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「ハジメテノヒト」(2020/12/28 (月) 22:35:01) の最新版変更点
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<div class="main">
<div>
世界中の大多数の人間が翌日から待っているだろう休日に浮かれているだろう週末の金曜日の事である。<br>
俺はいつものようにだらだらと先生の声を右から左に聞き流してようやくたどり着いた放課後SOS団が<br>
占領している文芸部の部室で朝比奈さんの入れてくれたお茶を飲みつつ古泉とボードゲームをして時間をつぶしていた。<br>
明日市内探索が無かったら妹と遊んでやるか、なにして遊んでやろうなどと考えていたら<br>
いつものように凄まじい轟音と共にドアを勢い良く空けて登場したのはハルヒに他ならない。<br>
</div>
<br>
<div>
「みくるちゃんお茶」と言ってドカッと団長席に腰掛け「今日はちょっとみんなに聞きたい事があるの。」と言った。<br>
古泉はニヤケ面のまま、おや?っと言った表情を見せた。朝比奈さんは怯えの表情の中に好奇の表情が少し、ほんの少しだけ浮かんでる。<br>
長門は・・・俺にもどういった表情なのか理解できない、と言うより聞いてなかったんじゃないかというくらいの無反応。<br>
</div>
<br>
<div>
誰も何も言葉を発しないのでとりあえず聞いてみた。<br>
「なにをだ?」「みんなは休日って何をして過ごしてるの?」<br>
うむ、少しずつまともな思考を取り戻してきたみたいだな。もっととんでもないこと言われるのかと軽く警戒していたのだが。<br>
</div>
<br>
<div>
「僕は普段はアルバイトしてますよ」とニヤケ面をこっちに向けて答えた。俺に答えるな。質問してるのはハルヒだ。<br>
「ふ~ん。みくるちゃんは?」<br>
朝比奈さんをちょっと眺めて怯えの表情が減ってる事を確認してからハルヒに目をやると、ハルヒは古泉の発言と思われるをメモしてるように見えた。<br>
「私はお茶を買ったり鶴屋さんとお話したりしてます」と、可愛らしい笑顔で答えた。その表情を独り占めしたいと思ったのは俺だけではなかろう。<br>
「有希は?」「読書」即座に言い放つ長門と既に予測していたであろう解答である読書という文字をメモし終えたハルヒは江戸っ子だなと思うほどせっかちなんだろう。<br>
「ふ~ん、みんな予想通りね。」確かにな。これ以外の事をしている団員は想像できない。もちろんハルヒは除くが。<br>
「で、キョンは?」「そうだな、俺は明日は妹と遊んでやろうと思っている。普段は家でごろごろしてたり谷口あたりと話してたりだな。」<br>
「あんた本当につまらない人生送ってるわね!人生の3分の1は損してるわよ。SOS団に入れてあげた事を感謝してほしいくらいだわ。」<br>
なぜ俺の時だけそんなに文句が出てくる。古泉だって将来嫌でも働かないといけないのに今からアルバイトは青春の無駄遣いだぞくらい言ってやればいいのに。<br>
朝比奈さんはいいとして、長門だってせっかくの休日を部屋で過ごしてるのにはかわりないじゃないか。<br>
なんてそんな事言える訳はなく、代わりに「お前は何して過ごしてるんだ?」とお茶を濁した。ハッキリ言えない自分の言葉で朝比奈さんの入れてくれたお茶も濁してしまった気がして後悔した。<br>
</div>
<br>
<div>ガタッ!! 「決めた!!」<br></div>
<br>
<div>
そう言って立ち上がりなにやらくじの様な者をつくり始めた。くじと言っても探索の時のペア決めのアレみたいなヤツだ。というかアレそのものだ。<br>
「おい、俺の質問に答えろよ。自分だけ答えないのは卑怯じゃないのか?」<br>
「ちょっと落ち着きなさいよキョン!誰も答えないなんて言ってないじゃない!」<br>
「じゃあ答えてもらおうか。もう一度言うぞ!ハルヒ、休日は何をしてすごしt」「ちょっと黙ってて!!」<br>
くっなんてわがままな団長だ。教える気なんてないんじゃないのか?古泉を見るとむかつくニヤケ面で肩をすくめてやがる。<br>
「やれやれ」と言って朝比奈さんに、鶴屋さんとどんなことしているのか聞いていると<br>
「できた!」と叫んでみんなにくじを引かせた。<br>
