夏が過ぎ去り、次の季節が訪れようとしている夕暮れ時。
薄暗い路地を歩く男が軽く肩を擦りながら呟く。
薄暗い路地を歩く男が軽く肩を擦りながら呟く。
「寒くなってきたな……スーツを新調するか。
『ヴァレンチノ』か『ジャンフランコ・フィレ』がいいんだが……」
『ヴァレンチノ』か『ジャンフランコ・フィレ』がいいんだが……」
彼……『吉良吉影』はここで考えた、果たしてお気に入りのブランドスーツを着ていいものだろうか。
この間の『女』の様に私を追うものが居るだろう。
あの時話した『ジョースターのジジイ』とは何者だろうか?
この間の『女』の様に私を追うものが居るだろう。
あの時話した『ジョースターのジジイ』とは何者だろうか?
名前からして外人なのは間違いない。
ジジイという事は老人か、そうでなくても初老は迎えているだろう。
そうなれば特定するのは難しい事ではない筈だ。
ジジイという事は老人か、そうでなくても初老は迎えているだろう。
そうなれば特定するのは難しい事ではない筈だ。
「急ぐことはない、仗助の仲間ならカフェ・ドゥ・マゴの辺りに出るかな……父に調べさせるか」
そこまで考えて足を止め、交差点脇にあるカメユーデパートに目を向ける。
前の職場とは別店舗だし万が一、ということもないだろう。
そう思い足を運んだ。
前の職場とは別店舗だし万が一、ということもないだろう。
そう思い足を運んだ。
店員の挨拶をシカトしてカゴを手にすると切らした食材とスナック菓子、そしてキャットフードを詰め込む。
他にもワインや酒の肴にするチーズを少し手にすると、レジへ向かう。
他にもワインや酒の肴にするチーズを少し手にすると、レジへ向かう。
「いらっしゃいませ…」
レジ打ちは若い女性のアルバイトで、全くやる気を感じさせない声色で挨拶をした。
容姿は悪くないのだが、パサパサした金髪が目立つ。
ノロノロとぎこちない手付きでバーコードを探し当て、機械を押し当てる。
容姿は悪くないのだが、パサパサした金髪が目立つ。
ノロノロとぎこちない手付きでバーコードを探し当て、機械を押し当てる。
(ガラは悪いが美しい手首をしている……)
今年の私は絶好調だ……スタンドは成長し邪魔者を消し去る事に成功しつつある。
恐らく彼女は学生、この時間のシフトなら深夜前には交代するだろう。
一度家に帰って、家族を安心させたら今の彼女と『手を切って』新しく彼女の『手を切る』とするか……。
恐らく彼女は学生、この時間のシフトなら深夜前には交代するだろう。
一度家に帰って、家族を安心させたら今の彼女と『手を切って』新しく彼女の『手を切る』とするか……。
会計を済ませるとレジに人が並んでるわけでもないのに袋を何枚か渡された。
思わず最近の若い娘は……と爺臭い事を一瞬考えてしまった。
レジの奥にあるテーブルの上で袋に買ったものを詰めていく。
思わず最近の若い娘は……と爺臭い事を一瞬考えてしまった。
レジの奥にあるテーブルの上で袋に買ったものを詰めていく。
「もしもし?ユウちゃん聞いてよォ~~」
驚いたことに仕事中に電話まで始めた。
右腕の肘をみるとタトゥーまでしている、店員も注意しないなら雇わなければいいものを。
右腕の肘をみるとタトゥーまでしている、店員も注意しないなら雇わなければいいものを。
(余り私の好みではないが、たまにはこういうのもいいだろう。
私がすぐにユウちゃんの事を忘れさせてあげよう……タトゥーも綺麗に消してあげるよ、肘から上も一緒にね……)
私がすぐにユウちゃんの事を忘れさせてあげよう……タトゥーも綺麗に消してあげるよ、肘から上も一緒にね……)
「写真のオッサン見つけたんだけど……」
写真……?
ゴゴゴゴゴゴゴ……
あの時……山岸由香子も私の写真を持っていた。
とった覚えがないので不振に思っていたが今思うとカメラを向いていた気がする。
カメラを構えた人間なんてここ最近私の視界には入っていない……ジョースターのジジイ……能力は………『念写』……!?
とった覚えがないので不振に思っていたが今思うとカメラを向いていた気がする。
カメラを構えた人間なんてここ最近私の視界には入っていない……ジョースターのジジイ……能力は………『念写』……!?
ボンッ!ボンッ!
背後で何かが弾けるような音が聞こえる。
振り返るとそこには、無数の『足』があった……。
振り返るとそこには、無数の『足』があった……。
「これは『墳上裕也』の『ハイウェイ・スター』……!」
匂いで相手を感知し、時速60キロで相手を追跡する……弱点のないスタンド……だが私の匂いは知らない筈。
こいつが私を追う事は不可能だ。
こいつが私を追う事は不可能だ。
ピタリと動きを止めた足が、こちらを向いた。
まさか……そんな筈は……奴等に渡した私の痕跡……。
奴等が初めて私に迫ったあの靴屋……私がそこでした注文……ボタン…!
