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「涼宮ハルヒの夢幻 第五章」(2007/01/14 (日) 07:47:55) の最新版変更点
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<p> <br>
第五章<br>
<br>
<br>
「喜緑です。覚えていますか?」<br>
「忘れる筈がありませんよ。」<br>
それにしても、どうやって此処へ入って来たのだろうか。<br>
「あばら骨にひびが入っていますね。今治してあげます。」<br>
喜緑さんは俺の胸をさする。すると、不思議なことに、痛みが退いてきた。<br>
「有難う御座います。」<br>
「次は古泉君を。」<br>
喜緑さんは古泉の方へ行って治療する。<br>
「大丈夫か?古泉。」<br>
「えぇ、なんとか。それより、気付いてますか?」<br>
何が?<br>
「長門さんが押されてきました。」<br>
「あのままでは、マズいですね。」<br>
「なんとかならないのですか?喜緑さん。」<br>
「今から、情報統合思念体とデータリンクします。5分程時間を下さい。」<br>
「分かりました。なんとか時間稼ぎをしますよ。」<br>
<br>
「5分もつのか?10秒保たなかったお前が。」<br>
「やらないで後悔するより、やって後悔した方がましですよ。<br>
今は、僕が少しでもやらねばならないのです。」<br>
いつの日かどこかで聞いた言葉だな。<br>
「死ぬなよ。(嘘)」<br>
古泉はグッと親指を立て、赤い玉になり、飛び発った。<br>
「それでは、わたしも準備をします。」<br>
喜緑さんは、何かを唱え始める。<br>
「WORKING-STORAGE SECTION.<br>
01 EOF…………」<br>
全く理解出来ない呪文を唱える。しかも、だんだん早口になる。<br>
周りから見れば、頭のおかしい人みたいだ。<br>
俺は何をしようかな。<br>
<br>
「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉー!!!!」<br>
いきなり奇声が聞こえた。<br>
びっくりして空を見上げると、古泉が幾つもの赤い玉を放っている。<br>
<br>
頭が一番おかしいのはあいつだな。呑気にこの状況を眺める俺も十分おかしいが。<br>
「まだですか?そろそろやばいですよ。」<br>
「今データのサーチとダウンロードを同時にやっています。<br>
MOVE SIN-CODE(IDX) TO K-CO………」<br>
なんか、腰が抜けてきた。<br>
足がふらふらして、地面にぺたりと尻をつく。これでダメなら、どうしよう。<br>
「ハルヒ………」<br>
不意に、口から漏れた言葉に恥ずかしくなる。<br>
「END-SEARACH<br>
END-READ<br>
END-PERFORM<br>
CLOSE SIN-FL KI-FL<br>
STOP RUN.<br>
終わりました。」<br>
「そうですか。」<br>
「朝倉さん。降りて下さい。」<br>
朝倉は手を止め、降りてくる。<br>
長門と古泉は、じっと朝倉を見つめて動かない。<br>
「来てたの。」<br>
「来ちゃいました。」<br>
<br>
「これが、情報統合思念体の意思ということ?」<br>
「そうです。」<br>
「わたしが抵抗しても、無駄ね……潮時か。」<br>
「大人しく、消えますか?」<br>
「おでん、食べたかったな。」<br>
「情報構成抹消開始。」<br>
「さようなら。みんな。もう、多分もう会わないけど。」<br>
朝倉が消えていく。<br>
「何をしたんですか?」<br>
「彼女を構成している情報自体を削除しました。修復はほぼ不可能です。」<br>
周りの風景が砂のように崩れ、俺が最初に見た荒れ地が姿を表す。<br>
「時間がありません。わたし達もこの空間から帰りますよ。」<br>
「わたしにつかまって。」<br>
俺は長門の小さな手を掴んだ。<br>
古泉は喜緑さんの手を掴む。<br>
「それでは、行きますよ。」<br>
喜緑さんがそう言うと、空間が歪む。<br>
目眩がしてきた。<br>
あぁ、気持ち悪い。<br>
<br>
「………え?」<br>
<br>
<br>
「やっぱり、やめた。」<br>
<br>
<br>