「なんのくじだ?説明しろ」と言いながらくじを引く俺。俺は下僕体質なのかな?<br>
</div>
<br>
<div>
「決まってるじゃない!団員の休日を1日かけてレポートするのよ!」<br>
「なぜだ?」「みんなの私生活に興味があるからよ!他に理由が必要かしら?」とニヤーっとした嫌みったらしい目つきで言ってくじを回収した。<br>
「それにあたしが休日何をしてるのか気になるんでしょ?」と言ってくじを開封した。気になるなんて言ってない!聞かれたから聞き返しただけだ!<br>
結果は<br>
俺と朝比奈さん。<br>
ハルヒと長門と古泉。<br>
ハルヒの顔がちょっと曇ったが古泉の「素晴らしい考えですが、どうすればいいんですか?」という発言でハッとして元の表情に戻り、<br>
「明日は土曜日だから一日かけてペアの私生活をレポートにまとめてきなさい!ありのままの生活を過ごすのよ!いい?デートじゃないのよ!うかれてるんじゃないキョン!わかった?」<br>
なぜ俺にだけ言う、例えデートじゃなかろうとも朝比奈さんと2人きりだから浮かれてしまうのはしょうがないじゃないかなんて言える訳もなく「わかってるって。」と流しておく。<br>
「それにあんた言ったわよね!明日は妹ちゃんと遊ぶんでしょ?みくるちゃん?ちゃんと妹ちゃんと遊んでるキョンをレポートしとくのよ!」という発言で2人きりじゃない事を再認識して微量のストレスが検知された。が、<br>
「ふぁ~い」なんて言ってたがとても柔らかい笑顔をしてたので俺のストレスは全て浄化された。今ならハルヒに「お前も朝比奈さんのように笑って見ろ」と言える気がする。言わないが。<br>
「じゃあ午前中に朝比奈さんを観察しますので午後は俺の日常に付き合ってください」「わかりましたぁ」なんてやり取りをしてから<br>
「ハルヒ達はどうするんだ?古泉なんてバイトじゃないのか?」「古泉くんバイトはサボれないの?もしくはバイトの見学は?」<br>
「ええ、どうしてもと言うのでしたら明日のバイトは休みますが見学のほうはちょっと…」<br>
「じゃあいいわ!バイトしてる古泉くんは見てみたかったけど無理して休む必要もないわ。じゃあ有希!明日はあたしに付き合ってもらうわよ!」…やれやれ。<br>
「おいおい、長門の読書もちゃんとレポートしとけよ」と言ってからニヤケ面を軽く睨んだ。俺もバイトなんて言ったら押しかけてきそうだな。これも人徳のなさか。<br>
</div>
<br>
<div>
その日は古泉がバイトという名目でサボった事に軽い憤りを覚えつつ朝比奈さんと一緒にいられる休日に優越感を覚え眠りに着いた。<br>
</div>
<br>
<br>
<div>
翌日、土曜日俺はいつものように妹によって起こされた。<br>
「そうだ、妹よ。今日のお前はヒマか?」「キョンくん遊んでくれるのー?」「ああ。もう1人いてもよければな。」「わーいだれー?」「秘密だ。後でのお楽しみ。」「えへっやったぁ!」<br>
というやりとりを経て俺は待ち合わせのデパート前で妹と、朝比奈さんに会って三人でいる。<br>
「こんにちは、妹ちゃん」「こら!走り回らない!あっ朝比奈さん、こんにちは」「こんにちはーえへっ」<br>
「じゃあ早速買いに行きましょうか。たしかお茶の葉でしたよね?」「そうですぅ」「じゃあさっそく買いに行こー!」「こらこら、はしゃぐんじゃあありません!」<br>
なんて話していると目的の店に到着した。「ちょっと待っててくださいね?」と言い残し店主と話しに奥へ行ってしまった。妹よ、お前は匂いを嗅ぎすぎだ!さて、お茶の店に居てもする事ないし妹と遊ぶか。<br>
</div>
<br>
<br>
<br>
<br>
<div>
妹と遊んでいたらいつの間にか買い物を済ませたであろう朝比奈さんはまるで聖母のような笑顔で歳暮のような紙袋を抱えてた。ずっと見てたのだろうか。<br>
この人の旦那さんになる人は幸せだろうななんて考えながら「すみません、妹がお茶に興味ないみたいで一緒に遊んでやってたら気づきませんでした。」と妹の部分を強調し言った。<br>
そしてさりげなく荷物を持ってあげた。<br>
「ごめんなさいキョンくん、奥で店主と話が盛り上がってしまって。」「いえいえ、ところで「次はなにするのー??」こら、俺のセリフをとるんじゃありません。<br>
「うふふ。キョンくんと妹ちゃん、息がピッタリですね。」「だってキョンくんは━━━」こら、俺のポジションを取るんじゃありません。俺が会話に参加できないでしょう?<br>
