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クレーター1」(2007/08/14 (火) 00:03:59) の最新版変更点

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 ドアを開けた途端、湿った空気が内から流れ出す。 林田は思わず鍵を握った手を口元に当てた。咳き込みそうになるのを抑えて、 家の中を覗くと、そこには仄暗い闇が広がっている。 「香織……?」  余りにも小さい声が、闇の中で静かに響いて消えた。  玄関の壁に指を這わせ、手探りで電気を点ける。廊下へと一歩踏み出すと、 何か酸っぱいような苦いような臭いがした。今度ばかりは咳き込むのを抑えられない。 暫く廊下で咳き込んだ後、彼はリビングへと足を踏み入れる。 リビングへと続くドアを開けると、臭いは一層強まった。  電気を点ける、なるべくゆっくりと。ゆっくりと。  部屋が明るくなり、林田は電球のほうを見上げた。そして思わず腰を抜かした。 「う、わああぁあっ」  林田の目線の先には、青白い足がぶら下がっていた。目線を動かすと、 青いワンピースが目に映る。さらにその先には、ぽってりとして、それでいて乾いた唇、 すっと伸びた鼻筋、閉じられた目を覆う長い睫毛……。それは林田郁夫の妻、香織だった。 彼女の足元に広がる黄色い染みを林田は呆然と眺めていた。  30分もの間、林田の体は――たまに何かを思い出したかのようにぴくりと足が震える 以外は――微動だにしなかった。何回目かの足の震えの後、彼の足は不意に 電話台の方へと向かった。受話器を手に取り、番号をプッシュする。……1、1、0……。 「……もしもし、もしもし……、妻が……妻が大変なんです」

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