<br>
夕日が差し込む。<br>
通い馴れた部室。<br>
長門の本が詰まった本棚や、<br>
朝比奈さんの身に着けたコスプレ衣装。<br>
古泉の持ってきた卓上ゲームと<br>
ハルヒが強奪したパソコン達。<br>
全てが紅に染まる時。<br>
その中に、俺とハルヒは包まれる。<br>
生暖かい鮮血のような紅。<br>
<br>
<br>
いや、<br>
<br>
<br>
それは紛れもない血であった。<br>
「キョン……ごめん……ごめんなさい。」<br>
「何……故……?」<br>
「分からない。分からないのよぉ。」<br>
痛ぇ。<br>
状況を把握したいが、意識がもうろうとする。<br>
終わったな。俺。<br>
最後に見えたのは、ハルヒの切腹だった。<br>
唇にそっと何かが触れる。<br>
<br>
「今、あたしも行くからね。」<br>
くそったれ………バカハルヒ。<br>
「大好き。………バカキョン。」<br>
視界が真っ赤になる。ハルヒの血だろう。<br>
そして、意識が途絶えた。<br>
<br>
<br>
……b……o……<br>
…バ……ロ!!<br>
バーロー?<br>
「バカ、起きろ!!!」<br>
耳をつんざくような声がした。煩いぞハルヒ。<br>
「全く、仏になっても寝るとは、いい度胸ね。」<br>
仏が眠ってはいけないという規則は、聞いたことがない。<br>
そんな事より、人を仏呼ばわりするのは早過ぎではないか?<br>
すると、ハルヒは大きな溜め息を吐く。<br>
「呑気なものね。あんた、鈍感というより、マヌケよ。下見なさい。」<br>
「おぉ!?」<br>
下には俺とハルヒがいた。良く出来た人形だな。<br>
「これが人形に見えるなら、あんたの目はふしあなよ。」<br>
なら、ドッペルゲンガーか?<br>
「んな訳ないでしょ!!もういい。やめて。こっちが恥ずかしい。」<br>
こういう時は、状況整理が必要だ。<br>
<br>
今日の事から思い出そう。<br>
<br>
起きる。<br>
寝る。<br>
起こされる。<br>
朝は、パンに味噌汁がベスト。<br>
学校行く。<br>
手紙ある。(5時に教室)<br>
足し算を間違える。<br>
就職を漢字で書けない。<br>
5時に教室へ行く。<br>
ハルヒに襲われる。<br>
長門が止める。<br>
夢の中へ<br>
朝倉やっつける。<br>
ハルヒに刺される。<br>
パトラッシュ。僕もう、だめぽ。<br>
<br>
と、いう訳で、俺達は死んでしまった。<br>
不思議と悲しくはなかった。ハルヒと一緒だからだろうか。実感が湧かない。<br>
<br>
もし一人なら、死んだことに気づかず、地縛霊になったのだろうに。<br>
しかし、疑問が残る。何故、長門がいない。前回(夢の中)朝倉が言った事と関係があるのだろうか?<br>
気は乗らないがハルヒに聞いてみるか。<br>
「長門は?」<br>
「今日は一度も会ってないわ。」<br>
「夢を見たよな。」<br>
「は?見てないわよ。それってなんの話よ。」<br>
「だけどよ………」<br>
それで俺は口を止めた。これ以上、話をしても多分無駄だろう。<br>
「ごめん、キョン。」<br>
「謝る必要ないさ。」<br>
「ごめんなさい。あんな事して。」<br>
今日のハルヒは謝り過ぎだ。<br>
喜怒哀楽が激しい人間だな。こいつの場合ほとんど「怒」の割合が多いが。<br>
<br>
しかしおかしい。何か変だ。どこかに矛盾があるような。<br>
その時、ドアが開く。<br>
「有希!?」<br>
長門が入ってくる。<br>
「…………。」<br>
部屋に入ると。辺りを見回す。どうやら、俺達には気づかないようだ。<br>
「…………。」<br>
長門は何か呟くと、その場から立ち去った。<br>
「何て言ったのかしら?小さすぎて聞こえなかったけど。」<br>
「分からん。」<br>
長門のことだ。もしかしたら、何か知ってるはずだ。<br>
しかし、さっきの様子は明らかに俺に気づいていない。<br>
期待と不安が入り混じる。あいつを使えばもしかしたら………<br>
「きゃぁぁぁぁー!!」<br>
<br>
な、何だ!?<br>
「バド部の連中だわ。部活帰りに立ち寄ったのね。」<br>
<br>
その後、救急・警察が来て、俺達の死亡が世間へ広まった。<br>
警察は俺達の事を、無理心中と判断した。<br>
