「で、どうするんです?
いくらなんでも殺されすぎだ」
いくらなんでも殺されすぎだ」
うすく低く振動音が響く室内には、青年と月顔の魔人、そして巨大な棺があるだけだった。
「むーん。
まぁ、ver.1だ。予想の範囲さ。非聖闘士への対抗戦力としては申し分ない。
さて、どうだね?体調のほうは?」
まぁ、ver.1だ。予想の範囲さ。非聖闘士への対抗戦力としては申し分ない。
さて、どうだね?体調のほうは?」
棺に寄りかかるようにして佇んでいるのは、月顔の魔人だ。
ことさら爽やかに、楽しげに、それでいて途轍もない狂気をひめた彼の言葉に答えたのは、
巨大な棺だった。
ことさら爽やかに、楽しげに、それでいて途轍もない狂気をひめた彼の言葉に答えたのは、
巨大な棺だった。
「はhaハ、サいKOゥ…、sa。
iたミでヰQisawだ
すマ乃ne、ま、だ少し、ああ、これでいいか?
最高だ、実にいい、実にいい気分だよ、ムーン・フェイス君。
痛覚こそが今の私の最大の喜びさ」
iたミでヰQisawだ
すマ乃ne、ま、だ少し、ああ、これでいいか?
最高だ、実にいい、実にいい気分だよ、ムーン・フェイス君。
痛覚こそが今の私の最大の喜びさ」
雑音まじりの機会音声が調整され、しわがれた老人の声が響く。
巧妙に偽装されているが、よくみれば男の頭部と胸部が機械部品で覆われているのがわかる。
彼の頭部と胸部は、直接つながっていないのだ。
巧妙に偽装されているが、よくみれば男の頭部と胸部が機械部品で覆われているのがわかる。
彼の頭部と胸部は、直接つながっていないのだ。
「痛み以外すべてピンボケしてるだけだろう?
かつての大戦士もこうなっては、ね」
そんなざまの老人に、青年は嘲笑混じりの声色でいう。
僅かばかりの畏怖を隠しながら。
かつての大戦士もこうなっては、ね」
そんなざまの老人に、青年は嘲笑混じりの声色でいう。
僅かばかりの畏怖を隠しながら。
「時の翁というのは残酷で公平さ。
若さを憎み、美を疎み、そして過去と今と未来を嫌う。
凡てが劣化して砂になっていくことを望んでいるのさ。
王権を息子に奪われて以来ずっと」
若さを憎み、美を疎み、そして過去と今と未来を嫌う。
凡てが劣化して砂になっていくことを望んでいるのさ。
王権を息子に奪われて以来ずっと」
焦点のあっていない、ガラス玉のような瞳の奥にほの暗い情熱が燈る。
「むーん。
ピット・アーセナル君、君もあと半世紀もすれば立派な老人さ。
老いも病も好ましい伴侶ではないと、わかっているのだろう」
ピット・アーセナル君、君もあと半世紀もすれば立派な老人さ。
老いも病も好ましい伴侶ではないと、わかっているのだろう」
「ふん、当たり前だ。
だが、その結果がその身体か?その化け物か?
それ以外があるのならそれを選ぶだろうさ」
だが、その結果がその身体か?その化け物か?
