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遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第三十二話「死せる英雄達の戦い―――巨神VS究極竜」
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stardust
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オレは最強のはずだった。
『滅びのバースト・ストリーム!』
なのに何故。貴様は。
『怒りの業火―――エクゾード・フレイム!』
無敵であるはずのオレの、更に上を往く?
『憎しみを束にして重ねても…それは、脆い』
バカな。闘いとは、怒りと憎しみをぶつけ合うものだ。どれだけ貴様が奇麗事を言おうと、それは変わらない。
必ず貴様を高みから引き摺り下ろし―――それを、証明してやる。
『滅びのバースト・ストリーム!』
なのに何故。貴様は。
『怒りの業火―――エクゾード・フレイム!』
無敵であるはずのオレの、更に上を往く?
『憎しみを束にして重ねても…それは、脆い』
バカな。闘いとは、怒りと憎しみをぶつけ合うものだ。どれだけ貴様が奇麗事を言おうと、それは変わらない。
必ず貴様を高みから引き摺り下ろし―――それを、証明してやる。
「お兄様…皇帝様、大丈夫かな…」
女子供といった戦えない者が集まった避難所。遠く離れた戦場の様子を見守りながら、ソロルは不安げにフラーテル
の服の裾を掴む。
「心配いらないよ、ソロル」
フラーテルはその手に自らの掌を重ねて、微笑んだ。
「皇帝様は、あんなに強いんだもの…どんな奴が相手でも、負けたりするもんか」
そうだ―――あの方は、負けたりしない。だってあの方は、僕達の英雄なんだ。
例え相手が神様だって…絶対に、負けない。そう、信じている。
女子供といった戦えない者が集まった避難所。遠く離れた戦場の様子を見守りながら、ソロルは不安げにフラーテル
の服の裾を掴む。
「心配いらないよ、ソロル」
フラーテルはその手に自らの掌を重ねて、微笑んだ。
「皇帝様は、あんなに強いんだもの…どんな奴が相手でも、負けたりするもんか」
そうだ―――あの方は、負けたりしない。だってあの方は、僕達の英雄なんだ。
例え相手が神様だって…絶対に、負けない。そう、信じている。
「これは…本当に、現実なのか…」
カストルは信じられずに、何度も目をゴシゴシと擦る。
「三つ首の竜に、天地を割る巨神…確かに、信じ難い光景ではあるな」
レオンティウスも硬い表情で、向かい合う闇遊戯と海馬を見つめる。
かつて旅の吟遊詩人が詠っていた。遥かなる古代、砂塵吹き荒れる遠い異国における、石板に封じられし魔物を自在
に操る魔導師達の闘いの年代記(クロニクル)。
眼前で行われる死闘は、まさにその再現だった。
カストルは信じられずに、何度も目をゴシゴシと擦る。
「三つ首の竜に、天地を割る巨神…確かに、信じ難い光景ではあるな」
レオンティウスも硬い表情で、向かい合う闇遊戯と海馬を見つめる。
かつて旅の吟遊詩人が詠っていた。遥かなる古代、砂塵吹き荒れる遠い異国における、石板に封じられし魔物を自在
に操る魔導師達の闘いの年代記(クロニクル)。
眼前で行われる死闘は、まさにその再現だった。
巨神が、ゆっくりと剛腕を振り上げ、頭上で両手を組み合わせる。
「いくぜ、海馬!」
究極竜が大きく息を吸い込み、次なる一撃に向けて備える。
「頂点に立つのはオレだ、遊戯!」
そして、両者同時に仕掛ける!