どこぞの名探偵が来たが、お手上げらしい。<br>
世間もそれで納得したらしく、「可哀想」の一言で片付けられた。<br>
その後、ハルヒとこれからどうするかを話ていると、目の前に誰かが現れた。<br>
「こんばんは。」<br>
20代の女性だろうか。日本人に見える。この人も幽霊なのだろうか。<br>
「見えてるようね。あたし達のこと。」<br>
どちら様です?<br>
「簡単にご説明すると、あの世の者です。単刀直入に申し上げます。今すぐあの世に逝きますか?」<br>
いきなりそんな事言われても困ります。<br>
「大概の方がそうおっしゃられます。<br>
ですので、こちらの時間で、えーっと………49日程の死亡猶予期間が与えられています。<br>
それを過ぎると罰則が加担されます。」<br>
<br>
「待て。何故俺達が、あなた達の規則に合わせねばならないのです。<br>
死んでも、誰かに縛られるのは嫌ですよ。」<br>
「ごもっともな意見です。しかし、本来死亡なされたあなた方は、下界に干渉する権利も御座いません。<br>
また、下界に霊がごちゃごちゃいても、困りませんか?」<br>
頷くしかなかった。<br>
「逝きましょう。キョン。あたし達がこの世にいても、邪魔なだけよ。<br>
死んだことは事実だし、それを受け入れるのが礼儀よ。」<br>
「宜しいのですか?」<br>
「だが断る。」<br>
「何で?」<br>
「俺の家族への挨拶はどうでも良いが、俺はお前の両親への挨拶くらいはしたい。」<br>
「それって……」<br>
ハルヒは顔を赤らめる。<br>
「うふふ、分かりました。では、また49日後に迎えに来ます。」<br>
「すみません。有難う御座います。」<br>
「お幸せに。」<br>
そう言うと、彼女はどこかへ消えて行った。<br>
「キョン……こんな…あたしで良いの?」<br>
「あぁ勿論。」<br>
<br>
「うぅ……あ゛り゛がどう゛。」<br>
泣くのか?<br>
「な゛、泣いだりじない゛。ぢてないわよ。」<br>
「行こう。」<br>
「……うん。」<br>
そっとハルヒの肩を抱き、両親へと挨拶に向かった。<br>
「あったかい。」<br>
「おばけなのにか?」<br>
「気分だけよ。」<br>
<br>
<br>
翌日、学校ではこの事を公表する。泣く人あれば、知らん顔ありだった。<br>
クラスで岡部が泣いたのには笑った。<br>
自分のために泣いてくれているというのに、不謹慎だな。俺は。<br>
女子の方々は、大体の人が泣いていた。<br>
男は、担任の岡部しか泣いていなかった。<br>
谷口の姿はまだ見えない。国木田は、どこか上の空だった。<br>
「あんまり面識の無い奴までが泣いてるなんて、変な気分ね。」<br>
「同情してるんだろうよ。バカなカップルが将来を苦にして、自殺。<br>
ロミオとジュリエットとは似て非なる話だ。<br>
だが、お涙頂戴な悲劇には、相当するんじゃないか?」<br>
<br>
「カップルに見えてたのかな……あたし達。」<br>
おばけのくせに頬を赤らめてハルヒは言った。<br>
どう返答すれば良いか分からず、ぶっきらぼうな返事を返すと、<br>
ハルヒは「ごめんなさい」などと、謝る。今更謝られても仕方ない。<br>
「気にするな。」と頭を撫でると、今度は泣く始末。<br>
かなりの大音量だったので、誰か気付くのではと思ったが、<br>
やはり、おばけの声は気付かないらしい。この1時間後、ハルヒはやっと泣き止んだ。<br>
「今日は家に帰る。あんたも自分の家族に最後の別れくらい言ってあげなさい。<br>
それと、明日は10時に駅前ね。SOS団のみんなに会うわよ。じゃあ解散。」<br>
<br>
俺の返事を待たず、ハルヒは帰ってしまった。俺が断る訳は無いけどね。<br>
前日は、家に帰らなかったから、久しぶりに見える。<br>
家に入ると家族全員が揃ってた。<br>
母親は洗濯、親父と妹はテレビ。<br>
休日と変わらないような生活。<br>
しかし、どいつもこいつも湿気た顔をしていた。<br>
見ていて、こっちまで陰気臭くなる。<br>
おっと、こんな事している場合じゃない。<br>
<br>
………いたいた。<br>
「みゃー。」<br>
よう、シャミ。見えてるみたいだな。<br>
シャミセンはじっとこちらを見つめている。<br>
悪いが、体借りるぞ。<br>
<br>
<br></p>
<ul>
