「どう?レッドさん、すごいでしょー」
「おー…確かにこりゃ壮観だわ!」
悪の組織フロシャイムのヴァンプ将軍にいつもの公園に呼び出された神奈川県川崎市のご当地ヒーローである
天体戦士サンレッドは<それ>を見上げて彼にしては素直に賞賛した。
ちなみに今日のTシャツの文字は<スパロボK4月2日発売>である。
「しかしよヴァンプ。これもフロシャイム脅威の科学力ってやつか?」
「あ、違う違う。雑誌の懸賞で当たったの」
「…懸賞」
にこにこ笑うヴァンプ将軍を尻目に、レッドはどよ~んとした顔で<それ>をもう一度眺め回した。
子供達が駆け回る何の変哲もない公園に鎮座する異形の物体。
それは、巨大ロボットであった。
「おー…確かにこりゃ壮観だわ!」
悪の組織フロシャイムのヴァンプ将軍にいつもの公園に呼び出された神奈川県川崎市のご当地ヒーローである
天体戦士サンレッドは<それ>を見上げて彼にしては素直に賞賛した。
ちなみに今日のTシャツの文字は<スパロボK4月2日発売>である。
「しかしよヴァンプ。これもフロシャイム脅威の科学力ってやつか?」
「あ、違う違う。雑誌の懸賞で当たったの」
「…懸賞」
にこにこ笑うヴァンプ将軍を尻目に、レッドはどよ~んとした顔で<それ>をもう一度眺め回した。
子供達が駆け回る何の変哲もない公園に鎮座する異形の物体。
それは、巨大ロボットであった。
天体戦士サンレッド ~レッド危うし!フロシャイム戦慄の秘密兵器!
「いやー、こんなのが当たるなんて、ホントにヴァンプ様ツイてますよー」
「これも日頃の行いがいいおかげですね!」
戦闘員1号・2号も上機嫌だ。
「日頃の行いって、お前ら世界征服を企む悪の組織だろうが…それで、このロボに名前はあんのか?」
「名前ですか?」
「おう。ガン○ムとかマジ○ガーとかゲ○ターとかよ、そういうイカした名前だよ」
「あ、じゃあこれなんてどうです?<ヴァンプレイオス>!なんせヴァンプ様が当てた懸賞ですしね」
「そうそう。それでなくてもヴァンプ様は僕ら川崎支部の代表ですもん!」
「もー、1号も2号もおだてないでよ~」
そう言いつつ、満更でもなさそうなヴァンプ様である。レッドはそれを尻目にポツリと呟く。
「ヴァンプレイオスって…明らかにアレのパクリじゃん…」
詳しくはバンプレイオスで検索を。それはともかく。
「これも日頃の行いがいいおかげですね!」
戦闘員1号・2号も上機嫌だ。
「日頃の行いって、お前ら世界征服を企む悪の組織だろうが…それで、このロボに名前はあんのか?」
「名前ですか?」
「おう。ガン○ムとかマジ○ガーとかゲ○ターとかよ、そういうイカした名前だよ」
「あ、じゃあこれなんてどうです?<ヴァンプレイオス>!なんせヴァンプ様が当てた懸賞ですしね」
「そうそう。それでなくてもヴァンプ様は僕ら川崎支部の代表ですもん!」
「もー、1号も2号もおだてないでよ~」
そう言いつつ、満更でもなさそうなヴァンプ様である。レッドはそれを尻目にポツリと呟く。
「ヴァンプレイオスって…明らかにアレのパクリじゃん…」
詳しくはバンプレイオスで検索を。それはともかく。
「よーし、じゃあ早速ヴァンプレイオス起動させちゃおっか!あ、レッドさんも是非乗ってくださいよ!」
「何処の世界に敵対してるヒーローを大喜びで自分とこのロボに乗せる悪の将軍がいるんだよ…ま、いいや。
巨大ロボってのも興味あるしな!」
そしてコクピットに乗り込む四人だったが、そこで気付いた。
「あの…ところでこれ、どうやって操縦するんでしょう?私、機械には弱くて…」
「マニュアルくらいあんだろ?ちょっと見てみろよ」
「あ、これじゃないっすか?」
「あ、どれどれ?」
マニュアルとにらめっこを始めるヴァンプ様だが、すぐにウーウーと唸り始める。
「専門用語多くて何が何だか分かんない…<縮退炉>とか<トロニウム>とか…ちょっとレッドさん、申し訳
ないんですけど見ていただけます?」
「お前、どんだけ俺に頼る気だよ…ほれ、マニュアル貸せよ」
分厚いマニュアルを受け取り、顎を撫でながらフンフンホーホーと納得した様子のレッド。
「これあれだ。スイッチさえ入れれば後は音声だけで自動操縦できる簡単モードがあるからそれでいけよ」
「へー、そんな簡単に巨大ロボを操縦できちゃうんだー!」
「ほんとはちゃんとマニュアル操作もできるらしーけどよ。初心者ならこっちの方がいいだろ」
「ええ、ありがとうございます!…クックック!ではゆくぞ、ヴァンプレイオス!愚かな人間共にお前の力を
見せ付けてやるのだ!」
悪モードに入ったヴァンプ様は高らかに叫ぶ。川崎市はこのまま絶望の炎に呑まれてしまうのか!?