それ以外があるのならそれを選ぶだろうさ」
ギリシア・首都アテネはるか上空をゆっくりと円を描いて飛ぶ巨大な爆撃機の中で、
彼らは談笑するかのように物騒な話を続けていた。
青年の皮肉気な調子は、彼らになんの痛痒も生まない。
老いてはいるものの、頑健な肉体をもった男性の肉体は、ほぼ完全に機械の棺の中だった。
右腕がかろうじて自由になっているが、左腕は上腕の中ほどから機械部品に飲まれている。
胸の下、横隔膜のあったあたりから完全に人口部品で代用されているが、
実際には彼本来の肉体はごくわずかだ。
皮膚色のカバーをはがしてしまえば人工肋骨の中に機械的に代用された心臓が、
脳へと血液を送り込むべく脈打っているのがみえるだろう。
回り込んでみれば彼の背骨部分の脊髄に多目的チューブを直接繋げる為のジャックがあるのがわかる。
彼の名は、アルトリウス・ファスケス。
かつてヴィクターと並び双璧と称された戦士だ。
ヴィクター事件の当事者の一人であり、極東へとヴィクターを追い詰めながらも捕縛に失敗し、死んだはずだった。
しかし、当時の錬金戦団はヴィクターに対抗できるほどの戦士はなく。
また同時に、大幅に減少した戦士の確保を理由に、彼をそのまま死なせる事を惜しみ、
錬金戦団の総力を上げた蘇生手術の末に、こうして命をつなげたのである。
以来百年、彼の肉体は常に何らかの形で人の手が加えられ続けている。
結果、彼の肉体で手の入っていない器官は存在せず、脳ですら外科的措置が加えられており、
皮肉にも脳外科学会の進歩に一役買っている。
彼らは談笑するかのように物騒な話を続けていた。
青年の皮肉気な調子は、彼らになんの痛痒も生まない。
老いてはいるものの、頑健な肉体をもった男性の肉体は、ほぼ完全に機械の棺の中だった。
右腕がかろうじて自由になっているが、左腕は上腕の中ほどから機械部品に飲まれている。
胸の下、横隔膜のあったあたりから完全に人口部品で代用されているが、
実際には彼本来の肉体はごくわずかだ。
皮膚色のカバーをはがしてしまえば人工肋骨の中に機械的に代用された心臓が、
脳へと血液を送り込むべく脈打っているのがみえるだろう。
回り込んでみれば彼の背骨部分の脊髄に多目的チューブを直接繋げる為のジャックがあるのがわかる。
彼の名は、アルトリウス・ファスケス。
かつてヴィクターと並び双璧と称された戦士だ。
ヴィクター事件の当事者の一人であり、極東へとヴィクターを追い詰めながらも捕縛に失敗し、死んだはずだった。
しかし、当時の錬金戦団はヴィクターに対抗できるほどの戦士はなく。
また同時に、大幅に減少した戦士の確保を理由に、彼をそのまま死なせる事を惜しみ、
錬金戦団の総力を上げた蘇生手術の末に、こうして命をつなげたのである。
以来百年、彼の肉体は常に何らかの形で人の手が加えられ続けている。
結果、彼の肉体で手の入っていない器官は存在せず、脳ですら外科的措置が加えられており、
皮肉にも脳外科学会の進歩に一役買っている。
「錬金術、人が神の摂理に挑んだ無謀の軌跡だ。
その軌跡の中から、科学が生まれ、こうして今の文明の発展がある…。
すばらしいとは思わないのかね?
人間とは、ここまでのことができるのだ。
…ただの老人をここまで生き延びさせる事ができるのだ」
その軌跡の中から、科学が生まれ、こうして今の文明の発展がある…。
すばらしいとは思わないのかね?
人間とは、ここまでのことができるのだ。
…ただの老人をここまで生き延びさせる事ができるのだ」
機械的に合成された声の向こうに滲む狂喜、そう、この老人は確かに歓喜していた、に、
ピット・アーセナルは怯んだ。
ピット・アーセナルは怯んだ。
「…詭弁だろ?」
辛うじてそれだけ吐くと、彼は意識を窓の外にやる。
はるかかなたの地上には、今この老人のクローン体が戦闘を行っているのだ。
ピット・アーセナルの武装錬金は「工廠」。
名称をクリエーション・メイトリクス。
発動状態では最低でも八畳間ほどのスペースをとり、最大稼動状態では東京ドーム5個分にも相当する超ド級武装練金である。
その機能は武器・兵器であるなら何であろうとも完全に模倣複製し、まったく同一のものを大量生産すること。
コピー対象に無機物有機物の違いはなく、完全武装の兵士さえも完全に複製することができるのだ。
戦力不足に嘆く錬金戦団欧州総本部にはまたとない福音と期待された武装錬金であったが、
しかし、その複製体には致命的な欠点が存在した。
複製体が高等生物、つまり人間である場合、クローンとオリジナルが完全に同一の脳をもつがため、共鳴を起こしてしまう。