<li><font color="#666666">第六章へ</font><br></li>
</ul>
<p> <br>
第五章<br>
<br>
<br>
「喜緑です。覚えていますか?」<br>
「忘れる筈がありませんよ。」<br>
それにしても、どうやって此処へ入って来たのだろうか。<br>
「あばら骨にひびが入っていますね。今治してあげます。」<br>
喜緑さんは俺の胸をさする。すると、不思議なことに、痛みが退いてきた。<br>
「有難う御座います。」<br>
「次は古泉君を。」<br>
喜緑さんは古泉の方へ行って治療する。<br>
「大丈夫か?古泉。」<br>
「えぇ、なんとか。それより、気付いてますか?」<br>
何が?<br>
「長門さんが押されてきました。」<br>
「あのままでは、マズいですね。」<br>
「なんとかならないのですか?喜緑さん。」<br>
「今から、情報統合思念体とデータリンクします。5分程時間を下さい。」<br>
「分かりました。なんとか時間稼ぎをしますよ。」<br>
<br>
「5分もつのか?10秒保たなかったお前が。」<br>
「やらないで後悔するより、やって後悔した方がましですよ。<br>
今は、僕が少しでもやらねばならないのです。」<br>
いつの日かどこかで聞いた言葉だな。<br>
「死ぬなよ。(嘘)」<br>
古泉はグッと親指を立て、赤い玉になり、飛び発った。<br>
「それでは、わたしも準備をします。」<br>
喜緑さんは、何かを唱え始める。<br>
「WORKING-STORAGE SECTION.<br>
01 EOF…………」<br>
全く理解出来ない呪文を唱える。しかも、だんだん早口になる。<br>
周りから見れば、頭のおかしい人みたいだ。<br>
俺は何をしようかな。<br>
<br>
「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉー!!!!」<br>
いきなり奇声が聞こえた。<br>
びっくりして空を見上げると、古泉が幾つもの赤い玉を放っている。<br>
<br>
頭が一番おかしいのはあいつだな。呑気にこの状況を眺める俺も十分おかしいが。<br>
「まだですか?そろそろやばいですよ。」<br>
「今データのサーチとダウンロードを同時にやっています。<br>
MOVE SIN-CODE(IDX) TO K-CO………」<br>
なんか、腰が抜けてきた。<br>
足がふらふらして、地面にぺたりと尻をつく。これでダメなら、どうしよう。<br>
「ハルヒ………」<br>
不意に、口から漏れた言葉に恥ずかしくなる。<br>
「END-SEARACH<br>
END-READ<br>
END-PERFORM<br>
CLOSE SIN-FL KI-FL<br>
STOP RUN.<br>
終わりました。」<br>
「そうですか。」<br>
「朝倉さん。降りて下さい。」<br>
朝倉は手を止め、降りてくる。<br>
長門と古泉は、じっと朝倉を見つめて動かない。<br>
「来てたの。」<br>
「来ちゃいました。」<br>
<br>
「これが、情報統合思念体の意思ということ?」<br>
「そうです。」<br>
「わたしが抵抗しても、無駄ね……潮時か。」<br>
「大人しく、消えますか?」<br>
「おでん、食べたかったな。」<br>
「情報構成抹消開始。」<br>
「さようなら。みんな。もう、多分もう会わないけど。」<br>
朝倉が消えていく。<br>
「何をしたんですか?」<br>
「彼女を構成している情報自体を削除しました。修復はほぼ不可能です。」<br>
周りの風景が砂のように崩れ、俺が最初に見た荒れ地が姿を表す。<br>
「時間がありません。わたし達もこの空間から帰りますよ。」<br>
「わたしにつかまって。」<br>
俺は長門の小さな手を掴んだ。<br>
古泉は喜緑さんの手を掴む。<br>
「それでは、行きますよ。」<br>
喜緑さんがそう言うと、空間が歪む。<br>
目眩がしてきた。<br>
あぁ、気持ち悪い。<br>
<br>
「………え?」<br>
<br>
<br>
「やっぱり、やめた。」<br>
<br>
<br>
<br>
夕日が差し込む。<br>
通い馴れた部室。<br>
長門の本が詰まった本棚や、<br>
朝比奈さんの身に着けたコスプレ衣装。<br>
古泉の持ってきた卓上ゲームと<br>
ハルヒが強奪したパソコン達。<br>
