昻昇が意識を取り戻した時、真正面にドラエがいた。
「お気づきですか?」
脚を大きく広げ、後ろに手をついて座り込んでいる昻昇の目の前で、ドラエは
片膝立ちになって昻昇の両肩を掴んで、倒れないよう支えている。
「膝枕でもして差し上げたかったのですが、脳震盪からの回復には頭部を正しい位置に
置くことが大切ですので……ご気分はいかがです? 頭痛や吐き気などは?」
「……大丈夫、なんともない……が」
まだはっきりしない意識の中で、昻昇は実感した。俺は負けたのか、と。
じーさんに続いて、今度は女性相手の敗北。昻昇はその相手たるドラエを正視できず、
がっくりと俯いてしまう。
するとドラエは、左手を昻昇の肩から放した。そして昻昇の右手の甲に重ねる。
昻昇の、鍛えに鍛えた岩のような手の上に、ドラエの絹のように柔らかな、雪のように白い
手が重ねられる。その感触に昻昇は……驚いた。ドラエの手が、小さく震えていることに。
しかもその手は、温かさはあるのだがそれ以上に、冷たい汗で湿っている。
「昻昇様は脳震盪から回復しつつあるようですが、わたくしはこの通り、まだまだです。
まだまだ、恐怖から回復しておりません。昻昇様の、あの一撃で」
そう語るその声すら、どこか弱々しい。
「にも関わらず、それほど恐怖した一撃だったのに、わたくしがどうして対処でき、反撃
までできたのか。おわかりですか?」
「……いや」
徳川曰く、ドラエは闘技場については一切無関係。参加はもちろん観戦すらしたことがない
とのことだった。昻昇と出会うのも、戦う姿を見るのも、今日が初めてのはずだ。
あの渋川さえ、断定は出来ないが「一回戦で昻昇が紅葉に使った新・紐切りを見ていた
からこそ」ああも易々と返せたのかもしれないのだ。
それなのに、ドラエは……
「もしや昻昇様、わたくしが初見の『紐切り』を返したとお思いではありませんか? でしたら
それは、少し誤解です」
え? と顔を上げた昻昇に、ドラエが微笑みかける。
「鎬流空手家・鎬昻昇の武名、わたくしはかねてより聞き及んでおりました。その斬撃拳の
比類なき強さを、その奥義である紐切りの恐ろしさを、敵の首筋の視神経を素手で切るという
神技の存在を。あの日、徳川様からは御名前しかお聞きしませんでしたが、わたくしは既に
ずっと前から、昻昇様のことを存じ上げていたのです」
「お気づきですか?」
脚を大きく広げ、後ろに手をついて座り込んでいる昻昇の目の前で、ドラエは
片膝立ちになって昻昇の両肩を掴んで、倒れないよう支えている。
「膝枕でもして差し上げたかったのですが、脳震盪からの回復には頭部を正しい位置に
置くことが大切ですので……ご気分はいかがです? 頭痛や吐き気などは?」
「……大丈夫、なんともない……が」
まだはっきりしない意識の中で、昻昇は実感した。俺は負けたのか、と。
じーさんに続いて、今度は女性相手の敗北。昻昇はその相手たるドラエを正視できず、
がっくりと俯いてしまう。
するとドラエは、左手を昻昇の肩から放した。そして昻昇の右手の甲に重ねる。
昻昇の、鍛えに鍛えた岩のような手の上に、ドラエの絹のように柔らかな、雪のように白い
手が重ねられる。その感触に昻昇は……驚いた。ドラエの手が、小さく震えていることに。
しかもその手は、温かさはあるのだがそれ以上に、冷たい汗で湿っている。
「昻昇様は脳震盪から回復しつつあるようですが、わたくしはこの通り、まだまだです。
まだまだ、恐怖から回復しておりません。昻昇様の、あの一撃で」
そう語るその声すら、どこか弱々しい。
「にも関わらず、それほど恐怖した一撃だったのに、わたくしがどうして対処でき、反撃
までできたのか。おわかりですか?」
「……いや」
