千鶴は数分前の激高がまるで嘘だったかのようにニッコリと笑い、席を立ってリーゼントの男へ近づく。
そして、彼の左腕に己の腕を絡め、身体を摺り寄せ、だいぶ上の高さにある顎髭を愛おしげに撫でさすった。
「テディベア、待たせてゴメンね? 退屈だったでしょ?」
「なァに、いいって事よォ……」
現状を完全に無視した、愛情溢れる濃密なコミュニケーションに佐山達は呆気に取られている。
尚も愛の言葉を囁き合う二人だが、後ろに従っていた少年(と呼んでも良い程の幼い顔立ちだが、
身長は千鶴より遥かに高く、体格も一人前の大人並みである)が不意に男の右腕にしがみついた。
そのままグイグイと男の腕を自分の方へ引っ張り、反対側にいる千鶴を前にも増して激しく睨みつける。
嫉妬に狂う眼光と憎悪に歪んだ表情。緑色の瞳に込められた怨念は相手を呪殺出来そうなくらいだ。
「おいおい、デイジー。何回言ったらわかるんだ。千鶴とは仲良くしろゥ……」
男の支持を得て、千鶴は勝ち誇った顔で少年に舌を出すと、ようやく佐山達五人に向き直った。
そして、彼の左腕に己の腕を絡め、身体を摺り寄せ、だいぶ上の高さにある顎髭を愛おしげに撫でさすった。
「テディベア、待たせてゴメンね? 退屈だったでしょ?」
「なァに、いいって事よォ……」
現状を完全に無視した、愛情溢れる濃密なコミュニケーションに佐山達は呆気に取られている。
尚も愛の言葉を囁き合う二人だが、後ろに従っていた少年(と呼んでも良い程の幼い顔立ちだが、
身長は千鶴より遥かに高く、体格も一人前の大人並みである)が不意に男の右腕にしがみついた。
そのままグイグイと男の腕を自分の方へ引っ張り、反対側にいる千鶴を前にも増して激しく睨みつける。
嫉妬に狂う眼光と憎悪に歪んだ表情。緑色の瞳に込められた怨念は相手を呪殺出来そうなくらいだ。
「おいおい、デイジー。何回言ったらわかるんだ。千鶴とは仲良くしろゥ……」
男の支持を得て、千鶴は勝ち誇った顔で少年に舌を出すと、ようやく佐山達五人に向き直った。
「知ってる人もいると思うけど紹介するわ。こちらはセオドア・チャールズ・ダーマー。
たぶん『テッド・“ジェイブリード”・ダーマー』っていうニックネームの方が有名よね?
ホームステイ先のアメリカで知り合った、私のお友達なの」
たぶん『テッド・“ジェイブリード”・ダーマー』っていうニックネームの方が有名よね?
ホームステイ先のアメリカで知り合った、私のお友達なの」
「“ジェイブリード”でいいぜ。ヨロシクなァ……」
各国を代表すると言っても良い五人の吸血鬼に対して、傲岸不遜な挨拶を送るジェイブリード。
“見下す”という表現が最適の角度で一人一人を吟味する彼の視線は、不自然に下を向いたある人物のところで
ピタリと止まった。
薄い唇が吊り上がり、ほとんど肉のついていない頬に皺が寄る。面白そうな玩具を見つけた子供の笑顔だ。
「いよォう、前田! 相変わらず元気そうじゃねえか!」
声を掛けられた瞬間、前田はイスから飛び上がらんばかりにビクッと身体を震わせた。
そこからたっぷりと時間をかけておずおずと顔を上げる。
「い、い、生きていたのか……」
「ああ、おかげさんでな。そりゃそうと七年前のシチリアじゃ随分と世話になったなァ……」
その言葉を聞くや否や、前田の震えはさらに激しくなり、またもや顔は伏せられた。
恐怖の反応を楽しんでいるのか、ジェイブリードはニヤニヤと笑いながら、大股な歩調でゆっくりと
彼に近づく。
「オメエが俺を売ってくれたおかげで、俺ァあの化物神父とカレー女に危なく殺られるとこ
だったんだぜェ……? 見ろよ、コレ」
