「Break the World 第四話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

Break the World 第四話」(2020/03/13 (金) 01:23:32) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<br> <div class="main">第四話 ― 笑顔 ―<br> <br>  沈黙が3人の間を支配する。それがどれだけなのか、わからない。<br>  一秒とも一分とも感じられる重い空気を破る一言が、飛び出した。<br> 「あたしが選ぶのは…………」<br> 「こっちの世界の存続よ」<br> <br>  …………<br>  ……<br>  …<br>  こっちの世界?ハルヒがさっき言ってた事と違わないか?<br> 「……本当に良いのだね?」<br>  "代弁者"が改めて確認するように訊いてくる。<br> 「二度も言わせないで。あたしはこの世界を残したいの」<br> 「……わかった。繋がっている最後の力はこの世界の保全に回そう」<br>  ふう。と"代弁者"が息を漏らす。<br> 「力と君達が途切れた時点で君達は消える事になる。時間はあと僅かだ」<br>  俺は呆然としてハルヒの横顔を見ていた。しばらくして俺の視線に気付いたのか、<br>  ハルヒも俺の顔を見る。<br> 「これでいいのよ」<br>  宣言するかのようだった。何を思ってそう言ったのか確かめる術はないが。<br> 「でも、本当に大丈夫なのか確かめられそうに無いのは心残りね」<br> 「ああ、そうだな」<br>  もっと言う事あるだろ、俺。ハルヒは自分の意見を曲げてまで俺の言葉を受け入れた。<br>  いつもだったら俺の意見なんてはねつけるハズなのに。<br> 「なあ、ハルヒ」<br> 「何?」<br> <br> 「どうしてさっきまで言ったことを急に変えたんだ?」<br> 「なんでかしら……直感だったのよ。気が付いたら喋ってた」<br>  妙に勘が鋭いハルヒの事だからなあ。何か電波でも受信したのだろか。<br> 「選択に正解など無い、だが、今まで世界を保全した私にしてみれば、少しだけありがたいよ」<br>  "代弁者"が話に割り込んでくる。力に意志なんてあったのかよ。<br> 「私の役目もこれで終わりだ、君達は僅かな時間を二人で過ごしてくれ」<br>  そう言うとまた薄れていくように"代弁者"が消えていく。<br>  その姿が煙のように完全に消えた後で、俺たちは向き合った。<br> 「あたし達、どうなるんだろうね……」<br> 「あの爺さんは消えるって言ったからな、たぶんそうなんだろう」<br> 「うん……。でも何所へ言ってもあたし達は一緒よね」<br> 「ああ、そうだな」<br>  どちらからと言う事無く、俺達はお互いを抱きしめた。<br>  自分でも不思議なくらい消えることを割り切れている。<br>  何か役目を終えた達成感だけが心に残っていた。<br>  これで世界が守れたんなら、案外安い代償なのかもしれないな。<br> 「有希やみくるちゃんや古泉君は、あたし達のおかげって気付くかな」<br> 「さあな、長門なら分かるかもしれないな」<br> 「有希って本当に万能なのね」<br>  ふふっとハルヒが笑う。今まで長門の万能さの原因が宇宙的パワーなんて知らなかったんだもんな。<br> 「皆がいるなら、きっとこの先も大丈夫よね」<br> <br>  ハルヒは、不思議なくらい満足そうな顔をしている。<br>  俺と同じように達成感があるのかもしれない。<br>  これまでに見たことの無いハルヒの笑顔だった。<br>  その笑顔は誰の為にあるんだ?ハルヒ……。<br> 「ねえ、残った時間は少しかも知れないけど、学校見て回りましょう」<br>  突如の提案だったが、俺は快諾した。<br>  そうだな、消えちまう前に思い出めぐりってのもいいかもな。<br>  まず教室に行く。まだこの組に生徒は来ていないらしい。