徳川曰く、ドラエは闘技場については一切無関係。参加はもちろん観戦すらしたことがない
とのことだった。昻昇と出会うのも、戦う姿を見るのも、今日が初めてのはずだ。
あの渋川さえ、断定は出来ないが「一回戦で昻昇が紅葉に使った新・紐切りを見ていた
からこそ」ああも易々と返せたのかもしれないのだ。
それなのに、ドラエは……
「もしや昻昇様、わたくしが初見の『紐切り』を返したとお思いではありませんか? でしたら
それは、少し誤解です」
え? と顔を上げた昻昇に、ドラエが微笑みかける。
「鎬流空手家・鎬昻昇の武名、わたくしはかねてより聞き及んでおりました。その斬撃拳の
比類なき強さを、その奥義である紐切りの恐ろしさを、敵の首筋の視神経を素手で切るという
神技の存在を。あの日、徳川様からは御名前しかお聞きしませんでしたが、わたくしは既に
ずっと前から、昻昇様のことを存じ上げていたのです」
昻昇様は、世界中を武者修行して廻られたそうですね。特に印象に残っている国は……
「武道家としての習性と申しましょうか、わたくしは自分の中で何度も何度も、昻昇様と試合
を重ねて参りました。いわば、わたくしにとっては、今日は昻昇様との初試合ではないのです」
「……」
「いつかお手合わせする日がくれば、と思ってはおりました。徳川様から『試合の話がきたぞ』と
いうご連絡で昻昇様の御名前が出た時の驚き、とても言葉では言い表せません」
話している間に落ち着いてきたのか、昻昇の手に重ねたドラエの手の震えが止まっている。
そのことに昻昇が気付く前に、ドラエは右手もそこに添えた。両手で昻昇の右手を包み込み、
そっと持ち上げる。
「昻昇様が、昻昇様の師より受け継ぎしこの技、この手。それを昻昇様が何よりも誇りとし、
更なる高みを目指し続けておられること、しかとこの身に教えて頂きました。わたくしも同様、
祖父より授かりし明道流柔術を更に磨いて次代へと渡さねばなりません。その為の修行として、
今日のような試合も重ねております」
を重ねて参りました。いわば、わたくしにとっては、今日は昻昇様との初試合ではないのです」
「……」
「いつかお手合わせする日がくれば、と思ってはおりました。徳川様から『試合の話がきたぞ』と
いうご連絡で昻昇様の御名前が出た時の驚き、とても言葉では言い表せません」
話している間に落ち着いてきたのか、昻昇の手に重ねたドラエの手の震えが止まっている。
そのことに昻昇が気付く前に、ドラエは右手もそこに添えた。両手で昻昇の右手を包み込み、
そっと持ち上げる。
「昻昇様が、昻昇様の師より受け継ぎしこの技、この手。それを昻昇様が何よりも誇りとし、
更なる高みを目指し続けておられること、しかとこの身に教えて頂きました。わたくしも同様、
祖父より授かりし明道流柔術を更に磨いて次代へと渡さねばなりません。その為の修行として、
今日のような試合も重ねております」
間を置かず、戦いなさい……
昻昇の胸に、あの夜のことが思い出される。師より告げられた免許皆伝、あの時の師の
言葉、顔。そして文字通り「授かった」もの。鎬流正統の拳を振るうのは、この地上に
自分ひとりしかいないのだ。
いつか次代へ譲る日の為に、昻昇はそれを磨き続け、戦い続けている。師の教えに従って。
ドラエもまた、同じように。
「わたくしなどに、勿体無くも昻昇様の本気の技を、鎬流の奥義をご披露して下さり、
本当に良い修行をさせて頂きました」
ドラエは正座し、昻昇に三つ指着いて深々と一礼する。それから立ち上がり、膝やスカートに
ついた泥を払ってから、観戦していた刃牙たちにも頭を下げて……
「ま、待ってくれ!」
昻昇は慌てて立ち上がり、去りかけたドラエを呼び止めた。
「なんだかその、ちょっと褒めてくれたような気もするんだが、なんだかんだ言って俺は、
