SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ その名はキャプテン 53-1


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足音の主と思われる男が、シンの姿をみて茫然と立ち尽くしていた。
足音が聞こえたのは一瞬、近づくまでは足音を消しながら歩いていたのだろう。
この南斗の男を見てかなりのショックを受け、思わず音を立ててしまったのか。

「おやぁ?サルーインのペットでは足止めもできんのか。
それとも他にも仲間がいてそいつを見殺しにしたか・・・・どっちだぁ?
まさか愛だ何だと騒ぎ立てるお前が、見捨てるわけないよなぁ・・・ケンシロウ!」

シンの目からはホークは完全に消えていた、北斗最強の男、拳王ラオウを倒すほど成長したケンシロウ。
その男との決着をつける、ユリアへの愛を冥府に捨て去り、執念で蘇った。
己の全てを賭けて、唯の男ではなく拳法家として勝利してみせる。
それが望みだった・・・しかし、ケンシロウを見るや否や失望の念に捉われた。

オーラの強さは、サザンクロスで戦った頃に比べれば倍以上、まさにラオウに匹敵する強さになっている。
しかし、戦意、戦うことへの意欲が見られず、辺りへ散りじりになるばかり。
自分の内なる気を引き出せても、コントロールする気がないのか、できないのか。
気がこちらへ向かってないので威圧感がまるでない。

ラオウの強さは自分への自信、圧倒的な強さを求める姿勢から来ていた。
闘気とは、読んで字の如く『闘う気』である。
ケンシロウのもう一人の兄であるトキも、温和な性格ではあった。
だが、守るべき者の為とあらば凄まじい闘気を発していた。
闘気とは闘いに対する姿勢、思念、思想でコントロールするのだ。
そして、ケンシロウもトキと同じく人を守り、外道を殺す殺人拳だったのだが・・・。

「シン・・・貴様程の男がゾンビにされるとはな。」

「フン、俺の居ぬ間に腑抜けたな、ケンシロウ・・・嗅覚まで衰えたのか?俺の体は腐ってなどいない。
貴様は知らんだろうが、復活していたジャギが死んだ。
その魂と灰を使って生み出された、文字通り『新生』した訳だ。
そして、その代わりにサルーインとかいう負け犬の復讐に仕方なく付き合ってやった、それだけだ。」
「貴様の目的は一体・・・」
「聞くまでもないだろう!あの時のケリをつける・・・行くぞッ!南斗旋脚葬!」

間合いを地を滑る蹴りで一気に詰める、後ろへジャンプして距離を取るケンシロウ。
だが、先に述べたように闘気とは『闘う気』である。
そんな消極的な行動では闘争心を湧きあがらせることは出来ない。

「この俺から逃れることなどできんぞぉッ!南斗獄屠拳!」
続けて繰り出される蹴りに、あの場面を頭に思い浮かべる。
ユリアを奪い、そして自分の胸に七つの傷をつけられたあの日を。
着地と同時に地面を蹴り、思い浮かんだ過去の映像を払拭するため、
再び眼の前の男を超えるために、真っ向から挑んだ。

「北斗飛衛拳!」
「南斗獄屠拳!」

空中で互いに蹴りを交差させる二人、何事もなかったかのようにすれ違い、地面へ着地する。
だが、すぐに勝負の結果が現れた。
「ぐうっ!?」
シンの肩から鮮血が吹き出し、地面に滴り落ちる。
出血のせいか、少し体がよろけたが、何故か顔には笑みを浮かべていた。

「・・・俺の・・・・・・・勝ちだ。」
シンは肩の傷を抑え、出血を止めようとしている。
しかし、地面に落ちる血の音は強くなるばかりだった。
だが、すぐに血の音は止むだろう。
一人の男が、地面へ倒れることによって。
「うおおっ・・・・!」

「呆気ない・・・ラオウを倒した男がこの程度だとはな。
北斗の歴史の、幕を閉じる日が来たようだな。」
シンは己の肩の傷を見ながら考えた。
激戦によって鍛えられた肉体と闘気は、一撃必殺の南斗の拳を本能で退けた。
眠れる本能、破壊の衝動を呼び覚ませば闘気は完全にこちらへ向く筈。
(その為に、死の手前まで追い詰める必要がある!
ユリアを奪ったあの日のように、もう一度アレをやる必要が・・・)