ライダースジャケットの前がはだけられ、痩せ細った裸の上半身が露わになった。
そこにはおびただしい数のタトゥが素肌を埋め尽くすように施されていた。
ただし、絵ではない。すべて文字、しかもある程度の長さを持つ“文章”である。
眼に付きやすい部分だけでも――
“見下す”という表現が最適の角度で一人一人を吟味する彼の視線は、不自然に下を向いたある人物のところで
ピタリと止まった。
薄い唇が吊り上がり、ほとんど肉のついていない頬に皺が寄る。面白そうな玩具を見つけた子供の笑顔だ。
「いよォう、前田! 相変わらず元気そうじゃねえか!」
声を掛けられた瞬間、前田はイスから飛び上がらんばかりにビクッと身体を震わせた。
そこからたっぷりと時間をかけておずおずと顔を上げる。
「い、い、生きていたのか……」
「ああ、おかげさんでな。そりゃそうと七年前のシチリアじゃ随分と世話になったなァ……」
その言葉を聞くや否や、前田の震えはさらに激しくなり、またもや顔は伏せられた。
恐怖の反応を楽しんでいるのか、ジェイブリードはニヤニヤと笑いながら、大股な歩調でゆっくりと
彼に近づく。
「オメエが俺を売ってくれたおかげで、俺ァあの化物神父とカレー女に危なく殺られるとこ
だったんだぜェ……? 見ろよ、コレ」
ライダースジャケットの前がはだけられ、痩せ細った裸の上半身が露わになった。
そこにはおびただしい数のタトゥが素肌を埋め尽くすように施されていた。
ただし、絵ではない。すべて文字、しかもある程度の長さを持つ“文章”である。
眼に付きやすい部分だけでも――
『THE FLY LAID THEIR EGGS IN MOTHER MARY(蠅は聖母マリアに卵を産みつけた)』
『JESUS CAN'T SMELL OWN SHIT ON HIS KNEES(キリストは自分が垂れた糞の臭いにも気づかない)』
『GOD SENT ME TO PISS THE WORLD OFF(神は世界にションベンをひっかける為に俺を遣わせた)』
『KILL YOUR PARENTS! KILL YOUR GOD! KILL YOURSELF!(両親を殺せ! 神を殺せ! 自分を殺せ!)』
――等の不快な冒涜的文句が隅から隅まで所狭しと彫られていた。
これは“見るタトゥ”ではなく“読むタトゥ”なのだろう。
しかし、よく見ると右脇腹辺りの文字が大きく消えてしまっている。そこに刻まれた火傷と切創が
混じり合った醜い傷痕のせいだ。
吸血鬼は頭と心臓さえ無事ならば、たとえ手足が吹き飛ぼうが臓腑が抉り取られようが再構築が可能である。
そんな不死身に近い化物の身体に消えない傷痕を残す事が出来ると言えば、聖水や十字架等の聖具、
もしくは祝福儀礼を施した武器による攻撃しかない。
“密告されたが為に殺されかけた”との言葉は真実と見ていい。
「そ、そ、そんな…… 俺は、売ったなんて……」
見ていて気の毒になる程の狼狽振りを示す前田。
その態度が嗜虐心をそそるのか、ジェイブリードの口撃は勢いを増す一方だった。
「ヴァチカン相手に点数稼ぎは大変だったろォ。密告(チクリ)ひとつでどんだけ特典があるんだか
知らねえけどよォ。まあ、昔から人間にも吸血鬼にも尻尾フリフリで成り上がったオメエだしなァ……」
“寅吉会若頭”の“極道としても吸血鬼としても恥ずべき行い”を“親分や他国の要人”の前で暴き、
おちょくる。
彼の立場や性格を充分に理解した責め方である。
「他にもサービスしてきたんだろ? 生臭大好きな出っ腹ホモ司祭の萎びたチ○ポでもしゃぶったか?
