~メルビル・宿の一室~
昼時になったが、外からは鳥のさえずりが止まない。
少しやかましいが不快ではなく、むしろ聞き入る内にやすらぎを感じる。
椅子に背をかけ、一息つきながら窓から陽を浴びる。
少しやかましいが不快ではなく、むしろ聞き入る内にやすらぎを感じる。
椅子に背をかけ、一息つきながら窓から陽を浴びる。
「ふぅ・・・陸もこうしてりゃ悪くねぇな。」
コーヒーを飲みながら平和な朝を満喫する。
部屋の隅に並ぶベッドには傷ついたシンとケンシロウが寝ていた。
一晩寝ただけで大体の傷が治っている、呼吸や経絡のコントロールが成せる業か。
医者に魔物が人間に化けているんじゃないかと疑われたのも無理はない。
コーヒーを飲みながら平和な朝を満喫する。
部屋の隅に並ぶベッドには傷ついたシンとケンシロウが寝ていた。
一晩寝ただけで大体の傷が治っている、呼吸や経絡のコントロールが成せる業か。
医者に魔物が人間に化けているんじゃないかと疑われたのも無理はない。
トランプが散らばっている小汚いテーブルへ視線を移す。
ホークの向かい側の椅子には烈海王が座っていた。
「すまなかった、キャプテン・ホーク。」
「へっ、海賊に詫びたってなんもでやしねぇよ・・・王と面会はしたのか?」
「裁きを受けるつもりだったが・・・君達の根回しか?」
ホークの向かい側の椅子には烈海王が座っていた。
「すまなかった、キャプテン・ホーク。」
「へっ、海賊に詫びたってなんもでやしねぇよ・・・王と面会はしたのか?」
「裁きを受けるつもりだったが・・・君達の根回しか?」
テーブルに勲章の様な物と書状が置かれる。
書状を手に取り、一瞬だけ見ると丸めて烈に投げ渡す。
「すげぇじゃねぇか。インペリアルガード。城の兵からは恨みを買いそうだがな。」
「実際は常に監視できるよう近くに配置しつつ、私を戦力として使おうというわけだろう。
それより文学に秀でてるようには見えんな、一瞬で読める量では・・・」
書状を手に取り、一瞬だけ見ると丸めて烈に投げ渡す。
「すげぇじゃねぇか。インペリアルガード。城の兵からは恨みを買いそうだがな。」
「実際は常に監視できるよう近くに配置しつつ、私を戦力として使おうというわけだろう。
それより文学に秀でてるようには見えんな、一瞬で読める量では・・・」
椅子から飛び起きると背を伸ばし、あくびを上げる。
「眠気覚ましに一杯やるか・・・付き合いな!」
意気揚揚と扉へと近寄り、豪快にドアを突き飛ばして開くとパブへと向かっていく。
烈も続いて椅子から立ち上がると、平手に拳を合わせ一礼して小さく呟く。
「シェシェ(ありがとう)・・・。」
「眠気覚ましに一杯やるか・・・付き合いな!」
意気揚揚と扉へと近寄り、豪快にドアを突き飛ばして開くとパブへと向かっていく。
烈も続いて椅子から立ち上がると、平手に拳を合わせ一礼して小さく呟く。
「シェシェ(ありがとう)・・・。」
ホークと烈が部屋から立ち去った後も、部屋の中には小鳥のさえずりが止まなかった。
「静かだな・・・。」
「確かに、俺達の世界には昼夜を問わず冷たい風が耳に響いた物だ。」
「静かだな・・・。」
「確かに、俺達の世界には昼夜を問わず冷たい風が耳に響いた物だ。」
何時の間にやら起きていたのか、ベッドの上に横たわり天井を見詰めたままで口を開く。
「考えてみれば、天井のシミを数えるのは初めての経験だな。
リュウケンの奴は骨の一つや二つ折れた所で修行を中断することはなかった。」
「考えてみれば、天井のシミを数えるのは初めての経験だな。
リュウケンの奴は骨の一つや二つ折れた所で修行を中断することはなかった。」
物言わぬケンシロウ、天井へ向かって手を伸ばす。
古代技術の生みだした兵器ソーディアン。