こうして俺は2人の会話にぎりぎり参加できない距離で後を追った。話を聞くと鶴屋さんに会うらしい。しかも妹の提案でアポなしだそうだ。<br>
</div>
<br>
<div>
鶴屋邸に着いて朝比奈さんが鶴屋さんを呼ぶことになった。<br>
「じゃあキョンくんおんぶしてー」なんて言って俺にまとわりついてくる妹を華麗にスルーしているとすぐに鶴屋さんが登場した。<br>
「おやーみくるにキョンくんに妹ちゃん、まるで親子だねぇ!」とは鶴屋さんの第一声。朝比奈さんは俺と妹がいることを言ってなかったようだ。<br>
鶴屋さんは俺たちを見ながら「みくると妹ちゃんは似てるし、親子でとおるっさ!今日からキミタチは夫婦だね!」そんな風に見てもらえるのはうれしいかぎりです。<br>
気を良くした俺は思い出したように妹をおんぶすると妹はさっさと俺の背中で寝てしまった。<br>
「キョンくんはいいお父さんになるにょろよ~!みくる!キョンくんの事お父さんって呼んでみて」なんて言われて「えっ」なんて顔を赤くしてオロオロしている朝比奈さんを見ているとこの歳でお父さんになるのも悪くないんじゃないかという気がしてきた。<br>
「でも、キョンくんはいいお父さんになりそうですね。キョンくんのお嫁さんも娘さんも幸せそうです。」なんて朝比奈さんに言われるなんて思ってもなかった俺は、「朝比奈さんの旦那さんになる人は幸せでしょうね。」と言っといた。<br>
朝比奈さんは『あっ』っとでもいいたそうな顔をして顔を赤くした。<br>
恥ずかしくなってきたので話を変えるために「玄関の前でお話してるのは迷惑じゃないですか?と聞くと」「じゃああたしは夫婦の水入らずを邪魔するのも悪いし帰るにょろ!じゃね!」なんていい残して俺たちに何かを言わせる暇もなく玄関に滑り込んでいった。<br>
やれやれ。「じゃあどうしましょう?俺が妹と妹と居るところを見れたんでハルヒには言い訳着くから帰宅しますか?」と本当なら朝比奈さんと実質2人というシチュエーションを疲れによって放棄しようとしたら、<br>
「あの…、キョンくんが家で、その、・・・妹ちゃんとどんなことしてるのか見たいんですけどキョンくんちに行っちゃダメですか?」ああそんな表情でそんなこと言われると俺は心の準備しなければいけないのか、なんて妄想をしてしまいますよ。<br>
「なんにもないですしなんにもしてないですけどいいですか?」「はいっ」そんなにうれしそうに言われると古泉並みにニヤケそうです。<br>
</div>
<br>
<div>
と言うことで自宅。自室。3人と1匹。妹は俺の膝の上でウトウトしている。シャミは朝比奈さんの横で寝ている。<br>
朝比奈さんは妹に遊ばされて妹は勝手に疲れて俺の膝に乗ってきた訳だ。<br>
「家に来てもなにもかわらないでしょう?」「そうですね。自然体でいいじゃないですか。」そんなもんなのかと考えてると、<br>
「キョンくんは自宅でもお父さんみたいですね。」「そんなことないですよ。普段はSOS団の活動であんまりかまってやれてないですし。」<br>
俺はいいお父さんよりあなたの旦那さんになりたいですよなんて思っていると「ううん、キョンくんはいいお父さんなの」なんて小声で言ってるのが耳に入ってきた。<br>
「へっ?」「あっ…。」<br>
一瞬の沈黙の後、落ち着こうと取りあえず膝の上にいる妹の頭を撫でてやると寝ていることが確認できた。<br>
そして朝比奈さんをふとみると、何かを考えるようにしてから「そろそろ帰りますね」と言われたが気になったので、「わかりましたじゃあ送っていきます。話の続きは帰り道でしましょう。」と言って妹をベッドに寝させて家を出た。<br>
</div>
<br>
<br>
<div>
帰り道で、朝比奈さんは無言だった。俺はなにも言ってはいけない気がして黙っていた。帰り道を数分ほど歩いてようやく朝比奈さんは口を開いた。<br>
「妹ちゃんはキョンくんのこと本当に好きなんですね。」「そうなんですか?まあ俺なりに大切にしているつもりなんで好かれているならうれしいですが。」<br>
「…。」無言。長門並みに無口になった朝比奈さん。<br>
ふとこっちを見て「これは禁則事項かもしれないですけど」と前置きしてから<br>
「女の子の初恋はお父さんなんです。いえ、みんなそうって訳じゃあないんですけど、私はそうでした。」<br>
そうなのか?でも朝比奈さんがそういうならそうでしょう。<br>
「でも、妹ちゃんの初恋の人はキョンくんなんです。」<br>