オメエはジジイ相手のおフェラ豚ならお手の物だろうからよォ…… ヘェヘヘヘヘヘヘヘ!」
佐山の方をチラリと見遣りながら、ジェイブリードは耳障りな甲高い笑い声を響かせた。
これは“見るタトゥ”ではなく“読むタトゥ”なのだろう。
しかし、よく見ると右脇腹辺りの文字が大きく消えてしまっている。そこに刻まれた火傷と切創が
混じり合った醜い傷痕のせいだ。
吸血鬼は頭と心臓さえ無事ならば、たとえ手足が吹き飛ぼうが臓腑が抉り取られようが再構築が可能である。
そんな不死身に近い化物の身体に消えない傷痕を残す事が出来ると言えば、聖水や十字架等の聖具、
もしくは祝福儀礼を施した武器による攻撃しかない。
“密告されたが為に殺されかけた”との言葉は真実と見ていい。
「そ、そ、そんな…… 俺は、売ったなんて……」
見ていて気の毒になる程の狼狽振りを示す前田。
その態度が嗜虐心をそそるのか、ジェイブリードの口撃は勢いを増す一方だった。
「ヴァチカン相手に点数稼ぎは大変だったろォ。密告(チクリ)ひとつでどんだけ特典があるんだか
知らねえけどよォ。まあ、昔から人間にも吸血鬼にも尻尾フリフリで成り上がったオメエだしなァ……」
“寅吉会若頭”の“極道としても吸血鬼としても恥ずべき行い”を“親分や他国の要人”の前で暴き、
おちょくる。
彼の立場や性格を充分に理解した責め方である。
「他にもサービスしてきたんだろ? 生臭大好きな出っ腹ホモ司祭の萎びたチ○ポでもしゃぶったか?
オメエはジジイ相手のおフェラ豚ならお手の物だろうからよォ…… ヘェヘヘヘヘヘヘヘ!」
佐山の方をチラリと見遣りながら、ジェイブリードは耳障りな甲高い笑い声を響かせた。
前田は俯いたままで己の膝を掴む五指に強く力を込める。
面子を潰された怒りが恐怖を駆逐していく。極道の矜持と吸血鬼の闘争心が徐々に甦りつつある。
「調子こいてんじゃねえぞ……」
震える唇からボソリと呟かれた言葉は届いていない。
「あァん? 何か言ったか?」
ジェイブリードは大袈裟なアクションで耳に手を当てる。多分に挑発的な態度だ。
すると前田は椅子を蹴倒して立ち上がり、テーブルに拳を叩きつけて大見得を切った。
面子を潰された怒りが恐怖を駆逐していく。極道の矜持と吸血鬼の闘争心が徐々に甦りつつある。
「調子こいてんじゃねえぞ……」
震える唇からボソリと呟かれた言葉は届いていない。
「あァん? 何か言ったか?」
ジェイブリードは大袈裟なアクションで耳に手を当てる。多分に挑発的な態度だ。
すると前田は椅子を蹴倒して立ち上がり、テーブルに拳を叩きつけて大見得を切った。
「合いの子がァ!! テメエなんざ売女の喰屍鬼(グール)がひり出した半端モンじゃねえか!
吸血鬼ヅラしていい気になってんじゃ――」
吸血鬼ヅラしていい気になってんじゃ――」
怒声が半ばで途切れた。
「ワルイコちゃんなお口はこれかァ……?」
気づけば血を滴らせた前田の下顎部分が、何故かジェイブリードの手に鎮座していた。
それは誰の眼でも捉え切れない一瞬の早業。
罵倒の半ば、数歩離れた距離から、動き続ける下顎を素手で力任せにもぎ取ったのだ。
前田は取り残された舌をユラユラと喉の辺りに垂れ下がらせ、驚愕の面持ちで己の下顎を見つめている。
やがて、異形の肉塊は持ち主の下へ戻る事無く、床に放り捨てられた。
間を置かずエンジニアブーツの踵がそれをグシャリと踏み潰す。
「ああッ……! あああ! あああああッ!」
己の身体の一部との無慈悲な別離に声にならぬ声が上がったが、それも束の間――
「ワルイコちゃんなお口はこれかァ……?」
気づけば血を滴らせた前田の下顎部分が、何故かジェイブリードの手に鎮座していた。
それは誰の眼でも捉え切れない一瞬の早業。