あんたに負けたんだ。全力で、本気で、負けた。言い訳のしようもない。だからこそ、悔しい。
悔しいから、その、」
振り向いたドラエから注がれる視線が熱い。熱く感じられてしまってどうしようもない。
だが、意を決して昂昇は、その視線に自分の目をしっかりと向けた。
「また俺と会って……試合、してくれるか?」
二人の目が合う。ドラエは間を空けずに答えた。
「はい、喜んで。その時までに、わたくしももっと腕を上げておきます」
今は完全に鋭さの消えた、心の底からの柔らかな暖かな微笑み。
そんなとびっきりの笑顔を昻昇の胸に残して、明道流柔術継承者・ドラエ=タチバナ=ドリャーエフ
は去っていった。
昻昇たちはしばし、言葉もなくドラエのいなくなった空間を眺め続けていて。
やがて、最初に口を開いたのは紅葉だった。
「ははっ、なんだなんだ。我々四人、随分いろいろ大騒ぎしてしまったが、終わってしまえば
どうだ。文句のつけようのないハッピーエンドじゃないか。良かったな昻昇」
ぽん、と昻昇の肩に紅葉の手が置かれた。
その昻昇の肩が、震えている。小さくではなく、結構大きく。
「昻昇?」
「……俺のことを、ずっと以前から知ってた……知っててくれた……鎬流の名を、俺の名を、
俺の斬撃拳を……何度も試合を重ねてて……そして、また会って試合……また、会って……」
「お、おい昻昇?」
「こうなったら……こおおおおぉぉしちゃいられんっ! すぐに帰って特訓だ、次こそは勝つぞ!
俺はもっと強くなる、なれる、ならねばならんっ! というわけで手伝ってくれ兄さんっっ!」
昻昇はまたしても紅葉の後ろ襟を引っつかんで、半ば背負うようにして、
「わ、ちょ、おい、待て、落ち着け昻昇おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
どひゅううぅぅんと駆けて行った。砂煙の中に、紅葉の叫びだけが響いて残っている。
呆気に取られつつ、今度は梢江が首を傾げて言った。
「うぅ~ん。試合の内容とか、ドラエさんが言ってたこととかはよくわかんないけど。でも、
よーするに昻昇さんは、トーナメントで負けて落ち込んで、今日も負けて落ち込んで、
でも綺麗なおねーさんに励ましてもらって元気になった、ってことでしょ?」
刃牙の横顔に問いかける梢江。刃牙は昻昇の走り去った先を、じっと見ている。
「ああ。梢江ちゃんの言う通りだよ」
「やっぱり。つくづく、オトコって単純よねほんと。……刃牙君も、ああなの? その、
綺麗なおねーさんに励まされたら即元気というか」
梢江が、少し心配そうな声になる。刃牙は笑って、
「もちろんさ。俺だったら昻昇さん以上だよ。例えば、そうだなぁ」
梢江の方を向いて、ちょっと考えてから刃牙は言った。
「俺が未知の毒物に侵されて半死半生、どんな名医も匙を投げてしまったとする。でも、
梢江ちゃんの涙を一滴飲めば、それだけで毒は全部吹っ飛ぶだろうな。俺なら」
「……え」
じっと見つめられてそんなことを言われてしまった梢江は、
「ちょ、ちょ……ちょっと、それ変! 絶対に変!」
「え、そうかな」
赤面していいんだか悪いんだがわからず、とりあえずまくし立てた。
「そうよっ! 普通はもうちょっとこう、なんか、あるでしょ! 涙を飲むって変過ぎるにも
程があるわよ! そういう場合だったらほら、刃牙君が苦しそうに眠ってる時、その寝顔
を見たわたしが……とか、ってああもうっ、わかんないの?」
「え、えーと。ああそうだ、俺も友人として昻昇さんの為に、特訓を手伝わなきゃ。んじゃ」
「あ、こら待ちなさいっ! まだ話は終わってないっっ!」
言葉、顔。そして文字通り「授かった」もの。鎬流正統の拳を振るうのは、この地上に
自分ひとりしかいないのだ。
