4月23日 影時間 タルタロス エントランス
承太郎の前に、S.E.E.S.メンバーが整列している。
「さて、聞いているとは思うが、お前達に話がある」
承太郎の言葉に、そろそろと下の方から手を上げ、恐る恐る順平が質問をする。
「あ、あの~。やっぱりお説教なのでございますでしょうか?」
滅茶苦茶だが、順平なりに最大に気を使った発言だった。
そんな順平の様子と、程度の差はあれど、表情を硬くしている一同を見て、
承太郎は、尊敬する年下の友人に『承太郎さんは無言のプレッシャーがあってコワイんですよ』
と言われた事を思い出し、ほんの少し、口の端を持ち上げた。
承太郎は、尊敬する年下の友人に『承太郎さんは無言のプレッシャーがあってコワイんですよ』
と言われた事を思い出し、ほんの少し、口の端を持ち上げた。
「いや、違う」
その言葉に、今まで固まっていた空気がすっと緩み、メンバーの表情も心持ち明るくなる。
「それじゃ、話って何なんですか?」
小首を傾げながら、ゆかりは承太郎に尋ねる。
その言葉に承太郎は一度ゆっくりと頷いてから話を始めた。
その言葉に承太郎は一度ゆっくりと頷いてから話を始めた。
「昨日の戦いで皆も分かったと思うが、現時点ではお前達とは力に差が有りすぎる。
これではお前達の為にならんと思ってな。・・・そこでだ。
これではお前達の為にならんと思ってな。・・・そこでだ。
俺は外れる事にする」
承太郎の言葉に、2年生達は驚きの、三年生二人は納得の表情を浮かべた。
一番ショックが大きかったのか、順平が、慌てた様子で承太郎に詰め寄る。
一番ショックが大きかったのか、順平が、慌てた様子で承太郎に詰め寄る。
「ちょっと待ったァ!外れるも何も、まだこの前一緒になったばっかじゃないっスか!
なんスかそれ!特別課外活動部辞めちゃうってことっスか!?」
なんスかそれ!特別課外活動部辞めちゃうってことっスか!?」
「落ち着かないか、伊織!空条先生の話はまだ途中だ。
君は早合点と早とちりが多くて困るな…。先生、続きをどうぞ」
君は早合点と早とちりが多くて困るな…。先生、続きをどうぞ」
承太郎と順平の間に割って入った美鶴が、順平を制し、承太郎に話の続きを求める。
「やれやれ、では続きだ。外れると言っても直接的な戦闘から一時的に外れるだけだ。
探索については、今までと同様に行う。
しかし、俺が行動を共にしちまうと、シャドウどもが尻尾を巻いて逃げちしまうだろう。
だから、お前たち3人の後方から付いていく形をとらせてもらうぜ」
探索については、今までと同様に行う。
しかし、俺が行動を共にしちまうと、シャドウどもが尻尾を巻いて逃げちしまうだろう。
だから、お前たち3人の後方から付いていく形をとらせてもらうぜ」
話を聞き終えたゆかりは、眉を寄せて承太郎に質問をする。
「え…本当に着いて来るだけ…なんですか?」
ゆかりの不安と落胆の混じりあった表情を見て、承太郎は心の中で苦笑いを浮かべる。
「いや、流石にそれでは無責任が過ぎるだろうと思ってな。
それに今は教鞭をとる立場だ。生徒を危険に晒しっぱなしと言うのも情けないだろう。
いくつか、手助けをしようと思っている」
それに今は教鞭をとる立場だ。生徒を危険に晒しっぱなしと言うのも情けないだろう。
いくつか、手助けをしようと思っている」
承太郎は、それから少し考えて、いくつかの案件を挙げた。
まず、戦闘についてのアドバイスを送ること。
幸いにしてと言うべきか、不幸にもと言うべきか、
承太郎は戦闘に対する経験が豊富だ、出来ない事は無いだろう。
次に戦闘からの逃走の補助。
これもスタープラチナなら、そう難しい事ではない。
まず、戦闘についてのアドバイスを送ること。
幸いにしてと言うべきか、不幸にもと言うべきか、
承太郎は戦闘に対する経験が豊富だ、出来ない事は無いだろう。
次に戦闘からの逃走の補助。
これもスタープラチナなら、そう難しい事ではない。
「最後に。そうだな、一回の戦闘に一度だけ、戦闘での手助けをする。
以上の事は、リーダーの天道が、桐条を通じて俺に指示してくれ。