「巨神の一撃―――ゴッドハンド・クラッシャー!」
闘気を纏い輝く両拳。それはまさに神の鉄鎚と化し、究極竜に向けて振り下ろされる。
「破滅の閃光―――アルティメット・バースト!」
三つの首から同時に放たれる破壊光線は集束し、一条の雷光と化して巨神を迎え撃つ。
巨神と龍神の力がぶつかり合うその瞬間、世界は恒星の如くに眩く輝いた。
「ぐっ…!」
「ぬぅっ…!」
火花を散らす二つの存在は、互いに微動だにしない。その力は、完全に拮抗していた―――否。
僅かながら…ほんの僅かながら、オベリスクの拳が押し返され始めていた。
「ブルーアイズよ―――今こそ神を越えろ!」
主の声に呼応し、究極竜が力強く吼える。オベリスクの肉体に亀裂が入り、バキバキと音を立てて崩れ始める―――
「くっ!ならば魔法カード発動―――<神の進化>!」
崩れゆくオベリスクを光が包み込んだ。眩い光の中、オベリスクの姿が変化していく。全身が更に分厚く盛り上がり、
表面に無数の紋様が浮かび上がる。
「<神の進化>の効果により、オベリスクは最上級神のランクを得た―――<真祖・オベリスク>!」
更なる力を漲らせ、巨拳が究極竜の吐息を押し返して突き進む。
「ちっ…!ならば<巨大化>で究極竜を―――!」
「させるか!<光の封札剣(ふうさつけん)>!」
海馬が発動させようと手に取ったカードを光の剣が貫き、大地に縫いつけられる。
「―――っ!」
「海馬―――お前はもう詰んでるぜ!」
(バカな…)
オレが―――オレのブルーアイズが―――神の前に―――屈する―――敗北する―――?
オベリスクの圧力の前に、究極竜の左右の首が砕け散る。残された首は、後一つ。それが消し飛ぶのももはや時間
の問題だろう。
(オレはまた…遊戯に負けるのか…?)
(オレは…)
「いくぜ、海馬!」
究極竜が大きく息を吸い込み、次なる一撃に向けて備える。
「頂点に立つのはオレだ、遊戯!」
そして、両者同時に仕掛ける!
「巨神の一撃―――ゴッドハンド・クラッシャー!」
闘気を纏い輝く両拳。それはまさに神の鉄鎚と化し、究極竜に向けて振り下ろされる。
「破滅の閃光―――アルティメット・バースト!」
三つの首から同時に放たれる破壊光線は集束し、一条の雷光と化して巨神を迎え撃つ。
巨神と龍神の力がぶつかり合うその瞬間、世界は恒星の如くに眩く輝いた。
「ぐっ…!」
「ぬぅっ…!」
火花を散らす二つの存在は、互いに微動だにしない。その力は、完全に拮抗していた―――否。
僅かながら…ほんの僅かながら、オベリスクの拳が押し返され始めていた。
「ブルーアイズよ―――今こそ神を越えろ!」
主の声に呼応し、究極竜が力強く吼える。オベリスクの肉体に亀裂が入り、バキバキと音を立てて崩れ始める―――
「くっ!ならば魔法カード発動―――<神の進化>!」
崩れゆくオベリスクを光が包み込んだ。眩い光の中、オベリスクの姿が変化していく。全身が更に分厚く盛り上がり、
表面に無数の紋様が浮かび上がる。
「<神の進化>の効果により、オベリスクは最上級神のランクを得た―――<真祖・オベリスク>!」
更なる力を漲らせ、巨拳が究極竜の吐息を押し返して突き進む。
「ちっ…!ならば<巨大化>で究極竜を―――!」
「させるか!<光の封札剣(ふうさつけん)>!」
海馬が発動させようと手に取ったカードを光の剣が貫き、大地に縫いつけられる。
「―――っ!」
「海馬―――お前はもう詰んでるぜ!」
(バカな…)
オレが―――オレのブルーアイズが―――神の前に―――屈する―――敗北する―――?
オベリスクの圧力の前に、究極竜の左右の首が砕け散る。残された首は、後一つ。それが消し飛ぶのももはや時間
の問題だろう。
(オレはまた…遊戯に負けるのか…?)
(オレは…)
<フフ…苦戦シティルネ、海馬…>
(!?)