いつか次代へ譲る日の為に、昻昇はそれを磨き続け、戦い続けている。師の教えに従って。
ドラエもまた、同じように。
「わたくしなどに、勿体無くも昻昇様の本気の技を、鎬流の奥義をご披露して下さり、
本当に良い修行をさせて頂きました」
ドラエは正座し、昻昇に三つ指着いて深々と一礼する。それから立ち上がり、膝やスカートに
ついた泥を払ってから、観戦していた刃牙たちにも頭を下げて……
「ま、待ってくれ!」
昻昇は慌てて立ち上がり、去りかけたドラエを呼び止めた。
「なんだかその、ちょっと褒めてくれたような気もするんだが、なんだかんだ言って俺は、
あんたに負けたんだ。全力で、本気で、負けた。言い訳のしようもない。だからこそ、悔しい。
悔しいから、その、」
振り向いたドラエから注がれる視線が熱い。熱く感じられてしまってどうしようもない。
だが、意を決して昂昇は、その視線に自分の目をしっかりと向けた。
「また俺と会って……試合、してくれるか?」
二人の目が合う。ドラエは間を空けずに答えた。
「はい、喜んで。その時までに、わたくしももっと腕を上げておきます」
今は完全に鋭さの消えた、心の底からの柔らかな暖かな微笑み。
そんなとびっきりの笑顔を昻昇の胸に残して、明道流柔術継承者・ドラエ=タチバナ=ドリャーエフ
は去っていった。
昻昇たちはしばし、言葉もなくドラエのいなくなった空間を眺め続けていて。
やがて、最初に口を開いたのは紅葉だった。
「ははっ、なんだなんだ。我々四人、随分いろいろ大騒ぎしてしまったが、終わってしまえば
どうだ。文句のつけようのないハッピーエンドじゃないか。良かったな昻昇」
ぽん、と昻昇の肩に紅葉の手が置かれた。
その昻昇の肩が、震えている。小さくではなく、結構大きく。
「昻昇?」
「……俺のことを、ずっと以前から知ってた……知っててくれた……鎬流の名を、俺の名を、
俺の斬撃拳を……何度も試合を重ねてて……そして、また会って試合……また、会って……」
「お、おい昻昇?」
「こうなったら……こおおおおぉぉしちゃいられんっ! すぐに帰って特訓だ、次こそは勝つぞ!
俺はもっと強くなる、なれる、ならねばならんっ! というわけで手伝ってくれ兄さんっっ!」
昻昇はまたしても紅葉の後ろ襟を引っつかんで、半ば背負うようにして、
「わ、ちょ、おい、待て、落ち着け昻昇おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
どひゅううぅぅんと駆けて行った。砂煙の中に、紅葉の叫びだけが響いて残っている。
呆気に取られつつ、今度は梢江が首を傾げて言った。
「うぅ~ん。試合の内容とか、ドラエさんが言ってたこととかはよくわかんないけど。でも、
よーするに昻昇さんは、トーナメントで負けて落ち込んで、今日も負けて落ち込んで、
でも綺麗なおねーさんに励ましてもらって元気になった、ってことでしょ?」
刃牙の横顔に問いかける梢江。刃牙は昻昇の走り去った先を、じっと見ている。
「ああ。梢江ちゃんの言う通りだよ」
「やっぱり。つくづく、オトコって単純よねほんと。……刃牙君も、ああなの? その、
綺麗なおねーさんに励まされたら即元気というか」
梢江が、少し心配そうな声になる。刃牙は笑って、
「もちろんさ。俺だったら昻昇さん以上だよ。例えば、そうだなぁ」
梢江の方を向いて、ちょっと考えてから刃牙は言った。
「俺が未知の毒物に侵されて半死半生、どんな名医も匙を投げてしまったとする。でも、
梢江ちゃんの涙を一滴飲めば、それだけで毒は全部吹っ飛ぶだろうな。俺なら」
「……え」
じっと見つめられてそんなことを言われてしまった梢江は、
「ちょ、ちょ……ちょっと、それ変! 絶対に変!」
「え、そうかな」
