2022-02-25:
VoiSona(旧:CeVIO Pro) は新しいソフトのため、
このページの記述が当てはまらないことがあります。
ひとまずは「
【VoiSona】TIPS・バグ」のページもご覧ください。
<このページのねらい>
VOCALOIDとCeVIOでは、おなじ歌声合成音声ソフトであっても、コンセプトが異なったり、パラメータの効果や名前が少しずつ異なるため、VOCALOID経験者さんはかえって戸惑うことがあるかもしれません。
そこで、VOCALOID経験者さん向けのCeVIOの説明記事をご紹介します。
また、VOCALOIDの機能・調整方法に近い効果を、CeVIOで得るための方法をご紹介します。
<VOCALOID経験者さん向けのCeVIO解説記事>
いずれも2022年現在はかなり古い記事になっていますが、基本的な考え方は参考になります。
- VOCALOIDの観点から比較してみた、CeVIO (Creative Studio)の特徴の説明です。
- 書いた人は、VOCALOID・CeVIO・その他の音声合成を等しく愛するユーザーさんです。
- CeVIOの特徴の全体像を、ざっくりとつかみやすい解説となっています。
- 記事にある「パートの途中での変更はありません。固定。」はCS7以降、「ALP」で可能です
- CeVIOの音声合成の特徴や、調整方法が、かなり具体的に説明されています。
- 操作画面の写真を多数見られます。
<VOCALOIDとCeVIOの違い>
楽器で例えるならばピアノとオルガンの違いです。
どちらも鍵盤があり、鍵盤を弾くスキルはどちらにも応用できるのでとりあえず音を出すこと自体はできますが、音を出す原理が異なるので演奏法を突き詰めると全く異なってゆく、という感じです。
ピアノロールのUIを持つボーカルシンセサイザー(歌声合成音声ソフト)という点では共通ですが、楽譜上のノートの扱いから異なるためVOCALOIDの"調教"ノウハウは基本的に役に立ちません。忘れましょう。
(人間の歌い方の癖、などの知識は使えます)
ソフトとしてのコンセプトにも違いがあり、「
VOCALOIDは楽器」を指向しているのに対し、「
CeVIOは人間」を指向しています。そのため、VOCALOIDはMIDI信号に比較的忠実でインストゥルメント音源的な挙動をしますが、CeVIOは元の歌手の癖に忠実な挙動をします。そもそものコンセプトが「人間(の声の再現)」のため、CeVIOは歌う専用ではなく話すこともできます(
CeVIOトーク)。
ソフト |
VOCALOID |
CeVIO |
コンセプト |
楽器 |
人間(バーチャルシンガー) |
機能 |
(楽器なので) 歌う専用 |
(人間の再現なので) しゃべる・歌う両方 |
よくある質問
- 仕組みやコンセプトの違いについて
- ノート(音符)などの楽譜入力の違いについて
ノート(音符)の扱いの違い
全般的に、CeVIOはノートのタイミングや長さ、音程情報をあまり重視しません。あくまでもざっくりの目安です。
なぜなら、しくみ的にCeVIOのノート情報は、人間が歌うときに見る楽譜の音符情報であり、MIDIのような実際に発音・発声される音やタイミングを指定するわけではないからです。
そのため、ノートは人間向けの楽譜の様になるべくベタなものが良く、ノート単位に対する調声はCeVIOでは軽いものになります。
- CeVIOはノートでタイミング調整するのはNG
- CeVIOは与えられた楽譜(ノート)に対して、元になった人間がどれだけズレて発声するか、を機械学習で再現するソフトです
- そのためノートの長さや時間をいくら調整してもうまくいきません(当然ですが、ズレます)
- CeVIOはMIDIの信号に合わせて声の音がなるインスト音源、ではありません
- 本当のタイミングは「TMGモード」で調整します
- ノートによる時間指定はCeVIOでは制限がありますが、TMGにはありません
- 子音・母音のタイミングに加え、途中の口の開きの時間指定が可能です
- ノートを重視しない分、CeVIO/VoiSonaの「TMG」は非常に重要なパラメータです。TMGを使いこなしてはじめてまともな調声になります。
- CeVIOはノートを分割するのはNG
- VOCALOIDやUTAUでよく使われるノート分割・母音分割は不向き、というより音が破綻することがあります
- 「発音の途中で無理やり区切って歌って」と指定している事と同じなので、正しく発音されません
- 人間が楽譜のノートに対してどう発声するかを再現するソフトのため、人間の発声できない短すぎるノートは破綻の原因になります
- たとえば、4分音符で「あい」と発音すべきところを8分音符2つで「あ」「い」と入力すると、8分音符が2つ続いたときの歌い方が再現され、本来の4分音符一つの歌い方になりません
- 音を小さく切って滑らかに繋いでいる仕組みのVOCALOIDやUTAU等と大きな違いがある部分です(くぎって歌われます)