「そうなんですか。ってなんで知ってるんですか?妹から聞いたんですか?」<br>
「それは… …ごめんなさい禁則事項です。」<br>
「えっ!??」禁則事項って事は未来絡み?<br>
「覚えてますか?鶴屋さんちでの会話なんですけど・・・」ええっとおかしなところはあったかな?<br>
「私、『キョンくんはいいお父さんになりそうですね。』って言った後『キョンくんのお嫁さんも娘さんも幸せそうです。』って言ったんです。」<br>
ん?言いたいことがよく分からない。なんて考えていると朝比奈さんは、「じゃあわたしはここからは1人で帰りますね。」と言った。<br>
「家まで送りますよ。」もう少し詳しく聞きたかったし、とは言わなかったが「いいの。キョンくん、変なこと言ってごめんなさい」と言って帰ってしまった朝比奈さんを追いかけることはなく、俺は朝比奈さんの言った意味を考えていた。<br>
</div>
<br>
<div>
家に着くまで俺は、ハルヒじゃなくて朝比奈さんと結婚するのか?とか、なぜハルヒがでてくるのかなんて考えていた。<br>
家に帰って妹のいなくなったベッドに寝転がって考えていると一つの結論に達した。<br>
『未来人』の朝比奈さんは『キョンくんのお嫁さんも娘さんも幸せそうです。』と言った。なぜ娘だと言ったのか。息子の可能性だってあるのに。<br>
もしかしたら人づてに聞いただけなのかも知れないが、そうするとそ帰りになぜ俺に言ったのかわからない。<br>
ならば朝比奈さんは俺か…妹の娘なのだろうか。確証はないが、それが正解な気がしてきた。<br>
そしてわざわざ初恋の話を俺にしてきたって事は、もしかしたら俺の娘じゃないかという気がしてきた。<br>
もちろん真相はわからない。考えるのが面倒になってその日は眠りについた。<br>
</div>
<br>
<div>
日曜日はさんで月曜日。すっかり土曜の事を忘れていつものように部室をノックしてはいる。<br>
「あれ?朝比奈さんだけですか?ハルヒは掃除当番ですけど、古泉はともかく長門がいないのはめずらしいな。」<br>
「あっ昨日買ったお茶いれますね、お父さん」<br>
「あ、ありがとうございます」なんて普通の返事をしたあと「って俺がお父さんだったんですか?」<br>
「気づいてなかったんですか?」いやいや、なんとなくそんな気はしてたけどまさか本当にそうだなんて。<br>
俺の勝手な妄想だったと思ってたのに。<br></div>
<br>
<div>
「昨日の禁則事項は、本当は禁則事項じゃなかったんです。ただ、そう言った方がキョンくんはしっかりと考えてくれると思って。」<br>
まあ確かに禁則事項という言葉があったから考えたんだが。<br>
「そろそろお母さんも来ますよ」<br>
「えっ?それってもしかs「やっほーーー!!!」<br>
こいつなのか…やれやれ、規定事項ってヤツか。<br>
「みくるちゃんお茶!!それと、今日は土曜日のこと詳しく聞かせてもらうから!!!」<br>
こいつはなにかいいことあったのだろうか。長門の意外な一面を見たとか?<br>
</div>
<br>
<div>
まあいい。高校生の分際で自分の娘と親子水入らずで過ごした俺はちょっとのことでは文句は言わないぜ。<br>
「キョン!ちょっときなさい!!」へいへい。将来結婚したら尻に敷かれるんだろうななんて恋人ですらないコイツとの将来を想像してみる。<br>
</div>
<br>
<div>ハルヒ<br></div>
<br>
<div>なによ?<br></div>
<br>
<div>将来はもう少しでいいから優しくしてくれよ?<br></div>
<br>
<div> 終われ<br></div>
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<div>世界中の大多数の人間が翌日から待っているだろう休日に浮かれているだろう週末の金曜日の事である。<br />
俺はいつものようにだらだらと先生の声を右から左に聞き流してようやくたどり着いた放課後SOS団が<br />
占領している文芸部の部室で朝比奈さんの入れてくれたお茶を飲みつつ古泉とボードゲームをして時間をつぶしていた。<br />
明日市内探索が無かったら妹と遊んでやるか、なにして遊んでやろうなどと考えていたら<br />
いつものように凄まじい轟音と共にドアを勢い良く空けて登場したのはハルヒに他ならない。<br /></div>
