SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 永遠の扉 第043話


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(あのバリアーを破らないコトには私の攻撃は届かない)
 桜花は小札を冷静に観察する余裕がある。この辺りも対象的だ。のみならず小札がテンショ
ンを上げて騒いでる間にも、実はある程度の思考の手がかりをまとめていた。
 それは。
(なぜ、紙吹雪を媒介に使う必要があるのかしら?)
 そういえば以前、廃墟で小札が総角とともに秋水たちと戦った時もそうだったという。
(しかも崩落した壁の跡も使っていたとか)
 牽制も兼ねて小札に矢を撃つ。状況は特に変化がない。矢が反射され、それを避ける。
(……ヒントはその辺りにありそうね)
 もし無制限かつ無条件にバリアーを作れるのなら、紙吹雪なり壁の崩落跡なりを使わずとも
良いのだ。例えば桜花の矢のように自分の好きなタイミングで好きな場所へ放てばいい。
(ま、どっちみちバリアーしか作れないなら適当に攻めながら考えればいいだけね)
 攻撃手段のない相手なら勝ち目はある。と余裕を感じたその時である。
「どんなてーきでも! みかーたでーもぉ!」
 小札の声帯から平素のコケティッシュなモノとは真逆の焼けついた声が飛び出た。
「かまわーなぁーい♪」
 ロッドの先端から赤い光がチカリと辺りを突き抜けた。と見るや光は赤色灯のようにぐるりと
光の尾ごと旋回し、蝶野邸の中へと侵入した。
 桜花は明晰な黒瞳をさすがに驚きに見開いた。
 障子だった。豪勢な邸宅に見合ったいかにも品のいい明かり障子。
 それが邸宅からバラバラの状態のまま赤い光に引きずり出され、縁側でピタリと静止した。
 (どういうコト? 小札ちゃんの武装錬金はバリアーを作るだけじゃ……)
「この手を放すもんか真赤な誓い! 追撃モード・レッドバウ!!」
 小札が声を掛けるとどうだろう。縁側の上に仰向けになって寝ていた四分割の障子が周囲
にモヤのような赤い光を帯び、更にはカタカタと揺れ動き始めたではないか。そしてしばらく意
志あるがごとくその身と縁側の板を打ちつけていたかと思うと、まるで透明人間が修復作業
をしているような動きを取った。すなわち四分割の障子はいま正に、切断された部分同士を
子供が単純な図形パズルを仮組するような形で向き合ったのだ!
 ただしあくまで仮組というとおり、完全には接合してはいない。まるで未接合の部分で奇麗な
Xの文字を描くように数十センチの間隔を置いている。もっともXの文字の間には蠢く菌糸を思
わせる真赤な稲光が充満し、日焼けに少し黄ばんだ障子へ朱を交わらせている。──…
 更にそれはやにわに舞い上がって小札の頭上でくるくると旋回し始めたで。
 いわば合体途中の超電磁ロボだ。中途半端に結合し、しながらも旋回している。
 まるでマジック。おお、そういえば小札はいでたちからしてマジシャンであり、現に特技もマジッ
クというがそれにしてもやや常軌を逸している!
「くっ!」
 桜花はひとまず障子目がけて矢を撃った。
 だが恐るべきコトに標的は切断個所からバッと分解して矢を避けた!!
 のみならず切断個所から光を溶けかけチーズを千切ったようにねっとりと垂らしつつ桜花に
向かって邁進し、各自めいめい別個に回転しながら速度を上げた! げに恐ろしきはそれで
光が切れぬ所だ。御前は左右の目の大きさを不均等にしながらあたふたした。
「わわわ! 障子が迫ってきたぞ! 避けろ桜花ぁ!!」
「見れば分かるからいちいち騒がないで! というか迎撃してよ御前様!!」
 桜花はぴしゃりと御前を叱りつつ一枚目を避けたが二枚目が右肩にあたり、疼痛に顔をしか
めた所で三枚目が右の太ももを四枚目が左の脛をそれぞれ掠り、桜花の背後へと飛び去った。
(堅さまで操るコトはないようね)
 幸い、強度はごく普通の障子と遜色ないが、それでも飛んで回転して当たればダメージを受
けるだけの重量はある。見れば当たった箇所が破れ、肩からは素肌が、スカートからは黒い
ストッキングが覗いている。出血はなさそうだが異様な動きが掠ったコトそのものが恐ろしい。
「畜生! なにしやがんだテメーら!!」
 キレた御前がぷんすかしながら障子へ猛然と飛び蹴りをかました。
 先ほど不意をつかれはしたが向かい合えば案外迎撃は容易いらしい。地面と水平に浮かぶ
一番面積の大きい障子があったが、それがド真ん中から小さな御前の戯画的な足にめきょめ
きょと無残に両断されて、更に偶然その軌道上にいた障子──これは上部らしく一番面積が
小さい──も勢い余った御前の蹴りによって紙も桟も区別なくめちゃくちゃくに破砕された。
 更に御前は振り向きがてら腕一本につき十本の矢、すなわち合計二十本の矢を現出させる
やいなや両側に浮遊する障子に遠慮斟酌なく投げつけてこれを破壊した。
 障子の破片がバラバラと落ちる様に、御前は得意満面、胸を仰け反らせた。
「へっへーんだ! ざまあー見ろー! 障子の癖に威張るからだぜバッキャロー!」
「おお、お見事! しかぁし! まだまだレッドバウの恐ろしさはコレからであります!! ちな
みに不肖はひとたびテンション上がれば倫理が一時的にあうあうあーになります故、多少の
ご無礼失言の類は何卒お許しを!! 後悔は戦後にダース単位で行いまする!!」
 小札はロッド持ちたる手で不活発な拍手をして、またロッドを突き出した。
 果たしてどうであろう。障子の破片が再び赤い光に繋がれ、もはや化石の復元か車に轢か
れたプラモデルかと見まごうばかりに無残な「障子のような形」で復活した。
「うそ」
 唖然とする桜花に舌っ足らずな高い声が届いた。
「ときをこえろっ! そらをかけろ! このほっしのためぇ! デテンテンテン!」
 小札はまたもロッドを振っている。しかも今度は黒い光が現れ、地を這っている。
「君は見たかっ! あーいがぁー! 真赤(←ココ重要)に燃・え・る・のを!」
 霧の中でかつ戦闘中だ。桜花はすっかり見落としていた。地面に小さな小さな何かの破片
が散らばっているのを。しかし桜花の見落としは何人たりとも責めるコトはできぬのだろう。
「暗い闇の底で危険な罠が待つ! 探索モード! ブラックマスクドライダー!」
  百人がそれを見たとしたらおそらく百人全員が”何かの破片”ではなく
”小石”
”小枝”
”雑草”
”土くれ”
の類として認識していただろう。それほど破片は元の姿が分からぬほど破壊されていた。
 小札はひどく興奮した様子で、瞳孔をカッと見開いた!
