「なんじゃ貴様はー!」
ブサイク男の闖入は、江田島の怒りにいっそう火をつけた。ちゃんと入り口があ
るのにわざわざ窓から入ってくるなど、普通の客はまずやらない。
「貴様は客かー!」
絶対に違うと思うが、江田島は一応聞いてみた。
「押忍! 自分の名前は田沢であります!」
ぜんぜん質問の答えになっていない。江田島は田沢を客ではないと決めた。
「客じゃないのでさよーならー!」
「ゴバルスキー!」
田沢は江田島の張り手で、入り口のドアから外へぶっ飛んでいった。その田沢と
入れ違いに、別の男が入ってきた。
「塾長ー! 松尾でありますー!」
やはり汚い学ランを着て、クリームパンを3つ頭にくっつけたような髪型をして
いる。とてもカッコ悪い。しかしこいつはちゃんと入り口から入ってきた。客かも
しれない。
「貴様は客かー!」
「押忍! 自分は男塾の塾生であります!」
「いちばん奥の席にどーぞー!」
江田島は松尾の襟首をつかんでぶん投げた。松尾は店の奥まで飛んでいって、そ
のまた奥の窓から外に落ちた。男塾という塾など、江田島は聞いたこともない。し
かもそこの塾生だからなんだと言うのか。江田島にはさっぱり訳が分からない。
「塾長ー! ここが男塾ですかー!」
また別の学ランが出現した。江田島のイライラは募るばかりだ。
「うがー! 男塾ってなんじゃー!」
「塾長ー!」
「塾長ー!」
「塾長ー!」
「塾長ー! ズゴゴゴゴー!」
入り口から、窓から、天井から、次々と学ラン姿の男が沸いて出た。最後のズゴ
ゴゴゴーは店の床を突き破って生えてきたのだが、あまりに頭が大きすぎて顔の上
半分しか見えない。田沢と松尾も戻ってきた。
「ふーん。これで全員?」
江田島はソファに横になって、コップ酒を呑みながら聞いた。意味不明の度が過
ぎて、かえって落ち着いてしまった。
「押忍! 全員であります!」
田沢が答えた。どうやら田沢がこの集団の代表らしい。
「あっそ。ところでワシ店長なんだけど、なんで塾長って言うの? あと男塾って
なに?」
「押忍! あちょー!」
いっぺんに2つの質問をしたので、田沢の脳みその限界を超えた。替わりに床の
デカい男が答えた。
「真の男を養成する男塾というのを作って、アンタがそこの塾長になる。オレ達は
塾生としてアンタについていく。そういう誓いを交わしたハズだが覚えてないか」
「あーん?」
まったく全然覚えていない。江田島はイカの燻製をかみちぎりながら、これまで
の記憶をたどってみた。宇宙。地球。恐竜。北京原人。人間。江田島オギャア。ガ
ハハハ。初恋。筋トレ。東大。戦争。野グソ。ノースウエスト。野グソ。。アカギ。
セワシカレーおいちいおいちい。
「塾長! そこであります!」
田沢は江田島のおでこを指さした。「。。」という文字が浮かんでいる。そうい
えば野グソとアカギの間に「。」が2つあった。
「ほほー。ここか」
江田島はおでこをさすりながら、対局を見物していたギャラリーの一人を呼んだ。
「そこのお前、こっちゃこい」
「ボクすかー」
胸に7粒のトウモロコシをつけた男が歩いてきた。ケンシロウといって、普段は
居酒屋の店員をやっている。諸般の事情でゾンビになった。
「写せ」
「ほわたー!」
ケンシロウは右手の人差し指と中指を、江田島のおでこの「。」と「。」の間に
突っ込んだ。そして壁の方を向いて、両目のプロジェクターで江田島の記憶を再生
した。ゾンビなのでこういう事ができる。
「ガハハハハー!」
江田島が日本酒の瓶を持って笑っている。どこかのキャバレーらしい。江田島の
記憶なのに江田島が写っているのは、自分が大好きだからだ。
「お前ら全員ワシの家来じゃー!」
「江田島先生、バンザーイ!」
田沢や松尾ら、学ラン軍団もいる。江田島と一緒になって、浴びるように酒を呑
んで大騒ぎしている。頭のデカい大男も、やっぱり顔の上半分だけだして鼻から酒
を呑んでいる。
「ワシ、塾つくる! お前らみたいなバカをいっぱい集めて、戦争ゴッコとか殺し
合いとかして男の中の男にしてやる! 名づけて男塾じゃ!」
「男塾バンザーイ!」
