁ……、あれだ。俺の彼女の家だ。」<br>
「あら、あんたいつの間に彼女なんて……なら、仕方無いわね。」<br>
「それでいいのか?……まぁいいが、そこで相談があるんだが。」<br>
「なに?はっきり言いなさい。」<br>
「みくるさんと一緒に住んでいいか?」<br>
パッシーン!<br></div>
<br>
<div>
「いや、待った!言葉が足りてなかった!実は、かくかくしかじかで……。」<br>
「あらぁ~、そうなの…。それならそうと早く言いなさいよ。」<br>
「と、言うわけでこの通りだ、頼む。」<br>
「うちなら別に全然構わないわよ?子どもが一人増えるみたいで嬉しいわぁ……。」<br>
</div>
<br>
<div>と、うちの親は凄まじくさばけているらしい。<br>
まぁ、ビンタを食らう、土下座をするなどの虚しい犠牲はあったがな。<br>
</div>
<br>
<br>
<div>
とりあえず、これで晴れてみくるさんはうちに来ることになるわけだ。<br>
………ヤバい、意識したら胸がドキドキしてきた。<br>
と、とりあえず電話で伝えなきゃな。<br>
……1コール……2コー…<br>
ピッ<br>
「は、はいぃっ!キョ、キョンくん、ど、どうかしましたかぁ!?」<br>
慌ただしい人だ。<br>
「あの、え~……うちの親の許可……取れましたよ?」<br>
「ふえっ!?ほ、ほんとですかぁ?」<br>
「大マジです。…メチャクチャ喜んで受け入れてくれそうですよ。」<br>
「そ、そっかぁ……。えへへ…。」<br>
「……なにを笑ってるんですか?」<br>
「…え!?や、や、な、なななんでもないですっ!!そ、それより、い、いつ……行きましょう…か?」<br>
「そうですね、荷物も運ばなきゃいけないし……土曜にしましょうか。」<br>
</div>
<br>
<div>
「は、はい……。キョ、キョン、くん?わ、わたし……ドキドキしてきちゃった、よぉ……。」<br>
「………俺もですよ。とりあえず、明日またいろいろ話をしましょう?」<br>
「はい……。そ、それじゃあ、また……今日に。」<br>
ピッ。<br>
………そうか、確かに『また、今日』だな。<br></div>
<br>
<br>
<div>
ここから金曜まで、俺達は団活動が終わりを告げると、みくるさんの家に行き、荷物をまとめたりしていた。<br>
「……よしっ!これで終わりですよ!」<br>
「キョンくん……ほ、ほんとに、あ、ありがとうございましたぁ…。」<br>
「いえいえ。あとは……明日、うちに来るだけ…ですね。へへへ、なんか、照れますね。」<br>
「わ、わたし……こないだ、からず、ずっと、き、緊張……してます…。」<br>
声が震えている。<br>
俺は、みくるさんを後ろから抱きしめ、そのまま自分が椅子になるように座りこんだ。<br>
「ふぇっ?キョ、キョンくん?は、恥ずかしいです…よぉ?」<br>
「落ち着いてください。俺がついてますから、ね?」<br>
……言ってて思った、クサいな、これ。<br></div>
<br>
<div>「うふふふ…、キョンくん、クサい…です。」<br>
ほら、言われた。<br>
「で、でも、……そ、そこがか、か、かっこ…よくて、や、優しいです……。」<br>
「こんな場面でからかうもんじゃないですよ。……お仕置です!!」<br>
俺は、後ろからみくるさんをくすぐりだした。<br>
「わ、わひゃっ!?……あ、あはははっ!やだっ、く、くすぐったいっ……あひゃあっ!キ、キョンくん…や、やめてぇ~!!」<br>
この後、5分に渡って俺はみくるさんをくすぐり続けた。<br>
「はぁ…はぁ……、キョ、キョンくん…エロい、ですぅ…。」<br>
「そうですかね?ま、《お仕置》だからしょうがないですよ。」<br>
「む~…こ、今度はわ、わたしが……しますからねっ!」<br>
「あはは、頑張ってください。……それじゃ、今日は帰ります。明日は朝一番で迎えに来ますから。」<br>
みくるさんは少し悲しそうな顔をして、<br>
「あ……うん。さ、寂しいですから……は、早く…来てください、ね?」<br>
と言った。<br>
俺は、みくるさんをギュッと抱きしめ、別れを告げて家に帰った。<br>
</div>
<br>
<div>さて、俺は今、みくるさんの家の前にいる。<br>
時間は8時半。<br>