全てが紅に染まる時。<br>
その中に、俺とハルヒは包まれる。<br>
生暖かい鮮血のような紅。<br>
<br>
<br>
いや、<br>
<br>
<br>
それは紛れもない血であった。<br>
「キョン……ごめん……ごめんなさい。」<br>
「何……故……?」<br>
「分からない。分からないのよぉ。」<br>
痛ぇ。<br>
状況を把握したいが、意識がもうろうとする。<br>
終わったな。俺。<br>
最後に見えたのは、ハルヒの切腹だった。<br>
唇にそっと何かが触れる。<br>
<br>
「今、あたしも行くからね。」<br>
くそったれ………バカハルヒ。<br>
「大好き。………バカキョン。」<br>
視界が真っ赤になる。ハルヒの血だろう。<br>
そして、意識が途絶えた。<br>
<br>
<br>
……b……o……<br>
…バ……ロ!!<br>
バーロー?<br>
「バカ、起きろ!!!」<br>
耳をつんざくような声がした。煩いぞハルヒ。<br>
「全く、仏になっても寝るとは、いい度胸ね。」<br>
仏が眠ってはいけないという規則は、聞いたことがない。<br>
そんな事より、人を仏呼ばわりするのは早過ぎではないか?<br>
すると、ハルヒは大きな溜め息を吐く。<br>
「呑気なものね。あんた、鈍感というより、マヌケよ。下見なさい。」<br>
「おぉ!?」<br>
下には俺とハルヒがいた。良く出来た人形だな。<br>
「これが人形に見えるなら、あんたの目はふしあなよ。」<br>
なら、ドッペルゲンガーか?<br>
「んな訳ないでしょ!!もういい。やめて。こっちが恥ずかしい。」<br>
こういう時は、状況整理が必要だ。<br>
<br>
今日の事から思い出そう。<br>
<br>
起きる。<br>
寝る。<br>
起こされる。<br>
朝は、パンに味噌汁がベスト。<br>
学校行く。<br>
手紙ある。(5時に教室)<br>
足し算を間違える。<br>
就職を漢字で書けない。<br>
5時に教室へ行く。<br>
ハルヒに襲われる。<br>
長門が止める。<br>
夢の中へ<br>
朝倉やっつける。<br>
ハルヒに刺される。<br>
パトラッシュ。僕もう、だめぽ。<br>
<br>
と、いう訳で、俺達は死んでしまった。<br>
不思議と悲しくはなかった。ハルヒと一緒だからだろうか。実感が湧かない。<br>
<br>
もし一人なら、死んだことに気づかず、地縛霊になったのだろうに。<br>
しかし、疑問が残る。何故、長門がいない。前回(夢の中)朝倉が言った事と関係があるのだろうか?<br>
気は乗らないがハルヒに聞いてみるか。<br>
「長門は?」<br>
「今日は一度も会ってないわ。」<br>
「夢を見たよな。」<br>
「は?見てないわよ。それってなんの話よ。」<br>
「だけどよ………」<br>
それで俺は口を止めた。これ以上、話をしても多分無駄だろう。<br>
「ごめん、キョン。」<br>
「謝る必要ないさ。」<br>
「ごめんなさい。あんな事して。」<br>
今日のハルヒは謝り過ぎだ。<br>
喜怒哀楽が激しい人間だな。こいつの場合ほとんど「怒」の割合が多いが。<br>
<br>
しかしおかしい。何か変だ。どこかに矛盾があるような。<br>
その時、ドアが開く。<br>
「有希!?」<br>
長門が入ってくる。<br>
「…………。」<br>
部屋に入ると。辺りを見回す。どうやら、俺達には気づかないようだ。<br>
「…………。」<br>
長門は何か呟くと、その場から立ち去った。<br>
「何て言ったのかしら?小さすぎて聞こえなかったけど。」<br>
「分からん。」<br>
長門のことだ。もしかしたら、何か知ってるはずだ。<br>
しかし、さっきの様子は明らかに俺に気づいていない。<br>
期待と不安が入り混じる。あいつを使えばもしかしたら………<br>
「きゃぁぁぁぁー!!」<br>
<br>
な、何だ!?<br>
「バド部の連中だわ。部活帰りに立ち寄ったのね。」<br>
<br>
その後、救急・警察が来て、俺達の死亡が世間へ広まった。<br>
警察は俺達の事を、無理心中と判断した。<br>
どこぞの名探偵が来たが、お手上げらしい。<br>
世間もそれで納得したらしく、「可哀想」の一言で片付けられた。<br>
その後、ハルヒとこれからどうするかを話ていると、目の前に誰かが現れた。<br>
「こんばんは。」<br>