突如、脳裏に響く声に、海馬は狼狽する。
<ソンナニ警戒シナィデクレ―――キミヲ助ケニ来タンダ>
(何だと…)
<本当ハネ。人間同士ノ闘ィニ手出シスルノハ善クナィシ、贔屓ハ我ノ主義デハナィノダケレド、キミハエレフヲ随分ト
助ケテクレタカラネ―――ダカラ>
ホンノ少シダケ、力ヲ貸シテァゲヨゥ―――
(!?)
突如、脳裏に響く声に、海馬は狼狽する。
<ソンナニ警戒シナィデクレ―――キミヲ助ケニ来タンダ>
(何だと…)
<本当ハネ。人間同士ノ闘ィニ手出シスルノハ善クナィシ、贔屓ハ我ノ主義デハナィノダケレド、キミハエレフヲ随分ト
助ケテクレタカラネ―――ダカラ>
ホンノ少シダケ、力ヲ貸シテァゲヨゥ―――
瞬時に、海馬の中に言い知れぬ力が流れ込んでくる。あらゆる感覚が人間の限界を遥かに置き去りにして鋭敏化し、
思考は光の速さで駆け巡る。
(これは…!)
<我ガ力ノ一片ヲ、キミニ与ェタ。ソシテ、ァノ白キ龍ニモネ…>
海馬は究極竜を見上げる。その巨体に、黒い霧の如き瘴気が纏わりついていた。それは究極竜の全身に吸い込まれ、
その白く輝く姿を黒く塗り潰す。
そして、頭部に刻まれる不気味な紋章。それは確かに<θ>と読めた。
<冥府ノ加護ヲ受ケシ龍―――青眼死神龍(ブルーアイズ・タナトス・ドラゴン)トデモ言ゥベキカナ?>
「ガァァァァーーーーーーーーーーーーッ!」
闇に染まりし白龍は咆哮と共に、膨れ上がった力全てを吐き出す。その吐息は、真祖と化したオベリスクをも一瞬に
して粉砕し、肉の一片・血の一滴まで蒸発させる。
「な―――!ぐふっ…!」
神を打ち破られ、身を引き裂くような苦痛が闇遊戯を襲う。がくりとよろめき、逆流した胃液を吐き出し、ただ愕然と黒き
青眼の龍を見上げる。
(海馬が何かした様子はない…一体、何が起こった…!?)
「遊戯!しっかりしろ!」
崩れ落ちかけた身体を城之内が支えるが、闇遊戯はそれにも気付かぬように海馬を凝視していた。城之内も、海馬を
睨みつけて叫ぶ。
「海馬…!テメエ、何をしやがった!?どんなインチキすればこうなるんだよ!答えろ、バカ野郎!」
海馬は何も言わない。彼はただ立ち尽くしていた。まるで、何者かの声に耳を傾けているかのように。
否。<まるで>ではない。海馬は今まさに、神の声を聴いていたのだ。
万物の死を司る、冥府の王の声を―――
<ォメデトゥ、海馬。キミノ勝利ダ。ァノ仔ニハ済マナィ事ニナッタガ、我トシテモ嬉シィ>
そこに秘められていたのは、心からの祝福。そして親愛なる友人が手にした勝利と、自らがそれに貢献できたことに
対する喜び―――だが、海馬はそれをよしとしない。
(黙れ、クズが…!)
嫌悪を隠そうともせず、海馬は神を罵倒する。
(貴様が何者かなど知らん…だが、例え貴様が本当に神だったとしても、貴様のような愚かな神によってもたらされた
勝利など、何の価値もない!オレ自身の全てを懸けて、遊戯を倒す―――それだけがオレにとって勝利と呼べるもの
だ!)
<海馬…気持チハ分カルヨ。感謝シロトモ云ゥマィ。ケレド、ァノママデハキミハ負ケティタ>
(失せろ!貴様の声などもう聴きたくもないわ!)