<br> 「何よ、皆怠け者ね」<br> 「俺も普段なら寝ているだろうしな」<br> 「……あたし達、ここで最初に出会ったのよね」<br> 「あの時は驚いたもんだ。それがこんな事になるとは」<br> 「結構色々やったわよね……」<br>  感慨深いのはお互いだったようだが、意を決して教室を後にした。<br>  他に見ておきたい場所もあるしな。<br>  次に行ったのは中庭だった。ハルヒが学園祭で演奏した後に過ごした場所。<br> 「あの時は本当に何かが吹き抜ける感じだったわ。丁度今みたい」<br> 「人の為に何かをするって事の良さが分かったんじゃないか?」<br> 「そうね……そうかも」<br>  そう言うハルヒの横顔は憂いを込んだ笑みだった。<br>  随分複雑な笑い方だ。でも、満足なんだろ?<br> <br>  最後に向かったのは校庭だ。俺とハルヒにとって違った意味で始まりの場所。<br> 「あの時のキスが本当だったなんて、どうして黙ってたのよ」<br> 「言うわけにはいかなかったさ。お前の力をお前に知らしたらまずいだろ」<br> 「あたしが悪の独裁者みたいな事するとでも思ってたの?」<br> 「いいや。だが、そうでなくたって有り余る力を知るのは危険さ」<br> 「それは……そうかもね」<br> 「でも……知ってたらあたし達もう少し生きられたかもしれないじゃない」<br> 「そうだな……。でも、仕方ないさ。後悔しちゃいないだろ?」<br> 「……うん」<br>  ハルヒが手を差し出してくる。俺はその手をゆっくりと握ってやる。<br> 「やっぱり、最後には……」<br> 「ああ……。何所へ行っても帰るのはあそこみたいだな」<br>  そうして部室に戻ってきた。<br>  俺達が出ている間にも誰も来なかったらしい。<br>  長門くらいは来てるかもと思ったが。<br> 「ここで死ぬなら、あたしは本望よ」<br>  安らかな顔をしていた。そうだな。俺も疲れた。<br>  そろそろ神様も俺達を休ませてくれるだろ。<br>  若くしてこの世を去るのは不本意だが、どっかで生まれ変わると信じるさ。<br> <br>  ふと、体の中を風が吹き抜けたような感覚が訪れた。<br>  とっさに自分の体を見回す。体から光の粒が出始めていた。<br> 「キョン……」ハルヒも同じように全身から少しずつ光の粒が出ている。<br> 「……どうやら時間が来ちまったらしいな」<br> 「うん……」複雑な表情をハルヒが浮かべる。<br>  だが、これでこの世界は大丈夫って事だろう。<br>  SOS団の残りのメンバーならきっとこの先も問題と立ち向かえるだろうしな。<br> 「長門、朝比奈さん、古泉……後は頼むぞ……」<br> 「しっかりあたしの後を継ぎなさいよ……」<br>  二人でそこにもうすぐ来るであろう団員の名を口にする。<br> 「あたし……最期にキョンと居られて良かった……」<br> 「ああ、俺もだ……」<br>  どんどん俺達の一部が粒となって舞い上がっていく。<br>  心なしか、腕が透けて床が見えるようになってきた。<br> 「キョン……」ハルヒが俺をみつめている。<br> 「ハルヒ……」俺もハルヒをみつめている。<br>  俺達は最後になるであろうキスをした。<br>  最期にこんな思い出を作れたんなら……まんざらでもないな。<br> 「これが恋人として最初のキスなんて……皮肉よね」<br> 「でも……大好き」<br>  それが最後に聞いた言葉だった。俺達は粒になって散り、<br>  誰もそれを見ることは無かった。後は、頼むぞ……<br> <br>  ある部屋に三人の人間が集まっている。<br> 「これまで観測されていた情報爆発の収束を確認した」<br> 「それでは、世界の異常観測は無くなったと言う事ですか?」<br> 「そう」<br> 「きっと……涼宮さん達が……」<br> 「それを確認する手段は存在しない」<br> 「それでも、僕達は信じましょう。彼女達が守ってくれた……と」<br> 「そうですね」<br> 「……そう」<br>  二人は微かに涙を流していた。