ただし、あくまで『手助け』だと言う事を忘れるんじゃねーぜ。
あまりに頼りすぎるようだと、突っぱねるからな」
ただし、あくまで『手助け』だと言う事を忘れるんじゃねーぜ。
あまりに頼りすぎるようだと、突っぱねるからな」
承太郎は手助け、と言う事を強調した。
今の彼らはあまりに弱い。
ペルソナが成長するもの、だが彼らのペルソナは、まだ歩みを始めたばかりだ。
タルタロスは上に向かうほど強力なシャドウが出る、ならば、自分達の力で強くなって行って貰わねば困る。
今の彼らはあまりに弱い。
ペルソナが成長するもの、だが彼らのペルソナは、まだ歩みを始めたばかりだ。
タルタロスは上に向かうほど強力なシャドウが出る、ならば、自分達の力で強くなって行って貰わねば困る。
とは言え、実際は呼ばれなくとも、真に危険が迫った時は助けに行くつもりなのだが。
「と言う事にしたいんだがな、桐条、天道。
特に桐条には負担をかける事になってすまねーと思う」
特に桐条には負担をかける事になってすまねーと思う」
承太郎はすまなそうな顔をして、美鶴に向かっていった。
40歳手前の男が、半分にも満たない少女を頼りにしなければならない事を、なんとも情けなく感じていた。
40歳手前の男が、半分にも満たない少女を頼りにしなければならない事を、なんとも情けなく感じていた。
「いえ…。気になさらなくとも結構です。仲介して伝えるだけですから、さほど負担にはなりません。
それに空条先生の提案は、私達には十分すぎると思います」
それに空条先生の提案は、私達には十分すぎると思います」
美鶴の言葉に同意するように、天道もこっくりと首を上下させた。
「美鶴が敵の分析を、空条先生が戦術的な助言を、天道がそれを踏まえて指示を出すと言う事になるのか。
なかなかどうして、バランスが取れたじゃないか。これは面白くなりそうだ」
「美鶴が敵の分析を、空条先生が戦術的な助言を、天道がそれを踏まえて指示を出すと言う事になるのか。
なかなかどうして、バランスが取れたじゃないか。これは面白くなりそうだ」
「うーん、一緒に戦ってもらえないのはやっぱり残念だけど…。
でも見守っててもらえるなら、何とか平気かな」
でも見守っててもらえるなら、何とか平気かな」
復帰後の楽しみが増えたと言わんばかりの顔で笑みを浮かべる真田。
残念そうな響きを含んだ声だが、納得した様子のゆかり。
残念そうな響きを含んだ声だが、納得した様子のゆかり。
そして、必然的に先ほどテンパッた姿を見せてから、一度も発言していない伊織順平に視線が集まる。
「わーった!分りましたよ!俺も賛成ッスよ!
っつーか、ここで駄々こねたら空気詠み人知らずにも程があるっしょ!?」
っつーか、ここで駄々こねたら空気詠み人知らずにも程があるっしょ!?」
「なによ、空気詠み人知らずって。馬鹿じゃないの?…てか馬鹿じゃないの?」
「バカって言うなーっ!っつか2回も言うな!」
ゆかりと順平の即席ながら見事な掛け合い漫才。
先程までの空気とのあまりの落差に、誰とも無しに笑いがこぼれ、波紋の様に広がっていった。
ひとしきり笑った後で、美鶴が、空気を切り替えるようにパチンと手を打った。
先程までの空気とのあまりの落差に、誰とも無しに笑いがこぼれ、波紋の様に広がっていった。
ひとしきり笑った後で、美鶴が、空気を切り替えるようにパチンと手を打った。
「さて!そろそろ探索に移るぞ!今日のアタックも任せたぞ、リーダー?」
そう言って天道に問いかけるような視線を向ける。
「…任せてください」
天道は言葉は少ないながらも、力強く返した。
「さっすが、リーダー。頼りになるぅ!」
「茶化すなっての!」
「茶化すなっての!」
いつも通りの順平とそれを諌めるゆかり。
承太郎は横目で見てから、エントランスの中央から伸びる階段に向き直る。
承太郎は横目で見てから、エントランスの中央から伸びる階段に向き直る。
「さて、それじゃ行くぜ」
こうして今宵も、S.E.E.S.のメンバーはタルタロスという名のシャドウの巣窟に足を踏み入れた。