<…申シ訳ナィ。タダ、我ハキミノ誇リヲ傷ツケルツモリデハナカッタンダ。ソレハ解ッテホシィ>
それだけ言い残して、声は闇へと消えていった。海馬の身体から沸き上がる闇の力も消え失せ、人間のそれに戻る。
死神龍もまた、元の美しく白き姿を取り戻していた。だが、それで海馬の心が晴れるわけではない。
「おのれ…おのれ、おのれ、おのれぇぇぇーーーーーーーーっ!」
その場の全員を震え上がらせるほどの怒号。
「オレと遊戯の宿業の闘い…それを邪魔しおって!駄神が愚神が汚神が卑神が腐神がぁぁぁっ!」
その時。ヒュン―――と風を切り、一本の矢が海馬の足元に突き立つ。海馬はようやく我に返り、正面を見据えた。
「ちっとは黙れ、このバカ皇帝が」
群衆の中から、矢を放った男が歩み出る。海馬は眼光鋭く、彼を睨んだ。
「貴様か…軽薄め!」
「軽薄じゃねえ。オリオン様だよバカヤロー」
一見軽い、しかし怒気を滲ませた声。オリオンは足を止め、海馬と向き合った。その時、彼の姿を見た奴隷部隊の中
の一人がオリオンを指差す。
「おい…お前、今、オリオンって言ったか?」
「ああ。それがどうしたよ」
「俺は知ってるぞ…お前、元々は俺達と同じ奴隷だったんだろうが」
「そうだよ。だから、それがどうしたんだってんだ」
「どうしたじゃねえ!元奴隷のお前がなんで、俺達に弓を向けるんだ!」
男は、泡を飛ばしながらオリオンを罵った。
「お前にだって分かるだろうが!俺達奴隷が、どんな扱いされてきたか!なのに何でお前はアルカディアの連中の所
にいるんだ!?」
「そ…そうだ!本当ならお前だって、俺達に味方するのがスジってもんじゃねえのかよ!」
「勇者だなんだ呼ばれてチヤホヤされて、奴隷だった頃の悔しさも忘れたか!?」
奴隷部隊の者達から、オリオンに対して悪罵の声が次々に上がる。
「結局お前だって自分が豊かになったら、俺達を苛める側に回るのか!」
「そんなに弱い奴らを虐げて楽しいのかよ、ええっ!?」
「皇帝様は俺達の救世主なんだ!それに弓を射るなんて、この裏切り者が!」
「裏切り者!」
「裏切り者!」
「裏切り者め!」
次から次に放たれる冷たい言葉の雨。城之内と闇遊戯は血相を変えた。
「お、おい遊戯…!」
「ああ。これはまずいぜ…」
しかし、そんな罵声や闇遊戯達を余所に、オリオンは怒号の中でも身動ぎ一つしない。そして、大きく息を吸って。
「黙らっしゃい、バカ共!」
罵倒全てが吹っ飛ぶような大音響に、皆が一斉に口を閉じて耳を塞ぐ。
「お前ら、自由を求めて立ち上がったっていえば聞こえはいいが、単に強い奴らの尻馬に乗って言いなりになってる
だけじゃねえか!こいつらは単に、お前らを体良く利用してるだけなんだよ!」
「う…ち、違う!皇帝様もアメジストス様も、俺達のためにアルカディアを倒そうとしてくれてるんだ!」
反論にも、どことなく力がない。オリオンはもはやそれを相手にせず、海馬を射抜くように見据える。
「海馬!言いたいことは山ほどあるが…それを大人しく聞いてくれるタマでもねえやな。とりあえずはボコボコにして、
無理矢理にでも聞いてもらうから覚悟しやがれ!」
対して、海馬は。
「吼えてくれるな、軽薄が…だが、オレのブルーアイズも満身創痍だ。このままでは勝ち目が薄い…しかし!」
雄々しく叫びながら、海馬は一枚のカードを天に向けて翳した。
「光栄に思え…究極竜と並ぶ、ブルーアイズのもう一つの最強形態!それを貴様に見せてやろう!」
「―――!?」
究極竜の姿が、光の粒子となって散らばる。
「出でよ…光を纏いし、最強のブルーアイズ!」
光が再び集結し、光輝く翼を、爪を、牙を、聖なる龍の姿を形作る。
その翼は優雅に、されど力強く空を駆ける。
その爪は美しい曲線を描く、天地無双の剣。
その牙は陽光を受けて煌き、神の喉笛をも喰い破る。
その龍の名は―――
「これこそ、我が<青眼の白龍>最終進化系―――<青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)>だ!