まさか……そんな筈は……奴等に渡した私の痕跡……。
奴等が初めて私に迫ったあの靴屋……私がそこでした注文……ボタン…!
「まずいっ!『キラークイーン』!」
手にした袋を爆弾に変え、投げつける。
後ろに飛びのいて爆破の安全圏まで移動して、爆破する。
足の一つ一つがスタンド、数は多くないので5,6潰せば少なからずダメージになる筈。
後ろに飛びのいて爆破の安全圏まで移動して、爆破する。
足の一つ一つがスタンド、数は多くないので5,6潰せば少なからずダメージになる筈。
しかし爆破の位置が悪かったのか、大多数は下から潜り抜けて迫ってきた。
一度体内に侵入されれば体中の養分を吸い尽くされる。
弱点のないスタンドが残り数十センチという所まで迫っているのを吉良吉影はハッキリと目撃した。
だが、彼に動揺はなかった。
一度体内に侵入されれば体中の養分を吸い尽くされる。
弱点のないスタンドが残り数十センチという所まで迫っているのを吉良吉影はハッキリと目撃した。
だが、彼に動揺はなかった。
「匂い…家には匂いがあり長く住めばその匂いが体に染み付く……。
私の匂いは『川尻浩作』のものになりつつある。そして……」
私の匂いは『川尻浩作』のものになりつつある。そして……」
あと数センチという所まで迫りながら『ハイウェイスター』は散り散りに飛び店中を駆け回った。
素早く店を出ると周囲に時速60キロ以上で走行可能な乗用車を探す。
素早く店を出ると周囲に時速60キロ以上で走行可能な乗用車を探す。
「袋の中で焼けた『チーズ』が奴の嗅覚を狂わせているうちにこの場を離れるッ!」
私の匂いを判別できたかは判らないが、もしかしたら周囲の人間全ての養分を奪うつもりかもしれない。
そうなる前にここを離れるのだ。
そうなる前にここを離れるのだ。
「見つけたぜ……吉良吉影ぇ~~~」
バイクに跨る男子高校生は血管を浮き出しながら怒りに打ち震えていた。
彼の手足からは少量の出血が見られたが、それを気にする様子もなく携帯電話に叫んでいた。
彼の手足からは少量の出血が見られたが、それを気にする様子もなく携帯電話に叫んでいた。
「逃げろヨシエッ!そいつに決して近づくんじゃねーぞ!」
「ユ……ユウちゃんどうしたの?」
「どうなってんのよ…いつ怪我なんてしたの?」
「ユ……ユウちゃんどうしたの?」
「どうなってんのよ…いつ怪我なんてしたの?」
二人の女性が心配そうに男を見つめる。
彼は暴走族だ、よく怒鳴るし語気も荒い。
だが今の彼はかつてないほど真剣だった。
彼は暴走族だ、よく怒鳴るし語気も荒い。
だが今の彼はかつてないほど真剣だった。
「オレはこれから一っ走りしてくる……ただオレが戻らなかったそん時は………テメーらこの町から逃げろ」
「な、何言ってんのよ……」
「ま、まさかヤバイ薬に手出しちゃったとか?」
「な、何言ってんのよ……」
「ま、まさかヤバイ薬に手出しちゃったとか?」
冗談めかした彼女達を男は鋭い眼差しで睨みつけた。
いつもはこんな時、怒ったような顔でそれでも優しい目を見せるのだが……。
瞳には堅い決意と静かな怒りが見てとれた。
いつもはこんな時、怒ったような顔でそれでも優しい目を見せるのだが……。
瞳には堅い決意と静かな怒りが見てとれた。
「最後かもしれねぇから言っておく……こんなオレに付きまとってくれるおまえらを失いたくねーんだ……。
オレはおまえらがいるからこそオレなんだ……おまえらを失うってのはオレを失っちまう事だ……。
そう考えると『奴』を生かしておくのは……この墳上裕也のプライドが許さねぇ…!」
オレはおまえらがいるからこそオレなんだ……おまえらを失うってのはオレを失っちまう事だ……。
そう考えると『奴』を生かしておくのは……この墳上裕也のプライドが許さねぇ…!」
女たちの返事も待たずに彼はスロットルを開け、タイヤは地面を巻き込みながら急激に発進した。
ゴムの焦げた匂いをアスファルトに刻みつけ、彼女達を後にした。
ゴムの焦げた匂いをアスファルトに刻みつけ、彼女達を後にした。
「ドブ臭ぇ『殺人鬼』……テメーは殺すッ!」