怪我は治っても拳の内側へ撃ちこまれた熱気は止んでいなかった。
常人であれば苦痛でベッドから飛びはね、痛みでショック死しても不思議ではなかった。
古代技術の生みだした兵器ソーディアン。
怪我は治っても拳の内側へ撃ちこまれた熱気は止んでいなかった。
常人であれば苦痛でベッドから飛びはね、痛みでショック死しても不思議ではなかった。
だがケンシロウの心の内に芽生えた恐れは、痛みからくるのではない。
熱によって骨が溶け、握り拳を上手く作れないのだ。
この先の戦い、神と戦う時にはホーク達も成長している。
その時、足手まといにならないか・・・不安が脳裏を過っていた。
熱によって骨が溶け、握り拳を上手く作れないのだ。
この先の戦い、神と戦う時にはホーク達も成長している。
その時、足手まといにならないか・・・不安が脳裏を過っていた。
「その傷は俺が招いたもの、俺がケリをつけよう。」
ベッドから起き上がり、窓から日差しを浴び数年振りに見る青い空を眺めるシン。
少しの間だけ沈黙すると、ケンシロウに背を向けたままテーブルに座り再び口を開いた。
ベッドから起き上がり、窓から日差しを浴び数年振りに見る青い空を眺めるシン。
少しの間だけ沈黙すると、ケンシロウに背を向けたままテーブルに座り再び口を開いた。
「お前の代わりに、俺が邪神への死神となってやる。」
「シン・・・死ぬ気か。」
「フッ、死人に生気など基よりあるものか。」
「シン・・・死ぬ気か。」
「フッ、死人に生気など基よりあるものか。」
テーブルの上に散らばったトランプをかき集め、シャッフルする。
トランプの山をテーブルへ置き、上から一枚だけカードを引いた。
「ククク・・・ジョーカーか、こいつは縁起がいい。」
そう言うと口元に笑みを浮かべ、カードを懐へしまった。
トランプの山をテーブルへ置き、上から一枚だけカードを引いた。
「ククク・・・ジョーカーか、こいつは縁起がいい。」
そう言うと口元に笑みを浮かべ、カードを懐へしまった。
「むぅ・・・この世界の陣形はどうも神頼みすぎるんだよなぁ。
魔力的な効果を土地によって得られるらしいが、こっちの世界で信仰してる神なんていねーし。
こりゃ役に立たねーな、何か他に神具とか戦闘・戦術論みたいな本ってないのか?」
魔力的な効果を土地によって得られるらしいが、こっちの世界で信仰してる神なんていねーし。
こりゃ役に立たねーな、何か他に神具とか戦闘・戦術論みたいな本ってないのか?」
脚立の上で本に目を通すゲラ=ハ、数冊手に取りペラペラとめくっている。
「赤い刃は一瞬で神をバラバラに…こんな武器が存在すれば苦労しませんね。
陣形については、私達の戦い方は個々がメンバーに合わせて動く連携行動を主体としてます。
配置は土地に住む神を無視するなら、武器の能力を引き出せるポジションに居ればいいといった考えです。」
「赤い刃は一瞬で神をバラバラに…こんな武器が存在すれば苦労しませんね。
陣形については、私達の戦い方は個々がメンバーに合わせて動く連携行動を主体としてます。
配置は土地に住む神を無視するなら、武器の能力を引き出せるポジションに居ればいいといった考えです。」
ムッ、と顔をしかめたかと思いきや突然笑い出すベア。
「ハッハァーン!道理でお前等、アマちゃんな訳だ。
次の戦いは俺が指示を出してやるよ、楽しみにしてな。」
「?」
「ハッハァーン!道理でお前等、アマちゃんな訳だ。
次の戦いは俺が指示を出してやるよ、楽しみにしてな。」
「?」
図書館で馬鹿笑いするベアを、不快そうに見つめる読書家達の視線に気づくゲラ=ハ。
慌てて頭を下げて謝罪するが、脚立の上でやるのは不味かったようだ。
バランスを崩し転落し、更に本棚にそのショックが伝わりゲラ=ハに本の雨が降り注ぐ。