ワハハハハハハハハハハハ!」
思考は光の速さで駆け巡る。
(これは…!)
<我ガ力ノ一片ヲ、キミニ与ェタ。ソシテ、ァノ白キ龍ニモネ…>
海馬は究極竜を見上げる。その巨体に、黒い霧の如き瘴気が纏わりついていた。それは究極竜の全身に吸い込まれ、
その白く輝く姿を黒く塗り潰す。
そして、頭部に刻まれる不気味な紋章。それは確かに<θ>と読めた。
<冥府ノ加護ヲ受ケシ龍―――青眼死神龍(ブルーアイズ・タナトス・ドラゴン)トデモ言ゥベキカナ?>
「ガァァァァーーーーーーーーーーーーッ!」
闇に染まりし白龍は咆哮と共に、膨れ上がった力全てを吐き出す。その吐息は、真祖と化したオベリスクをも一瞬に
して粉砕し、肉の一片・血の一滴まで蒸発させる。
「な―――!ぐふっ…!」
神を打ち破られ、身を引き裂くような苦痛が闇遊戯を襲う。がくりとよろめき、逆流した胃液を吐き出し、ただ愕然と黒き
青眼の龍を見上げる。
(海馬が何かした様子はない…一体、何が起こった…!?)
「遊戯!しっかりしろ!」
崩れ落ちかけた身体を城之内が支えるが、闇遊戯はそれにも気付かぬように海馬を凝視していた。城之内も、海馬を
睨みつけて叫ぶ。
「海馬…!テメエ、何をしやがった!?どんなインチキすればこうなるんだよ!答えろ、バカ野郎!」
海馬は何も言わない。彼はただ立ち尽くしていた。まるで、何者かの声に耳を傾けているかのように。
否。<まるで>ではない。海馬は今まさに、神の声を聴いていたのだ。
万物の死を司る、冥府の王の声を―――
<ォメデトゥ、海馬。キミノ勝利ダ。ァノ仔ニハ済マナィ事ニナッタガ、我トシテモ嬉シィ>
そこに秘められていたのは、心からの祝福。そして親愛なる友人が手にした勝利と、自らがそれに貢献できたことに
対する喜び―――だが、海馬はそれをよしとしない。
(黙れ、クズが…!)
嫌悪を隠そうともせず、海馬は神を罵倒する。
(貴様が何者かなど知らん…だが、例え貴様が本当に神だったとしても、貴様のような愚かな神によってもたらされた
勝利など、何の価値もない!オレ自身の全てを懸けて、遊戯を倒す―――それだけがオレにとって勝利と呼べるもの
だ!)
<海馬…気持チハ分カルヨ。感謝シロトモ云ゥマィ。ケレド、ァノママデハキミハ負ケティタ>
(失せろ!貴様の声などもう聴きたくもないわ!)
<…申シ訳ナィ。タダ、我ハキミノ誇リヲ傷ツケルツモリデハナカッタンダ。ソレハ解ッテホシィ>
それだけ言い残して、声は闇へと消えていった。海馬の身体から沸き上がる闇の力も消え失せ、人間のそれに戻る。
死神龍もまた、元の美しく白き姿を取り戻していた。だが、それで海馬の心が晴れるわけではない。
「おのれ…おのれ、おのれ、おのれぇぇぇーーーーーーーーっ!」
その場の全員を震え上がらせるほどの怒号。
「オレと遊戯の宿業の闘い…それを邪魔しおって!駄神が愚神が汚神が卑神が腐神がぁぁぁっ!」
その時。ヒュン―――と風を切り、一本の矢が海馬の足元に突き立つ。海馬はようやく我に返り、正面を見据えた。
「ちっとは黙れ、このバカ皇帝が」
群衆の中から、矢を放った男が歩み出る。海馬は眼光鋭く、彼を睨んだ。
「貴様か…軽薄め!」
「軽薄じゃねえ。オリオン様だよバカヤロー」
一見軽い、しかし怒気を滲ませた声。オリオンは足を止め、海馬と向き合った。その時、彼の姿を見た奴隷部隊の中
の一人がオリオンを指差す。
「おい…お前、今、オリオンって言ったか?」
「ああ。それがどうしたよ」
「俺は知ってるぞ…お前、元々は俺達と同じ奴隷だったんだろうが」
「そうだよ。だから、それがどうしたんだってんだ」
「どうしたじゃねえ!元奴隷のお前がなんで、俺達に弓を向けるんだ!」
男は、泡を飛ばしながらオリオンを罵った。
「お前にだって分かるだろうが!俺達奴隷が、どんな扱いされてきたか!なのに何でお前はアルカディアの連中の所
にいるんだ!?」
「そ…そうだ!本当ならお前だって、俺達に味方するのがスジってもんじゃねえのかよ!」
「勇者だなんだ呼ばれてチヤホヤされて、奴隷だった頃の悔しさも忘れたか!?」
奴隷部隊の者達から、オリオンに対して悪罵の声が次々に上がる。
「結局お前だって自分が豊かになったら、俺達を苛める側に回るのか!」
「そんなに弱い奴らを虐げて楽しいのかよ、ええっ!?」
「皇帝様は俺達の救世主なんだ!それに弓を射るなんて、この裏切り者が!」
「裏切り者!」
「裏切り者!」
「裏切り者め!」
次から次に放たれる冷たい言葉の雨。城之内と闇遊戯は血相を変えた。
「お、おい遊戯…!」
「ああ。これはまずいぜ…」
しかし、そんな罵声や闇遊戯達を余所に、オリオンは怒号の中でも身動ぎ一つしない。そして、大きく息を吸って。
「黙らっしゃい、バカ共!」
罵倒全てが吹っ飛ぶような大音響に、皆が一斉に口を閉じて耳を塞ぐ。
「お前ら、自由を求めて立ち上がったっていえば聞こえはいいが、単に強い奴らの尻馬に乗って言いなりになってる
だけじゃねえか!こいつらは単に、お前らを体良く利用してるだけなんだよ!」
「う…ち、違う!皇帝様もアメジストス様も、俺達のためにアルカディアを倒そうとしてくれてるんだ!」
反論にも、どことなく力がない。オリオンはもはやそれを相手にせず、海馬を射抜くように見据える。
「海馬!言いたいことは山ほどあるが…それを大人しく聞いてくれるタマでもねえやな。とりあえずはボコボコにして、
無理矢理にでも聞いてもらうから覚悟しやがれ!」
対して、海馬は。
「吼えてくれるな、軽薄が…だが、オレのブルーアイズも満身創痍だ。このままでは勝ち目が薄い…しかし!」
雄々しく叫びながら、海馬は一枚のカードを天に向けて翳した。
「光栄に思え…究極竜と並ぶ、ブルーアイズのもう一つの最強形態!それを貴様に見せてやろう!」
「―――!?」
究極竜の姿が、光の粒子となって散らばる。
「出でよ…光を纏いし、最強のブルーアイズ!」
光が再び集結し、光輝く翼を、爪を、牙を、聖なる龍の姿を形作る。
その翼は優雅に、されど力強く空を駆ける。
その爪は美しい曲線を描く、天地無双の剣。
その牙は陽光を受けて煌き、神の喉笛をも喰い破る。
その龍の名は―――
「これこそ、我が<青眼の白龍>最終進化系―――<青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)>だ!
ワハハハハハハハハハハハ!」