<br />
<div>「みくるちゃんお茶」と言ってドカッと団長席に腰掛け「今日はちょっとみんなに聞きたい事があるの。」と言った。<br />
古泉はニヤケ面のまま、おや?っと言った表情を見せた。朝比奈さんは怯えの表情の中に好奇の表情が少し、ほんの少しだけ浮かんでる。<br />
長門は・・・俺にもどういった表情なのか理解できない、と言うより聞いてなかったんじゃないかというくらいの無反応。<br /></div>
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<div>誰も何も言葉を発しないのでとりあえず聞いてみた。<br />
「なにをだ?」「みんなは休日って何をして過ごしてるの?」<br />
うむ、少しずつまともな思考を取り戻してきたみたいだな。もっととんでもないこと言われるのかと軽く警戒していたのだが。<br /></div>
<br />
<div>「僕は普段はアルバイトしてますよ」とニヤケ面をこっちに向けて答えた。俺に答えるな。質問してるのはハルヒだ。<br />
「ふ~ん。みくるちゃんは?」<br />
朝比奈さんをちょっと眺めて怯えの表情が減ってる事を確認してからハルヒに目をやると、ハルヒは古泉の発言と思われるをメモしてるように見えた。<br />
「私はお茶を買ったり鶴屋さんとお話したりしてます」と、可愛らしい笑顔で答えた。その表情を独り占めしたいと思ったのは俺だけではなかろう。<br />
「有希は?」「読書」即座に言い放つ長門と既に予測していたであろう解答である読書という文字をメモし終えたハルヒは江戸っ子だなと思うほどせっかちなんだろう。<br />
「ふ~ん、みんな予想通りね。」確かにな。これ以外の事をしている団員は想像できない。もちろんハルヒは除くが。<br />
「で、キョンは?」「そうだな、俺は明日は妹と遊んでやろうと思っている。普段は家でごろごろしてたり谷口あたりと話してたりだな。」<br />
「あんた本当につまらない人生送ってるわね!人生の3分の1は損してるわよ。SOS団に入れてあげた事を感謝してほしいくらいだわ。」<br />
なぜ俺の時だけそんなに文句が出てくる。古泉だって将来嫌でも働かないといけないのに今からアルバイトは青春の無駄遣いだぞくらい言ってやればいいのに。<br />
朝比奈さんはいいとして、長門だってせっかくの休日を部屋で過ごしてるのにはかわりないじゃないか。<br />
なんてそんな事言える訳はなく、代わりに「お前は何して過ごしてるんだ?」とお茶を濁した。ハッキリ言えない自分の言葉で朝比奈さんの入れてくれたお茶も濁してしまった気がして後悔した。<br />
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<div>ガタッ!! 「決めた!!」<br /></div>
<br />
<div>そう言って立ち上がりなにやらくじの様な者をつくり始めた。くじと言っても探索の時のペア決めのアレみたいなヤツだ。というかアレそのものだ。<br />
「おい、俺の質問に答えろよ。自分だけ答えないのは卑怯じゃないのか?」<br />
「ちょっと落ち着きなさいよキョン!誰も答えないなんて言ってないじゃない!」<br />
「じゃあ答えてもらおうか。もう一度言うぞ!ハルヒ、休日は何をしてすごしt」「ちょっと黙ってて!!」<br />
くっなんてわがままな団長だ。教える気なんてないんじゃないのか?古泉を見るとむかつくニヤケ面で肩をすくめてやがる。<br />
「やれやれ」と言って朝比奈さんに、鶴屋さんとどんなことしているのか聞いていると<br />
「できた!」と叫んでみんなにくじを引かせた。<br />
「なんのくじだ?説明しろ」と言いながらくじを引く俺。俺は下僕体質なのかな?<br /></div>
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<div>「決まってるじゃない!団員の休日を1日かけてレポートするのよ!」<br />
「なぜだ?」「みんなの私生活に興味があるからよ!他に理由が必要かしら?」とニヤーっとした嫌みったらしい目つきで言ってくじを回収した。<br />
「それにあたしが休日何をしてるのか気になるんでしょ?」と言ってくじを開封した。気になるなんて言ってない!聞かれたから聞き返しただけだ!<br />
結果は<br />
俺と朝比奈さん。<br />