慌てて頭を下げて謝罪するが、脚立の上でやるのは不味かったようだ。
バランスを崩し転落し、更に本棚にそのショックが伝わりゲラ=ハに本の雨が降り注ぐ。
「おいおい、図書館は静かに本を読む場所だぜ・・・まったく。」
軽い苛立ちを覚えるゲラ=ハ、だがベアの足もとに転がった本を見ると、
すぐにそんな思いは払拭してしまった。
「ベア・・・その本、その文字は?」
軽い苛立ちを覚えるゲラ=ハ、だがベアの足もとに転がった本を見ると、
すぐにそんな思いは払拭してしまった。
「ベア・・・その本、その文字は?」
見た事も無い字、だがハッキリと伝わる作った者の意思。
人の欲望を無理矢理、内側から引きずり出す程の魔力。
掴め、開け、読み解け、そして暗黒に染まれ。
余りの邪悪に吐き気を催す。
人の欲望を無理矢理、内側から引きずり出す程の魔力。
掴め、開け、読み解け、そして暗黒に染まれ。
余りの邪悪に吐き気を催す。
「バカな・・・何故ここにこんな・・・!?」
本を掴むベア、本の魔力が開けと命じるのを拒んでいるのか手がブルブルと震えている。
荷袋の中に放り投げるようにして入れると、急いで紐をきつく縛った。
本を掴むベア、本の魔力が開けと命じるのを拒んでいるのか手がブルブルと震えている。
荷袋の中に放り投げるようにして入れると、急いで紐をきつく縛った。
~メルビル・宿の一室~
日が暮れると、酒も程々に帰ってきたホークがテーブルの上に地図を開く。
「さて、各々準備を済ませた所で・・・メルビルを離れるぞ。
次の目的地はローザリアだ、アクアマリンの伝承があるからな。」
「クリスタルシティに行く訳ですね、メルビルと同じく首都として賑わってます。」
「あぁースマン、明後日に出発でいいか?仲間に色々と送りつける物があるからよ。」
「そうか、ケンシロウの傷も気掛かりだしな。」
「さて、各々準備を済ませた所で・・・メルビルを離れるぞ。
次の目的地はローザリアだ、アクアマリンの伝承があるからな。」
「クリスタルシティに行く訳ですね、メルビルと同じく首都として賑わってます。」
「あぁースマン、明後日に出発でいいか?仲間に色々と送りつける物があるからよ。」
「そうか、ケンシロウの傷も気掛かりだしな。」
3人で話を一旦止め、ケンシロウの居るベッドへ視線を向ける。
話し合いに参加すべく、ベッドから起き上がるケンシロウだったが、
それを制する男が居た。
話し合いに参加すべく、ベッドから起き上がるケンシロウだったが、
それを制する男が居た。
「その旅、俺が付き合おう。」
「あぁ?何いってんだテメェ。」
睨みあうベアとシン、怪我人だから放っておいた。
だが妙な真似をされて、黙ってはいられないと剣を握る。
その様子を鼻で笑うシン、血管を浮き出しながらもその場を動かないベア。
「あぁ?何いってんだテメェ。」
睨みあうベアとシン、怪我人だから放っておいた。
だが妙な真似をされて、黙ってはいられないと剣を握る。
その様子を鼻で笑うシン、血管を浮き出しながらもその場を動かないベア。
「こいつの手、今は使い物にならん。
治るまでの間だったら貴様等に助力してやろうと思ってな。」
「本当か、ケン?」
治るまでの間だったら貴様等に助力してやろうと思ってな。」
「本当か、ケン?」
ホークがベアを抑えつつ、ケンシロウの容態を案じる。
ケンシロウは、ただ無言で頷くだけだった。
「じゃあ仕方ねぇな、ベア。」
「チッ・・・まぁいい、もしもの時は俺が切り捨てる。」
「フッ・・・出来るかどうか。」
ケンシロウは、ただ無言で頷くだけだった。
「じゃあ仕方ねぇな、ベア。」
「チッ・・・まぁいい、もしもの時は俺が切り捨てる。」
「フッ・・・出来るかどうか。」
その日は二人がこの調子だったので、仕方なく2つ目の部屋を借りた。