<br>  短い会話の後で、二人は部屋から去る。<br>  一人残った少女が部屋の隅に座って、本を開く。<br>  しばらくの間静かに時間が流れる。<br>  やがて、少女は宙を見つめ、一人喋りだした。<br>  まるで、誰かに語りかけるように。<br> 「世界の情報改変の力の消失を確認。今後改変が起きる事はないと推定できる」<br> 「……彼と涼宮ハルヒは物理的にも完全に消失。復元は不可能」<br> 「だが、力が消失しても世界が崩壊しなかったのは、彼らのおかげかもしれない」<br> 「……以上、報告終了」<br>  そう言うと彼女は本を閉じた。<br>  帰り支度をして、部屋を去る。<br>  部屋には再び静寂が戻ってきた。物音一つしない、静かな空間に。<br> <br>  外には雨が降っている。空は雲が覆い、粒が降り注ぐ。<br>  彼女はその中で小さな傘をさし、無言で歩いていた。<br>  その内で何を考えているのかは誰にもわからない。<br>  辺りに下校する生徒はほとんど居なかった。一人で歩く道。<br>  ふと、後ろから声がする。<br> 「なあ、いくら傘が無いからって職員用を盗むことはないだろ」<br> 「いいのよ、学校の備品でしょ?生徒が使って悪いことはないわ」<br> 「そういうもんか?違うと思うが」<br> 「何? 濡れて帰りたいの? それじゃあ入れてあげないわよっ!」<br>  後ろにいた少女は笑って走り出し、彼女の横を通り過ぎる。<br>  しばしの間を置いて、後ろにいた少年の声がする。<br> 「待てよ」どこか楽しそうな声だった。<br>  その声に、前を走っていた少女が笑いながら振り向く。<br>  そこには、幸福で満たされた表情が、満面に浮かんでいた――<br> <br> <br> FIN...</div> <!-- ad -->
<p> </p> <div class="main">第四話 ― 笑顔 ―<br /> <br />  沈黙が3人の間を支配する。それがどれだけなのか、わからない。<br />  一秒とも一分とも感じられる重い空気を破る一言が、飛び出した。<br /> 「あたしが選ぶのは…………」<br /> 「こっちの世界の存続よ」<br /> <br />  …………<br />  ……<br />  …<br />  こっちの世界?ハルヒがさっき言ってた事と違わないか?<br /> 「……本当に良いのだね?」<br />  "代弁者"が改めて確認するように訊いてくる。<br /> 「二度も言わせないで。あたしはこの世界を残したいの」<br /> 「……わかった。繋がっている最後の力はこの世界の保全に回そう」<br />  ふう。と"代弁者"が息を漏らす。<br /> 「力と君達が途切れた時点で君達は消える事になる。時間はあと僅かだ」<br />  俺は呆然としてハルヒの横顔を見ていた。しばらくして俺の視線に気付いたのか、<br />  ハルヒも俺の顔を見る。<br /> 「これでいいのよ」<br />  宣言するかのようだった。何を思ってそう言ったのか確かめる術はないが。<br /> 「でも、本当に大丈夫なのか確かめられそうに無いのは心残りね」<br /> 「ああ、そうだな」<br />  もっと言う事あるだろ、俺。ハルヒは自分の意見を曲げてまで俺の言葉を受け入れた。<br />  いつもだったら俺の意見なんてはねつけるハズなのに。<br /> 「なあ、ハルヒ」<br /> 「何?」<br /> <br /> 「どうしてさっきまで言ったことを急に変えたんだ?」<br /> 「なんでかしら……直感だったのよ。気が付いたら喋ってた」<br />  妙に勘が鋭いハルヒの事だからなあ。何か電波でも受信したのだろか。<br /> 「選択に正解など無い、だが、今まで世界を保全した私にしてみれば、少しだけありがたいよ」<br />  "代弁者"が話に割り込んでくる。力に意志なんてあったのかよ。<br /> 「私の役目もこれで終わりだ、君達は僅かな時間を二人で過ごしてくれ」<br />  そう言うとまた薄れていくように"代弁者"が消えていく。