ハルヒと長門と古泉。<br />
ハルヒの顔がちょっと曇ったが古泉の「素晴らしい考えですが、どうすればいいんですか?」という発言でハッとして元の表情に戻り、<br />
「明日は土曜日だから一日かけてペアの私生活をレポートにまとめてきなさい!ありのままの生活を過ごすのよ!いい?デートじゃないのよ!うかれてるんじゃないキョン!わかった?」<br />
なぜ俺にだけ言う、例えデートじゃなかろうとも朝比奈さんと2人きりだから浮かれてしまうのはしょうがないじゃないかなんて言える訳もなく「わかってるって。」と流しておく。<br />
「それにあんた言ったわよね!明日は妹ちゃんと遊ぶんでしょ?みくるちゃん?ちゃんと妹ちゃんと遊んでるキョンをレポートしとくのよ!」という発言で2人きりじゃない事を再認識して微量のストレスが検知された。が、<br />
「ふぁ~い」なんて言ってたがとても柔らかい笑顔をしてたので俺のストレスは全て浄化された。今ならハルヒに「お前も朝比奈さんのように笑って見ろ」と言える気がする。言わないが。<br />
「じゃあ午前中に朝比奈さんを観察しますので午後は俺の日常に付き合ってください」「わかりましたぁ」なんてやり取りをしてから<br />
「ハルヒ達はどうするんだ?古泉なんてバイトじゃないのか?」「古泉くんバイトはサボれないの?もしくはバイトの見学は?」<br />
「ええ、どうしてもと言うのでしたら明日のバイトは休みますが見学のほうはちょっと…」<br />
「じゃあいいわ!バイトしてる古泉くんは見てみたかったけど無理して休む必要もないわ。じゃあ有希!明日はあたしに付き合ってもらうわよ!」…やれやれ。<br />
「おいおい、長門の読書もちゃんとレポートしとけよ」と言ってからニヤケ面を軽く睨んだ。俺もバイトなんて言ったら押しかけてきそうだな。これも人徳のなさか。<br /></div>
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<div>その日は古泉がバイトという名目でサボった事に軽い憤りを覚えつつ朝比奈さんと一緒にいられる休日に優越感を覚え眠りに着いた。<br /></div>
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<div>翌日、土曜日俺はいつものように妹によって起こされた。<br />
「そうだ、妹よ。今日のお前はヒマか?」「キョンくん遊んでくれるのー?」「ああ。もう1人いてもよければな。」「わーいだれー?」「秘密だ。後でのお楽しみ。」「えへっやったぁ!」<br />
というやりとりを経て俺は待ち合わせのデパート前で妹と、朝比奈さんに会って三人でいる。<br />
「こんにちは、妹ちゃん」「こら!走り回らない!あっ朝比奈さん、こんにちは」「こんにちはーえへっ」<br />
「じゃあ早速買いに行きましょうか。たしかお茶の葉でしたよね?」「そうですぅ」「じゃあさっそく買いに行こー!」「こらこら、はしゃぐんじゃあありません!」<br />
なんて話していると目的の店に到着した。「ちょっと待っててくださいね?」と言い残し店主と話しに奥へ行ってしまった。妹よ、お前は匂いを嗅ぎすぎだ!さて、お茶の店に居てもする事ないし妹と遊ぶか。<br />
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<div>妹と遊んでいたらいつの間にか買い物を済ませたであろう朝比奈さんはまるで聖母のような笑顔で歳暮のような紙袋を抱えてた。ずっと見てたのだろうか。<br />
この人の旦那さんになる人は幸せだろうななんて考えながら「すみません、妹がお茶に興味ないみたいで一緒に遊んでやってたら気づきませんでした。」と妹の部分を強調し言った。<br />
そしてさりげなく荷物を持ってあげた。<br />
「ごめんなさいキョンくん、奥で店主と話が盛り上がってしまって。」「いえいえ、ところで「次はなにするのー??」こら、俺のセリフをとるんじゃありません。<br />
「うふふ。キョンくんと妹ちゃん、息がピッタリですね。」「だってキョンくんは━━━」こら、俺のポジションを取るんじゃありません。俺が会話に参加できないでしょう?<br />
こうして俺は2人の会話にぎりぎり参加できない距離で後を追った。話を聞くと鶴屋さんに会うらしい。しかも妹の提案でアポなしだそうだ。<br /></div>
<br />