「うっぐ・・・あ・・・・・おぐっ!」
シンに胸倉を掴まれ、うめき声を上げる。
周囲の床はすっかり血でビショビショになってしまった。
だが、闘気は肉体の外部だけではなく、内部までも駆け巡る。
血が抜けることは問題ではない、闘気が少量の血液に多量の酸素を凝結させる。
致死量の出血が起きても、常人に比べたら遥かに死の危険は少ない。

「さて・・・冥府へ土産話の一つもなく逝くのは淋しかろう?
思い出させてやる、南斗聖拳の処刑術を閻魔・・・いや、死の神デスにたっぷりと聞かせてやるんだな・・・。」
ニヤニヤとうすら笑いを浮かべながら、人差し指をケンシロウに見せびらかす。
何を意味するのか、それを考えた時に一つ、ある光景が浮かんだ。
腕を押さえつけるシンの配下、泣き叫ぶユリア、そして・・・笑いながら指を突き立てる男。

一本目が突き刺さる、肉を突き破り、骨を砕きながら肺をひっ掻き小さな穴を開ける。
二本目が突き刺さる、胸骨をへし折ることで肺の上部にダメージを与え呼吸困難を起こし苦しみを増大させる。
三本目が突き刺さる、心臓付近の血管を傷つけ、血液の循環を悪化させ更なる苦しみを与える。
四本目が突き刺さる、更に心臓に近い所を突くが、攻撃はしない、押し込んだ肉と骨で圧迫し機能を弱らせる。

五、六、七本目は腹部に向けて同時に突き刺す。
主に腸などの生活に関連する器官を傷つける事で、生き延びてからも闘技者としての復帰を困難にする。
ケンシロウに執念を植え付けることになったこの処刑法、まさか生き延びるとは思わなかった。

だが、生還したケンシロウの強さは計り知れないものとなっていた。
ユリアを奪った自分を探し、決着をつけるという『執念』が治らぬ筈の怪我を完治へ導き、
サザンクロスでの結果を生んだと、シンは確信していた。
そして、拳王を倒した今ならばあの時以上の格闘家となっている筈。
「フゥ~~跡が残ってると、つい気になるよなぁ・・・。
生き延びたのだから急所からズレた可能性もあるんだが・・・。
つい傷口に添って穴を開けたくなるなぁ・・・こんな風に!」

ズボォ、と小気味良い音を立てて指が肉を突き進む。
鋼鉄の様に硬く、外見だけではない真の逞しさを持った胸板も指一本で突き破られていく。
「ぐああぁ・・・!」
「クックック・・・何本目に死ぬかなぁ~~~~?」

殺す、今のケンシロウの軟弱な心を殺すのだ。
そうすれば自分が望んだ男と戦える、史上最強の拳士と。
四本目の穴を開けた、生きてはいるが目の色は既に死人の色。
ユリアが死んだ今、こいつが求めているのは闘いだけだ。
感情を殺し、本能に目覚めれば、闘いのみを求める最強の殺人鬼が出来上がる。

「さぁて、仕上げだケンシロウ。
二度も同じ所に、同じように傷を作るだなんて滅多に体験できんぞ・・・ほれぇ!」
地面の血は乾いてドス黒くなり始めており、そこへ新しい赤が継ぎ足される。
ブシュウ~と音をたてて勢いよく噴き出したそれは、生命の終わりを告げた。

「本当に死んだか?チッ・・・雑魚が。
こんな男に執着していた自分が馬鹿らしく思えてくる。」
殺人を行った後でこんな事を口走っている姿を見れば、誰もがシンを冷徹な、人の心を持たない男と思うだろう。
だが、彼がケンシロウを見つめる目には『哀しみ』が宿っていた。
共に修業時代を過ごした強敵を失った喪失感が、シンの心を揺り動かしたのだろうか。
だが髪を掻き上げると、すぐに普段の冷たさと残忍さを見てとれる危険な目へと変わった。

「さて、お前の評価をもう一度改めるとしようか。
不思議な術を使って傷を癒していた様だな、しかも俺に気づかれずに。
もし望むなら、貴様の名前を聞いてやってもいいぞ?」

「そいつは光栄だな、今度はお前が冥土の土産に持ってきやがれ・・・!俺の名は、キャプテン・ホーク!」