下のオートロックは、たまたま通りがかった人が開けてくれた。<br>
ピンポーン。<br>
……合計12回目のチャイム、まだ出てこない。<br>
俺が13回目を押そうとした時、中からドタバタと音が聞こえ、ドアが開いた。<br>
「ふぁ、ふぁいっ!ご、ごめんなさいっ!……あれ?キョ、キョンくん?な、なんでここ…にぃ?」<br>
ベチッ!<br>
俺は、即時にデコピンを叩き込んだ。<br>
「目、醒めましたか?」<br>
「痛いよぉ~…あうぅ~。ね、寝坊しちゃいましたぁ……、ご、ごめんなさい、です…。」<br>
「やれやれ。」俺はお決まりのセリフを言い、みくるさんに、<br>
「早く着替えて、荷物を持って来てください。俺、ここで待ってますから。」<br>
と伝えた。<br></div>
<br>
<br>
<div>俺の家の前。<br>
……もう10分も立ち尽くしている。<br>
「そろそろ、入りましょうよ。」<br>
「ふえっ!?も、もう少しっ!こ、心の準備を……「あっれ~!?みくるちゃんだ!いらっしゃ~い!!」<br>
妹に引きずり込まれ、家の中に入って行った。<br>
よくやった、妹よ。お前にはあとでお菓子をやろう。<br></div>
<br>
<div>
え~そんなわけで、うちの親に挨拶したみくるさんと二人で、俺の部屋にいるわけだ。<br>
</div>
<br>
<div>
「キョ、キョンくんのお部屋、キョンくんの……匂いがしますねぇ…。」<br>
どっかで聞いたセリフだ。<br>
「じゃあ、消臭でもしますか?」<br>
俺は軽く笑い答えた。<br>
みくるさんは顔を赤くして、<br>
「もうっ!キョンくんのいじわるっ!!」<br>
と答えた。<br>
「ふわあぁ……、つ、疲れましたねぇ。」<br>
「朝、早かったですからねぇ。」<br>
「ふえっ!?……ご、ごめんなさい、です…。」<br>
「冗談ですよ。……それより、しばらく寝ましょうか?昼飯までまだ時間ありますし。」<br>
「あ、………は、はい。」<br>
「じゃあ、俺は布団取って来ますから、ベッドで寝てていいですよ。」<br>
と言うと、俺は立ち上がり、部屋を出ようとした。<br>
…………シャツの裾を掴まれている。<br>
後ろを見ると、みくるさんが上目遣いでこっちを見ているではないか。<br>
このシチュエーション、男なら萌え死んでもおかしくない!!<br>
と思う自分を、断腸の思いで抑え、口を開く。<br>
「み、みくるさん?どうしたんですか?」<br>
意外な言葉が帰って来る。<br>
「わ、わたし~、あの、枕……変わっちゃうとね?ね、寝れないん…です。」<br>
はい?<br>
そんな訳ないでしょう。<br></div>
<br>
<div>
あなたは夏休みの天体観測で、ハルヒに持たれかかって寝てましたよね?<br>
自分の中の突っ込みキャラを必死で抑える。<br>
我慢だ…我慢。<br>
「そ、それで?」<br>
俺はかなり不思議な顔で、口を開いていた。<br>
みくるさんは一人で顔を真っ赤にして、答えた。<br>
「で、ですから……あ、あのぅ…その、ほら…。ね?」<br>
判るか。これで判った奴にはSOS団の1日雑用交代券をくれてやるぜ。<br>
「いや、『ね?』とか言われても。」<br>
「む~…、あの、だからぁ……う、う、腕枕……して、くださいぃ…。」<br>
そういうことか。理解したらいきなり恥ずかしくなってきた。自分でもわかるくらい顔が赤くなってるぜ。<br>
しかし、俺の心は既に決まっている。<br>
「そう……ですか。わかりました。ほら、来てください。」<br>
俺は、ベッドに寝転がり、腕を横に出した。<br>
その腕に、頭を乗せ、俺の方を向いて寝転ぶみくるさん。<br>
俺の理性は限界寸前だぜ、アッハハハー!!<br>
「うふふふ、こ、これなら落ち着けそう…です。」<br>
そうですか、俺は既に心拍数が正常でないのですが。<br>
俺は、さっさと寝ることにしよう、じゃないと暴走してしまう。<br>
「そ、それじゃおやすみなさい!」<br>
「は、はい。おやすみなさい……です。」<br></div>
<br>
<div>目を覚ました。<br>
みくるさんの方を伺ってみる……ん?今、キスされたか?<br>
「今、唇触れましたよね?」<br>
「っ!?あ、ご、ごめんなさいっ!!つ、つい……キョ、キョンくんの寝顔…かわいかったから……。」<br>