赤面していいんだか悪いんだがわからず、とりあえずまくし立てた。
「そうよっ! 普通はもうちょっとこう、なんか、あるでしょ! 涙を飲むって変過ぎるにも
程があるわよ! そういう場合だったらほら、刃牙君が苦しそうに眠ってる時、その寝顔
を見たわたしが……とか、ってああもうっ、わかんないの?」
「え、えーと。ああそうだ、俺も友人として昻昇さんの為に、特訓を手伝わなきゃ。んじゃ」
「あ、こら待ちなさいっ! まだ話は終わってないっっ!」
『昻昇様の本気の技を見せて頂いた……とは申し上げたものの』
帰路、ドラエは昻昇との試合を反芻していた。
『昻昇様、ご自分ではお気づきになられなかったようですね。あの紐切り、最後の最後で
拳速が鈍り、狙いも僅かに逸れてしまっていたことを』
首筋に手を当てて、改めてぞっとするドラエ。もし、技にも力にも不足のない本物の
新・紐切りであったならば、今頃自分はどうなっていたか。考えるだに恐ろしい。
結局昻昇は、ドラエ相手に全力本気の拳を向けられずじまいだったのだ。あれほど
何度も、自分自身に全力だ本気だと言い聞かせていたのにも関わらず。
そのせいで、ドラエに敗れた。
『武道家としては、褒められたことではないのでしょうけれど……』
試合中の、昻昇の真剣な瞳。新・紐切りを放った時の、決意を込めた気合い。そして
再戦を申し込む時の、不安と緊張に包まれた顔。ドラエが受けた時の、嬉しそうな頬。
「……まだ見ぬ『あの方』も、昻昇様のようにお優しい殿方だと………………いいな」
もうすぐ出会う、自らの弟子となる、次代の明道流継承者に思いを馳せて、ドラエは
少し幸せそうに呟いた。
帰路、ドラエは昻昇との試合を反芻していた。
『昻昇様、ご自分ではお気づきになられなかったようですね。あの紐切り、最後の最後で
拳速が鈍り、狙いも僅かに逸れてしまっていたことを』
首筋に手を当てて、改めてぞっとするドラエ。もし、技にも力にも不足のない本物の
新・紐切りであったならば、今頃自分はどうなっていたか。考えるだに恐ろしい。
結局昻昇は、ドラエ相手に全力本気の拳を向けられずじまいだったのだ。あれほど
何度も、自分自身に全力だ本気だと言い聞かせていたのにも関わらず。
そのせいで、ドラエに敗れた。
『武道家としては、褒められたことではないのでしょうけれど……』
試合中の、昻昇の真剣な瞳。新・紐切りを放った時の、決意を込めた気合い。そして
再戦を申し込む時の、不安と緊張に包まれた顔。ドラエが受けた時の、嬉しそうな頬。
「……まだ見ぬ『あの方』も、昻昇様のようにお優しい殿方だと………………いいな」
もうすぐ出会う、自らの弟子となる、次代の明道流継承者に思いを馳せて、ドラエは
少し幸せそうに呟いた。
ちょっとしたことで落ち込んで、いじいじと悩んだり。
そのくせ、ひょんなことでいきなり元気になったり。
キレると乱暴無比かと思いきや、その奥には捨てきれない優しさが強く残っていたり。
複雑なんだか単純なんだか、どうにもよくわからないけれど。
男ってのはそういう生き物なのかな、と。
刃牙をドタバタ追いかける梢江も、昻昇と『あの方』を思うドラエも、
この時同じことを考えていた。
そのくせ、ひょんなことでいきなり元気になったり。
キレると乱暴無比かと思いきや、その奥には捨てきれない優しさが強く残っていたり。
複雑なんだか単純なんだか、どうにもよくわからないけれど。
男ってのはそういう生き物なのかな、と。
刃牙をドタバタ追いかける梢江も、昻昇と『あの方』を思うドラエも、
この時同じことを考えていた。
「だからちょっと待て、おい、昻昇っ」
「今の俺は……今の俺は、烈海王にだって勝てるッッ!」
「今の俺は……今の俺は、烈海王にだって勝てるッッ!」