「江田島塾長バンザーイ!」
みんなで輪になってバンザイをしているところに店長がやってきて、江田島に伝
票を渡した。江田島は伝票を見て、黙ってテーブルの上に置いた。
「まずはこのクソ店を血祭りじゃー!」
「イエス塾長ー!」
そこで映像は終わった。江田島はすべてを思い出した。
「おー。あの時の貴様らか」
「そうであります塾長!」
田沢は嬉しそうに言った。そしてアカギをギロリと睨みながら続けた。
「だからそこのクソガキがどんなに汚い麻雀を打とうと、塾長には負けてほしくな
いんであります! 塾長が負けたら、自分は死ぬまで童貞を貫く覚悟であります!」
「そこなんだが、一つ確認したいことがある」
田沢の童貞は顔を見れば分かる。そうではなくて、さっきの映像の事だった。
「巻き戻せ」
「はいっすー」
ケンシロウは江田島のおでこに刺した指をグリグリした。江田島たちがバンザイ
をしたところまで巻き戻った。
「アップにせい」
画面の端っこに写っていた男を真ん中に持ってきて拡大した。アカギだった。江
田島の後ろの席に座っている。
「再生せい」
「せいせいせいっす」
江田島がバンザイをした時に、江田島のゲンコツがアカギの後頭部に当たった。
弾みでアカギのビールがこぼれてズボンが濡れた。アカギは無表情で江田島を見て
いる。ずっとずっと見ている。江田島はここで映像を止めた。
「アカギくん。聞きたいことがある」
「ククク……」
聞いた江田島は落ち着き払っている。聞かれたアカギも笑っている。
「アカギくんがワシを目の仇にするのは、この時の恨みか?」
「ククク……」
「はいならククク、いいえならチンピョロスポーンと答えなさい」
「ククク……」
「器が小さーい!」
江田島の怒りに再び火がついた。ソファから飛び上がって、一人クルクルチェン
ジで雀卓に舞い戻った。
「あの場でワシに文句を言えばすむことを、その時はなーんも言えずに今になって
みじめったらしく仕返しか! 貴様のようなヤツは男塾には絶対入れてやらん!」
「誘われたって入らん」
「開き直るなー!」
「あの場で文句を言ったら、お前は素直に謝ったか」
「言い訳するなー!」
アカギの戯言など、煮えたぎる江田島の耳には一切入らない。江田島はアカギの
顔よりも大きく口をひらいて叫んだ。
「貴様の腐った性根を叩き直してやるわい! そう!」
後ろの学ラン軍団を一度見て、またアカギに向き直った。
「男塾全員の力で!」
自分一人では闘わないらしい。東一局三本場、親はアカギ。7巡目、江田島ツモ。
「ツモ切りじゃー!」
「ロン」
ブサイク男の闖入は、江田島の怒りにいっそう火をつけた。ちゃんと入り口があ
るのにわざわざ窓から入ってくるなど、普通の客はまずやらない。
「貴様は客かー!」
絶対に違うと思うが、江田島は一応聞いてみた。
「押忍! 自分の名前は田沢であります!」
ぜんぜん質問の答えになっていない。江田島は田沢を客ではないと決めた。
「客じゃないのでさよーならー!」
「ゴバルスキー!」
田沢は江田島の張り手で、入り口のドアから外へぶっ飛んでいった。その田沢と
入れ違いに、別の男が入ってきた。
「塾長ー! 松尾でありますー!」
やはり汚い学ランを着て、クリームパンを3つ頭にくっつけたような髪型をして
いる。とてもカッコ悪い。しかしこいつはちゃんと入り口から入ってきた。客かも
しれない。
「貴様は客かー!」
「押忍! 自分は男塾の塾生であります!」
「いちばん奥の席にどーぞー!」
江田島は松尾の襟首をつかんでぶん投げた。松尾は店の奥まで飛んでいって、そ
のまた奥の窓から外に落ちた。男塾という塾など、江田島は聞いたこともない。し
かもそこの塾生だからなんだと言うのか。江田島にはさっぱり訳が分からない。
「塾長ー! ここが男塾ですかー!」
また別の学ランが出現した。江田島のイライラは募るばかりだ。
「うがー! 男塾ってなんじゃー!」
「塾長ー!」
「塾長ー!」
「塾長ー!」
「塾長ー! ズゴゴゴゴー!」
入り口から、窓から、天井から、次々と学ラン姿の男が沸いて出た。最後のズゴ