「そうですか。…へへへ、今、キスしたんですよね?」<br>
「……はいぃ、もう、恥ずかしい…です。言わないで……。」<br>
俺は会話を楽しんだ後、時計に目をやった。<br>
【15:03】<br>
あれ?昼飯はどうした?<br>
妹こなかったよな?<br>
いろいろ考えつつ、俺はみくるさんと下に降りた。<br>
妹は………いた。<br>
「おい、なんで昼飯の時に起こさなかった?」<br>
「え~?だってキョンくんとみくるちゃん、抱き合って気持ち良さそうに寝てたんだもん。お母さんに言ったらね、『疲れてるだろうからほっときなさい』って言ってたから。」<br>
親に……バレたらしいな。<br>
「あ!!そうそう!起きたら2人で何か食べてきなさいって!!」<br>
妹が二千円を渡してくる。しかも、千円2枚ではなく、二千円札だ。<br>
</div>
<br>
<div>これは取っておこう。<br>
などと考えていると、隣りでは今にも倒れるんじゃないかという程、真っ赤な顔をしている方がいらっしゃるので、俺は肩を抱いて家を出ることにした。<br>
</div>
<br>
<div>「………見られちゃいましたねぇ…。」<br>
「ですね。今日は厄日かもしれないですね、あっはっは!」<br>
「わ、笑えないですよぉ……もう…。」<br>
話をしている俺達が向かった先は、SOS団の集合場所である喫茶店だった。<br>
特に意味はないが、話しながら勝手に足が向いていたのである。<br>
</div>
<br>
<div>「いらっしゃいませぇ!」<br>
の言葉で中に入り、奥の席に二人でついた。<br>
「そういえば、今日って市内探索じゃなかったですかね?みんな歩いてんのかな?」<br>
「で、でも……3人なら、中止に…なりませんかぁ?」<br>
俺はピンときた。<br>
マズい。<br>
もしかして、今日行かないことをあの3人は知らないんじゃないか?<br>
「み、みくるさん。あの……今日、俺達が休むって連絡…しました?」<br>
「え、えぇっ!?キョ、キョンくんが……してくれたんじゃなかったんですかぁ!?」<br>
</div>
<br>
<div>この展開……ヤバい。<br>
「み、みくるさん!場所変えましょ……」<br>
………遅かった。<br>
そこには、黙って俺達の会話を聞いている3人の姿があった。<br>
「あんた達……あたしの電話を無視した挙句、二人でお食事かしら?団活動もさぼって……。」<br>
「ち、ちち違うんです!!す、す、涼宮さん、これにはわけが……。」<br>
「じゃあ、その《わけ》とやらをた~っぷりと聞かせてもらおうかしら。……有希、古泉くん、好きな物を好きなだけ頼んじゃいなさい!」<br>
</div>
<br>
<div>ああ、やはり今日は厄日か………。<br></div>
<br>
<div>~9章・終~<br></div>
<br>
<br>
<ul>
<li><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1346.html"><font color=
"#000000">10章</font></a></li>
</ul>
</div>
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<div class="main">
<div>『God knows』<br /></div>
<br />
<div>~9章~<br /></div>
<br />
<div>歩いて帰る俺。<br />
家に着く頃には24時を回るだろうな。<br />
言い訳を考えつつ歩く、歩く。<br />
決めた、もうごり押しだ。<br />
ヤケクソになって決めた俺の作戦を発表しよう。<br /></div>
<br />
<div>帰宅→叱られる際に彼女の家に行っていたことカミングアウト→みくるさんの住む場所が無くなるとでっち上げる<br /></div>
<br />
<div>完璧だろ?…………笑ってくれ。<br />
家に…着いた。<br />
正直、入りたくねぇ。<br />
だがそういうわけにもいかず、心を決めて家に入る。<br />
「ただい……「キョン!こっちに来なさい!!」<br />
鬼の声が聞こえる……。<br />