<div>鶴屋邸に着いて朝比奈さんが鶴屋さんを呼ぶことになった。<br />
「じゃあキョンくんおんぶしてー」なんて言って俺にまとわりついてくる妹を華麗にスルーしているとすぐに鶴屋さんが登場した。<br />
「おやーみくるにキョンくんに妹ちゃん、まるで親子だねぇ!」とは鶴屋さんの第一声。朝比奈さんは俺と妹がいることを言ってなかったようだ。<br />
鶴屋さんは俺たちを見ながら「みくると妹ちゃんは似てるし、親子でとおるっさ!今日からキミタチは夫婦だね!」そんな風に見てもらえるのはうれしいかぎりです。<br />
気を良くした俺は思い出したように妹をおんぶすると妹はさっさと俺の背中で寝てしまった。<br />
「キョンくんはいいお父さんになるにょろよ~!みくる!キョンくんの事お父さんって呼んでみて」なんて言われて「えっ」なんて顔を赤くしてオロオロしている朝比奈さんを見ているとこの歳でお父さんになるのも悪くないんじゃないかという気がしてきた。<br />
「でも、キョンくんはいいお父さんになりそうですね。キョンくんのお嫁さんも娘さんも幸せそうです。」なんて朝比奈さんに言われるなんて思ってもなかった俺は、「朝比奈さんの旦那さんになる人は幸せでしょうね。」と言っといた。<br />
朝比奈さんは『あっ』っとでもいいたそうな顔をして顔を赤くした。<br />
恥ずかしくなってきたので話を変えるために「玄関の前でお話してるのは迷惑じゃないですか?と聞くと」「じゃああたしは夫婦の水入らずを邪魔するのも悪いし帰るにょろ!じゃね!」なんていい残して俺たちに何かを言わせる暇もなく玄関に滑り込んでいった。<br />
やれやれ。「じゃあどうしましょう?俺が妹と妹と居るところを見れたんでハルヒには言い訳着くから帰宅しますか?」と本当なら朝比奈さんと実質2人というシチュエーションを疲れによって放棄しようとしたら、<br />
「あの…、キョンくんが家で、その、・・・妹ちゃんとどんなことしてるのか見たいんですけどキョンくんちに行っちゃダメですか?」ああそんな表情でそんなこと言われると俺は心の準備しなければいけないのか、なんて妄想をしてしまいますよ。<br />
「なんにもないですしなんにもしてないですけどいいですか?」「はいっ」そんなにうれしそうに言われると古泉並みにニヤケそうです。<br /></div>
<br />
<div>と言うことで自宅。自室。3人と1匹。妹は俺の膝の上でウトウトしている。シャミは朝比奈さんの横で寝ている。<br />
朝比奈さんは妹に遊ばされて妹は勝手に疲れて俺の膝に乗ってきた訳だ。<br />
「家に来てもなにもかわらないでしょう?」「そうですね。自然体でいいじゃないですか。」そんなもんなのかと考えてると、<br />
「キョンくんは自宅でもお父さんみたいですね。」「そんなことないですよ。普段はSOS団の活動であんまりかまってやれてないですし。」<br />
俺はいいお父さんよりあなたの旦那さんになりたいですよなんて思っていると「ううん、キョンくんはいいお父さんなの」なんて小声で言ってるのが耳に入ってきた。<br />
「へっ?」「あっ…。」<br />
一瞬の沈黙の後、落ち着こうと取りあえず膝の上にいる妹の頭を撫でてやると寝ていることが確認できた。<br />
そして朝比奈さんをふとみると、何かを考えるようにしてから「そろそろ帰りますね」と言われたが気になったので、「わかりましたじゃあ送っていきます。話の続きは帰り道でしましょう。」と言って妹をベッドに寝させて家を出た。<br />
</div>
<br />
<br />
<div>帰り道で、朝比奈さんは無言だった。俺はなにも言ってはいけない気がして黙っていた。帰り道を数分ほど歩いてようやく朝比奈さんは口を開いた。<br />
「妹ちゃんはキョンくんのこと本当に好きなんですね。」「そうなんですか?まあ俺なりに大切にしているつもりなんで好かれているならうれしいですが。」<br />
「…。」無言。長門並みに無口になった朝比奈さん。<br />
ふとこっちを見て「これは禁則事項かもしれないですけど」と前置きしてから<br />
「女の子の初恋はお父さんなんです。いえ、みんなそうって訳じゃあないんですけど、私はそうでした。」<br />
そうなのか?でも朝比奈さんがそういうならそうでしょう。<br />
「でも、妹ちゃんの初恋の人はキョンくんなんです。」<br />
「そうなんですか。ってなんで知ってるんですか?妹から聞いたんですか?」<br />