ゴゴゴーは店の床を突き破って生えてきたのだが、あまりに頭が大きすぎて顔の上
半分しか見えない。田沢と松尾も戻ってきた。
「ふーん。これで全員?」
江田島はソファに横になって、コップ酒を呑みながら聞いた。意味不明の度が過
ぎて、かえって落ち着いてしまった。
「押忍! 全員であります!」
田沢が答えた。どうやら田沢がこの集団の代表らしい。
「あっそ。ところでワシ店長なんだけど、なんで塾長って言うの? あと男塾って
なに?」
「押忍! あちょー!」
いっぺんに2つの質問をしたので、田沢の脳みその限界を超えた。替わりに床の
デカい男が答えた。
「真の男を養成する男塾というのを作って、アンタがそこの塾長になる。オレ達は
塾生としてアンタについていく。そういう誓いを交わしたハズだが覚えてないか」
「あーん?」
まったく全然覚えていない。江田島はイカの燻製をかみちぎりながら、これまで
の記憶をたどってみた。宇宙。地球。恐竜。北京原人。人間。江田島オギャア。ガ
ハハハ。初恋。筋トレ。東大。戦争。野グソ。ノースウエスト。野グソ。。アカギ。
セワシカレーおいちいおいちい。
「塾長! そこであります!」
田沢は江田島のおでこを指さした。「。。」という文字が浮かんでいる。そうい
えば野グソとアカギの間に「。」が2つあった。
「ほほー。ここか」
江田島はおでこをさすりながら、対局を見物していたギャラリーの一人を呼んだ。
「そこのお前、こっちゃこい」
「ボクすかー」
胸に7粒のトウモロコシをつけた男が歩いてきた。ケンシロウといって、普段は
居酒屋の店員をやっている。諸般の事情でゾンビになった。
「写せ」
「ほわたー!」
ケンシロウは右手の人差し指と中指を、江田島のおでこの「。」と「。」の間に
突っ込んだ。そして壁の方を向いて、両目のプロジェクターで江田島の記憶を再生
した。ゾンビなのでこういう事ができる。
「ガハハハハー!」
江田島が日本酒の瓶を持って笑っている。どこかのキャバレーらしい。江田島の
記憶なのに江田島が写っているのは、自分が大好きだからだ。
「お前ら全員ワシの家来じゃー!」
「江田島先生、バンザーイ!」
田沢や松尾ら、学ラン軍団もいる。江田島と一緒になって、浴びるように酒を呑
んで大騒ぎしている。頭のデカい大男も、やっぱり顔の上半分だけだして鼻から酒
を呑んでいる。
「ワシ、塾つくる! お前らみたいなバカをいっぱい集めて、戦争ゴッコとか殺し
合いとかして男の中の男にしてやる! 名づけて男塾じゃ!」
「男塾バンザーイ!」
「江田島塾長バンザーイ!」
みんなで輪になってバンザイをしているところに店長がやってきて、江田島に伝
票を渡した。江田島は伝票を見て、黙ってテーブルの上に置いた。
「まずはこのクソ店を血祭りじゃー!」
「イエス塾長ー!」
そこで映像は終わった。江田島はすべてを思い出した。
「おー。あの時の貴様らか」
「そうであります塾長!」
田沢は嬉しそうに言った。そしてアカギをギロリと睨みながら続けた。
「だからそこのクソガキがどんなに汚い麻雀を打とうと、塾長には負けてほしくな
いんであります! 塾長が負けたら、自分は死ぬまで童貞を貫く覚悟であります!」
「そこなんだが、一つ確認したいことがある」
田沢の童貞は顔を見れば分かる。そうではなくて、さっきの映像の事だった。
「巻き戻せ」
「はいっすー」
ケンシロウは江田島のおでこに刺した指をグリグリした。江田島たちがバンザイ
をしたところまで巻き戻った。
「アップにせい」
画面の端っこに写っていた男を真ん中に持ってきて拡大した。アカギだった。江
田島の後ろの席に座っている。
「再生せい」
「せいせいせいっす」
江田島がバンザイをした時に、江田島のゲンコツがアカギの後頭部に当たった。
弾みでアカギのビールがこぼれてズボンが濡れた。アカギは無表情で江田島を見て
いる。ずっとずっと見ている。江田島はここで映像を止めた。
「アカギくん。聞きたいことがある」
「ククク……」
聞いた江田島は落ち着き払っている。聞かれたアカギも笑っている。