サブパイ席でタバコ吸ってる場合じゃないぞ、我らがサンレッド!
「何処の世界に敵対してるヒーローを大喜びで自分とこのロボに乗せる悪の将軍がいるんだよ…ま、いいや。
巨大ロボってのも興味あるしな!」
そしてコクピットに乗り込む四人だったが、そこで気付いた。
「あの…ところでこれ、どうやって操縦するんでしょう?私、機械には弱くて…」
「マニュアルくらいあんだろ?ちょっと見てみろよ」
「あ、これじゃないっすか?」
「あ、どれどれ?」
マニュアルとにらめっこを始めるヴァンプ様だが、すぐにウーウーと唸り始める。
「専門用語多くて何が何だか分かんない…<縮退炉>とか<トロニウム>とか…ちょっとレッドさん、申し訳
ないんですけど見ていただけます?」
「お前、どんだけ俺に頼る気だよ…ほれ、マニュアル貸せよ」
分厚いマニュアルを受け取り、顎を撫でながらフンフンホーホーと納得した様子のレッド。
「これあれだ。スイッチさえ入れれば後は音声だけで自動操縦できる簡単モードがあるからそれでいけよ」
「へー、そんな簡単に巨大ロボを操縦できちゃうんだー!」
「ほんとはちゃんとマニュアル操作もできるらしーけどよ。初心者ならこっちの方がいいだろ」
「ええ、ありがとうございます!…クックック!ではゆくぞ、ヴァンプレイオス!愚かな人間共にお前の力を
見せ付けてやるのだ!」
悪モードに入ったヴァンプ様は高らかに叫ぶ。川崎市はこのまま絶望の炎に呑まれてしまうのか!?
サブパイ席でタバコ吸ってる場合じゃないぞ、我らがサンレッド!
「誰かー、ひったくりよ!捕まえてー!」
若い女性が叫ぶ。その傍らにはへたり込んだお婆さん。
「へっ!ババアがこんな立派なモンぶら下げてんじゃねーよ!」
お婆さんの荷物を奪った男は下卑な笑みを浮かべながら逃走する―――
その身体が、突如宙にぶら下げられた。
「え…な、なんだよこれ!?」
『もー、ひったくりなんてダメでしょ!今から交番行くから、きっちり反省しなさい!』
その巨大な指先でひったくりを摘み上げたヴァンプレイオス。そのパイロットたるヴァンプ様はひったくりに
向かってプリプリ怒るのだった。
その足元ではバッグを取り返してもらったお婆さんが、掌を擦り合わせてヴァンプレイオスを拝んでいた。
若い女性が叫ぶ。その傍らにはへたり込んだお婆さん。
「へっ!ババアがこんな立派なモンぶら下げてんじゃねーよ!」
お婆さんの荷物を奪った男は下卑な笑みを浮かべながら逃走する―――
その身体が、突如宙にぶら下げられた。
「え…な、なんだよこれ!?」
『もー、ひったくりなんてダメでしょ!今から交番行くから、きっちり反省しなさい!』
その巨大な指先でひったくりを摘み上げたヴァンプレイオス。そのパイロットたるヴァンプ様はひったくりに
向かってプリプリ怒るのだった。
その足元ではバッグを取り返してもらったお婆さんが、掌を擦り合わせてヴァンプレイオスを拝んでいた。
高い煙突の上に登ったはいいものの、降りられなくなって泣いている子供がいた。
「誰かー、ウチの子を助けてー!」
母親が必死に助けを求めるが、野次馬達もどうにも手が出せない。高さが高さなだけに、下手に助けにいこう
ものなら、子供と一緒に落ちてしまうかもしれない。
「奥さん、今レスキュー隊呼んだから!少しだけ待ってて!」