みくるさん、《あなたのキョン》は、生きて帰れないかもしれません……。<br /></div>
<br />
<div>え~、ここからは母親とのやり取りをダイジェストでどうぞ。<br />
……一人言増えたな、俺。<br /></div>
<br />
<div>「キョン!あなたこんな時間まで何処に言ってたの!?」<br />
「まぁ……、あれだ。俺の彼女の家だ。」<br />
「あら、あんたいつの間に彼女なんて……なら、仕方無いわね。」<br />
「それでいいのか?……まぁいいが、そこで相談があるんだが。」<br />
「なに?はっきり言いなさい。」<br />
「みくるさんと一緒に住んでいいか?」<br />
パッシーン!<br /></div>
<br />
<div>「いや、待った!言葉が足りてなかった!実は、かくかくしかじかで……。」<br />
「あらぁ~、そうなの…。それならそうと早く言いなさいよ。」<br />
「と、言うわけでこの通りだ、頼む。」<br />
「うちなら別に全然構わないわよ?子どもが一人増えるみたいで嬉しいわぁ……。」<br /></div>
<br />
<div>と、うちの親は凄まじくさばけているらしい。<br />
まぁ、ビンタを食らう、土下座をするなどの虚しい犠牲はあったがな。<br /></div>
<br />
<br />
<div>とりあえず、これで晴れてみくるさんはうちに来ることになるわけだ。<br />
………ヤバい、意識したら胸がドキドキしてきた。<br />
と、とりあえず電話で伝えなきゃな。<br />
……1コール……2コー…<br />
ピッ<br />
「は、はいぃっ!キョ、キョンくん、ど、どうかしましたかぁ!?」<br />
慌ただしい人だ。<br />
「あの、え~……うちの親の許可……取れましたよ?」<br />
「ふえっ!?ほ、ほんとですかぁ?」<br />
「大マジです。…メチャクチャ喜んで受け入れてくれそうですよ。」<br />
「そ、そっかぁ……。えへへ…。」<br />
「……なにを笑ってるんですか?」<br />
「…え!?や、や、な、なななんでもないですっ!!そ、それより、い、いつ……行きましょう…か?」<br />
「そうですね、荷物も運ばなきゃいけないし……土曜にしましょうか。」<br /></div>
<br />
<div>「は、はい……。キョ、キョン、くん?わ、わたし……ドキドキしてきちゃった、よぉ……。」<br />
「………俺もですよ。とりあえず、明日またいろいろ話をしましょう?」<br />
「はい……。そ、それじゃあ、また……今日に。」<br />
ピッ。<br />
………そうか、確かに『また、今日』だな。<br /></div>
<br />
<br />
<div>ここから金曜まで、俺達は団活動が終わりを告げると、みくるさんの家に行き、荷物をまとめたりしていた。<br />
「……よしっ!これで終わりですよ!」<br />
「キョンくん……ほ、ほんとに、あ、ありがとうございましたぁ…。」<br />
「いえいえ。あとは……明日、うちに来るだけ…ですね。へへへ、なんか、照れますね。」<br />
「わ、わたし……こないだ、からず、ずっと、き、緊張……してます…。」<br />
声が震えている。<br />
俺は、みくるさんを後ろから抱きしめ、そのまま自分が椅子になるように座りこんだ。<br />
「ふぇっ?キョ、キョンくん?は、恥ずかしいです…よぉ?」<br />
「落ち着いてください。俺がついてますから、ね?」<br />
……言ってて思った、クサいな、これ。<br /></div>
<br />
<div>「うふふふ…、キョンくん、クサい…です。」<br />
ほら、言われた。<br />
「で、でも、……そ、そこがか、か、かっこ…よくて、や、優しいです……。」<br />
「こんな場面でからかうもんじゃないですよ。……お仕置です!!」<br />
俺は、後ろからみくるさんをくすぐりだした。<br />
「わ、わひゃっ!?……あ、あはははっ!やだっ、く、くすぐったいっ……あひゃあっ!キ、キョンくん…や、やめてぇ~!!」<br />
この後、5分に渡って俺はみくるさんをくすぐり続けた。<br />
「はぁ…はぁ……、キョ、キョンくん…エロい、ですぅ…。」<br />
「そうですかね?ま、《お仕置》だからしょうがないですよ。」<br />
