ピクルという男がいる。とにかく強い。ティラノサウルスと闘って勝ったこともあ
る。腹が減ったら人間と闘って、勝ったらその人間を食べる。このピクルが、愚地克
己と試合をやった。
克己は試合開始10秒で食われた。克己の蹴りもパンチもピクルにはまったく効かず、
逆にピクルは克己の胴着の襟をつまんで口にポイして呑み込んでしまった。
「館長ー!」
試合場に克己の弟子がなだれ込んだ。克己は大きな空手道場の館長なので、試合場
の応援席は道場の門下生で埋まっていた。
「助けてくれー」
ピクルの腹の中から声が聞こえた。克己の声だ。丸呑みだったので死んでいなかっ
た。克己が殴っているのか、ピクルの腹筋が時々不自然な感じで隆起する。
「ぐえーっぷ!」
ピクルが大きなゲップをした。ピクルの口から、克己の足がちょっとだけ出た。
「引っ張れー!」
門下生は束になって克己の足をつかんで、渾身の力で引っ張った。スポンと音がし
て、克己は頭まで完全に出てきた。
「取ったー!」
粘液でべチョベチョになった克己は、片手を突き上げて叫んだ。小さな玉を2個持っ
ている。
「館長、それってまさか……」
「ピクルの睾丸だー!」
「ぐわー!」
猛烈な空腹感で、ピクルは目覚めた。同時に形容しがたい喪失感にも襲われた。そ
う、会員制のピンサロに久々に行ったら警官が現場検証をやっていた時のような。
「うがががー!」
ピクルは股間を押さえて、泣きそうな顔で睾丸を探している。克己の持っている玉
に気がついたと同時に泣き顔が怒りの形相に変わって、狂ったように克己に襲い掛か
った。
「ほーら、玉はあっちだ!」
克己が玉を放り投げると、ピクルも反転して玉を追いかけた。もう少しで捕れると
いうところで、偶然肉まん屋が通りがかった。
「はい、たくさん肉まんあるよー」
肉まん屋は肉まんを床にぶちまけた。小ぶりで睾丸型の肉まんなので、ピクルの睾
丸と混ざって区別がつかない。ところで偶然通りがかった人間がもう一人いる。
「だっしゃー!」
プロレスラーのアントニオ猪狩だった。天井から降ってきた猪狩はボディプレスで
肉まんと睾丸を全部ぺちゃんこにした。
「ははははー! ピクルくんのタマタマがペラペラだぞー!」
猪狩は肉まんだか睾丸だかわからない薄皮で、ピクルの頬っぺたを叩いた。ピクル
に日本語は通じないが、目の前の惨劇と猪狩の小馬鹿にした調子は理解できた。
「ぐぼがー!」
ピクルの怒りが爆発した。猪狩の口に手を突っ込んで、睾丸をつかんで引き抜いた。
「オレのタマもクラッシャー!」
猪狩は股間を押さえて、なぜか嬉しそうに床を転がった。床を転がって克己の足元
にきて、そして立ち上がった。
「克己くん、えい!」
猪狩は克己の睾丸を取った。取られた克己も猪狩もピクルも、もはややる事は一つ
しかなかった。
「てめえら全員の睾丸を取る!」
試合場は睾丸狩りの戦場と化した。雑魚の門下生はもちろん、刃牙も独歩も烈海王
も、阿鼻叫喚の中で成す術もなく睾丸を抜かれた。混乱に終止符を打ったのは郭海皇
だった。
「見てみい」
自分の睾丸を手に乗せてピクルに見せた。七色の光を放つ郭の睾丸は大きくて重く
て、何より生命力があった。もはや睾丸の域を超えて、それは小さな宇宙だった。
「うろろーん!」
ピクルは泣いた。猪狩も克己も首をうなだれて、その他全員も沈黙した。散乱した
睾丸は土に還り、試合場の照明はだんだんと暗くなり、やがて完全な闇となった。ピ
クルの遠い泣き声と郭の宇宙が共鳴して、その瞬間だけ世界は平和だった。
る。腹が減ったら人間と闘って、勝ったらその人間を食べる。このピクルが、愚地克
己と試合をやった。
克己は試合開始10秒で食われた。克己の蹴りもパンチもピクルにはまったく効かず、