「それは… …ごめんなさい禁則事項です。」<br />
「えっ!??」禁則事項って事は未来絡み?<br />
「覚えてますか?鶴屋さんちでの会話なんですけど・・・」ええっとおかしなところはあったかな?<br />
「私、『キョンくんはいいお父さんになりそうですね。』って言った後『キョンくんのお嫁さんも娘さんも幸せそうです。』って言ったんです。」<br />
ん?言いたいことがよく分からない。なんて考えていると朝比奈さんは、「じゃあわたしはここからは1人で帰りますね。」と言った。<br />
「家まで送りますよ。」もう少し詳しく聞きたかったし、とは言わなかったが「いいの。キョンくん、変なこと言ってごめんなさい」と言って帰ってしまった朝比奈さんを追いかけることはなく、俺は朝比奈さんの言った意味を考えていた。<br />
</div>
<br />
<div>家に着くまで俺は、ハルヒじゃなくて朝比奈さんと結婚するのか?とか、なぜハルヒがでてくるのかなんて考えていた。<br />
家に帰って妹のいなくなったベッドに寝転がって考えていると一つの結論に達した。<br />
『未来人』の朝比奈さんは『キョンくんのお嫁さんも娘さんも幸せそうです。』と言った。なぜ娘だと言ったのか。息子の可能性だってあるのに。<br />
もしかしたら人づてに聞いただけなのかも知れないが、そうするとそ帰りになぜ俺に言ったのかわからない。<br />
ならば朝比奈さんは俺か…妹の娘なのだろうか。確証はないが、それが正解な気がしてきた。<br />
そしてわざわざ初恋の話を俺にしてきたって事は、もしかしたら俺の娘じゃないかという気がしてきた。<br />
もちろん真相はわからない。考えるのが面倒になってその日は眠りについた。<br /></div>
<br />
<div>日曜日はさんで月曜日。すっかり土曜の事を忘れていつものように部室をノックしてはいる。<br />
「あれ?朝比奈さんだけですか?ハルヒは掃除当番ですけど、古泉はともかく長門がいないのはめずらしいな。」<br />
「あっ昨日買ったお茶いれますね、お父さん」<br />
「あ、ありがとうございます」なんて普通の返事をしたあと「って俺がお父さんだったんですか?」<br />
「気づいてなかったんですか?」いやいや、なんとなくそんな気はしてたけどまさか本当にそうだなんて。<br />
俺の勝手な妄想だったと思ってたのに。<br /></div>
<br />
<div>「昨日の禁則事項は、本当は禁則事項じゃなかったんです。ただ、そう言った方がキョンくんはしっかりと考えてくれると思って。」<br />
まあ確かに禁則事項という言葉があったから考えたんだが。<br />
「そろそろお母さんも来ますよ」<br />
「えっ?それってもしかs「やっほーーー!!!」<br />
こいつなのか…やれやれ、規定事項ってヤツか。<br />
「みくるちゃんお茶!!それと、今日は土曜日のこと詳しく聞かせてもらうから!!!」<br />
こいつはなにかいいことあったのだろうか。長門の意外な一面を見たとか?<br /></div>
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<div>まあいい。高校生の分際で自分の娘と親子水入らずで過ごした俺はちょっとのことでは文句は言わないぜ。<br />
「キョン!ちょっときなさい!!」へいへい。将来結婚したら尻に敷かれるんだろうななんて恋人ですらないコイツとの将来を想像してみる。<br /></div>
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<div>ハルヒ<br /></div>
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<div>なによ?<br /></div>
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<div>将来はもう少しでいいから優しくしてくれよ?<br /></div>
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<div> 終われ<br /></div>
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