具体的に言えば、幻覚症状や幻肢痛、フラッシュバック、頭痛や強迫神経症などである。
常に強いストレスに晒されることになるため、被験者の脳は耐え切れず、発狂ないし精神崩壊を起こしてしまうのだ。
これを脳共鳴という。
発狂した兵士しか生み出せないのなら意味はない。
結果、彼の武装錬金はお蔵入りを余儀なくされた。
いくら武器が増えたところで、使う人間がいなければ意味はなく、
そのうえ、彼の武装錬金は未発動の核金そのものを武器として認識しない。
発動状態の武装練金と発現者がセットでなければなぜか量産できなかったことも災いした。
錬金戦団の期待は大きかっただけ、その絶望もおおきかった。
そして、ピット・アーセナルという人間は、錬金戦団から捨てられたに等しかった。
以来十年、彼は有能なバックアップスタッフとして働いてきた、表向きだけは。
その心中に抱えた憎悪は決して消えることなく燃え続けた。
結果、彼がサポートに当たった戦士チームは事故や、チーム間での不和による負傷といった事例が多発する事になる。
事件事態は非常に巧妙に偽装されており、調査は難航したが、調査部によって明かにされた事例の中には、
ちょっとした行き違いが原因であった諍いがピット・アーセナルの介入により設けられた仮初の和解によって
消えることなく燻り、煽り立てられ、その結果としてホムンクルス討伐任務中にも関わらず
チーム同士で武装錬金をもちいた私闘を演じ、5人編成チーム中三名死亡といった痛ましいものも存在した。
その内二名は兄弟同然にして育った仲であったという。
錬金戦団なぞ、ホムンクルスに食われてしまえ。そういった自暴自棄の感情に焼き尽くされた彼が引き起こしていた。
ムーン・フェイスは彼のおぞましい精神に注目した。
戦団にとっては獅子身中の虫であるが、戦団の実権を掌握し、対ヴィクター、
否、最終的な目標として対聖闘士兵器を生み出さんと画策している「彼ら」からしてみれば、
これほど有益な武装錬金術は存在しない。
類は友を呼ぶとでもいおうか。
ピット・アーセナル本人も、EU各国の戦団の連携を絶つという非常に重大かつ遠大な任務を、
「彼ら」自身が手をつける以前から効率よく秘密裏に、かつ効果的に行っていたのだ。
皮肉しか吐かない男だとしても、必要な駒ならば使うのが「彼ら」だ。
はるかかなたの地上には、今この老人のクローン体が戦闘を行っているのだ。
ピット・アーセナルの武装錬金は「工廠」。
名称をクリエーション・メイトリクス。
発動状態では最低でも八畳間ほどのスペースをとり、最大稼動状態では東京ドーム5個分にも相当する超ド級武装練金である。
その機能は武器・兵器であるなら何であろうとも完全に模倣複製し、まったく同一のものを大量生産すること。
コピー対象に無機物有機物の違いはなく、完全武装の兵士さえも完全に複製することができるのだ。
戦力不足に嘆く錬金戦団欧州総本部にはまたとない福音と期待された武装錬金であったが、
しかし、その複製体には致命的な欠点が存在した。
複製体が高等生物、つまり人間である場合、クローンとオリジナルが完全に同一の脳をもつがため、共鳴を起こしてしまう。
具体的に言えば、幻覚症状や幻肢痛、フラッシュバック、頭痛や強迫神経症などである。
常に強いストレスに晒されることになるため、被験者の脳は耐え切れず、発狂ないし精神崩壊を起こしてしまうのだ。
これを脳共鳴という。
発狂した兵士しか生み出せないのなら意味はない。
結果、彼の武装錬金はお蔵入りを余儀なくされた。
いくら武器が増えたところで、使う人間がいなければ意味はなく、
そのうえ、彼の武装錬金は未発動の核金そのものを武器として認識しない。
発動状態の武装練金と発現者がセットでなければなぜか量産できなかったことも災いした。
錬金戦団の期待は大きかっただけ、その絶望もおおきかった。
そして、ピット・アーセナルという人間は、錬金戦団から捨てられたに等しかった。
以来十年、彼は有能なバックアップスタッフとして働いてきた、表向きだけは。
その心中に抱えた憎悪は決して消えることなく燃え続けた。
結果、彼がサポートに当たった戦士チームは事故や、チーム間での不和による負傷といった事例が多発する事になる。
事件事態は非常に巧妙に偽装されており、調査は難航したが、調査部によって明かにされた事例の中には、
ちょっとした行き違いが原因であった諍いがピット・アーセナルの介入により設けられた仮初の和解によって
消えることなく燻り、煽り立てられ、その結果としてホムンクルス討伐任務中にも関わらず