- CeVIOはノートの開始と終了でひとつの発声の始まりと終わりを再現するため、人間が歌うときに続けて発声しているノートは刻んではいけません
- 複数の音(文字・音節・モーラ)であっても、CeVIOでは一つのノートで表現するほうが滑らかで上手くいきやすいです
- CeVIOは「1文字1音符」ではなく、「複数文字(1音)1音符」が基本です
- 「こぶし」「しゃくり」「フォール」などはノートで再現するのではなく、「PITモード」で直接線を引いて再現します
- ※不可能ではないですが安定せず、コツがいります
- またスラーをつかって滑らかにする方法がありますが、うまくいかないことも多いです
- CeVIOは発声の区切りでないところでノートの間を開けるのはNG
- CeVIOはノートの間が空いている(休符)と、ひとつづきの発声の区切りと判断します
- 人間は休符で息継ぎをするので、ノート間の隙間に息継ぎのブレス音が再現されます
- ※息継ぎを一切しない合成音声を学習したボイスが出たら、この限りではありません
- CeVIOで無音の表現をする場合には、VOLをゼロにしたり、歌詞に「っ(促音)」を入れたり、TMGで無音部分を伸ばすなどして表現します
- インポート用に「細かい休符(空白)の除去」機能があります
-
譜割り(ノートに割り当てる歌詞)の違い
- モーラではなく音節単位が基本
- 前述のとおり、CeVIOは人間用の楽譜が前提です
- 特に日本の人はクセでひらがな単位で分けようとしますが(「モーラ(拍)」)、これは実際の発音としては不自然です
- 「ん」や「っ」や「ゃゅょの前」などは「子音」で、一連の発音の途中です。
- そのため、この単位(カナ単位)でノートを割ってしまうと、発音の途中で区切ることになり、不自然な発音が合成されます。
- 「無理やり区切って歌って欲しい」、と指定していることになります
- 発音として不自然な カナ単位=「モーラ」単位ではなく、「音節(シラブル)」単位で割り当てましょう
- VOCALOIDの楽譜の譜割りは不自然な発音になります
- 英語の歌と同様に、音符には音節単位で割り当てましょう
- →「【ソング】調声基本編 / (2) 歌詞の入れ方」
楽譜情報の扱いの違い
CeVIOは一つ一つのノートの情報(タイミング・長さ・ピッチ)はあまり重視しませんが、楽譜に設定されたそれ以外の指定情報は細かく再現します。
ノート以外に設定された以下の指定の違いで歌い方が変わります(特にCeVIO AI/VoiSona)。
- テンポ・ビート
- CeVIO AI VoiSona 調号(キー指定)
- CeVIO AI VoiSona 強弱記号(ダイナミクス指定)
- CeVIO AI VoiSona スラー
- CeVIO AI (8.3以降) VoiSona アクセント・スタッカート
また、ノートとノートのつながりや、ノート間の歌詞のつながり・音域は歌い方に影響します(特にCeVIO AI/VoiSona)。
- ノートのつながり
- 同じ音程・長さのノートでも前後のノートが
- 音程が下がってゆく
- 同じ音程が続く
- 音程が上がってゆく
- のちがいで異なる歌い方(タイミング・ピッチ・ボリューム・ブレス等)になります
- ノートの歌詞のつながり
- 同じノートのメロディであっても歌詞(≒音素)が異なると歌い方が異なります
- 音の伸ばしの歌詞の違いで歌い方が変わります
- メロディの使う音域
- 同じメロディでも音域の使い方で歌い方が変わります
- 高い音域:喉を絞ったつらそうな歌い方に。音量も不安定で弱々しくなる。
- 得意な音域:しっかりとした歌い方に。
- 低い音域:弱々しい歌い方に。場合によってはささやきのようにも歌う。
- メロディの曲の中の位置
- 同じメロディであっても曲の前の方にあるか後ろにあるかで歌い方が変わります
- 開発者の理想としては、「前半はまだ元気だが、後半は歌い疲れた感じを学習して再現できることが目標」、とのことです
TIPS
このような挙動から、1曲丸ごと楽譜を打ち込み終わってから細かく調声をする形がベターな制作シーケンスになります。
少しづつ入力して弄って、を繰り返すと再合成で歌い方が変わるため最初に入力した箇所はやりなおしになるためオススメしません。
ミキシングの違い
- CeVIOは原理的に、発せられた生の声がそのまま出てくるため、収録加工済の波形を元にするVOCALOIDなどとは若干違いがでます
- ディエッサーの必要性など
- 例外的に、一部のボイスはフォルマントに加工が入っています(IA,ONE,可不,星界など)
- 可不は「声質」/「ALPパラメータ」(≒フォルマントシフトに似たもの)がほとんど効かない為、フォルマントに手を入れる場合はミキシング側で行う必要があります
- フォルマント以外の加工が入っているボイスもあります(#kzn、狐子、AiSuuなど)
用語の違い
- 「調教」と「調声」
- このwikiにもあるようにCeVIOでは「調声」と呼ばれます(トークも込み)