20代の女性だろうか。日本人に見える。この人も幽霊なのだろうか。<br>
「見えてるようね。あたし達のこと。」<br>
どちら様です?<br>
「簡単にご説明すると、あの世の者です。単刀直入に申し上げます。今すぐあの世に逝きますか?」<br>
いきなりそんな事言われても困ります。<br>
「大概の方がそうおっしゃられます。<br>
ですので、こちらの時間で、えーっと………49日程の死亡猶予期間が与えられています。<br>
それを過ぎると罰則が加担されます。」<br>
<br>
「待て。何故俺達が、あなた達の規則に合わせねばならないのです。<br>
死んでも、誰かに縛られるのは嫌ですよ。」<br>
「ごもっともな意見です。しかし、本来死亡なされたあなた方は、下界に干渉する権利も御座いません。<br>
また、下界に霊がごちゃごちゃいても、困りませんか?」<br>
頷くしかなかった。<br>
「逝きましょう。キョン。あたし達がこの世にいても、邪魔なだけよ。<br>
死んだことは事実だし、それを受け入れるのが礼儀よ。」<br>
「宜しいのですか?」<br>
「だが断る。」<br>
「何で?」<br>
「俺の家族への挨拶はどうでも良いが、俺はお前の両親への挨拶くらいはしたい。」<br>
「それって……」<br>
ハルヒは顔を赤らめる。<br>
「うふふ、分かりました。では、また49日後に迎えに来ます。」<br>
「すみません。有難う御座います。」<br>
「お幸せに。」<br>
そう言うと、彼女はどこかへ消えて行った。<br>
「キョン……こんな…あたしで良いの?」<br>
「あぁ勿論。」<br>
<br>
「うぅ……あ゛り゛がどう゛。」<br>
泣くのか?<br>
「な゛、泣いだりじない゛。ぢてないわよ。」<br>
「行こう。」<br>
「……うん。」<br>
そっとハルヒの肩を抱き、両親へと挨拶に向かった。<br>
「あったかい。」<br>
「おばけなのにか?」<br>
「気分だけよ。」<br>
<br>
<br>
翌日、学校ではこの事を公表する。泣く人あれば、知らん顔ありだった。<br>
クラスで岡部が泣いたのには笑った。<br>
自分のために泣いてくれているというのに、不謹慎だな。俺は。<br>
女子の方々は、大体の人が泣いていた。<br>
男は、担任の岡部しか泣いていなかった。<br>
谷口の姿はまだ見えない。国木田は、どこか上の空だった。<br>
「あんまり面識の無い奴までが泣いてるなんて、変な気分ね。」<br>
「同情してるんだろうよ。バカなカップルが将来を苦にして、自殺。<br>
ロミオとジュリエットとは似て非なる話だ。<br>
だが、お涙頂戴な悲劇には、相当するんじゃないか?」<br>
<br>
「カップルに見えてたのかな……あたし達。」<br>
おばけのくせに頬を赤らめてハルヒは言った。<br>
どう返答すれば良いか分からず、ぶっきらぼうな返事を返すと、<br>
ハルヒは「ごめんなさい」などと、謝る。今更謝られても仕方ない。<br>
「気にするな。」と頭を撫でると、今度は泣く始末。<br>
かなりの大音量だったので、誰か気付くのではと思ったが、<br>
やはり、おばけの声は気付かないらしい。この1時間後、ハルヒはやっと泣き止んだ。<br>
「今日は家に帰る。あんたも自分の家族に最後の別れくらい言ってあげなさい。<br>
それと、明日は10時に駅前ね。SOS団のみんなに会うわよ。じゃあ解散。」<br>
<br>
俺の返事を待たず、ハルヒは帰ってしまった。俺が断る訳は無いけどね。<br>
前日は、家に帰らなかったから、久しぶりに見える。<br>
家に入ると家族全員が揃ってた。<br>
母親は洗濯、親父と妹はテレビ。<br>
休日と変わらないような生活。<br>
しかし、どいつもこいつも湿気た顔をしていた。<br>
見ていて、こっちまで陰気臭くなる。<br>
おっと、こんな事している場合じゃない。<br>
<br>
………いたいた。<br>
「みゃー。」<br>
よう、シャミ。見えてるみたいだな。<br>
シャミセンはじっとこちらを見つめている。<br>
悪いが、体借りるぞ。<br>
<br>
<br></p>
<ul>
<li><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1120.html"><font color=
"#666666">第六章へ</font></a><br></li>
</ul>