チーム同士で武装錬金をもちいた私闘を演じ、5人編成チーム中三名死亡といった痛ましいものも存在した。
その内二名は兄弟同然にして育った仲であったという。
錬金戦団なぞ、ホムンクルスに食われてしまえ。そういった自暴自棄の感情に焼き尽くされた彼が引き起こしていた。
ムーン・フェイスは彼のおぞましい精神に注目した。
戦団にとっては獅子身中の虫であるが、戦団の実権を掌握し、対ヴィクター、
否、最終的な目標として対聖闘士兵器を生み出さんと画策している「彼ら」からしてみれば、
これほど有益な武装錬金術は存在しない。
類は友を呼ぶとでもいおうか。
ピット・アーセナル本人も、EU各国の戦団の連携を絶つという非常に重大かつ遠大な任務を、
「彼ら」自身が手をつける以前から効率よく秘密裏に、かつ効果的に行っていたのだ。
皮肉しか吐かない男だとしても、必要な駒ならば使うのが「彼ら」だ。
錬金術サイボーグ・アルトリウス・ファスケスはそう大っぴらに任務投入できるものでもなく、
かといって戦闘実績のない状態で前哨戦でしかないヴィクター討伐に当てるなどできるはずも無い。
そしてアルトリウスのサイボーグ化したクローン体は、
ただでさえ脳共鳴によって壮絶なフラッシュバックや幻痛をオリジナルの彼に与えている。
もっとも、怪我の功名とでもいうべきか、脳共鳴を利用した完全同一コントロールを彼は成し遂げていたのだが。
アルトリウスのクローン体の量産を考えていた「彼ら」は、クローンのクローンという常軌を逸した行為である。
通常、ここまで負荷を与えられて正気を保つことなど難しい。
しかし、アルトリウスは自分の脳を覆う人工頭蓋に直接核金を設置することにより、
理性と呼ぶべきものをかろうじて保つ事に成功していた。
痛覚以外の触覚を失い、それでもなお打倒ヴィクターの為に肉体を改造し続けることを是とした精神性を
正気とよべるかどうかは、議論の余地が有るところではあるが。
すくなくともアルトリウスは奇跡的に正気を保っている。
ただ、風が皮膚にふれるだけで引き起こされる激痛を引き換えに。
「彼ら」が出した契約条件の不老不死など、ピット・アーセナルにとってはどうでもいい事だ。
ただ、錬金の戦士たちが惨たらしく死んでくれればそれでいい。
捨て鉢になってはや十年、されども、彼の憎悪は彼を燃やし尽くしてはいなかった。
ムーン・フェイスらが乗るこの機体は武装錬金である。
B-2ステルス爆撃機を彷彿とさせる全翼機・ドレッドウィングを駆るのは、新進気鋭の錬金の戦士ハイ・テストだ。
彼もまた、ムーン・フェイスに見出されたおぞましい精神をもった戦士だ。
すべての人間は苦痛を背負って生きるべきだ。苦痛の果てにこそ救いがある。
幼児虐待の被害者であった彼は、いつしかそういった信条をいだくようになった。
ハイテストは歪みを抱えたまま成人し、その歪みに従って力を渇望し、
その歪みをピット・アーセナルに助長された結果、どこに出してもおぞましいサディストへと成り果てた。
かといって戦闘実績のない状態で前哨戦でしかないヴィクター討伐に当てるなどできるはずも無い。
そしてアルトリウスのサイボーグ化したクローン体は、
ただでさえ脳共鳴によって壮絶なフラッシュバックや幻痛をオリジナルの彼に与えている。
もっとも、怪我の功名とでもいうべきか、脳共鳴を利用した完全同一コントロールを彼は成し遂げていたのだが。
アルトリウスのクローン体の量産を考えていた「彼ら」は、クローンのクローンという常軌を逸した行為である。
通常、ここまで負荷を与えられて正気を保つことなど難しい。
しかし、アルトリウスは自分の脳を覆う人工頭蓋に直接核金を設置することにより、
理性と呼ぶべきものをかろうじて保つ事に成功していた。
痛覚以外の触覚を失い、それでもなお打倒ヴィクターの為に肉体を改造し続けることを是とした精神性を
正気とよべるかどうかは、議論の余地が有るところではあるが。
すくなくともアルトリウスは奇跡的に正気を保っている。
ただ、風が皮膚にふれるだけで引き起こされる激痛を引き換えに。
「彼ら」が出した契約条件の不老不死など、ピット・アーセナルにとってはどうでもいい事だ。
ただ、錬金の戦士たちが惨たらしく死んでくれればそれでいい。
捨て鉢になってはや十年、されども、彼の憎悪は彼を燃やし尽くしてはいなかった。
ムーン・フェイスらが乗るこの機体は武装錬金である。
B-2ステルス爆撃機を彷彿とさせる全翼機・ドレッドウィングを駆るのは、新進気鋭の錬金の戦士ハイ・テストだ。
彼もまた、ムーン・フェイスに見出されたおぞましい精神をもった戦士だ。