- ※ソフトウェアトーク界隈では「調教」という言葉は一般的ではありません。CeVIOにはトークもあるため両方で通じる「調声」が使われている…と思われます
- 「調教」では検索で情報を見つけにくいです
- 「ボイスバンク」と「ボイスライブラリ」
- CeVIOでは「ボイスライブラリ」または「ボイス」という用語が使われます
- どちらかといえばソングとトークの区別をつけるため「ソングボイス」「トークボイス」という表記が多いです
- VOCALOIDのボイスバンクにはサンプリングされた収録音声波形が含まれるのに対し、CeVIOのボイスライブラリにはパラメータや機械学習されたデータが含まれます
- 「サンプリング元」と「音源提供者」
- 「声質」
- VOCALOIDや一般用語では声の性質や声色の違いのことを表しますが、CeVIOでは「声質パラメータ」という固有パラメータのことを指します
- VOCALOIDのGEN、音声加工のフォルマントシフトに似た効果のパラメータです
<VOCALOIDとCeVIOの機能互換表>
VOCALOIDでの調整方法 |
CeVIOでの調整方法 |
音符の高さの表記 |
たとえばピアスタでの「C4」という音符の高さは、CeVIOでは国際式の「C5」と表記されます。 CeVIOの表記をピアスタの表記方法に合わせたいときは、CeVIOの「ツール」→「オプション」→「ソング設定」タブ→「鍵盤の表記を1オクターブ低く」にチェックすればできます。 →「音の高さの表記方法(C5など)がPiapro
Studio(VOCALOIDのエディタ)と1オクターブ違うようなのですが、ピアスタの表記方法に合わせられませんか?」 |
DYN |
VOLや強弱記号で調整できます。 (VOLは実際のリアルタイムの音量が分かるところが便利で、強弱記号はTMGをいじったときに連動してくれるところが便利。) CeVIO AI VoiSona CeVIO AI・VoiSonaでは、音量だけではなく歌い方がかわります(PITにも大きく影響)。→「【★★☆】強弱記号の効果」 |
GEN |
「声質スライダー」や「ALP」で調整できます。 声質スライダーはトラック全体の声質を操作したい場合に使い、ALPは時間軸で細かく操作したい場合に使います。 |
OPE、BRI |
TMGの線を前後にずらして、1音の中の、好みの口の開き具合や明るさのところを広げるとよいです。 上記のALPでも、ある程度近いニュアンスがつけられます。 PITで、音の高さをほんのわずかに上ずらせたり下ずらせるのも有効です。 |
ノート分割 |
音符はあまり分割しないで、代わりにPITやTMGで調整するのが基本です。 (音符を分割すると、音符ごとに言い直してしまうからです) それでもやはり母音分割を使いたい場合は、スラー機能が便利です。同じ母音どうしのつながりが滑らかになります。 ※ CeVIO CS CeVIO CSで、異なる母音どうしのつながりを滑らかにするには、TMGで調整するとよいです。これは同じ母音どうしでも有効な方法です。 ※ CeVIO AI VoiSona CeVIO AI・VoiSonaでは、異なる母音どうしのつながりを滑らかにしたい場合も、スラー機能が効きます。 |
歌詞を「ー」にして、同じ母音どうしのつながりを滑らかにする |
スラー機能を使うとよいです。 ※ CeVIO CS CeVIO CSの場合、例えば「あ」「あ」でも「あ」「ー」でも発音は同じです。(実例:VOCALOIDとCeVIOで「-」とスラーのテスト) ※ CeVIO AI VoiSona CeVIO AI・VoiSonaの場合は、「あ」「あ」と「あ」「ー」で発音が微妙に異なります。発音が気に入らない場合は、もう一方を試してみるとよいでしょう。 |
(V3の)VELで子音の長さをいじりたい |
TMGで、子音全体(下部の灰色の帯)の長さを前後に動かせばOK。 (VOLの文字部分をクリックしてVOLの線も重ねて表示させると、効果が目に見えるので調整しやすいです。) |
(V3の)「_0」 |
無声にしたい歌詞のうしろに「'」(全角アポストロフィ)をつけると、その直前の母音が完全になくなります(母音脱落)。 例:1音の歌詞に「す'ぺーす'」と入力すると、「spees」と発音されます。 (厳密に言うと「_0」とは異なる効果ですが) また、「音素の直接入力」でも可能です。 |
自動ビブラート |
VIAとVIFで調整できます。詳しくはこちら。 |
手動ビブラート |
PIT・VOLそれぞれにつき、波打った線を描けばOKです。 CeVIO AI VoiSona CeVIO AI・VoiSonaではこの波線は線ツールでカクカクした線でもOKです。 このとき、VIAを0で描くか、 CeVIO AI 「ビブラート無効」にして、自動ビブラートをなくしておくとよいです。 |
※追記・修正・質問などあれば↓
最終更新:2023年08月25日 15:07