罵倒の半ば、数歩離れた距離から、動き続ける下顎を素手で力任せにもぎ取ったのだ。
前田は取り残された舌をユラユラと喉の辺りに垂れ下がらせ、驚愕の面持ちで己の下顎を見つめている。
やがて、異形の肉塊は持ち主の下へ戻る事無く、床に放り捨てられた。
間を置かずエンジニアブーツの踵がそれをグシャリと踏み潰す。
「ああッ……! あああ! あああああッ!」
己の身体の一部との無慈悲な別離に声にならぬ声が上がったが、それも束の間――
凄まじい連射音が轟き、数百の銃弾が雨あられと前田を貫いた。
見るとジェイブリードの後方で、ヒスパニック系の男がギターケースを胸元の高さまで持ち上げていた。
ボロ雑巾と化した前田の方へと向けられたネック部分の先端には、直径3cm程の小さな穴が開いている。
硝煙が立ち昇っているところを見ると、銃弾はそこから発射されたに違いない。
しかも、前田はピクリとも身動きをしておらず、その身体は間も無く灰燼に帰してしまった。
使われたのは“銀弾”だ。
ボロ雑巾と化した前田の方へと向けられたネック部分の先端には、直径3cm程の小さな穴が開いている。
硝煙が立ち昇っているところを見ると、銃弾はそこから発射されたに違いない。
しかも、前田はピクリとも身動きをしておらず、その身体は間も無く灰燼に帰してしまった。
使われたのは“銀弾”だ。
「グゥ~~~ッジョォブ……」
ジェイブリードはヒスパニックに親指を立てると、フラフラと酔っ払いにも似た足取りで今度は
上座の佐山に歩み寄っていく。
途中には、少しも隙を見せず身構える黄元甲ら三人。
「大人しくしてろォ……」
真紅の眼を光らせて三人を牽制し、遂には椅子に座る佐山の真後ろへと辿り着いた。
何をするかと思えば、側近を殺された老人の両肩へ労わるように手を置き、肩揉みのように
リズミカルに動かす。
「ワ、ワシに手ェ出してみィ。タダじゃ済まへ――」
佐山の言葉は皆まで聞かず、ジェイブリードは左手で彼の顎を引っ掴み、無理矢理天井を仰がせた。
そして、右手に握られているのは、刃渡り30cm以上はある鋭利なボウイナイフ。
「あァ、わかってるぜェ。とても面白い事になるなァ……」
ナイフが佐山の喉元にスルリと実にスムーズに刺し込まれた。
「があああああ!!」
悲鳴はすぐにガラガラといううがいに近い音に変わり、口ではなく喉の傷から洩れ出る。
血飛沫が肉を切り裂き骨を断つ生々しい音と共に周囲に撒き散らされ、テーブルクロスや絨毯を
赤く汚していく。
上座の佐山に歩み寄っていく。
途中には、少しも隙を見せず身構える黄元甲ら三人。
「大人しくしてろォ……」
真紅の眼を光らせて三人を牽制し、遂には椅子に座る佐山の真後ろへと辿り着いた。
何をするかと思えば、側近を殺された老人の両肩へ労わるように手を置き、肩揉みのように
リズミカルに動かす。
「ワ、ワシに手ェ出してみィ。タダじゃ済まへ――」
佐山の言葉は皆まで聞かず、ジェイブリードは左手で彼の顎を引っ掴み、無理矢理天井を仰がせた。
そして、右手に握られているのは、刃渡り30cm以上はある鋭利なボウイナイフ。
「あァ、わかってるぜェ。とても面白い事になるなァ……」
ナイフが佐山の喉元にスルリと実にスムーズに刺し込まれた。
「があああああ!!」
悲鳴はすぐにガラガラといううがいに近い音に変わり、口ではなく喉の傷から洩れ出る。
血飛沫が肉を切り裂き骨を断つ生々しい音と共に周囲に撒き散らされ、テーブルクロスや絨毯を
赤く汚していく。
ごく僅かな時を経て、ドンと荒々しい音を立てながら、苦悶の形相が貼りついた“佐山だったもの”が
テーブルの上に置かれた。
もう動く事の無い濁った瞳が三人の吸血鬼を恨めしげに見つめている。