「総ては風雨の仕業であります。かつてこの蝶野邸で戦いが繰り広げられてから時経つコト
数か月──… 障子や襖はともかく、屋外にて破壊された物は果たしてそのままでしょうーか?
いやいや! 雨に溶かされ風に流されちまちまと庭に散らばるコトもまた大自然の摂理!!」
 黒い光がまるで樹形図のように無数の「小石・小枝・雑草・土くれ」をあぶり出して、一点に
引きずり込んだ。桜花はそれを阻止したかったが障子が襲ってきたため応戦する他なかっ
た。障子は壊しても壊しても復元してまた向かってくる。何度も何度も桜花を掠めさる。
 その上今度は黒い光が収束して異常な物を作り出した。
 前後は真白な何かの塗料を塗りたくられ、上下左右は黄土色の物体……いや、色の通り黄
色い土のようだ。そこからワラのように尖った同色の繊維を何本もうっすら伸ばしている。
 大人がようやく胸に抱えられるぐらいの大きさのそれが!
 弾丸のような速度で桜花のみぞおちに命中した!!
 当たった当人はまるで何が何やらわからない。たまたま桜花から離れて障子を追っていた
御前が物音に驚いて振り向いてようやく事態を把握したほどだ。
 しかも桜花の長身は謎の物体に押されて庭を吹き飛んでいく。よく見れば黒い光は物体に
纏わりつきつつ桜花を透過して蔵の方へ伸びているようだ。
「ん? 桜花も蔵の方に飛んでる。まるで光に引っ張られてるような……って! 助けねーと!!」
 御前は障子を後に最大速度で桜花に追いつき、小さい体ながらに桜花の手を引いた。
 火事場の馬鹿力という奴か。幸いにも桜花はすぐ不可解な弾圧から解放されたが、地面に
膝をつき、整った顔を苦悶に歪めながらけほけほと激しくむせた。
 同時に御前は見た。蔵の方でちょっとした物音と土煙が上がるのを。
(……? 蔵? さっきの黒い光も向かってたけど関係あんのか?)
 考えかけた御前の手が強引に引かれた。無遠慮な仕草に御前はついカッとなったが、先ほ
どまで居た場所を、謎の物体がざっと二十ほど一気呵成に通過してするのを見て態度を変えた。
 むろん物体は総て黒い光を纏い、しかも。
「やっぱり蔵の……方ね。光の伸びる先も飛んでいく方向も。じゃあもしかすると」
 お腹を押さえた桜花は、少し乱れた前髪を揺らしながら横目を背後へ這わしている。ほつれ
た髪が右肩一面に垂れて新品同様の制服を覆った。……そう、新品同様の制服の右肩に。
「多分そうだぜ! 確か蔵はカズキンがパピヨン斃す時に幾つかブチ抜いたっていうし!!」
 迫ってきた障子に矢を投げつつ御前は首肯した。確信を高めたのは蔵から響く謎の音。
「……ふふふ。よく見たら私の制服も同じね。黒い光に触れたからかしら?」
 桜花は苦痛に美貌を引き攣らせながら笑い、緩やかに立ちあがった。制服はあちこち土埃
に塗れているが、傷一つない。……そう。右肩にもスカートにも傷一つないのである。
 先ほど障子が掠って破れた筈なのに。
「ねぇ御前様。ちょっと蔵の方見てくれる? 私の推理が正しかければ──…きっと」
 遠くでは小札がロッドをひっきりなしに振っている。黒い光が迸っているのは何のためか。
 桜花の脳裏でベールが綻ぶと同時に御前が蔵へ飛び、周りをぐるーっと回り始めた。

「アレ? なんで御前様がいるんだろ?」
 つなぎを着た少女が額に手を当て不思議そうに空を見た。
「おーい、御前様ー聞こえるかーい♪ って、行っちゃった……」
 もっとも走り寄った頃にはもう御前は見えなくなっていた。
 遠くにいったのではなく、蔵に造られた十字路を横に曲ったのだろう。
「うーん。気になるけどまずは……あのニンジャさんがいうには竹刀袋のあるところだよね……」