「アカギくんがワシを目の仇にするのは、この時の恨みか?」
「ククク……」
「はいならククク、いいえならチンピョロスポーンと答えなさい」
「ククク……」
「器が小さーい!」
江田島の怒りに再び火がついた。ソファから飛び上がって、一人クルクルチェン
ジで雀卓に舞い戻った。
「あの場でワシに文句を言えばすむことを、その時はなーんも言えずに今になって
みじめったらしく仕返しか! 貴様のようなヤツは男塾には絶対入れてやらん!」
「誘われたって入らん」
「開き直るなー!」
「あの場で文句を言ったら、お前は素直に謝ったか」
「言い訳するなー!」
アカギの戯言など、煮えたぎる江田島の耳には一切入らない。江田島はアカギの
顔よりも大きく口をひらいて叫んだ。
「貴様の腐った性根を叩き直してやるわい! そう!」
後ろの学ラン軍団を一度見て、またアカギに向き直った。
「男塾全員の力で!」
自分一人では闘わないらしい。東一局三本場、親はアカギ。7巡目、江田島ツモ。
「ツモ切りじゃー!」
「ロン」
八八八(11888)456888
アカギのロンだった。
「クルクルチェーンジ!」
江田島と田沢と松尾が飛んだ。つられて飛んだのはのび太とドラえもんとギャラ
リーのKだった。
「うへー!」
Kとはキアヌ・リーブスの略である。ノースウエストにはのび太の知り合いが全
員集まっているので、当然キアヌもそこにいた。Kは松尾と入れ替わって、学ラン
の群れの中に着地した。
「グッバイ!」
Kは学ランにバットで打たれて星くずになった。東一局四本場、親はまだアカギ。
「ロン」
「クルクルチェーンジ!」
江田島と田沢と松尾が飛んだ。つられて飛んだのはのび太とドラえもんとギャラ
リーのKだった。
「うへー!」
Kとはキアヌ・リーブスの略である。ノースウエストにはのび太の知り合いが全
員集まっているので、当然キアヌもそこにいた。Kは松尾と入れ替わって、学ラン
の群れの中に着地した。
「グッバイ!」
Kは学ランにバットで打たれて星くずになった。東一局四本場、親はまだアカギ。
「ロン」
四五六七八九22 (9999)←暗カン 東東東東←暗カン
アカギ、江田島からロン。ドラは東と九筒だった。
「クルクルチェーンジ!」
江田島と田沢と松尾、そして変なマジシャンみたいな男が飛んだ。のび太とドラ
えもんとのび太のパパとママが飛んだ。アカギがピクリと体を震わせた。
「三人で仲良く暮らそうー!」
パパとママも学ランに放り出されて空に消えた。パパは古びたダッチワイフを抱
えていた。このダッチワイフも三人の中に入っているらしい。
「ワシは負けんぞー!」
江田島はアカギに振り込み続けた。しかしそのたびにクルクルチェンジで危機を
脱した。点棒は他の卓から持ってきたので全然減っていない。アカギの額から一筋
の汗がしたたり落ちた。
東一局十五本場、親はずっとアカギ。ギャラリーは誰も残っておらず、卓の四人
と学ラン軍団だけになっていた。
「ロン……」
アカギ、江田島からロン。
「クルクルチェーンジ!」
江田島と田沢と松尾、そして変なマジシャンみたいな男が飛んだ。のび太とドラ
えもんとのび太のパパとママが飛んだ。アカギがピクリと体を震わせた。
「三人で仲良く暮らそうー!」
パパとママも学ランに放り出されて空に消えた。パパは古びたダッチワイフを抱
えていた。このダッチワイフも三人の中に入っているらしい。
「ワシは負けんぞー!」
江田島はアカギに振り込み続けた。しかしそのたびにクルクルチェンジで危機を
脱した。点棒は他の卓から持ってきたので全然減っていない。アカギの額から一筋
の汗がしたたり落ちた。
東一局十五本場、親はずっとアカギ。ギャラリーは誰も残っておらず、卓の四人
と学ラン軍団だけになっていた。
「ロン……」
アカギ、江田島からロン。
一一 九九九九←暗カン (9999)←暗カン 1111←暗カン
9999←暗カン
9999←暗カン
「貴様ら、根性入れろー!」
「うおー!」
「スーパークルクルチェーンジ!」
江田島と学ラン軍団全員が飛んだ。のび太もドラえもんも、アカギも飛んだ!