逆にピクルは克己の胴着の襟をつまんで口にポイして呑み込んでしまった。
「館長ー!」
試合場に克己の弟子がなだれ込んだ。克己は大きな空手道場の館長なので、試合場
の応援席は道場の門下生で埋まっていた。
「助けてくれー」
ピクルの腹の中から声が聞こえた。克己の声だ。丸呑みだったので死んでいなかっ
た。克己が殴っているのか、ピクルの腹筋が時々不自然な感じで隆起する。
「ぐえーっぷ!」
ピクルが大きなゲップをした。ピクルの口から、克己の足がちょっとだけ出た。
「引っ張れー!」
門下生は束になって克己の足をつかんで、渾身の力で引っ張った。スポンと音がし
て、克己は頭まで完全に出てきた。
「取ったー!」
粘液でべチョベチョになった克己は、片手を突き上げて叫んだ。小さな玉を2個持っ
ている。
「館長、それってまさか……」
「ピクルの睾丸だー!」
「ぐわー!」
猛烈な空腹感で、ピクルは目覚めた。同時に形容しがたい喪失感にも襲われた。そ
う、会員制のピンサロに久々に行ったら警官が現場検証をやっていた時のような。
「うがががー!」
ピクルは股間を押さえて、泣きそうな顔で睾丸を探している。克己の持っている玉
に気がついたと同時に泣き顔が怒りの形相に変わって、狂ったように克己に襲い掛か
った。
「ほーら、玉はあっちだ!」
克己が玉を放り投げると、ピクルも反転して玉を追いかけた。もう少しで捕れると
いうところで、偶然肉まん屋が通りがかった。
「はい、たくさん肉まんあるよー」
肉まん屋は肉まんを床にぶちまけた。小ぶりで睾丸型の肉まんなので、ピクルの睾
丸と混ざって区別がつかない。ところで偶然通りがかった人間がもう一人いる。
「だっしゃー!」
プロレスラーのアントニオ猪狩だった。天井から降ってきた猪狩はボディプレスで
肉まんと睾丸を全部ぺちゃんこにした。
「ははははー! ピクルくんのタマタマがペラペラだぞー!」
猪狩は肉まんだか睾丸だかわからない薄皮で、ピクルの頬っぺたを叩いた。ピクル
に日本語は通じないが、目の前の惨劇と猪狩の小馬鹿にした調子は理解できた。
「ぐぼがー!」
ピクルの怒りが爆発した。猪狩の口に手を突っ込んで、睾丸をつかんで引き抜いた。
「オレのタマもクラッシャー!」
猪狩は股間を押さえて、なぜか嬉しそうに床を転がった。床を転がって克己の足元
にきて、そして立ち上がった。
「克己くん、えい!」
猪狩は克己の睾丸を取った。取られた克己も猪狩もピクルも、もはややる事は一つ
しかなかった。
「てめえら全員の睾丸を取る!」
試合場は睾丸狩りの戦場と化した。雑魚の門下生はもちろん、刃牙も独歩も烈海王
も、阿鼻叫喚の中で成す術もなく睾丸を抜かれた。混乱に終止符を打ったのは郭海皇
だった。
「見てみい」
自分の睾丸を手に乗せてピクルに見せた。七色の光を放つ郭の睾丸は大きくて重く
て、何より生命力があった。もはや睾丸の域を超えて、それは小さな宇宙だった。
「うろろーん!」
ピクルは泣いた。猪狩も克己も首をうなだれて、その他全員も沈黙した。散乱した
睾丸は土に還り、試合場の照明はだんだんと暗くなり、やがて完全な闇となった。ピ
クルの遠い泣き声と郭の宇宙が共鳴して、その瞬間だけ世界は平和だった。
「最終結果」
第1位 郭海皇
大きさ、射出量、ともに文句なし。あと100年は種付けできる。
第1位 郭海皇
大きさ、射出量、ともに文句なし。あと100年は種付けできる。
第2位 アントニオ猪狩
郭には及ばないがかなりデカい。ダチョウが見たら間違えて温めそう。
郭には及ばないがかなりデカい。ダチョウが見たら間違えて温めそう。
第3位 ピクル
塩づけの期間が長かったので、少し干からびていた。水で戻せば優勝もあったかも。
塩づけの期間が長かったので、少し干からびていた。水で戻せば優勝もあったかも。