「少しだけって…あの子は今も怖い思いしてるんですよ!?もういいわ、私がいきます!」
「ダメだよ、あんたまで落ちたらどうするんだ!」
と、その時。大きな手が伸びてきて、優しく子供をその掌の上に乗せたのだった。
『ホラホラ、もう大丈夫だから泣かないで。これからはこんな危ないことしちゃダメだよ』
優しい口調で子供を諭すヴァンプ様。救助された子供は、母親としっかり抱き合うのだった。
それを見つめるヴァンプと戦闘員の顔も、とても穏やかだった。
「誰かー、ウチの子を助けてー!」
母親が必死に助けを求めるが、野次馬達もどうにも手が出せない。高さが高さなだけに、下手に助けにいこう
ものなら、子供と一緒に落ちてしまうかもしれない。
「奥さん、今レスキュー隊呼んだから!少しだけ待ってて!」
「少しだけって…あの子は今も怖い思いしてるんですよ!?もういいわ、私がいきます!」
「ダメだよ、あんたまで落ちたらどうするんだ!」
と、その時。大きな手が伸びてきて、優しく子供をその掌の上に乗せたのだった。
『ホラホラ、もう大丈夫だから泣かないで。これからはこんな危ないことしちゃダメだよ』
優しい口調で子供を諭すヴァンプ様。救助された子供は、母親としっかり抱き合うのだった。
それを見つめるヴァンプと戦闘員の顔も、とても穏やかだった。
「お前…何やってんだよ」
レッドは苛々した様子で貧乏揺すりしていた。ヴァンプはきょとんとした顔で答える。
「何をって…ひったくり捕まえて、子供を助けただけですよ。何か問題でも?」
「大ありだ!これは<悪の巨大ロボット>だろうが!何を正義側みてーな運用してんだよ!?もっとほら、
人間をゴミのように踏み潰したり、高層ビルを破壊したり、色々やることあんだろーが!」
「そっ…そんなことしたら犯罪じゃないですか!」
「何度も言うがてめーら悪党なんだろ!?世界征服企んでるんだろ!?もっとそこんところ自覚して悪行に
精を出せよ!」
「…レッドさんこそ正義の味方なのに、何でそんな恐ろしいことをサラっと言っちゃうんですか…?」
「俺のことはどーでもいいだろ!今はお前らの話をしてんだよ!」
「うーん…悪っぽい運用というと…あ、そうだ!次のレッドさんとの対決はこのヴァンプレイオスですれば
いいじゃないですか!」
ポンと手を叩くヴァンプ様である。
「そっかー。正義のヒーローと闘ってこそ悪の巨大ロボですもんね!」
「これで俺達もレッドさんも己の存在意義を失わずにすむじゃないっすか!」
1号と2号も同意する。レッドはやれやれと溜息をつきながらも、迫る闘いの予感に拳を握り締めた。
「全くおめーらは本当によー…ま、確かにいつもよりは白熱した闘いになりそうだな…おっしゃあ!次回は
俺も久々に戦闘服を着るとするか!」
「え!?じゃあついにレッドさんの本気が見られるんですね!それだけで懸賞を当てた甲斐がありますよ!
そうだ、究極形態ののファイアーバードフォームも用意しといてくださいよ!何せこのヴァンプレイオスは
強力ですからね!」
ちなみに普段のレッドは対決でもTシャツに半ズボン、サンダルが基本である。
「フハハハハ、サンレッドよ!覚悟するがいい、次こそはヴァンプレイオスが貴様を葬ってくれるわ!」
高らかに響くヴァンプ将軍の哄笑。負けるな、僕らのサンレッド!
