食糧増産命令を受けて
「守れなければ藩国取り潰し…」
ジェントルラットは頭を抱えてぶつぶつ呟いていた。
…15万トン?この藩国が出せる訳無いじゃないですか。そもそもこの藩国の藩民の数に対して大きすぎる数字です。嫌がらせですか?
そんな言葉がジェントルラットの頭に浮かんだが、言う相手も特に居ないので直ぐに消え去った。
例えどれだけ困難だとしても出さなくてはいけないのだ。そうでなければ藩国崩壊、「無理です」では済まない。
ジェントルラットは机から紙の束を取り出した。『スイトピーさまのため』に作った資料である。藩国が手に入れている情報を毎日この様に纏めていた。
そして『スイトピーさま』の微笑みを思い出す。
例えどれだけ困難だとしても出さなくてはいけないのだ。そうでなければ藩国崩壊、「無理です」では済まない。
ジェントルラットは机から紙の束を取り出した。『スイトピーさまのため』に作った資料である。藩国が手に入れている情報を毎日この様に纏めていた。
そして『スイトピーさま』の微笑みを思い出す。
…そう、某はこんな所では負けられないのですよ。
真に分かりやすい人間であるジェントルラットの動力源になるのはそういう想いである。
それさえがあれば疲労も忘れ、通常以上の速度で頭を働かせて動く事が出来た。
それさえがあれば疲労も忘れ、通常以上の速度で頭を働かせて動く事が出来た。
そうしてジェントルラットは頭を抱える事を止めて計算を始めた。
ジェントルラット藩国国庫にある食糧は現在8万tである。
よって今回の命令に応える為には23万tにする必要があるが、後の事を考えても有れば有るほど良いのは言うまでも無い。
よって今回の命令に応える為には23万tにする必要があるが、後の事を考えても有れば有るほど良いのは言うまでも無い。
…15万t以上の食糧を如何に確保すべきか。
ジェントルラットはまずわんだっく市場での購入を考えた。資金は無いので他の物資を大量に売る事になるが、藩国が潰れるよりはマシだろう。
しかし之だけではまだ足りない。ジェントルラット藩国には資金も無いが他の物資も余り無かった。
次に考え付いたのが文族の投入である。此方で出来る限りの食糧を手に入れる必要がある。
しかし之だけではまだ足りない。ジェントルラット藩国には資金も無いが他の物資も余り無かった。
次に考え付いたのが文族の投入である。此方で出来る限りの食糧を手に入れる必要がある。
もう夜も遅くはなっていたが、文族吉沢葉月は起きていた。
何故起きていたかは本人も得心出来る理由を挙げる事は出来なかった。直感の様な物だろうか、起きていなければいけない気がしたのだ。
ノックの音。吉沢は声を掛けずに扉を開けた。誰が来たのかは何と無く分かっていた。
何故起きていたかは本人も得心出来る理由を挙げる事は出来なかった。直感の様な物だろうか、起きていなければいけない気がしたのだ。
ノックの音。吉沢は声を掛けずに扉を開けた。誰が来たのかは何と無く分かっていた。
「こんばんは。夜分に失礼。お時間よろしいでしょうか?」
扉の向こうに立っていたのは眼鏡を掛けた男。吉沢の予想通りジェントルラットだった。
「こんばんは。問題ありません。紅茶は要りますか?」
「有難う御座います」
「有難う御座います」
両者は古風な机を挟んで向かい合って座った。紅茶の良い匂いが部屋を満たしていた。
まず口を開いたのは吉沢だった。
まず口を開いたのは吉沢だった。
「それでご用件は何でしょう」
「…お頼みしたい仕事があるのです」
「…お頼みしたい仕事があるのです」
ジェントルラットは自身の苦痛を訴えるよう(いや、もしや自身の痛みとして感じていたのかもしれない)に現状を説明した。食糧増産命令の事。守らなければ藩国が取り潰されること。
「それで食糧の確保をお願いしたいのです。…無理なお願いだという事は承知しています。某も手伝いますし、藩国の存亡のためにもどうか、どうかお引き受けして頂けませんか」
一間の沈黙、吉沢は仕事が達成可能かを考えた後。ついでにジェントルラットの熱意も換算して、ハッキリとした口調で答えた。
「分かりました。やらせて頂きます」
「…有難う御座います!」
「…有難う御座います!」
ジェントルラットは顔一杯に自然な笑みを浮かべて喜んだ。
両者強い握手を交わした後、それぞれ自分の仕事に戻った。
空を見上げると綺麗なオーロラが見えた、そんな夜の話だった。
空を見上げると綺麗なオーロラが見えた、そんな夜の話だった。
翌早朝。
タウンクライヤ―は盛大にラッパを吹き鳴らした後大声で叫んだ。
タウンクライヤ―は盛大にラッパを吹き鳴らした後大声で叫んだ。
「ジェントルラット藩王代理よりのお手紙をお読み上げします!」
その内容、食糧増産命令と文士の召集、に最も早く反応を示した吏族が二人居た。たららとわんちょぺである。
たららもわんちょぺも直ぐに藩王を訪ねた。そして全く同じ様な事を言った。 私にも手伝わせてください。と。
たららもわんちょぺも直ぐに藩王を訪ねた。そして全く同じ様な事を言った。 私にも手伝わせてください。と。
全く持つべきは良い藩民である。ジェントルラットは心の内で涙を流しそうになったという。
(文章:雨中正人)