「クククー!」
こらえにこらえていたクルクルチェンジだが、ついにつられた。アカギは着地し
て、倒れそうになるのをかろうじてふんばって言った。
「順位を……教えろ……」
「そんなもんは死ぬほどどうでもいいわー!」
江田島は店の雀卓すべてを窓から投げ捨てて、すぐ後に大量の手榴弾を落とした。
こちらを振り向いた江田島の背後ですさまじい量の爆音と光があふれて、江田島の
姿は光に溶け込んで見えなくなった。勝負の女神が、江田島を選んだ瞬間だった。
「ククク……」
アカギはゆっくりと倒れた。のび太とドラえもんはなんかもうバカらしくなって
家に帰った。
「勝ったー!」
「塾長が勝ったー!」
学ラン軍団の勝利の凱歌と共に夜が明けた。江田島は紋付の羽織を脱いでアカギ
にかけてやって、そして学ラン軍団に言った。
「ノースウエストは店じまいじゃ。今日からワシは、男塾の塾長になる!」
「おー!」
「ワシが男塾塾長、江田島平八であーる!」
「江田島塾長、バンザーイ!」
「いくぞ貴様ら! 邪鬼もいいか!」
「押忍」
ここまでクルクルチェンジに参加しなかった、頭のデカい大男が答えた。
「ファイナルクルクルチェーンジ!」
江田島塾長と男塾塾生は一斉に大空へ飛び立った。邪鬼もクルクルチェンジに参
加したので、ノースウエストのビルは床も壁もすべてが砕けて崩壊した。江田島た
ちの行く手には空がある。太陽がある。果てなき大地がある。そして、汲めども尽
きぬ男たちの夢とロマンがある。
「うおー!」
「スーパークルクルチェーンジ!」
江田島と学ラン軍団全員が飛んだ。のび太もドラえもんも、アカギも飛んだ!
「クククー!」
こらえにこらえていたクルクルチェンジだが、ついにつられた。アカギは着地し
て、倒れそうになるのをかろうじてふんばって言った。
「順位を……教えろ……」
「そんなもんは死ぬほどどうでもいいわー!」
江田島は店の雀卓すべてを窓から投げ捨てて、すぐ後に大量の手榴弾を落とした。
こちらを振り向いた江田島の背後ですさまじい量の爆音と光があふれて、江田島の
姿は光に溶け込んで見えなくなった。勝負の女神が、江田島を選んだ瞬間だった。
「ククク……」
アカギはゆっくりと倒れた。のび太とドラえもんはなんかもうバカらしくなって
家に帰った。
「勝ったー!」
「塾長が勝ったー!」
学ラン軍団の勝利の凱歌と共に夜が明けた。江田島は紋付の羽織を脱いでアカギ
にかけてやって、そして学ラン軍団に言った。
「ノースウエストは店じまいじゃ。今日からワシは、男塾の塾長になる!」
「おー!」
「ワシが男塾塾長、江田島平八であーる!」
「江田島塾長、バンザーイ!」
「いくぞ貴様ら! 邪鬼もいいか!」
「押忍」
ここまでクルクルチェンジに参加しなかった、頭のデカい大男が答えた。
「ファイナルクルクルチェーンジ!」
江田島塾長と男塾塾生は一斉に大空へ飛び立った。邪鬼もクルクルチェンジに参
加したので、ノースウエストのビルは床も壁もすべてが砕けて崩壊した。江田島た
ちの行く手には空がある。太陽がある。果てなき大地がある。そして、汲めども尽
きぬ男たちの夢とロマンがある。