「む~…こ、今度はわ、わたしが……しますからねっ!」<br />
「あはは、頑張ってください。……それじゃ、今日は帰ります。明日は朝一番で迎えに来ますから。」<br />
みくるさんは少し悲しそうな顔をして、<br />
「あ……うん。さ、寂しいですから……は、早く…来てください、ね?」<br />
と言った。<br />
俺は、みくるさんをギュッと抱きしめ、別れを告げて家に帰った。<br /></div>
<br />
<div>さて、俺は今、みくるさんの家の前にいる。<br />
時間は8時半。<br />
下のオートロックは、たまたま通りがかった人が開けてくれた。<br />
ピンポーン。<br />
……合計12回目のチャイム、まだ出てこない。<br />
俺が13回目を押そうとした時、中からドタバタと音が聞こえ、ドアが開いた。<br />
「ふぁ、ふぁいっ!ご、ごめんなさいっ!……あれ?キョ、キョンくん?な、なんでここ…にぃ?」<br />
ベチッ!<br />
俺は、即時にデコピンを叩き込んだ。<br />
「目、醒めましたか?」<br />
「痛いよぉ~…あうぅ~。ね、寝坊しちゃいましたぁ……、ご、ごめんなさい、です…。」<br />
「やれやれ。」俺はお決まりのセリフを言い、みくるさんに、<br />
「早く着替えて、荷物を持って来てください。俺、ここで待ってますから。」<br />
と伝えた。<br /></div>
<br />
<br />
<div>俺の家の前。<br />
……もう10分も立ち尽くしている。<br />
「そろそろ、入りましょうよ。」<br />
「ふえっ!?も、もう少しっ!こ、心の準備を……「あっれ~!?みくるちゃんだ!いらっしゃ~い!!」<br />
妹に引きずり込まれ、家の中に入って行った。<br />
よくやった、妹よ。お前にはあとでお菓子をやろう。<br /></div>
<br />
<div>え~そんなわけで、うちの親に挨拶したみくるさんと二人で、俺の部屋にいるわけだ。<br /></div>
<br />
<div>「キョ、キョンくんのお部屋、キョンくんの……匂いがしますねぇ…。」<br />
どっかで聞いたセリフだ。<br />
「じゃあ、消臭でもしますか?」<br />
俺は軽く笑い答えた。<br />
みくるさんは顔を赤くして、<br />
「もうっ!キョンくんのいじわるっ!!」<br />
と答えた。<br />
「ふわあぁ……、つ、疲れましたねぇ。」<br />
「朝、早かったですからねぇ。」<br />
「ふえっ!?……ご、ごめんなさい、です…。」<br />
「冗談ですよ。……それより、しばらく寝ましょうか?昼飯までまだ時間ありますし。」<br />
「あ、………は、はい。」<br />
「じゃあ、俺は布団取って来ますから、ベッドで寝てていいですよ。」<br />
と言うと、俺は立ち上がり、部屋を出ようとした。<br />
…………シャツの裾を掴まれている。<br />
後ろを見ると、みくるさんが上目遣いでこっちを見ているではないか。<br />
このシチュエーション、男なら萌え死んでもおかしくない!!<br />
と思う自分を、断腸の思いで抑え、口を開く。<br />
「み、みくるさん?どうしたんですか?」<br />
意外な言葉が帰って来る。<br />
「わ、わたし~、あの、枕……変わっちゃうとね?ね、寝れないん…です。」<br />
はい?<br />
そんな訳ないでしょう。<br /></div>
<br />
<div>あなたは夏休みの天体観測で、ハルヒに持たれかかって寝てましたよね?<br />
自分の中の突っ込みキャラを必死で抑える。<br />
我慢だ…我慢。<br />
「そ、それで?」<br />
俺はかなり不思議な顔で、口を開いていた。<br />
みくるさんは一人で顔を真っ赤にして、答えた。<br />
「で、ですから……あ、あのぅ…その、ほら…。ね?」<br />
判るか。これで判った奴にはSOS団の1日雑用交代券をくれてやるぜ。<br />
「いや、『ね?』とか言われても。」<br />
「む~…、あの、だからぁ……う、う、腕枕……して、くださいぃ…。」<br />
そういうことか。理解したらいきなり恥ずかしくなってきた。自分でもわかるくらい顔が赤くなってるぜ。<br />