一仕事を終えた爽快な顔のジェイブリードは千鶴の方へと向き直った。
興奮冷めやらずと言ったところか、千鶴は上気した頬に手を当て、舌舐めずりを繰り返していた。
唾液によって怪しく光る唇と同様に、潤いを増している部分が他にもあるのかもしれない。
恍惚の彼女へジェイブリードが眼を覚まさせるように促す。
テーブルの上に置かれた。
もう動く事の無い濁った瞳が三人の吸血鬼を恨めしげに見つめている。
一仕事を終えた爽快な顔のジェイブリードは千鶴の方へと向き直った。
興奮冷めやらずと言ったところか、千鶴は上気した頬に手を当て、舌舐めずりを繰り返していた。
唾液によって怪しく光る唇と同様に、潤いを増している部分が他にもあるのかもしれない。
恍惚の彼女へジェイブリードが眼を覚まさせるように促す。
「よォ、千鶴。そろそろお偉方と“お話”の時間じゃねえのか?」
「そうね、邪魔者も消えたし。 ……あ、そうそう――」
“たった今、気づいた”とばかりに嫌味たっぷりの視線をチェ・ドンシクへ向ける。
「――あなたは帰っていいわ、チェ会長。特に用事も無いしね。ご苦労様」
“たった今、気づいた”とばかりに嫌味たっぷりの視線をチェ・ドンシクへ向ける。
「――あなたは帰っていいわ、チェ会長。特に用事も無いしね。ご苦労様」
チェ・ドンシクは猜疑と警戒を露わにしながら席を立ったが、出口へ辿り着く頃には少なからず
安堵と喜悦の表情が顔に滲み出ていた。
気が違っているのではないかと疑いたくなる日本の女吸血鬼(ドラキュリーナ)と、どう見てもイカレている
悪名高いアメリカの吸血鬼。
そんな連中から解放されたのだ。加えて、寅吉会の会長と若頭の死によって思いもよらない利権が
転がってくる可能性もある。
顔が綻ぶのも無理は無い。
安堵と喜悦の表情が顔に滲み出ていた。
気が違っているのではないかと疑いたくなる日本の女吸血鬼(ドラキュリーナ)と、どう見てもイカレている
悪名高いアメリカの吸血鬼。
そんな連中から解放されたのだ。加えて、寅吉会の会長と若頭の死によって思いもよらない利権が
転がってくる可能性もある。
顔が綻ぶのも無理は無い。
だが、ジェイブリードは部屋から出て行くチェ・ドンシクを執拗に横目で睨み続けていた。まるで彼の内心を
見透かすように。
「ミゲル」
「あいよ、ボス。オイラにおまかせだってぇの」
ミゲルと呼ばれたヒスパニックは人懐っこい笑顔を浮かべ、ウィンクで答える。
黒いギターケースとその持ち主の口ずさむ『MALAGUENA SALEROSA』。
闇の世界とは程遠いラティーノ・ヒートは命令に忠実足るべく、コリアンヴァンパイアの後を追った。
見透かすように。
「ミゲル」
「あいよ、ボス。オイラにおまかせだってぇの」
ミゲルと呼ばれたヒスパニックは人懐っこい笑顔を浮かべ、ウィンクで答える。
黒いギターケースとその持ち主の口ずさむ『MALAGUENA SALEROSA』。
闇の世界とは程遠いラティーノ・ヒートは命令に忠実足るべく、コリアンヴァンパイアの後を追った。
その様子を見ていた千鶴は頬を膨らませる。
「んもう、テディったら用心深いんだから」
拗ねた口調で訴えるも、ジェイブリードがチュッと唇をすぼめてキスを飛ばした途端、顔には微笑みが戻る。
千鶴はその微笑みのまま上機嫌の弾んだ声で、残された黄元甲とパコージンに申し渡した。
「んもう、テディったら用心深いんだから」
拗ねた口調で訴えるも、ジェイブリードがチュッと唇をすぼめてキスを飛ばした途端、顔には微笑みが戻る。
千鶴はその微笑みのまま上機嫌の弾んだ声で、残された黄元甲とパコージンに申し渡した。
「さてと…… それじゃ“本題”に入っちゃってもいいかしら?」