<br />  その姿が煙のように完全に消えた後で、俺たちは向き合った。<br /> 「あたし達、どうなるんだろうね……」<br /> 「あの爺さんは消えるって言ったからな、たぶんそうなんだろう」<br /> 「うん……。でも何所へ言ってもあたし達は一緒よね」<br /> 「ああ、そうだな」<br />  どちらからと言う事無く、俺達はお互いを抱きしめた。<br />  自分でも不思議なくらい消えることを割り切れている。<br />  何か役目を終えた達成感だけが心に残っていた。<br />  これで世界が守れたんなら、案外安い代償なのかもしれないな。<br /> 「有希やみくるちゃんや古泉君は、あたし達のおかげって気付くかな」<br /> 「さあな、長門なら分かるかもしれないな」<br /> 「有希って本当に万能なのね」<br />  ふふっとハルヒが笑う。今まで長門の万能さの原因が宇宙的パワーなんて知らなかったんだもんな。<br /> 「皆がいるなら、きっとこの先も大丈夫よね」<br /> <br />  ハルヒは、不思議なくらい満足そうな顔をしている。<br />  俺と同じように達成感があるのかもしれない。<br />  これまでに見たことの無いハルヒの笑顔だった。<br />  その笑顔は誰の為にあるんだ?ハルヒ……。<br /> 「ねえ、残った時間は少しかも知れないけど、学校見て回りましょう」<br />  突如の提案だったが、俺は快諾した。<br />  そうだな、消えちまう前に思い出めぐりってのもいいかもな。<br />  まず教室に行く。まだこの組に生徒は来ていないらしい。<br /> 「何よ、皆怠け者ね」<br /> 「俺も普段なら寝ているだろうしな」<br /> 「……あたし達、ここで最初に出会ったのよね」<br /> 「あの時は驚いたもんだ。それがこんな事になるとは」<br /> 「結構色々やったわよね……」<br />  感慨深いのはお互いだったようだが、意を決して教室を後にした。<br />  他に見ておきたい場所もあるしな。<br />  次に行ったのは中庭だった。ハルヒが学園祭で演奏した後に過ごした場所。<br /> 「あの時は本当に何かが吹き抜ける感じだったわ。丁度今みたい」<br /> 「人の為に何かをするって事の良さが分かったんじゃないか?」<br /> 「そうね……そうかも」<br />  そう言うハルヒの横顔は憂いを込んだ笑みだった。<br />  随分複雑な笑い方だ。でも、満足なんだろ?<br /> <br />  最後に向かったのは校庭だ。俺とハルヒにとって違った意味で始まりの場所。<br /> 「あの時のキスが本当だったなんて、どうして黙ってたのよ」<br /> 「言うわけにはいかなかったさ。お前の力をお前に知らしたらまずいだろ」<br /> 「あたしが悪の独裁者みたいな事するとでも思ってたの?」<br /> 「いいや。だが、そうでなくたって有り余る力を知るのは危険さ」<br /> 「それは……そうかもね」<br /> 「でも……知ってたらあたし達もう少し生きられたかもしれないじゃない」<br /> 「そうだな……。でも、仕方ないさ。後悔しちゃいないだろ?」<br /> 「……うん」<br />  ハルヒが手を差し出してくる。俺はその手をゆっくりと握ってやる。<br /> 「やっぱり、最後には……」<br /> 「ああ……。何所へ行っても帰るのはあそこみたいだな」<br />  そうして部室に戻ってきた。<br />  俺達が出ている間にも誰も来なかったらしい。<br />  長門くらいは来てるかもと思ったが。<br /> 「ここで死ぬなら、あたしは本望よ」<br />  安らかな顔をしていた。そうだな。俺も疲れた。<br />  そろそろ神様も俺達を休ませてくれるだろ。<br />  若くしてこの世を去るのは不本意だが、どっかで生まれ変わると信じるさ。<br /> <br />  ふと、体の中を風が吹き抜けたような感覚が訪れた。<br />  とっさに自分の体を見回す。