しかし、俺の心は既に決まっている。<br />
「そう……ですか。わかりました。ほら、来てください。」<br />
俺は、ベッドに寝転がり、腕を横に出した。<br />
その腕に、頭を乗せ、俺の方を向いて寝転ぶみくるさん。<br />
俺の理性は限界寸前だぜ、アッハハハー!!<br />
「うふふふ、こ、これなら落ち着けそう…です。」<br />
そうですか、俺は既に心拍数が正常でないのですが。<br />
俺は、さっさと寝ることにしよう、じゃないと暴走してしまう。<br />
「そ、それじゃおやすみなさい!」<br />
「は、はい。おやすみなさい……です。」<br /></div>
<br />
<div>目を覚ました。<br />
みくるさんの方を伺ってみる……ん?今、キスされたか?<br />
「今、唇触れましたよね?」<br />
「っ!?あ、ご、ごめんなさいっ!!つ、つい……キョ、キョンくんの寝顔…かわいかったから……。」<br />
「そうですか。…へへへ、今、キスしたんですよね?」<br />
「……はいぃ、もう、恥ずかしい…です。言わないで……。」<br />
俺は会話を楽しんだ後、時計に目をやった。<br />
【15:03】<br />
あれ?昼飯はどうした?<br />
妹こなかったよな?<br />
いろいろ考えつつ、俺はみくるさんと下に降りた。<br />
妹は………いた。<br />
「おい、なんで昼飯の時に起こさなかった?」<br />
「え~?だってキョンくんとみくるちゃん、抱き合って気持ち良さそうに寝てたんだもん。お母さんに言ったらね、『疲れてるだろうからほっときなさい』って言ってたから。」<br />
親に……バレたらしいな。<br />
「あ!!そうそう!起きたら2人で何か食べてきなさいって!!」<br />
妹が二千円を渡してくる。しかも、千円2枚ではなく、二千円札だ。<br /></div>
<br />
<div>これは取っておこう。<br />
などと考えていると、隣りでは今にも倒れるんじゃないかという程、真っ赤な顔をしている方がいらっしゃるので、俺は肩を抱いて家を出ることにした。<br /></div>
<br />
<div>「………見られちゃいましたねぇ…。」<br />
「ですね。今日は厄日かもしれないですね、あっはっは!」<br />
「わ、笑えないですよぉ……もう…。」<br />
話をしている俺達が向かった先は、SOS団の集合場所である喫茶店だった。<br />
特に意味はないが、話しながら勝手に足が向いていたのである。<br /></div>
<br />
<div>「いらっしゃいませぇ!」<br />
の言葉で中に入り、奥の席に二人でついた。<br />
「そういえば、今日って市内探索じゃなかったですかね?みんな歩いてんのかな?」<br />
「で、でも……3人なら、中止に…なりませんかぁ?」<br />
俺はピンときた。<br />
マズい。<br />
もしかして、今日行かないことをあの3人は知らないんじゃないか?<br />
「み、みくるさん。あの……今日、俺達が休むって連絡…しました?」<br />
「え、えぇっ!?キョ、キョンくんが……してくれたんじゃなかったんですかぁ!?」<br /></div>
<br />
<div>この展開……ヤバい。<br />
「み、みくるさん!場所変えましょ……」<br />
………遅かった。<br />
そこには、黙って俺達の会話を聞いている3人の姿があった。<br />
「あんた達……あたしの電話を無視した挙句、二人でお食事かしら?団活動もさぼって……。」<br />
「ち、ちち違うんです!!す、す、涼宮さん、これにはわけが……。」<br />
「じゃあ、その《わけ》とやらをた~っぷりと聞かせてもらおうかしら。……有希、古泉くん、好きな物を好きなだけ頼んじゃいなさい!」<br /></div>
<br />
<div>ああ、やはり今日は厄日か………。<br /></div>
<br />
<div>~9章・終~<br /></div>
<br />
<br />
<ul>
<li><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1346.html"><font color="#000000">10章</font></a></li>
</ul>
</div>