レッドは苛々した様子で貧乏揺すりしていた。ヴァンプはきょとんとした顔で答える。
「何をって…ひったくり捕まえて、子供を助けただけですよ。何か問題でも?」
「大ありだ!これは<悪の巨大ロボット>だろうが!何を正義側みてーな運用してんだよ!?もっとほら、
人間をゴミのように踏み潰したり、高層ビルを破壊したり、色々やることあんだろーが!」
「そっ…そんなことしたら犯罪じゃないですか!」
「何度も言うがてめーら悪党なんだろ!?世界征服企んでるんだろ!?もっとそこんところ自覚して悪行に
精を出せよ!」
「…レッドさんこそ正義の味方なのに、何でそんな恐ろしいことをサラっと言っちゃうんですか…?」
「俺のことはどーでもいいだろ!今はお前らの話をしてんだよ!」
「うーん…悪っぽい運用というと…あ、そうだ!次のレッドさんとの対決はこのヴァンプレイオスですれば
いいじゃないですか!」
ポンと手を叩くヴァンプ様である。
「そっかー。正義のヒーローと闘ってこそ悪の巨大ロボですもんね!」
「これで俺達もレッドさんも己の存在意義を失わずにすむじゃないっすか!」
1号と2号も同意する。レッドはやれやれと溜息をつきながらも、迫る闘いの予感に拳を握り締めた。
「全くおめーらは本当によー…ま、確かにいつもよりは白熱した闘いになりそうだな…おっしゃあ!次回は
俺も久々に戦闘服を着るとするか!」
「え!?じゃあついにレッドさんの本気が見られるんですね!それだけで懸賞を当てた甲斐がありますよ!
そうだ、究極形態ののファイアーバードフォームも用意しといてくださいよ!何せこのヴァンプレイオスは
強力ですからね!」
ちなみに普段のレッドは対決でもTシャツに半ズボン、サンダルが基本である。
「フハハハハ、サンレッドよ!覚悟するがいい、次こそはヴァンプレイオスが貴様を葬ってくれるわ!」
高らかに響くヴァンプ将軍の哄笑。負けるな、僕らのサンレッド!
「…で?ヴァンプレイオスはどうしたんだよ?」
三日後。いつもの公園にて対決に呼び出されたレッド(戦闘服着用。足元にはファイアーバードフォームを
入れたダンボール箱)は、MK5といった有様でヴァンプ様と戦闘員を正座させていた。
「えっと…その…寄贈しました…」
「寄贈…」
「だって、しょうがなかったんです!あれすっごい税金かかるし、本部も経費としては認められないなんて
融通利かせてくれないし!」
「ねー!駐車場借りるのだってタダじゃないですし!」
「燃料代だってムチャクチャですよ!?ウチの家計じゃとても払えないっていうか…」
「言い訳はいいんだよ!それで、何処に寄贈したんだ!?」
「あの…正義の組織<アロハ・パンパース>に…」
「アロハ・パンパース…」
「知りませんか?巨大ロボで世界を守ってる皆さんですよ!そこの若手パイロットの<タテ・リョウセイ>
くんとそのお友達が使ってくれることになったんです!リョウセイくん、これで世界平和を守ってみせるぜ
って、すっごいやる気でしたよ。若いっていいですねー。ははは…」
「…………」
この怒りを、どんな言葉で表現すべきだろう?レッドはヴァンプ達にゆっくりと近づいていく。
「あ、レッドさん、どうしたんです、そんな怖い顔して…」
三日後。いつもの公園にて対決に呼び出されたレッド(戦闘服着用。足元にはファイアーバードフォームを
入れたダンボール箱)は、MK5といった有様でヴァンプ様と戦闘員を正座させていた。
「えっと…その…寄贈しました…」
「寄贈…」
「だって、しょうがなかったんです!あれすっごい税金かかるし、本部も経費としては認められないなんて
融通利かせてくれないし!」
「ねー!駐車場借りるのだってタダじゃないですし!」
「燃料代だってムチャクチャですよ!?ウチの家計じゃとても払えないっていうか…」
「言い訳はいいんだよ!それで、何処に寄贈したんだ!?」
「あの…正義の組織<アロハ・パンパース>に…」
「アロハ・パンパース…」
「知りませんか?巨大ロボで世界を守ってる皆さんですよ!そこの若手パイロットの<タテ・リョウセイ>
くんとそのお友達が使ってくれることになったんです!リョウセイくん、これで世界平和を守ってみせるぜ
って、すっごいやる気でしたよ。若いっていいですねー。ははは…」
「…………」
この怒りを、どんな言葉で表現すべきだろう?レッドはヴァンプ達にゆっくりと近づいていく。
「あ、レッドさん、どうしたんです、そんな怖い顔して…」
詳しくは語らない。ただヴァンプ将軍と戦闘員1号・2号はこの日から一週間、生死の境を彷徨ったという
事実だけは記しておこう。
事実だけは記しておこう。
天体戦士サンレッド―――
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!