体から光の粒が出始めていた。<br /> 「キョン……」ハルヒも同じように全身から少しずつ光の粒が出ている。<br /> 「……どうやら時間が来ちまったらしいな」<br /> 「うん……」複雑な表情をハルヒが浮かべる。<br />  だが、これでこの世界は大丈夫って事だろう。<br />  SOS団の残りのメンバーならきっとこの先も問題と立ち向かえるだろうしな。<br /> 「長門、朝比奈さん、古泉……後は頼むぞ……」<br /> 「しっかりあたしの後を継ぎなさいよ……」<br />  二人でそこにもうすぐ来るであろう団員の名を口にする。<br /> 「あたし……最期にキョンと居られて良かった……」<br /> 「ああ、俺もだ……」<br />  どんどん俺達の一部が粒となって舞い上がっていく。<br />  心なしか、腕が透けて床が見えるようになってきた。<br /> 「キョン……」ハルヒが俺をみつめている。<br /> 「ハルヒ……」俺もハルヒをみつめている。<br />  俺達は最後になるであろうキスをした。<br />  最期にこんな思い出を作れたんなら……まんざらでもないな。<br /> 「これが恋人として最初のキスなんて……皮肉よね」<br /> 「でも……大好き」<br />  それが最後に聞いた言葉だった。俺達は粒になって散り、<br />  誰もそれを見ることは無かった。後は、頼むぞ……<br /> <br />  ある部屋に三人の人間が集まっている。<br /> 「これまで観測されていた情報爆発の収束を確認した」<br /> 「それでは、世界の異常観測は無くなったと言う事ですか?」<br /> 「そう」<br /> 「きっと……涼宮さん達が……」<br /> 「それを確認する手段は存在しない」<br /> 「それでも、僕達は信じましょう。彼女達が守ってくれた……と」<br /> 「そうですね」<br /> 「……そう」<br />  二人は微かに涙を流していた。<br />  短い会話の後で、二人は部屋から去る。<br />  一人残った少女が部屋の隅に座って、本を開く。<br />  しばらくの間静かに時間が流れる。<br />  やがて、少女は宙を見つめ、一人喋りだした。<br />  まるで、誰かに語りかけるように。<br /> 「世界の情報改変の力の消失を確認。今後改変が起きる事はないと推定できる」<br /> 「……彼と涼宮ハルヒは物理的にも完全に消失。復元は不可能」<br /> 「だが、力が消失しても世界が崩壊しなかったのは、彼らのおかげかもしれない」<br /> 「……以上、報告終了」<br />  そう言うと彼女は本を閉じた。<br />  帰り支度をして、部屋を去る。<br />  部屋には再び静寂が戻ってきた。物音一つしない、静かな空間に。<br /> <br />  外には雨が降っている。空は雲が覆い、粒が降り注ぐ。<br />  彼女はその中で小さな傘をさし、無言で歩いていた。<br />  その内で何を考えているのかは誰にもわからない。<br />  辺りに下校する生徒はほとんど居なかった。一人で歩く道。<br />  ふと、後ろから声がする。<br /> 「なあ、いくら傘が無いからって職員用を盗むことはないだろ」<br /> 「いいのよ、学校の備品でしょ?生徒が使って悪いことはないわ」<br /> 「そういうもんか?違うと思うが」<br /> 「何? 濡れて帰りたいの? それじゃあ入れてあげないわよっ!」<br />  後ろにいた少女は笑って走り出し、彼女の横を通り過ぎる。<br />  しばしの間を置いて、後ろにいた少年の声がする。<br /> 「待てよ」どこか楽しそうな声だった。<br />  その声に、前を走っていた少女が笑いながら振り向く。<br />  そこには、幸福で満たされた表情が、満面に浮かんでいた――<br /> <br /> <br /> FIN...</div> <p> </p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: