「フ―――このような闘いとも呼べぬ茶番、すぐさまケリを着けてくれるわ!」
天に向けて腕を翳し、海馬は咆哮する。
「往け、ブルーアイズ!貴様の力を見せてやるがいい!」
白き龍はその命令を忠実に実行するべく、巨大な口を開く。
「ブルーアイズの攻撃!滅びのバースト・ストリ―――」
「確かにスゲエよ、ブルーアイズ…けどな…そればっかで押し通せると思うんじゃねえ!」
城之内は叫び、一枚のカードを見せ付ける。
「む…!?そのカードは!」
カードがディスクにセットされると同時に、城之内の眼前に巨大な物体―――ゲーム機のコントローラーに酷似した
奇妙な機械―――が現れる。
「―――<エネミーコントローラー>!テメエも知ってるだろうが、このカードはコマンド入力で、相手モンスター
を自在に操ることができる!」
言うが早いか、城之内は既にコマンド入力を終えていた。瞬時に効果は発動され、三体のブルーアイズの内の一体
が消え去り、それは再び現れた時には城之内の傍に佇んでいた。
「城之内…貴様!」
「へっ!そしてオレは、このブルーアイズでテメエに攻撃する!」
「!」
城之内に操られたブルーアイズは一瞬、躊躇うように唸るが、それを振り払うように牙を剥き出しにして吼える。
「いきやがれ!滅びの―――いや、城之内キャノン!」
「おのれぇぇぇぇぇ!」
海馬は絶叫しつつ、攻撃から身を守るためのカードを発動させようとするが、その寸前に海馬を庇うように躍り出る
巨体があった。残された二体のブルーアイズ。その片割れが、迫る破滅の閃光から海馬を護るために立ちはだかった
のだ。
「ブルーアイズ!まさか…!」
兜の奥で海馬は目を見開く。この行動は自分の命令などではない。カードそのものが確かな意志を持ち、自らを犠牲
にした―――そうとしか思えない動きだった。
そして交差するように放つ、全てを灰塵と化す吐息。双龍は互いに滅ぼし合い、互いにこの世から消し飛んだ。
「おっしゃあ!これで残りは一匹だけだぜ!」
快哉を叫ぶ城之内を、海馬は燃えるような怒りを込めて睨み付ける。
「おのれ…よくもオレに、ブルーアイズの同士討ちなどさせたな!」
残されたもう一体も、海馬の嚇怒が乗り移ったかのように獰猛に叫ぶ。
「城之内!ただではすまさんぞ…オレの怒り…そして、オレに牙を剥かざるを得なかったブルーアイズの怒り!オレ
のためにその身を砕いたブルーアイズの怒り!全てを貴様に叩きつけてくれよう!」
「そりゃあどうかな!オレはこのモンスターを召喚する―――<メテオドラゴン>!続けて魔法カード発動―――
<融合>!」
隕石に竜の頭部と手足がくっ付いた様な、おかしな姿のドラゴンが天から降ってきたかと思うと、それは地上にいた
レッドアイズと勢いよくぶつかり、黒煙を噴き上げながら融け合い、混ざり合う。
そして黒煙の向こうから、それはゆっくりと身体を起こした。
「<真紅眼の黒竜>と<メテオドラゴン>融合体―――<メテオ・ブラック・ドラゴン>だ!」
超高熱ガスと化した吐息を撒き散らす異形の黒竜。それは全身から噴き出す炎を自らに纏い、天空に舞い上がる。
「いっけぇぇぇぇ!メテオ・ダイブ!」
大気を、大地を、天空を焼き、灼熱の火球と化した黒竜がブルーアイズに向けて突進する。放たれた白龍の吐息すら
意に介さず、一気にブチかます!
「ギャアァァアァーーーーーーーーッッ!」
壮絶な断末魔の悲鳴と共に、強大なる白き龍は砕け散る。海馬はそれを前に、ただ立ち尽くすのみだ。
「へっ、どうしたよ海馬!ブルーアイズがなけりゃ何もできねえか!?」
「そ、そんな…」
「皇帝様が…負けた…!?」
その闘いを見届けていた奴隷部隊の面々も、余りの事に不安げに顔を見合わせる―――自分達が無敵と信じた存在
が、完膚なきまでに打ち砕かれたのならばそれも致し方ないことだった―――しかし。
「ク…ククク…ワハハハハ!」
海馬は、笑っていた。苦し紛れの笑いなどではない、異様に力強い高笑い。この状況などすぐにでも引っ繰り返せる。
そう言いたげな態度だった。
「城之内…貴様如きがここまでやるとはな…少々見くびっていたことは認めよう―――だが!」
海馬は笑いを止め、城之内に宣告する。
「貴様はすぐさま後悔することになるだろう。大人しく負けていればよかったとな!このカードが文字通り、貴様に地獄
を見せることとなる―――<地獄の暴走召喚>!」
空が暗雲に包まれ、魔界の瘴気が流れ込んできたかのような重い静寂が世界を支配する。
「黄泉返れ―――ブルーアイズ!」
その声に応えるように、三体の白龍が再び海馬へと寄り添うように降臨する。
「なん…だと…!?」
「フ…<地獄の暴走召喚>は、墓地に眠る同名モンスターを全て復活させる効果を持つ!よってオレのブルーアイズ
は再び舞い戻った!貴様の奮闘も虚しくな―――ワハハハハハ!」
「くっ…だが、オレにはまだメテオ・ブラック・ドラゴンがいるぜ!コイツの戦闘力はブルーアイズを超える―――
いくら数を揃えたとこで―――」
「バカか、貴様」
海馬は嘲り、一枚のカードをちらつかせる。
「まさか失念しているわけではなかろうな?ブルーアイズ究極形態の存在を!」
「―――!」
「魔法カード<融合>を発動!いでよ―――<青眼究極竜>!」
三体の白龍が、今一つとなる―――
「蒼氷(アイスブルー)に煌く瞳が開かれし時、貴様は幻想しうる最悪の狂夢(ゆめ)を見る…」
顕現せしは、絶対の勝利をもたらす究極の竜!
「―――残酷な死神(カミ)を見よ!城之内!」
未だかつてない戦慄が、天地を斬り裂く雷光の如くに城之内の身体を貫く。
「あ、あ、あああ…」
「ひいい…」
地を割る咆哮。烈風を巻き起こす白き翼。その蒼き瞳に見入られただけで、武勇を誇るアルカディアの兵士達が絶望
に打ちのめされ、次々に倒れていった。それとは対照的に、奴隷部隊は色めき立つ。
「おお…あれこそは我らの守護聖竜…!」
「忌まわしきイリオンを打ち砕いた、我らが神…!」
「強靭にして無敵にして最強の存在!龍神―――アルティメットドラゴン様だ…!」
その歓声を背に、海馬は傲然と城之内を見下ろした。
「どうした城之内―――まさか、先程の作戦以外は何も考えていなかったか?」
(か…考えてませんでしたー!)
「ワハハハハ!所詮貴様は未熟な凡骨決闘者ということだ!究極竜よ、その偉大なる咆哮で全てを塵と化し打ち砕け
―――アルティメット・バースト!」
全てを闇へと誘う光の奔流が、一瞬にして黒き隕星の竜を呑み込み、消滅させる。そしてその勢いを衰えさせること
なく、城之内すらも―――
天に向けて腕を翳し、海馬は咆哮する。
「往け、ブルーアイズ!貴様の力を見せてやるがいい!」
白き龍はその命令を忠実に実行するべく、巨大な口を開く。
「ブルーアイズの攻撃!滅びのバースト・ストリ―――」
「確かにスゲエよ、ブルーアイズ…けどな…そればっかで押し通せると思うんじゃねえ!」
城之内は叫び、一枚のカードを見せ付ける。
「む…!?そのカードは!」
カードがディスクにセットされると同時に、城之内の眼前に巨大な物体―――ゲーム機のコントローラーに酷似した
奇妙な機械―――が現れる。
「―――<エネミーコントローラー>!テメエも知ってるだろうが、このカードはコマンド入力で、相手モンスター
を自在に操ることができる!」
言うが早いか、城之内は既にコマンド入力を終えていた。瞬時に効果は発動され、三体のブルーアイズの内の一体
が消え去り、それは再び現れた時には城之内の傍に佇んでいた。
「城之内…貴様!」
「へっ!そしてオレは、このブルーアイズでテメエに攻撃する!」
「!」
城之内に操られたブルーアイズは一瞬、躊躇うように唸るが、それを振り払うように牙を剥き出しにして吼える。
「いきやがれ!滅びの―――いや、城之内キャノン!」
「おのれぇぇぇぇぇ!」
海馬は絶叫しつつ、攻撃から身を守るためのカードを発動させようとするが、その寸前に海馬を庇うように躍り出る
巨体があった。残された二体のブルーアイズ。その片割れが、迫る破滅の閃光から海馬を護るために立ちはだかった
のだ。
「ブルーアイズ!まさか…!」
兜の奥で海馬は目を見開く。この行動は自分の命令などではない。カードそのものが確かな意志を持ち、自らを犠牲
にした―――そうとしか思えない動きだった。
そして交差するように放つ、全てを灰塵と化す吐息。双龍は互いに滅ぼし合い、互いにこの世から消し飛んだ。
「おっしゃあ!これで残りは一匹だけだぜ!」
快哉を叫ぶ城之内を、海馬は燃えるような怒りを込めて睨み付ける。
「おのれ…よくもオレに、ブルーアイズの同士討ちなどさせたな!」
残されたもう一体も、海馬の嚇怒が乗り移ったかのように獰猛に叫ぶ。
「城之内!ただではすまさんぞ…オレの怒り…そして、オレに牙を剥かざるを得なかったブルーアイズの怒り!オレ
のためにその身を砕いたブルーアイズの怒り!全てを貴様に叩きつけてくれよう!」
「そりゃあどうかな!オレはこのモンスターを召喚する―――<メテオドラゴン>!続けて魔法カード発動―――
<融合>!」
隕石に竜の頭部と手足がくっ付いた様な、おかしな姿のドラゴンが天から降ってきたかと思うと、それは地上にいた
レッドアイズと勢いよくぶつかり、黒煙を噴き上げながら融け合い、混ざり合う。
そして黒煙の向こうから、それはゆっくりと身体を起こした。
「<真紅眼の黒竜>と<メテオドラゴン>融合体―――<メテオ・ブラック・ドラゴン>だ!」
超高熱ガスと化した吐息を撒き散らす異形の黒竜。それは全身から噴き出す炎を自らに纏い、天空に舞い上がる。
「いっけぇぇぇぇ!メテオ・ダイブ!」
大気を、大地を、天空を焼き、灼熱の火球と化した黒竜がブルーアイズに向けて突進する。放たれた白龍の吐息すら
意に介さず、一気にブチかます!
「ギャアァァアァーーーーーーーーッッ!」
壮絶な断末魔の悲鳴と共に、強大なる白き龍は砕け散る。海馬はそれを前に、ただ立ち尽くすのみだ。
「へっ、どうしたよ海馬!ブルーアイズがなけりゃ何もできねえか!?」
「そ、そんな…」
「皇帝様が…負けた…!?」
その闘いを見届けていた奴隷部隊の面々も、余りの事に不安げに顔を見合わせる―――自分達が無敵と信じた存在
が、完膚なきまでに打ち砕かれたのならばそれも致し方ないことだった―――しかし。
「ク…ククク…ワハハハハ!」
海馬は、笑っていた。苦し紛れの笑いなどではない、異様に力強い高笑い。この状況などすぐにでも引っ繰り返せる。
そう言いたげな態度だった。
「城之内…貴様如きがここまでやるとはな…少々見くびっていたことは認めよう―――だが!」
海馬は笑いを止め、城之内に宣告する。
「貴様はすぐさま後悔することになるだろう。大人しく負けていればよかったとな!このカードが文字通り、貴様に地獄
を見せることとなる―――<地獄の暴走召喚>!」
空が暗雲に包まれ、魔界の瘴気が流れ込んできたかのような重い静寂が世界を支配する。
「黄泉返れ―――ブルーアイズ!」
その声に応えるように、三体の白龍が再び海馬へと寄り添うように降臨する。
「なん…だと…!?」
「フ…<地獄の暴走召喚>は、墓地に眠る同名モンスターを全て復活させる効果を持つ!よってオレのブルーアイズ
は再び舞い戻った!貴様の奮闘も虚しくな―――ワハハハハハ!」
「くっ…だが、オレにはまだメテオ・ブラック・ドラゴンがいるぜ!コイツの戦闘力はブルーアイズを超える―――
いくら数を揃えたとこで―――」
「バカか、貴様」
海馬は嘲り、一枚のカードをちらつかせる。
「まさか失念しているわけではなかろうな?ブルーアイズ究極形態の存在を!」
「―――!」
「魔法カード<融合>を発動!いでよ―――<青眼究極竜>!」
三体の白龍が、今一つとなる―――
「蒼氷(アイスブルー)に煌く瞳が開かれし時、貴様は幻想しうる最悪の狂夢(ゆめ)を見る…」
顕現せしは、絶対の勝利をもたらす究極の竜!
「―――残酷な死神(カミ)を見よ!城之内!」
未だかつてない戦慄が、天地を斬り裂く雷光の如くに城之内の身体を貫く。
「あ、あ、あああ…」
「ひいい…」
地を割る咆哮。烈風を巻き起こす白き翼。その蒼き瞳に見入られただけで、武勇を誇るアルカディアの兵士達が絶望
に打ちのめされ、次々に倒れていった。それとは対照的に、奴隷部隊は色めき立つ。
「おお…あれこそは我らの守護聖竜…!」
「忌まわしきイリオンを打ち砕いた、我らが神…!」
「強靭にして無敵にして最強の存在!龍神―――アルティメットドラゴン様だ…!」
その歓声を背に、海馬は傲然と城之内を見下ろした。
「どうした城之内―――まさか、先程の作戦以外は何も考えていなかったか?」
(か…考えてませんでしたー!)
「ワハハハハ!所詮貴様は未熟な凡骨決闘者ということだ!究極竜よ、その偉大なる咆哮で全てを塵と化し打ち砕け
―――アルティメット・バースト!」
全てを闇へと誘う光の奔流が、一瞬にして黒き隕星の竜を呑み込み、消滅させる。そしてその勢いを衰えさせること
なく、城之内すらも―――
「―――罠カード発動!<攻撃の無力化>!」
空間を歪めて出現した時空の渦が、その一撃を吸い込み、無力化する。
「む…!」
海馬はもはや城之内には目もくれず、その声に向き直る。
古の王にして、闇の王。そして、全ての決闘者の頂点に君臨する決闘王―――闇遊戯が、そこにいた。
「フ…先走りすぎだぜ、城之内くん」
「へへ…面目ねえ。お前にゃ、借りばっかできちまうな」
互いに顔を見合わせ、苦笑する。
「ついに来たか―――オレが唯一認めた男…決闘王・武藤遊戯!」
「海馬!」
大地を強く踏み締め、闇遊戯は海馬と対峙する。もはや二人の間に、言葉はない。
「「―――決闘(デュエル)!」」
ただ決意と闘志を持ちて、白龍の帝王と黒き決闘王は宿命の導くままに闘う。それこそが彼等を繋ぐ唯一の絆である
かのように。それは激しい恋心にも似た、確かな憎しみ。
(究極竜の前には、生半可な攻撃は通じない…ならば!)
先手を取るは闇遊戯。
「魔法カード発動!<融合解除>!」
融合解除―――その名の示す通り、融合によって生まれたモンスターを元の姿に戻すカード。だが海馬は薄く笑う。
「ならばそれに対し、このカードでカウンターを行う!<魔法除去>!」
「ちっ…!」
融合解除を打ち消され、闇遊戯は小さく舌打ちする。
「クク…愚か者め!かつてやられた手をまた喰らうとでも思ったか!?」
海馬は挑発するように手招きする。
「遊戯…神を呼べ!貴様の神とオレのブルーアイズ―――真に最強たるはどちらか、決着を付けようではないか!」
「…………」
闇遊戯は僅かに逡巡したが、選択肢はない。
(確かに…究極竜に対抗しうるは、三幻神のみ!)
ゆっくりとデッキに手を伸ばし、掴み取ったカード。闇遊戯はそこから確かに、凄まじい力の鼓動を感じ取った。
「破壊神よ―――その力を今ここに示せ!」
身を裂くような風が、戦場を吹き抜ける。
「光臨せよ!力と破壊を司る巨神よ!」
大地を、海原を、天空を―――全てを砕く剛腕を振り上げながら、<巨神>がその姿を現す。
「―――<オベリスクの巨神兵>!」
姿は人間に近いが、内包する桁外れの鬼気は、それが人間とは一線を画す存在であることを否応なしに示していた。
鋼鉄のような筋肉を纏う、仄蒼く輝く巨体。そこから発する闘気だけで、心弱き者ならば即座に地に平伏すだろう。
巨大な二本の角を備えた頭部はその憤怒の形相と相成り、まさしく鬼神の如き威圧感を発していた。
彼に並び立つ者はなく。
彼が触れしは死すらも死せん。
それこそが最強の力を秘めし巨神―――オベリスク!
「滾る…滾るぞ、遊戯!」
されど、神を前にしてなお、海馬は一片の怖れすら見せない。
「貴様との闘いはいつもそうだった―――死力を振り絞った極限の決闘!全身の血の一滴までもが燃え上がり、細胞
の一片に至るまでが震え、全身をアドレナリンが駆け巡る!それがオレの力を限界を越えて引き出してきた―――
だが、今こそ決着の時!オレは貴様を倒し、決闘王の称号を奪い取ってくれるわ!」
「む…!」
海馬はもはや城之内には目もくれず、その声に向き直る。
古の王にして、闇の王。そして、全ての決闘者の頂点に君臨する決闘王―――闇遊戯が、そこにいた。
「フ…先走りすぎだぜ、城之内くん」
「へへ…面目ねえ。お前にゃ、借りばっかできちまうな」
互いに顔を見合わせ、苦笑する。
「ついに来たか―――オレが唯一認めた男…決闘王・武藤遊戯!」
「海馬!」
大地を強く踏み締め、闇遊戯は海馬と対峙する。もはや二人の間に、言葉はない。
「「―――決闘(デュエル)!」」
ただ決意と闘志を持ちて、白龍の帝王と黒き決闘王は宿命の導くままに闘う。それこそが彼等を繋ぐ唯一の絆である
かのように。それは激しい恋心にも似た、確かな憎しみ。
(究極竜の前には、生半可な攻撃は通じない…ならば!)
先手を取るは闇遊戯。
「魔法カード発動!<融合解除>!」
融合解除―――その名の示す通り、融合によって生まれたモンスターを元の姿に戻すカード。だが海馬は薄く笑う。
「ならばそれに対し、このカードでカウンターを行う!<魔法除去>!」
「ちっ…!」
融合解除を打ち消され、闇遊戯は小さく舌打ちする。
「クク…愚か者め!かつてやられた手をまた喰らうとでも思ったか!?」
海馬は挑発するように手招きする。
「遊戯…神を呼べ!貴様の神とオレのブルーアイズ―――真に最強たるはどちらか、決着を付けようではないか!」
「…………」
闇遊戯は僅かに逡巡したが、選択肢はない。
(確かに…究極竜に対抗しうるは、三幻神のみ!)
ゆっくりとデッキに手を伸ばし、掴み取ったカード。闇遊戯はそこから確かに、凄まじい力の鼓動を感じ取った。
「破壊神よ―――その力を今ここに示せ!」
身を裂くような風が、戦場を吹き抜ける。
「光臨せよ!力と破壊を司る巨神よ!」
大地を、海原を、天空を―――全てを砕く剛腕を振り上げながら、<巨神>がその姿を現す。
「―――<オベリスクの巨神兵>!」
姿は人間に近いが、内包する桁外れの鬼気は、それが人間とは一線を画す存在であることを否応なしに示していた。
鋼鉄のような筋肉を纏う、仄蒼く輝く巨体。そこから発する闘気だけで、心弱き者ならば即座に地に平伏すだろう。
巨大な二本の角を備えた頭部はその憤怒の形相と相成り、まさしく鬼神の如き威圧感を発していた。
彼に並び立つ者はなく。
彼が触れしは死すらも死せん。
それこそが最強の力を秘めし巨神―――オベリスク!
「滾る…滾るぞ、遊戯!」
されど、神を前にしてなお、海馬は一片の怖れすら見せない。
「貴様との闘いはいつもそうだった―――死力を振り絞った極限の決闘!全身の血の一滴までもが燃え上がり、細胞
の一片に至るまでが震え、全身をアドレナリンが駆け巡る!それがオレの力を限界を越えて引き出してきた―――
だが、今こそ決着の時!オレは貴様を倒し、決闘王の称号を奪い取ってくれるわ!」
武藤遊戯。
海馬瀬人。
運命の女神(ミラ)は果たして、どちらに微笑むのか―――
海馬瀬人。
運命の女神(ミラ)は果たして、どちらに微笑むのか―――