すべての人間は苦痛を背負って生きるべきだ。苦痛の果てにこそ救いがある。
幼児虐待の被害者であった彼は、いつしかそういった信条をいだくようになった。
ハイテストは歪みを抱えたまま成人し、その歪みに従って力を渇望し、
その歪みをピット・アーセナルに助長された結果、どこに出してもおぞましいサディストへと成り果てた。
ピット・アーセナルも、ハイ・テストも、錬金戦団が決して表ざたにできない闇そのものなのだ。
「むーん。
さて、宴もたけなわといったところだが…。
そろそろ我らの同士を迎えに行かねばならない時間だ。
ブリッツ君に準備を」
さて、宴もたけなわといったところだが…。
そろそろ我らの同士を迎えに行かねばならない時間だ。
ブリッツ君に準備を」
ドレッドウィングの腹にあるハッチが静かに開き、聖域にむかって赤い閃光が打ち込まれた。
レーザー照準による超高精度ピンポイント爆撃、その誤差はわずか10㎜という脅威の精度こそがドレッド・ウィングの特性だ。
そのおそるべき爆撃能力により、いつしかハイテストは空爆参謀と呼ばれるようになっていた。
難攻不落の聖域に突如として現れた量産型アルトリウス、その種がこれだ。
レーザー照準により地上に向かって撃ち出されたカプセルには、五体ないし十体の量産型アルトリウスが格納されており、
地上着弾と同時に量産型アルトリウスをばら撒く。
先ほど、ドイツのシュバルツバルトに量産型アルトリウスを送り込んでみせたのが好例だ。
聖域侵攻に当たっては更に地上のギガースがあらかじめマーカーを仕込んでいるため、誤差は㎜以下にまで狭められていた。
そして、一人の男がふわりと、自宅の階段でも降りるかのように宙に身を躍らせた。
彼の名はブリッツ・ウィング。
アルトリウス式サイボーグ術によって現役復帰した戦士であり、公式には三十年以上前に死亡している。
ただ大空を翔ることだけを望んだ彼は、悪魔の取引に応じたのだ。
ロケットブースターの武装練金・ジェットファイアが彼の背で起動した際の発光は、
聖域地上からでも確認することは出来たが、
今の聖域住人にそんな余裕のあるものなど一人も存在しなかった。
レーザー照準にと同調したゴーグルには、気流、大気圧変化、湿度、温度、対地距離等の複雑な情報が流れている。
半ばまで機械化したお陰でこうした情報を不足なく読み取ることができ、高高度から地上へとダイブしたところで、
鼓膜がやぶれたり、気圧の変化で気を失ったりしない。
便利なものだ。人間であることなど、大空を翔ることに比べたらなんともくだらない。
そう思うブリッツ・ウィングもまた、いびつなのだ。
レーザー照準による超高精度ピンポイント爆撃、その誤差はわずか10㎜という脅威の精度こそがドレッド・ウィングの特性だ。
そのおそるべき爆撃能力により、いつしかハイテストは空爆参謀と呼ばれるようになっていた。
難攻不落の聖域に突如として現れた量産型アルトリウス、その種がこれだ。
レーザー照準により地上に向かって撃ち出されたカプセルには、五体ないし十体の量産型アルトリウスが格納されており、
地上着弾と同時に量産型アルトリウスをばら撒く。
先ほど、ドイツのシュバルツバルトに量産型アルトリウスを送り込んでみせたのが好例だ。
聖域侵攻に当たっては更に地上のギガースがあらかじめマーカーを仕込んでいるため、誤差は㎜以下にまで狭められていた。
そして、一人の男がふわりと、自宅の階段でも降りるかのように宙に身を躍らせた。
彼の名はブリッツ・ウィング。
アルトリウス式サイボーグ術によって現役復帰した戦士であり、公式には三十年以上前に死亡している。
ただ大空を翔ることだけを望んだ彼は、悪魔の取引に応じたのだ。
ロケットブースターの武装練金・ジェットファイアが彼の背で起動した際の発光は、
聖域地上からでも確認することは出来たが、
今の聖域住人にそんな余裕のあるものなど一人も存在しなかった。
レーザー照準にと同調したゴーグルには、気流、大気圧変化、湿度、温度、対地距離等の複雑な情報が流れている。
半ばまで機械化したお陰でこうした情報を不足なく読み取ることができ、高高度から地上へとダイブしたところで、
鼓膜がやぶれたり、気圧の変化で気を失ったりしない。
便利なものだ。人間であることなど、大空を翔ることに比べたらなんともくだらない。
そう思うブリッツ・ウィングもまた、いびつなのだ。
戦闘員・非戦闘員の区別も無く、ただ殺戮を目的として送り込まれた量産型アルトリウスは、聖域人口を確実に削っていた。
聖域は、確実にすり潰されていった。
聖域は、確実にすり潰されていった。